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  2021年4月
   

政治の手ざわり

     

 
   平時、つまり新型コロナウィルス感染症が蔓延する以前において、この稿の筆者は、政治の手ざわりについてこんな感想を持っていた。すなわち、都会の住民より、地方の住民の方がはるかに政治(家)を身近に感じる機会があるという感想である。

 都会の住民にとっては政治をもっとも身近に感じるのは、ゴミの収集くらいで、そのほかは、税や年金の徴収すら(所得税も社会保険料もサラリーからの天引き、消費税も最近は内税表示)「見えない化」が図られており、道路、橋、水道などのインフラは自分が生まれるより前から「そこに在る」ものなので、なくならない限り恩恵を感じられない。なにより、一般庶民が政治家のところに陳情に行く機会はまずないといってよい。

 とくに、縁がなさそうなのは、都道府県のレベルの自治体で、ほんとうは教育委員会とか水道局とか旅券事務所とかけっこうお世話になっているはずの部局が在るのだが、どれも皆国の出先機関のように見えてしまい、なにか大きな方向を決めているのは国の役所のように思えてしまう。では、国の政治はというと、議院内閣制といういわば間接民主主義で成り立っているから、選挙に投票したところで自分の意見が国の政治に反映されるという実感には乏しい。

 一方、地方に住んでいると、地元の有力政治家が出世して総理になれば、東京の「桜を見る会」なんていう国家行事にも招いてくれる機会もあるだろうし、そうでなくとも、地元のナントカ会の集まりに顔を出せば、国、県、市町村各級議員の一人や二人は必ず来ていて、主催者の迷惑を顧みず、一言挨拶することになっている。道路や橋などのインフラは、まだ地方では若干は不足しており、我田引水を求めて早く自分の周囲のインフラを整備してもらうには、陳情で議員に面会することは不可欠である。そもそも、選挙自体が、地域のお祭り的な行事という意味では、きわめて身近である。市区町村議員なんていうのは、近所のオジサン、オバサン達の中から目立ちたがり屋がなるものだし、国政選挙ともなれば、その近所のオジサン、オバサン達が毎日いずれかの候補者の事務所に出入りし、目の色を変えて、勝ったの負けたのと騒ぎ立てる。さらに言えば、子供の就職、嫁、婿の世話など地元のセンセイの秘書を通じてちょっとした口利きのお願いをする場合もままあり、そういう場を通じて一般庶民といえども、政治のミニ利権に組み込まれてしまう機会は数多くある。

 上記都会、地方を通じても、一番影の薄い、庶民から遠い存在は、都道府県庁と知事だろうと筆者は思っていた。とりわけ知事なんて者は、候補者の政策ではなく、支持する国政政党の推薦を受けた者か、そうでなければ、テレビに出演しているので顔をよく知っている、あるいは見た目が清新な感じがする人というような印象で選んできたような気もする。
 
 fig1

 ところが、このところ新型コロナウィルス感染症が、蔓延するに及んで、都道府県という役所と知事という存在は、一挙に身近なものになった。対策の陣頭に知事が立ち、しかも、すくなくとも総理とか国レベルの当事者よりは、かなり現場感覚のある発言、発信を私たちにしているのを見ると、政治の手ざわりが感じられるのである。そして知事達の中には筆者が政治的に支持している方もそうでない方も居られるが、おしなべて役人の書いた実感のない調整的な文言や空疎な修辞を述べる国の政治家よりは、手ざわりが良い。今更ながらに、知事の選び方をおろそかにしてはならないと思う。地域の指導者を私たちが直接選挙で選ぶというメカニズムを再評価したい。
 
     
 

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