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ATO通信

 
5166号 変わる”とりあえず物納”戦略

平成18年3月31日 税理士法人 エー・ティー・オー財産相談室
 本年の税制改正で大きく変わる項目の一つに、物納制度があります。物納は申請から許可・却下までかなりの時間がかかるため、納税の時間稼ぎに利用することができました。当社では”とりあえず物納”と呼び、真意はともかくとして、物納の申請手続きだけはお勧めしてきました。今回の改正で、その戦略が大きく変わることに!

1.従来の物納制度の簡便性

 従来の物納は、とにかく時間がかかるものでした。申請から結果が出るまで相当早いもので1年程度。5〜10年要するものも珍しくはなかったのです。それを大幅にスピードアップしようと言うのが今回の改正で、それは結構なことなのですが、一つ落とし穴が。
 従来、物納申請に際して、その期限までに必要な書類は最低限のものとして、『物納申請書』だけでした。勿論、その後に様々な書類を整備する必要はあるのですが、とりあえずは物納申請書があれば、不足分は後日ゆっくり。だからとりあえず申請だけをしておいて、後で本当に物納を進めるかどうかを考えれば良かったのです。今後は例えば土地を物納する場合、申請時に実測に基づく境界確認書等が必要です。底地であれば借地人との借地境も確定しておく必要があるでしょう。これらの準備にはある程度の時間が必要で、直ぐにできるものではありません。ただ、事前の準備が原則ではありますが、例外的に最長1年の期間延長が可能です。但し、できなければ物納申請を取り下げたことにされてしまいます。

2.税務署の処理も迅速化

 納税をする側に事前の準備を要求する一方で、税務署も処理を迅速に進めなければなりません。先ずは、物納財産としてその適否の基準を明確化し、不適格なものについては直ちに却下。その見返りに、20日以内に一度に限って物納の再申請を認めるようです。そして一応は不適格とならなかった財産についても、3ケ月以内に許可・却下の結論を下すことに。例外規定もありますが、それでも最長9ケ月以内に回答をし、この回答がない場合は物納を許可したものとみなすとのこと。つまり、どんなに長くても9ケ月で物納申請の結論は出る訳で、当局も迅速化は本気でやるようです。

3.延納から物納への切り替えも可能!

 さて、従来は物納を却下されてしまうと、それまでの間は原則14.6%の延滞税の対象です。そのため、却下されそうな場合には、事前に物納を取り下げて延納に切り替え、2%前後の利子税になる準備をしていたのです。それが今後は却下された場合、それから20日以内なら延納の申請ができ、事前の準備は不用になりました。更に、当初は物納ではなく、延納としていた場合であっても、申告期限から10年以内なら物納に変更することも可能です。従来は当初に延納を選択した場合、物納への変更はできなかったのです。 
 また、物納を選択した場合、今までは許可までに何年かかっても金利の負担はなかったのですが、これからは当局の審査事務の期間を除き、延納同様の金利が必要になります。

4.これからの物納・延納戦略は?

 ここまで物納制度が変わってくると、当然ですが従来の”とりあえず物納”などとのんびりしたことは言っていられません。物納をするのであれば、最低限、測量や境界確認の準備は必須です。測量費用はバカになりませんが、貸地であれば不動産所得の経費にもなるため、とにかく場所を含め明確な事前の意思決定が必要です。
 一方でそれらが準備できなかった場合、”とりあえず延納”の戦略が有効でしょう。従来は延納から物納への切り替えは不可能でした。それが今後は可能なのです。物納は事前準備が大変なため、それができなかった場合には、先ずは延納で時間を稼ぎ、ゆっくり物納の要件を満たす準備をしたところで物納への切り替えです。
 延納は最長20年の分割払いというものの、元本均等払いです。元利均等とは異なり、返済の開始当初はその負担は非常に重いのです。ですから延納で1〜2年は支払いができても、これを何年も続けることは困難で、物納への変更の理由として説得力のあることが多いのです。
 上記の改正は本年4月1日以降の相続について適用される予定です。亡くなる日を決めるのはあなたではなく神様です。あなたにできること、それは今日からの事前準備だけなのです。

執筆者:阿藤 芳明

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