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ATO通信


5217号 相続まで待つか、贈与で勝負か!

平成22年6月30日 税理士法人 エー・ティー・オー財産相談室
 相続でも贈与でも、税額算定の前に先ず行うことはその財産の評価です。実務上、評価は基本的には財産評価基本通達という税務署のマニュアルに則って行うのが通例となっています。が、この評価をめぐっては、納税する側と税務署側とで見解の分かれることも。税務署は課税に対する権力を持ってはいても、評価で争う事は極力避けたいと思っているもの。何しろ評価に“絶対”はないからです。これを上手く利用して、こんな事も…

1.贈与税は相続税の補完税

 生前に多額の贈与が行われると、相続時には財産がなくなり相続税が課税できなくなってしまいます。それを防ぐため、一般的には贈与税は相続税より負担が重いものになっています。贈与税は相続税の補完税と言われる所以です。しかし、この制度の例外として、近年盛んに活用されているのが『相続時精算課税制度』による贈与です。

2.もう一度『精算課税』を復習しよう

 精算課税についてはこの稿でも何回か取り上げてはいますが、ここで簡単に復習です。生涯で2,500万円まで贈与税が非課税で、これを超えると一律20%の課税。贈与ですから登記等の名義も変えられ財産自体も移転されますが、相続時には再び相続財産として計算に取り込まれ、相続税の課税が。但し事前に納めた精算課税の贈与税があれば、相続税から控除されるというもの。最大の特徴は、相続税の計算においてその財産の評価は相続時ではなく、かつての贈与の時の評価額で行うという点です。実はこれからするお話は、この点を利用しての活用法なのです。


3.評価は適正な時価で行うもの

 冒頭でもお話したとおり、財産の評価は税務署が用意した通達で行う事が一般的ではあります。
 しかし、本来は税法そのものに規定されている考え方、つまり“時価”で行うべきもの。そうは言っても時価の算定が困難な場合が多いため、土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基に計算するのがこの通達の考え方です。では、通達と税法とどちらが優先するのでしょうか。言うまでもなく法律である税法です。通達はあくまで税法を執行するための指針、マニュアルに過ぎません。従って財産の評価は通達に従わずとも、適正な時価を反映していれば認められるのです。代表的なのが不動産鑑定士による土地・建物の評価や鑑定人による美術品の評価・鑑定です。
 なお、通達と一言で言っても実際の財産評価は複雑です。原則の外に様々な特例も用意されているため、それらを駆使して有利な評価額を導き出すのがプロの仕事です。

4.評価についての税務署の検証

 ここで話はちょっとそれますが、相続税の調査において評価の検証はどの程度行われているのでしょう。驚くなかれ、相当にいい加減なものなのです。我々税理士は例えば土地を評価する場合、それこそ細心の注意で間口、奥行き、道路付けの状況、計画道路の予定までを斟酌して算出します。
 しかし、20年以上の税理士経験の中で、ただの一度も評価について、税務署から何らかの指摘をされた事がありません。何よりの証拠に、調査時にこちらから評価の点を質問した際、そんな細部まで見ていませんでした、との回答に驚愕した事も。しかし、そんな税務署の姿勢にも例外があります。土地で言えば、鑑定評価と広大地評価を適用した場合です。相続税の申告で本来正当な評価方法である鑑定や広大地評価については、先ずは疑ってかかり、入念な審理が行われます。

       

5.“増差主義”のなせるワザ

 何故こんな事が起こるのでしょう。相続税調査については年間の件数的なノルマがあります。調査官はこの件数をこなすのですが、彼らも子供の使いではありません。調査に来たからにはそれなりの実績、つまり申告額との相違を示すお手柄としての増減差額(“増差”と言う)が必要なのです。そこで登場するのが鑑定評価と広大地評価。数学の方程式ではないため、財産の評価方法に絶対はありません。鑑定による評価額はそれを鑑定する不動産鑑定士の数だけ存在すると言っても言い過ぎではないでしょう。つまり、“ケチ”をつけ易いのです。広大地評価も同様で、この適用の有無については明確な指針がないため、実務では判断に迷う税理士泣かせの評価方法なのです。鑑定や広大地を否認すれば、直ぐにそれが多額な増差に結び付く、それが税務職員の狙いなのです。

6.贈与税の場合には

 贈与税については相続税調査のように件数的なノルマがありません。従って上記の相続税の時と様相を異にします。評価で争う事は曖昧な点が多いもの、税務職員だって敢えてそれを問題にしてもめる事はしたくないのです。相続も贈与も評価の考え方は同じ。相続では厳しい目が、贈与では比較的優しいのです。となれば、相続時精算課税の活用で鑑定や広大地評価を適用して贈与し、評価額にケリを付け、確定させて安心して相続を迎えるのも一つの考え方ではないでしょうか。

執筆者:阿藤 芳明

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