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TOPATO通信配偶者控除は入籍主義! 5342号

ATO通信

5342号

2020年11月30日

阿藤 芳明

配偶者控除は入籍主義!

 昨今は男女が結ばれる場合、必ずしも入籍に拘らないカップルも多いようです。名より実を取ると言う事なのでしょうか。
 入籍の是非はともかくとして、我が国の税法は原則的に入籍を重視。事実婚には厳しく、所得税においても”配偶者控除”の適用がありません。今後の動向は分かりませんが、”戸籍”にそれほどこだわる必要もないような気もしますが…。


1.問題は所得税だけではない!

 我が国においては、事実婚は様々な面において不利な扱いを受けています。夫婦別性が認められていないため、事実婚のままだと、例えば(1)親世代がいつまでも正式な夫婦と認めてくれない(2)延命治療などパートナーに対する重要な意思決定ができない可能性がある(3)不妊治療の助成が受けられない場合がある等々の弊害が生じています。
 それを逆手に取ると、未入籍ならいつでも簡単に実質的な婚姻関係を解消できる、と言う浮気性の男性にはメリットになるのでしょうか。


2.配偶者控除とは

 所得税における配偶者控除とは、15ある所得控除の一つで、ざっくりとした言い方をお許し頂ければ次の通りです。同一生計の配偶者で、所得金額が48万円(令和元年12月31日以前は38万円)以下の場合、課税の対象となる人の所得金額が1,000万円以下なら所得金額に応じ、13万円から48万円の範囲で課税所得金額から控除される制度です。所得税の計算は、分離課税される特別のものを除き、給与所得や事業所得、不動産所得等々を先ずは合計するのです。その合計額から上記の配偶者控除や扶養控除等の控除項目を差し引いて、実際に課税される金額を算定します。その上で税率を乗じて計算すると言うのが税額計算の仕組みです。


3.入籍が絶対条件

 所得控除があればそれだけ税負担が減る訳で、有り難い話なのです。一般論で言えば所得税と住民税の合計の税率が50%の人に、48万円の控除があればそれだけで実際の税額が、所得税と住民税を合わせで約24万円減少する訳です。
 但し、配偶者控除もその所得控除の一つではあるのですが、控除される金額は課税される人の所得の金額に応じてそれぞれ次のようになっていて、高所得者になると、適用が受けられなくなってしまいます。
 (1) 合計所得金額が900万円以下の場合、38万円
   (配偶者の年齢が70歳以上の場合は48万円)
 (2) 合計所得金額が900万円超950万円以下の場合、26万円(同、32万円)
 (3) 合計所得金額が950万円超1,000万円以下の場合、13万円(同、16万円)
 これだけの控除があるかないかは大きな違いが生じてきます。そして、この適用になるかどうかの判断は、配偶者として入籍しているか否か、その一点なのです。冒頭に述べたように、事実婚は一切認められません。


4.扶養控除と比較してみると…

 配偶者控除と似たような控除項目に、扶養控除と言うものがあります。これは、16歳以上の扶養親族がいる場合、その年齢や同居の有無等に応じて、次のように38万円から63万円までの金額が控除されると言うものです。
 (1) 一般の控除対象となる扶養親族(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満) 38万円
 (2) 特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
 (3) 老人扶養親族(70歳以上)
    同居の老親等 58万円
    それ以外   48万円
 ここで、年齢によって一般とか特定とかの修飾語が付されていますが、いずれもその人の所得が48万円以下であることが条件です。また、注意すべきは、16歳未満の扶養親族がいても、残念ながら扶養控除の対象にはならない事です。
 税法と言うのは、優れて政策的な法律です。配偶者や扶養親族がいる場合、それに対して税負担を軽減することが、理論的に正しいとか正しくないとかの判断はしないのです。これこれの状態なら税負担を増減させようと、一律に判断して課税をしようとする法律なのです。


5.”同棲”の状況をどう見るのか?

 税法は同棲と言う行為が社会的、人道的な立場から正しいとか、正しくないとかの判断は一切しません。またそこに夫婦愛と言う崇高な絆の存在も問わないのです。ただただ、外見から判断できる条件だけで適否を決める法律だからです。
 筆者は古い世代の人間なので、同棲と言う状況は正直、好ましいものとは思っていません。従って、自分の子供が入籍をしないまま事実婚を継続していたら、多分、許さないだろうと思っています。でも、考え方は色々で、賃貸マンションを営んでおられる方のお子さんが同棲を始めるにあたり、空き室への入居を勧めた方もいらっしゃる程です。若い方は収入も少ないため、これも子への援助の一法ではあります。税法は難しい法律ではありますが、筆者ももう少し頭を柔軟にし、子を援助すべきかも知れません。

※執筆時点の法令に基づいております