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ATO通信


5228号 所有型法人の注意点と設立後の対策

平成23年5月31日 税理士法人 エー・ティー・オー財産相談室
 今年度の税制改正で、法人税の実効税率が5%引き下げられました。法人活用が今まで以上に重要になってきた状況下、この項でも何度かお話した個人の不動産所得の法人化についても、今一度活用法について振り返ってみましょう。いわゆる所有型法人の設立により、個人所得を分散し、生前に次代に所得や財産を移転させる方策の事です。所得税・法人税・相続税対策としては相当に効果的なものではありますが、いくつかの注意点と、法人化した後の対策に更なる工夫を!

1.法人への移転は帳簿価格での売却ですが…

 既存の個人所有の賃貸物件を法人へ移行する場合、減価償却費の控除後の残高、つまり帳簿価格で売却するのが基本です。原則として、この価格での売却なら課税の対象となる売却益が出ませんし、時価としても問題がないからです。しかし、従来お父さんが個人でお持ちの賃貸建物と言う財産、売却後は現金ないしは未収金と言う金銭債権に形が変わってしまいます。建物であれば相続税の評価は固定資産税評価額の7割相当、建築価格に比してかなり減額された金額です。それが帳簿価格での売買で金銭債権になると、どんな問題が起こるのでしょうか?

2.固定資産税評価額と帳簿価格を比較して

 固定資産税評価額の方が帳簿価格より低ければ、一見すると個人が建物の状態で財産を保有する方がお得に感じます。ただ長期的に見た場合、法人への売却後は賃料がお父さんではなく法人に入り、役員報酬としてご家族に分散する事が可能です。
 つまり、帳簿価格が固定資産税評価額より高くても、賃料によるお父さんの財産の蓄積ができなくなる効果を考えて下さい。何処かの時点で相続税負担は逆転するのです。但し、相続までの時間に余裕がない場合、明らかに法人への移行は得策とはいえません。

3.借り入れ残額との比較も!

 借り入れ残額との比較も注意が必要です。帳簿価格8,000万円の状態で借り入れ残が1億円の場合、法人への売却価格は8,000万円です。なお2,000万円の借り入れがお父さんには残ってしまいます。仮に法人が1億円をそのまま引き継いでも、お父さんへ渡せる金額は8,000万円。今度はお父さんは銀行ではなく法人に2,000万円の借金を作ってしまう事に。しかもその借金の金利は何の経費にもなりません。つまり、帳簿価格以上の借り入れがある場合、上記のケースで2,000万円を一括返済ができればいいのですが、そうでなければ法人への移行は難しいと言う事なのです。

4.売却代金も相続財産です!

 さて、無事に法人へ賃貸建物を売却できたとしましょう。これで安心してしまってはいけません。お父さんに借り入れがなければ、買う側の法人は銀行から借金をせず、建物代金のお父さんへの支払いは分割払い。法人には賃料収入もあるのでそれはいいのですが、お父さんとしては分割払いの売却代金全額が金銭債権として相続財産を構成します。で、これを何とかしなければなりません。更なる工夫が必要なのです。

5.こまめに複数人に債権贈与

 先ずはこの金銭債権を複数の相続人やお嫁さん、お孫さんへ贈与しましょう。ただ、贈与とは言っても現金は動きませんのでお父さんに痛みはありません。法人から返って来る筈のお金が自分ではなく、相続人や嫁、孫に行くだけの話です。例えば一人210万円を贈与すると基礎控除110万円を引いて10万円の贈与税です。毎年5人に贈与すると50万円の税負担で1,000万円以上が贈与でき、5年で5,250万円の相続財産が減る計算です。千里の道も一歩から、しかも今年度の税制改正で相続税率は上がったものの、贈与の税率(受贈者の年齢が20才以上の場合)は父母や祖父母からの贈与については課税価格4,500万円以下であれば減税です。何の対策もしない場合の相続税の税率と贈与税の税率との比較です。決して難しくはない算数。しかも法人に余裕がなければ直ぐに返済の必要はありません。法人はあくまで余裕の出来た時に返せばよいのです。

6.法人に赤字があれば債権放棄と言う手も

 例えば修繕費が多額にかかった、又は予想外の臨時的な経費の支出で赤字ができた時もチャンスです。こんな時はお父さんへの返済額を一部免除して貰いましょう。これもお父さんに新たな支出を強いる訳ではなく、返済がされないだけですので痛みは少ない筈。一方、法人は本来返済すべき借金を一部免除してもらうと、債務免除益と言ってトクをした分が課税の対象になってしまいます。が、これを先程の赤字と相殺すれば、実際の法人税の課税もなく、めでたしめでたしで済むのです。

7.役員報酬は1,500万円以下?

 法人化でお父さんへの不動産所得が法人へ移行し、相続人がそれを役員報酬で分散して稼得。とここまではいいのですが、忘れてはならないのが役員報酬に係る今年の改正。役員給与が1,500万円を越えると急激な所得税の負担増。お役人はこの金額以上の給料取りが恨めしかったようです。
   

執筆者:阿藤 芳明

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