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  2021年8月
   

いやぁな感じ

     

 
   今を去る七十数年前のこと。我が国は、アメリカを相手に国家の存亡を賭した戦争の最中であった。

 「この戦争に大義はあるか」、などと考えるインテリの数は少なく、大多数の国民は、「とにかくこの戦争に負けたら日本という国もなくなってしまう」という思いで、国家の戦争遂行に協力した。一方、軍部や指導者達も、「総力戦」というものを戦い抜くためには、民間市民の協力が不可欠であるのをよく知っていて、様々な情報操作によって、国民を動員する努力を怠らなかった。

 たとえば、都会の市民生活においては、隣組というものが組織され、小さな世帯を四つ五つまとめて、食糧配給、防空演習等々の単位とした。それだけでなく、隣組は「上意下達、下意上通」の道具とされ、政府の情報伝達ばかりでなく市民同士の相互監視と密告による戦争非協力者のあぶり出しのメカニズムともなった。隣組の中には一人くらい必ず口うるさい者がいて、「洋服を着ないでモンペ姿をしろ」だとか「灯火管制中に窓から明かりが漏れている」だとか、ほんとうに戦争遂行上効果があるかどうかわからない、生活の区々たる細事にまで口を挟み、何事も「気をそろえ」市民生活の統一を図ろうとした。街頭には、愛国婦人会の怖いおばさん達が繰り出して、若い娘がパーマネントをかけていないか監視し、時によっては長髪にハサミを入れるなどという無法も働いた。

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 私たちは、戦後の自由な社会に育って、こうした日本社会に特有の、いやぁな感じというものを忘れ始めていた。が、新型コロナウィルスと人類との「総力戦」が始まると共に、密かにまた日本社会に、このいやぁな感じが忍び寄ってきているような気がするのである。

 典型的な例が「マスク警察」と称するお節介な市民の登場である。日本人は、個人として公共心が強く、他者が何も言わずとも(マスクの着用によって自己の感染を防ぐのは困難であるのに、他者の感染防止とエチケットと世間への体裁のために)概ねマスクを着用しているというのに、あたかも愛国婦人会のごとく、マスク不着用者を見つけては説教をたれ、あまつさえ唾を吐きかける(感染防止上もっとも忌むべき行為)などの挙に出でる者が、マスク警察である。

 さらに「パチンコ屋が休業しない」と言ってはサラシ者にし、キャバクラやホストクラブでの感染を「夜の街関連」と名付けて、休業補償もせずにあたかも店舗の存在自体が悪であるかのように非難する、要路の人々の所業も、前記のいやぁな感じのあらわれに思える。

 小学校の授業にしてから、やっと再開したと思ったら、児童全員前を向いて着席し、ひたすらフェイスシールドをした先生の言うことを聞いて、内容を帳面に写す。給食となれば、隣の児童と口をきいてはならず、黙々と皿の食物を噛んで呑み下す。クラブ活動はなし、休み時間もトイレに行くだけ。トイレに行くのも密を避けて順番で、出したいときに出すものを出せない。そこまでしなければ感染防止の実が上がらないのかどうか、よく分からないのだが、まずは「気をそろえ」「緊張感を持続し」なければいけないという、これもなんだかいやぁな感じである。

 最後に、日本ではなく、イギリスの第二次世界大戦中のこと。ドイツの空襲に耐えるロンドン市民に、「妊婦に限り」ギネスの特配があったのだそうだ。その列に腹の突き出たオッサンが平気で並び、配給を受けようとすると、役人がニヤリと笑って、「どうか健やかな赤ちゃんを」と言ってギネスをジョッキに注いだというお話。感染防止に否やはないが、もっとゆとりを持って柔軟な気持ちで、この非常な事態に対処したい。すべからく、我らも往事のロンドン市民に学びたいものである。
 
     
 

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