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ATO通信

 
5184号 個人と法人、こんなに違う減価償却!

平成19年9月28日 税理士法人 エー・ティー・オー財産相談室
 税務の世界では、同じ事柄でもその扱いに個人と法人で意外に大きな差のあることがあります。『減価償却』もその一つで、ひと頃盛んに報道されていたのが、100%まで償却できるようになったこと。しかし、決してそれだけが減価償却の話題ではない、というのが今回のテーマです。

1.そもそも減価償却とは

   減価償却とは、建物や機械等一定額以上で長期の使用に耐える物について行われる、経費処理の手続きです。これらの物は寿命も長く、その効果、効用が長期に及ぶため、対価を支払った時点で一時に経費にせず、耐用年数に亘って経費化していこうとするものなのです。費用と収益を適正に対応させようとする会計の考え方の現れですが、税務の世界でも若干の差はあるもののそれが反映されています。

2.償却は強制か任意か

 個人の確定申告を考えてみましょう。アパートやマンションを新築した場合、何の疑問も持たずに減価償却をするはずです。ただ、多額の建築資金が掛かったにも関わらず、経費になる金額はこれだけか、とお客様にはしばしばお叱りを受ける項目でもあります。償却費の多寡にご不満があるかどうかは別として、個人の場合、減価償却は強制され、計算しなければならない事になっています。
  一方、法人の取り扱いは個人とはその趣を異にします。償却はしてもしなくてもいいのです。そんなバカな、どうして経費になる減価償却をしない会社があるのだ、と疑問に思う方もいるかも知れません。それについては後述することにして、とにもかくにも法人の場合は償却はしても良し、しなくても良しの世界なのです。

3.法人の減価償却

 上記のとおり法人の場合、償却は任意となっていますが、そうは言っても自ずと計算には制約があります。毎期償却できる金額には限度額がありますし、償却可能額を超えてまで償却をできる訳ではありません。償却しなければ、未償却残高として残ったままとなり、除却や売却したときにその残額が経費になっていく仕組みです。
  さて、話は戻りますが、減価償却費を計上しないのはどういう会社なのでしょうか。最も多いのが赤字の会社です。特に銀行からの借り入れがあり、赤字にしたくなかったり、またはできる限り赤字の金額を少なくしたい場合です。減価償却費という経費を計上しないわけですから、その分利益が多く算出されることに。また、たとえその期は黒字でも、欠損金が既に十分ある場合も償却をしない事が多いようです。欠損金を増やしても最長7年までしか繰り越しができず、使い切れなければ切り捨てられてしまうためです。

4.もし、個人が償却を忘れたら…

 先程、個人の場合は償却が強制されると言いました。そうは言ってもうっかり忘れることだってあり得ること。実は税理士が関与していたにも関わらず、長年に亘り一部の資産の償却費の計上を失念していた例がありました。ご相談を賜り詳細を確認してビックリ、総額では何と1億円を超える金額の経費が計上されていなかったのです。こんな時、所得税の申告期限から1年以内なら、更正の請求という手続きで税金の取り戻しは可能です。しかし、それより古い年分については、嘆願書といって超法規的手続きでお願いをすることに。但し、この場合でも5年前までしか遡及はできません。さて、上記の例で更正の請求と嘆願書を提出したのですが、当初、勝算は十分あると思っていました。何しろ本来強制的に経費にできるものを忘れただけですから。しかし、嘆願に対しては税務署の態度は意外にも厳しい対応です。素人なら情状酌量の余地があっても、税理士の関与がある事を指摘されているからです。冷たい仕打ちにあいながら、目下悪戦苦闘の交渉が続いています。

5.マイホームを作るなら法人名義で!

 ここで上記を踏まえての応用問題です。息子の家を建ててあげることにしました。息子に十分な建築資金はなく、借り入れは不可能な状況です。こんな場合、@親の名義で建てるA親が子に貸し付けた上で子の名義で建てるB法人を設立し法人名義にする、と仮にこんな選択肢があれば、どんな選択をなさるでしょうか。税理士としてお勧めは何と言ってもBです。例えば不動産賃貸業を営む法人を設立し、子を役員に仕立てます。その上で子の住まいを法人で建築し、役員社宅とするのです。勿論、最低限の家賃は子から徴収しますが、税務上は市価に較べ格安の家賃でOKなのです。法人名義にする最大の理由は減価償却です。@、Aの方法では建物の建築費は1円たりとも費用にはできません。が、役員社宅なら法人の資産、当然建物については減価償却の対象です。でも、法人では住宅ローン控除の適用を受けられないって? ケチなことを言ってはいけません。ローン控除は最高でも百万円単位。減価償却を適用すれば、千万円、場合によっては億円単位の話で節税が可能なのです。何だか変ですが、これが実務です。  

執筆者:阿藤 芳明

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