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ATO通信 5332号

新聞を鵜呑みにしてはいけない!

    (2020年1月31日更新)   執筆者:阿藤 芳明

  新聞を鵜呑みにしてはいけない!  日本経済新聞(以下、日経と言う)をご購読のお客様も多いと思います。かく言う筆者も長年の読者です。学校を卒業し社会に出た時に、ある先輩から"日経を読まずんば、社会人に非ず"とまで言われ、以来ずっと愛読。一般的にはそれ程権威ある新聞ではあります。しかし、こと税務に限っては理解が誤っていると言うか、知識不足が感じられます。日経に対する抗議の意味を含め、以下ご一緒に検証していきましょう。
 

 
   

1.問題の記事は令和元年11月19日付朝刊

 標記の朝刊に"「路線価」否定判決に波紋~相続財産の算定評価基準~"と言う見出しの記事が掲載されたのです。この記事は、納税者の方が相続税の申告に当たり、国税庁が発表した路線価を用いてマンションの土地部分の評価をした事案です。
 相続税において、マンションの評価額は土地の部分と建物を分けて評価し、それぞれの評価額を足したものになります。
 この納税者の方もルールに則って、土地を路線価で評価したそうです。件の記事によると、国税当局はその路線価による評価は認めず、否認したとなっているのです。筆者は見出し自体を疑問に思い、記事を精査してみました。そして、書き方以前に、税法における通達の役割、立ち位置について全く理解がなされていないことに気づいたのです。税法の理論ではなく、常識論で考えれば誰でもすぐに分かるはずの話。そもそも、国税当局が自分で定めた通達を自ら否定するなんてことがある訳がありません。


2.通達とはどんなものなのか

 そもそも"通達"とは法律上どんな位置づけのものなのでしょうか。税法も法律ですからもちろん国会の審議を経て多数決により成立します。また、法律と言うからには日本国民として、当然全員が遵守すべきものになります。ただ、税法の場合、現実には実務においては様々なケースが想定されます。そのため、考え方の骨格となる法律だけを定めても、それで色々な具体的事象に対して対応ができる訳ではありません。法律を実際に運用、解釈していくにあたっては、より実務的かつ詳細な施行令、施行規則等を政省令として定めて、実際の運用指針としていく必要があるのです。
 しかし、それでもなお解釈に選択の幅ができ判断に迷うこともあるでしょう。そんな場合は一種の割切りが必要になってきます。それがこの通達と言われるもので、もともとの法律の趣旨を税務当局なりの解釈をして、文章にしたものとご理解ください。つまり、当局の解釈指針であるため、税務職員は当然のことながらこれに拘束されます。
 しかし、我々一般の国民は法律に抵触さえしなければよいのです。通達に拘束されることはありません。とは言うものの、通達で明言していることは当局の考え方なので、我々もこれに添って税務を行っていれば文句を言われることはありません。従って、税理士も実務上、通常はこの通達に則って事を進めていくことがほとんどなのです。


3.路線価は当局の通達の一つ

 上記で通達の位置づけはご理解頂けたことと思います。実は世間で路線価と言われている道路ごと、路線ごとに付されている値段ですが、これも通達の一種なのです。相続税法では土地は"時価"で評価しろとなっています。
 ただ、土地の時価と言われても、何が時価なのか即座にはこたえられません。路線価は確かに時価の一つではありますが、公示価格はもちろんの事、固定資産税評価額、基準価格、そして不動産鑑定士による鑑定評価額も時価の一つでしょう。つまり、一言に時価と言っても唯一絶対の時価なるものは存在しないのです。
 話を路線価に戻しますが、当局は相続税においては、売却時の時価を公示価格と想定し、その8割相当額を路線価としています。そして、この路線価で評価したものが土地の時価だと言い切っており、これこそが国税当局の割切りなのです。


4.路線価を悪用すると否認される!

 実は今回の事案は、多額の借入金により不動産を取得することで相続税の負担を免れることを認識していたのです。借入額そのもので負の財産額を計算する一方、マンションについては通達に従って計算をしたものです。路線価が公示価格の8割と言っても、場所によっては相当程度の乖離がある場合も多く、今回は相続時の2~3年前に13億円強で購入した物件が、路線価はその約1/4であることを、いわば悪用したと判断されたものなのです。一般の方は当局が公表している路線価と言う通達で評価したものが、当局によって否認されることを理解しがたいと思われるでしょう。何故こんな事が起こるかと言うと、当局は路線価は絶対ではないと自ら言っているのです。路線価が不適切なこともあり、その時は国税庁長官の指示で評価を見直すことができる、としているのです(財産評価基本通達の総則6項)。土地の評価はことほど左様に難しいため、通達も絶対とは言えず、悪用は許されないと言う典型例なのです。
 
 
     
 

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