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  2019年8月
   

名古屋の嫁入り

     

 
   今から、約四十年前のこと。この稿の筆者は、ある中堅の飲料メーカーに就職して、名古屋支店に配属された。支店は、市内中心部の栄、独身寮は栄からバスで15分くらい行った鶴舞公園の近くにあった。ある日のこと、独身寮の近くの住宅地を、子供たちが「お嫁さんだ」と叫びながら駆けていく。すると、箪笥などの嫁入り道具を2トントラックに積んで、紅白の帯を掛けたものが、後ろにトヨタの新車を従えてやってくる。花嫁御寮のご実家の前に止まると、そこで花嫁の父に当たるらしい人が、集まった近所の人々や子供たちに簡単な挨拶と道具の披露。そして、2トン車が新郎新婦の新居に向けてスタートすると、子供たちのお目当て、吉例の餅撒きが行われ、子供たちは三々五々菓子袋などを拾って帰るのである。
 
 この道具の披露と道具の移動というものが、当時の名古屋の風俗に於いては、きわめて特徴的であった。新婦の家が金持ちであったら、結納に併せてホテルの部屋を借り、親戚一同に道具の披露をするし、新婦の家が貧乏で、近所にお披露目をするのに十分の道具を調えられなければ、金持ちの家の道具を借りて、「見せ道具」ということを行った。何故新居に運んだはずの道具を、実家が貸すことができるかというと、すでに名古屋でも核家族化は進んでいて、新郎新婦の新居なるものは、社宅、あるいはマンションやアパートであり、要するに金持ちがホテルで披露した道具を全部収納することは不可能だったからである。入りきれない道具は、実家にそっと戻され、それを第三者に貸す商売をする家もあったというのが真相である。

 当時(昭和50年代)、名古屋地方では、「在所」と呼ばれる嫁側の実家が、生まれてきた孫の七五三までの諸掛かりを負担するという習慣があった。婿側はと言えば、せっせと在所に足を運び、在所の両親が「我が家はこんな立派な婿殿に娘を嫁がせている」と近所に自慢できるようにしなければならない。だから、名古屋大学を出て、東海銀行、中部電力、中日新聞など地元の有力企業に就職している婿殿は価値が高く、いくら有名企業でも日本銀行とかNHKとかは好まれない。何故なら転勤が多く、在所の側が婿殿を自慢する機会を逸失する可能性が高いからである。

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 名古屋においては、道具の披露も、婿の自慢も、いずれも「在所の近所に対する見栄」によって成り立っている。日頃は、家計をうんと引き締めても、それは近所への見栄を果たすための資金づくりなのであって、いざ嫁入りともなれば、周囲に道具を見せ、披露宴の引き出物も「しーっかりと大きいものでにゃあとよう」という客人のニーズを満たすものを用意しなければならない。

 この稿の筆者は、引き出物が出ない披露宴があり、招待された客が怪訝に思いつつ帰宅すると組布団が届いていたという話を知っている。また、名古屋人の仲人と、東京者の新郎新婦という組み合わせで、新居に家具を適当に調達して運び込んだところ、「仲人の立ち会いもなく、勝手に道具を搬入したので、仲人の顔をつぶされた」と怒られ、仲人を降りる、降りないという騒ぎになって、道具搬入をやり直したという例もある。名古屋に於いては、道具の移動こそが、結婚の神髄であったのだ。はたして、今もその習俗は続いているのだろうか。
 
     
 

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