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COLUMN

TOPATO通信評価額アップ直前の贈与
~広大地評価で更なる引き下げも~
5164号

ATO通信

5164号

2006年1月31日

阿藤 芳明

評価額アップ直前の贈与
~広大地評価で更なる引き下げも~

 今は価格が安くても、近い将来確実に値上がりが期待できる土地があったとします。その値上がり直前に親から子に贈与したら、低い価額で移転が出来て相続対策に。さらにそれを子が転売したら、儲けは総て子のものに!こんなおいしい話が果たして可能なのでしょうか。落とし穴と適用に当たっての工夫を探ってみました。


1.突然、価値が増大する局面での贈与

 本誌(第5136号)でもこのテーマを取り上げました。次のような一節を御紹介します。
 『ある日降って湧いたように地上げ、隣地買収等の申し出が。何と相当に高額な買い取り価格を提示されたとします。今までは二束三文の土地、高く買って貰えるとは嬉しい限りです。ここで相続対策を兼ねて一計を案じます。売却前に子に贈与したらどうでしょう?今なら土地の評価額も知れたもの。贈与税も大した負担にならずに済み、それを子が売ればお金は子に。が、小心者の私、こんな疑問がフツフツと湧いてきます。高く売却できると分かっていながら直前に贈与。贈与税の価格は直前の低い価額ではなく、高額な買い取り価額と税務署は言うのではないか?第三者が買いたいと言った価額が、正しくその時点での時価になるのではないか?それが善良な市民、見上げた納税者と言うものです。』


2.道路の拡幅で評価が大幅アップ

 似たような話が道路の開通、拡幅なのです。今まで道路のなかった場所に道路が開通、あるいは拡幅によって状況が一変した場合です。土地の評価額は大幅にアップすることが見込まれるのです。
 結論から先に申し上げれば、この激変の直前に贈与しても、あくまでその時点での相続税評価額で問題ないでしょう。たとえ売却すれば高価格が見込まれる場合でも、それは実際に売却して初めてその価格が実現するもの。贈与税の評価額は相続税と同様で、評価の安全性の観点から価格に余裕を見ています。従って、通常は実際の売買価格より低めの設定にはなっているのです。いずれにせよ、売買時の取引価額での贈与税の課税はありません。但し、当初から贈与前に買い取りが保証されていたり、贈与時に契約が進行中であったりすれば、それはやはり無理があるでしょう。買い取られる金額で贈与があったと言われても反論は出来ません。


3.広大地評価で更なる引き下げも…

 さて、相続や贈与の評価で有利になるものの代表格は、何と言っても広大地でしょう。前述の贈与に際し、広大地評価の適用があれば、それこそ贈与後1~2年して売却した場合との差額は相当なもの。但し、この評価の適用できる場所は限定されてしまいます。容積率が300%以上の場所では原則として適用がないからです。 東京の場合で言えば、場所にもよりますが、概ね環状8号線の内側では難しいのではないでしょうか。都心では地価が高いこともあり、土地の高度利用が推進されている場所が多いからです。


4.容積率も一つではない!

 ここまでお読み戴いて、『ナンダ、結局、基本的に都内では広大地を適用するのは難しいんだ。』と諦めてしまうのは、あまりにも早計です。
 確かに都市計画法、建築基準法等という法律で、それぞれの場所に応じて建築できる建物の種類や規模は定められています。前述の容積率も図面を見れば地域ごとに原則的な容積率が色分けで明示されてもいます。
 この容積率を指定容積率と言いますが、実際に建物を建てる場合には、この容積率の基準だけをクリアーすればいい訳ではありません。門外漢の筆者が詳述はできませんが、基準容積率と言われる容積率が建築基準法に規定されています。前面道路の幅員や建物の高さ制限、日影規制等々建築基準法における他の規定や条例等によっても様々な制約を受けることになるのです。
 つまり、広大地評価の適用の有無に当たっては、表面的な容積率だけで判断せず、実際に建築図面に落とし込み、現実の容積率で判断する事が必要になるのです。指定容積率が300%以上だからと言って直ぐに諦める必要はありません。ただ、これらの作業や判断は税務上の問題ではあっても、税理士だけに任せるわけにはいきません。様々な分野のプロと連携できる事務所でなくては問題は解決しないのです。それではどこの事務所がいいのでしょう?筆者でさえ、謙虚さも恥じらいも持ち合わせています。そこまでは言わせないで下さい。

※執筆時点の法令に基づいております