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COLUMN

TOPATO通信調査にマイナス増差はない!?
相続でも重要!建物の固定資産税評価額
5131号

ATO通信

5131号

2003年4月30日

高木 康裕

調査にマイナス増差はない!?
相続でも重要!建物の固定資産税評価額

またまた相続税調査の話で恐縮です。通常、税務調査があれば、何らかの誤りが発見され、追加の税金を納めるのが一般的。逆に税金が減る場合、調査はなかったことに……何とも理不尽な税務署のお話です。


1.相続税における建物の評価額

 相続税においては、財産の評価は”時価”で行うのが原則です。その時価、建物については税務署の社内規定である通達で、固定資産税評価額と言う事になっています。
 さて、平成13年3月に賃貸住宅が竣工、借り主も埋まったところで5月に亡くなられたNさんのケースです。申告の期限は翌14年3月。ところが固定資産税は毎年1月1日の所有者に課税です。つまり、13年の1月には竣工していないため評価はなく、14年になって初めて評価も決まり、課税となるわけなのです。結論を言えば、相続税の申告までに評価額は決まらない。こんな時は、建築価額の70%相当で評価すればいいことに。


2.意外に安い固定資産税の評価額!

 固定資産税の建物評価は、建物の構造や部材等により細かな評点方法が決められており、その総合評点により算出されることになっています。建築価額に比して、鉄筋系で70 ~80%程度、木造系で40~50%程度でしょうか。賃貸の場合はそこから更に3割引の評価です。正に賃貸住宅は相続対策と言われる所以。さて、Nさんの場合、建築価額は約2億円。申告に際しては、これの70%相当、1億4千万円がまずは基準です。ところが14年の5月になって固定資産税の通知が来てみると、なんと申告額との差額が6千万円もあったのです。
 これはヒドイと、申告のやり直し、更正の請求と言う手続きを考えている矢先に相続税の調査の通知が。ま、こんな状態なら、万が一調査の過程で何か誤りがあったとしても、6千万円までは保険に入っているみたいなもの、と安心していたのです。が、甘かった。


3.調査にマイナス増差はない!?

 調査は朝から順調に進み、何事もなく終盤に。申告内容に御納得頂いてお帰りになろうとしていた時です。満を持して言い出しました。『実は建物の固定資産税評価が申告の直後2ケ月経って通知が来たのです。それによると6千万円も差額があったんですよ。更正の請求をしようと思っていたのですが、調査に来るとおっしゃる。それで、ちょうど良い機会だと思い、お待ちしていたのです。これこれの通りですので、この調査で確認して頂き、減額して下さい。』
 調査官『???』。ややもして『更正の請求というのは間違った申告をした場合、一定の期間内に税額の軽減をする救済策です。本件の場合、間違った申告ではなく、建築価額の70%相当と言う適正な評価方法で算出をしているわけで、何というか、つまり、その、…』歯切れが悪い。
 早い話、誤った申告をしたわけではないので減額はできないとおっしゃるのです。
調査官の気持ちが分からぬ程、こちらも野暮ではないつもりです。しかし、通知が5月になったのは、固定資産税の係の都合。こちらに非はないのです。通知が3月なら6千万も安いのに、5月だったのは運が悪かった、では済まない話ではないでしょうか?


4.仕方なく更正の請求で決着!

 こうなれば仕方がない。更正の請求という手続きです。ただ、その中で皮肉たっぷりに書かせて頂きました。本来、調査の過程で分かったのだから、調査額として減額すべきではないのですか、と。
 当方としても、誤りではないと言われると苦しいものはありますが、どう考えても納得のいかない話。正直、行く末を案じてはおりましたが、遂にご託宣が参りました。満額回答です。6千万円減額で税額として3千万円が戻ったのです。
 相続時に固定資産税評価が出ていないケースはよくあるもの。諦めず、交渉をしてご託宣に期待です!

※執筆時点の法令に基づいております