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  2020年1月
   

技術史観

     

 
   この稿の筆者は、技術史観ともいうべき歴史観を持っている。

 人類の歴史を動かすものは何か、というと、偶然か必然かは知らないが、ある一人の人間が発明した技術なのではないかと思うのだ。

 たとえば、農業。狩り、漁、あるいは野原の植物を採取して食べていた人類が、あるとき、植物の種を集めて、蒔くという技術を発明する。そこから農業が生まれる。だが、木器や手で土を耕すのはきわめて困難である。その時、誰かが、金属を溶かして鍬や鋤を作ることを発明し、組織的な農業が可能になる。すると、社会の仕組みも、組織的な農業の営みに便利なように、「指示するものと指示されるもの」が生まれ、やがて、王制とか階級制度とかが生まれる。

 つまり、道具の発明が初めにあって、社会の組み立てが後からついてくるのだ。けっしてその逆ではない。さらに言えば、人類には身についた「遊び心」「創造心」というものがあって、様々な人が、様々なものを発明する。が、その中から、周囲の人々の折々のニーズに合致し、「これは便利だ!」と言われるような技術だけが、生き残り、歴史を動かす。他の多数の発明は、単なる「遊び」「道楽」の結果として、歴史のかなたに消え去っていくのである。

 技術こそが人類の歴史を動かす。深くは説明しないが、近代国民国家とか民主主義とかいう人類が歴史の過程で生み出した概念や思想は、折々の技術革新の産物なのである。

 時間的な順序を言えば、まず技術が発明され、それが人々の折々のニーズに合致すると世の中に普及し、技術が世に普及するとそれを上手に使いこなすために、社会制度、ものの考え方、見方(思想や価値観)が変わり、さらには、社会の担い手が変わると、その新しい担い手によって、新しい文化や芸術が生まれるのである。

fig1
 さて、ここからは、我々にとって身近な、一つの技術革新が、大きく社会を変えた事例を語ることにしよう。それは、避妊具、とりわけコンドームの発明である。

 コンドームには、およそ三千年にわたる前史がある。動物の腸や魚の浮袋など天然の素材を用いて、性交の際の避妊や、あるいは性病を避けようとする技術が長く存在したが、一部の階級の遊興目的などに限られ、普及には至らなかった。そもそも、人類の長い歴史の大半では、人口が増えることを(生産力が向上するので)是としていたから、避妊は、不倫など特別な事例を除いては社会の一般的なニーズではなかった。むしろこれら技術の目的は、当初は性病予防の方にあったのかもしれない。ゴム製の工業製品としてのコンドームが本格的に出現したのは1874(明治7)年、現在のコンドームの基礎となるラテックス製コンドームが誕生したのは、1933(昭和8)年のことだそうだ。

 さて、この技術が第二次世界大戦後、工業社会が成熟した先進国で、避妊目的で使われるようになるに及んで、社会の性道徳が大きく変わるのである。簡単に言えば、「健全な男女は結婚するまでは、性交しない」という道徳が崩れ、「大人になれば、誰でも好きな相手と性交するのが健全だ」という方向に大きく置き換わった。筆者の若年時代は、まさに嵐のような価値観転換が世界中で起きて、社会の仕組みや道徳が大きく変わっていった時期である。そのことは現在の、先進諸国における少子高齢化といった社会問題に直結している。そして、おそらく避妊具がもたらした新しい問題の解決には、AI、ロボットといった、別の新しい技術革新が求められるのであろう。

 註:本稿は、相模ゴム工業のHP「コンドームの歴史」を参考にさせていただいた。
   https://www.sagami-gomu.co.jp/condom/history/
 
     
 

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