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TOPATO通信誰が何を相続すれば良いのか? 5123号

ATO通信

5123号

2002年8月29日

高木 康裕

誰が何を相続すれば良いのか?

 相続で最も難しいことは、昔も今も財産の分割方法です。つまり、誰が何を相続するかです。各人に明確な希望がある場合は、相続人の方々の話し合い次第。まとまるかどうかは別として、ある意味では単純明快、解りやすいのです。逆に結構難しいのは、どう分けたらいいか、と言う根本的な問題をご相談賜る場合です。皆さんの財産ですからご自由に、と突き放してはお叱りを受ける事に。で、税務の立場からご参考までに二つ三つ。


1.居住用土地は奥様に!

 相続税の大きな特例に、小規模宅地等の評価減の特例と言うものがあります。一定の条件を満たした居住用、事業用等の土地の評価について、最大で8割引の減額をするものです。例えば本来1億円のご自宅の評価が、最大で2千万円にまで引き下げられるわけで、誰がどういう風に適用するかは各人の納税プランに大きく影響してきます。
  そこで、この特例、居住用の土地で適用するなら、ご主人の相続時には奥様が相続することをお勧めです。次回、奥様の相続時にも、居住用として再度お子様がこの特例を適用できるからです。


2.不動産か預金か?

 賃貸アパートやマンションと現金預金と、どちらを相続する方が有利か、もよくお尋ね頂く質問です。賃貸物件は維持管理に手間暇がかかる代わりに、収益が得られます。片や現預金はそのものズバリ、手間いらず。
 筆者の個人的な好みから言えば、賃貸不動産でしょうか。理由は簡単、利回りです。預金の利息は無いに等しく、ペイオフ対策と言う考え方だって成り立ちます。ただ、事業にリスクはつきもので、賃料の値下がりや空室リスク、建物建築時の借り入れまでセットの相続なら、なおさら面倒な側面も。そんな状況から、跡継ぎの長男が不動産を、嫁いだ娘が現預金を、と言うパターンはよくある話。
 さて、相続税の計算は相続財産の総額を基にいったん法定相続分で税額の総額計算をします。その上で、実際の相続割合により、その総額を按分して負担することになっています。ただ、この按分計算がくせ者で、相続税法上の評価額で計算です。つまり、現預金の評価は正にその金額ですが、建物については建築価額よりはるかに安い固定資産税の評価額。しかも賃貸物件は更にその7割評価になるのです。現預金より評価上は得をして、税負担が少なく、その後の収益までをもゲット。物件にもよりますが、私ならリスクは覚悟でやっぱり不動産です。


3.底地は本当に不良資産か?

 借地人のいる土地、つまり底地は自由に処分もできません。絵に描いた餅とまでは言わないまでも、昔から一般的には不良資産と言われています。 そのため、相続時には物納の最有力候補。
 しかし、本当に不良資産なのでしょうか? ものは考えようで、こんな地主さんがいらっしゃいました。相続税の納税に底地の物納をお勧めしたのです。相続財産としては底地が大半で、駐車場やアパートが若干あり、納税手段としては底地の物納が常識的、かつ、安全、妥当な方法だからです。
 が、この地主さんは物納を拒否し、20年の延納を選んだのです。底地は毎月確実な地代と言う現金収入を生む大切な財産。利回りを考えれば預金利息より有利、とのお考えなのです。そして何より、何年かに一度は、まとまった更新料なるおまけまでが付いてくると言うのです。この地主さんの場合、地代も決して低くはありませんでした。 滞納のない借地人であれば、確かにこの地主さんの主張も頷けます。その意味では底地もあながちバカにはできない財産です。また、そもそも地代水準が低過ぎると、物納だって認められません。物納のためではなくても、地代引上げは必須です。


4.解決手段はお金だけ!

 結論として、財産の種類による有利不利は税務上の問題より、好みの問題と言うに尽きます。
そして何より真に公平で相続人全員が100%満足する分割方法など、存在し得ません。結局、不満の穴埋めは代償分割を含め、お金で解決するより方法はないのです。そのためには、評価上多少不利ではあっても、相続人のため、現預金をなるべく多く残すこと。それができなければ、換金化できる状態にしておくことが、相続人への思いやりというものです。残念ながら娑婆(しゃば)の世界は最後の最後まで、金、金、金で解決のようですから。

※執筆時点の法令に基づいております