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ATO通信


5140号 相続時精算課税制度と株式贈与

平成16年1月30日 税理士法人 エー・ティー・オー財産相談室

 今までも既に何回か取り上げた相続時精算課税制度。
 大型の非課税枠や一律20%の贈与税率は魅力的ではあるものの、最終的には相続財産として課税です。つまり、必ずしも“節税”に直接結び付くものでないことはご案内のとおりです。
 しかし、とにもかくにも贈与をすれば、いつ起こるか分からない相続時に、かつての贈与時の価格で計算ができるのです。将来に備えて価格が確定できるこの制度の特徴を利用して、こんな事を考えてみました。

1.事業承継としての株価対策と精算課税制度

 相続税と言う限定された範囲において、事業承継とは未上場会社の場合、ズバリ株価を引き下げる事を意味します。オーナー所有の株式が相続財産の大半を占めるため、株価の評価を下げることは、そのまま財産を減少させることになるのです。
 従来の株価対策は、色々な手法で株価の引き下げをし、下がった時点で後継者等に贈与や売却です。それによって財産である株式を移転させるのですが、この際の贈与税や譲渡税がかななりの負担でした。勿論、何もやらずに相続を迎えた場合の相続税より負担が少ないために、これらの対策をするのですが。また、株式の評価を瞬間的には下げても、いつの時点で実際の相続がおきるか分からず、評価引き下げの効果を確実にするためにも、その時点での贈与等が不可欠なのです。株価は生き物です。せっかく下げた株価も、時の経過と共に上がってしまうこともままあることだからです。

2.株式の評価方法

 ではここで、未上場株式の相続税法上の評価方法について簡単に触れておきましょう。原則的な方法として@純資産価額方式とA類似業種比準価額方式の2つがあります。@はプラスの財産からマイナスの財産(借入れ等)を控除して、差引きネットの財産を基に株価を算出する方法。Aは評価対象の会社の1株当たりの利益、配当、純資産を上場会社のそれと比較して計算です。Aにおいては、上記の3要素は均等ではなく、とりわけ利益が重視され比重が高い項目です。これら@ Aの評価方法は任意に選択できる訳ではなく、その会社の売上げや従業員の人数等により自ずと決められてしまいます。
 ここで株価引き下げ策の代表的なものをご紹介しましょう。@においてはプラスを減額しマイナスを増やせばよいのです。例えば10億円の借り入れで建物を建築します。建築資金は10億円でも、株価評価に当たっては、建物をその金額で評価するわけではありません。相続開始より3年経過後は、それより低い固定資産税の評価額が基準です。一方、借入金額はそのものの金額。これで+−の評価差額が生じ、株価は晴れて引き下げに。Aにおいては、操作が比較的容易なのは利益と配当。とにかく利益を圧縮し、配当を低く抑えればよいのです。

3.株価引き下げの効果!

 前述のように瞬間的に株価を低くはできても、所詮、株価が高い会社は利益が生じ、十二分な配当だってできるのです。財務内容も自然と良い方に向かい、結果、株価は再び高騰の悪(?)循環。
 ここで利用すべきが相続時精算課税制度です。例えば株価対策をして、何とか10億円の社長保有の株式評価を1億円にまで下げたとします。この時点で株式を贈与し、1500万円の贈与税を支払います。放っておけば、再び高騰に向かう株価でも、贈与後の株価はお構いなし。何しろ再び反騰し10億円になったとしても、相続時の評価は1億円で良いのです。それがこの制度の最大の特徴なのですから。
 従来はここでの贈与税が5000万円弱。贈与ではなく売却をしようとしても、買う側の子に資金は不足、親も26%(本年より20%予定)の譲渡税だったのです。
 また、一般論としては、Aの類似の方が@の純資産より土地や株式の含み益を反映しない方法である分、評価額が低く有利であることが多いのです。しかし、詳述は致しませんが、相続時点で本来Aの方法が適用できる場合でも、土地や株式を一定以上保有していると、@での評価を強制され、評価額が上がることが懸念されます。が、この制度なら、この点の心配もいりません。あくまで贈与時の1億円の評価です。

4.株価評価、1割引の特例も!

 土地については、一定の条件で50%引き80%引きの特例があります。小規模宅地の評価減の特例と言いますが、これの株式版も用意されています。が、評価減の幅も1割引と迫力不足も甚だしく、小規模に較べないよりはマシと言った程度です。
 相続時精算課税制度、ともすれば節税には全く無縁と考えられがちではありますが、株価対策には一役買うことができる制度なのかも知れません。
さはありながら、儲かる会社→高株価→困難な事業承継の図式は当分変わりそうにありません。
で、当社もお手伝いのチャンスが…。

執筆者:阿藤 芳明

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