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ATO通信


5222号 終(つい)の住み処(すみか)で相続税はこんなに変わる!

平成22年11月30日 税理士法人 エー・ティー・オー財産相談室
 住めば都と言いますが、誰しも住み慣れた家、勝手知ったる町で最期を送りたいものです。ただ、現実には我が家ではなく病院で亡くなる方が大半。それもある程度は仕方ないとして、病気以前に介護が必要な事も。建前やきれい事は別にして、家族だけで介護問題の総てを解決する事は困難です。ところが介護施設で最期を迎えると、相続税にこんな影響がある場合も…

1.小規模宅地の評価減の特例とは

 相続税の計算をする場合の大きな特例の一つに、一般に小規模宅地の評価減の特例と言われるものがあります。亡くなられた方のご所有の土地で、ご自身のお住まいや事業のために活用なさっていたものについて、最大で80%引きの評価をしようというものです。面積や適用に一定の条件はありますが、何と言っても80%引き。原則評価で1億円が実に2,000万円になってしまう優れもの。この特例をどのように活用し適用するかで相続税の税負担は大きく変わってしまう特例なのです。

2.今年、大きな改正も為されたが…

 さて、この特例、実は本年4月以降の相続について大きな改正がなされています。一般に大きな影響のあるものだけを示せば、@一棟の建物の内、一部でも被相続人の居住用に使用されていれば、その建物の敷地全体が最大240uまでは上記特例の80%引きの適用ありとされていたものの改正です。これが賃貸マンションを建築し、最上階がオーナー住居なる建物が相続税対策としてもてはやされた所以です。改正後は例えば居住用が建物全体の1/3なら、敷地の1/3だけが80%引きの恩恵に。残り2/3は原則評価になりました(この特例と無縁の貸家建付地と言う評価減は適用あり)。Aまた、とにかく被相続人の居住用建物の敷地なら、一定の要件を満たさなくても、少なくとも200uまでは50%引きの評価になっていました。それがこの50%引きの評価減は総て廃止に。B更に従前はその敷地を複数で相続した場合、要件を満たす人が一人でもいれば敷地全体が80%引きの対象になっていました。改正後は80%引きの要件を満たす人の部分だけが対象とされ、大幅な評価額アップ、増税に。


3.そもそも“居住用宅地”とは

 被相続人の居住用宅地とは、文字通り生活の基盤となるお住まいを言います。従って原則的には2ケ所以上にお住まいの場合、主としてお住まいになっていた本拠地を指すことになります。従って、仮に単身赴任で物理的には家族と別れて暮らしていても、家族がお住まいでお帰りを待っている場所が居住用特例の場所ということになります。
また、実際に何年もの間入院をされ、亡くなられた場所が病院でも、あくまでも最期の看取りを行ったのが病院と言うに過ぎません。病気さえ治ればご家族の待つご自宅と言う帰る場所があれば、ご自宅が間違いなく居住用の敷地です。

4.問題は介護施設への片道切符

 問題は冒頭の介護施設です。一口に介護施設と言っても様々で、公的な比較的低額で利用できる施設から、まるで高級ホテルと見紛うものまで。 この介護施設が仮に一時滞在的なもので、リハビリ等をしてある程度回復すれば、またご自宅に戻れるものであれば何の問題も有りません。
 しかし、入居に際し何千万円も必要で大半が返却されず、その他に毎月高額な生活費と言うか介護費用がかかる施設は気になります。と言うのは、いわば入居に際し権利金的な支払いをするというのは、金額の多寡ではなく半永久的な利用が前提となるのではないかと言う疑念があるためです。
 つまり、介護施設とは言うものの、決して一時的な利用ではなく、ひとたび入居した暁には二度とご自宅には戻らない覚悟での入居が想定されるのです。だとすれば、最早この施設こそが居住用の本拠地であり、従前のお住まいは居住用の敷地ではなくなると言う事なのです。つまり、小規模宅地の特例の対象となるものではないため、80%引きの評価の特例は適用できず、原則的な評価のままで計算せざるを得ない事になる訳です。

5.居住用土地は誰が相続すべきか

 それでは、今後居住用宅地は誰が相続すべきなのでしょう。配偶者以外に同居の親族が居るのであれば、考える余地はありません。その同居の親族の方が相続し、将来の二時相続時に80%引きの恩恵を受けるべきでしょう。その時点では、被相続人の居住用宅地と言えるものがないのですから次に備えるしか方法がありません。もっとも、残された配偶者だってその後問題の介護施設に入居する可能性はありますが…。問題は同居の親族がいない場合です。居住用の土地以外に貸付け用の土地があり、200uまでは50%引きの評価減ができるなら、居住用でなくその貸付け用の土地で特例を適用すべきでしょう。80%引きよりは割引率は悪いものの、u当たり単価によっては遜色はないかもしれません。いずれにせよ、この特例の存在は改正も相俟って、今後の財産分けに大きな影響を及ぼすものである事だけは間違いありません。        

執筆者:阿藤 芳明

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