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COLUMN

TOPATO通信税理士法人で税理士事務所はどう変わる? 5119号

ATO通信

5119号

2002年4月30日

高木 康裕

税理士法人で税理士事務所はどう変わる?

我々税理士を規制する税理士法という法律が、4月1日より改正されました。既にご案内の通り、この法律に 則 ( のっと ) って、当社も税理士法人という新たな組織に衣替えです。この法律改正、特に税理士法人がお客様にどのような変化、影響を与えるのか、今後の動向を含めて考えてみます。


1.税理士法人て何だ?

 従来は税理士なる資格は個人に与えられているため、複数税理士が共同で営業はしても、あくまで法律的には個人事務所。法人格はありませんし、申告書の署名押印も個人の税理士名でせざるを得ませんでした。それが税理士法人により、全ての業務を法人名で行えるようになったのです。組織的には簡単で、社員と呼ばれる(従業員のことではない)2人以上の税理士が出資をし、無限責任を負う合名会社を基本とするものです。最低資本金の縛りもなく、いくらでも良い代わりに責任は際限なしで、それが無限責任と言われる 所以 ( ゆえん ) です。全ての個人財産を投げうってでも債務を弁済しなければならないと言う、厳しいもの。しかし、今時合名会社なんて、時代錯誤も甚だしい!ともあれ弁護士や弁理士と共に、税理士も法人化へと動き始めたのです。


2.お客様にとっての税理士法人の利点は?

 一口に税理士事務所と言っても千差万別です。が、税理士一人に職員5名以下と言うパターンが非常に多いのだそうです。この手の事務所の場合、所長たる税理士に万が一のことがあると、事務所はそこで崩壊。お客様は新たな税理士探しをするはめに。ただ、実務的には他の事務所が従業員ごとお客様付きで買収したり、担当者がお客様付きで他の事務所に転職したり、となることも多いそうな。この場合、お客様は税理士や担当者の都合で勝手に別の事務所になってしまうわけで、何とも頼りない存在です。それが税理士法人であれば、税理士は複数おり、組織としては従前と同様のサービスが受けられる仕組み、まずは安心と言ったところでしょう。


3.税理士事務所は大きければよいのか?

 最低二人の税理士で税理士法人は可能です。従って規模の小さな税理士法人も相当数に上るでしょう。
ただ、一般論として、税理士法人は大型化が予想されています。既に合併により200人を越える事務所も誕生したとか。それでは、事務所は大きければ大きい程良いのか、と言う古くて新しい問題が頭をもたげてきます。一概には言えませんが、小さな事務所の最大の長所、それは税理士である所長の顔が力量が人柄がはっきり見えることでしょう。逆に大きくなればなる程、たとえ担当者が税理士の資格者でも、事務所としての顔は見えにくくなってしまいます。つまり、事務所としての善し悪しが、各担当者の力量に非常に左右されてしまうのです。ただ、大きな事務所は情報量は豊かでチェック体制も整っていることが多いでしょう。専門的な問題でも、適正な判断が期待できそうです。どちらも一長一短、パーフェクトはあり得ません。


4.今後の税理士事務所の動向は? 

 そうは言うものの、時代はますます複雑化、専門化していくでしょう。正直言って、筆者の場合でも私一人で全ての税法をカバーすることなど、とても不可能です。時代は税理士ならどんな税務も解決できるほど、簡単ではなくなっているのです。そんな状況下、はたして税理士事務所の行方は? 大方の予測は二極分化。小規模事務所はコンピューター化もままならない、零細な個人事業者だけを顧客にし、それ以外は大事務所に集約されると見る向きが多いようです。更にワン・ストップ・ショップと言って、一つの事務所で税務、法律、登記等々全ての関連作業が完結できる事が要求されるようになるとも言われています。お客様にとっては利便性が高く、各業界の垣根が取り払われなければならないのかも知れません。今のところ、それがお客様のためとは分かっていても、報酬の配分方法で実現はそれ程容易なことではありません。いずれにせよ、旧態然とした体制では、税理士事務所も早晩、生き残り競争から脱落です。
残念ながら、弊社も 一時 ( いっとき ) にワン・ストップ・ショップの実現は不可能です。しかし、多様化し高度化するお客様のニーズに対し、関係する多方面の業界との連携をますます濃密なものにして参ります。単なる大型化は目指しませんが、地道に一人一人の資質の向上により、差別化を図っていくことしかないと思っています。最大の関心事、税理士法人になると、報酬額は上がる??それはございません。ご安心を!

※執筆時点の法令に基づいております