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え〜っと通信

18号

2002年8月1日

矢頭 英明

路線価と鑑定評価をうまく使い分けて申告を!

1 路線価が発表されました!

8月2日に国税庁から平成14年度の路線価が発表されました。
新聞報道等にもあるように前年に比べて、全国平均で6.5%の下落となっています。
10年連続の下落です。いったいどこまで下がり続けるのでしょうか。
都心回帰といわれるように、銀座や表参道など人気のある場所では、下落ではなく上昇しています。今後、ますます地域による二極分化が進むでしょう。


2 路線価は何のため

相続税法では、財産は時価で評価すると定められています。
しかし、時価と言っても絶対的な算定基準などありません。
そこで、国税当局は時価を算出する一つの基準として財産評価基本通達を定め、その中で、土地は原則として路線価にて評価すると規定しています。
通達とは、国税庁長官から税務職員に対する指針のことをいいます。税務当局の取扱を統一するための決まりで、一般の会社で言う社内規定にあたります。そのため、納税者としては法令とは異なり、必ずしも従う必要はありません。
しかし、相続税・贈与税の実務では、土地は路線価によって評価するのが一般的となっています。
なぜかというと、路線価は上述のとおり税務職員にとっての時価であり、これに従っていれば当局と対峙することなく手続きがスムーズに流れるからです。


3 路線価ではなく鑑定評価という方法も

上記の通達による評価と言っても、常に完璧な時価を示すものではあり得ません。
それぞれの土地には、その土地なりの個性もあり、この通達だけでは個別の事情はあまり考慮されないためです。
個別の事情を十分に考慮して、土地の時価を算出する方法として鑑定評価があります。路線価による評価に代えて、鑑定評価による金額を時価として申告する事も可能です。


4 鑑定評価にて申告

鑑定評価を採用して相続の申告をしたケースをご紹介します。
Mさんは約2,100㎡の土地をお持ちでした。路線価での評価によると約4億円です。この土地は、線路の近くにあり土地が傾斜しているという状況でした。

線路の近くにある土地は、騒音や振動の問題から住みたがる人が少ないものです。また、土地が傾斜しているため宅地にする場合、平らにするための整地・造成費用が必要です。売却する際のマイナス要因がいくつかあったのです。
しかし、財産評価基本通達では、騒音や土地が傾斜しているというマイナス要因は評価をする上であまり考慮されていません。
路線価による評価は、原則として利用単位ごとに路線価に面積をかけて算出します。しかし、このような広大な土地は単独で利用するのではなく、下記の図のように土地を分割して宅地として開発して利用することも多いでしょう。
開発する場合には、都市計画法によって道路や公園などの公共的施設を作らなくてはいけない、という制約を受けることになっています。そのため、公共的施設を作ると、利用できる面積が減ってしまい、宅地として売却できない部分は、売買金額の減額の要因となります。

上記の要因を考慮した結果、鑑定の方が評価が低くなると考え、Mさんに鑑定評価をご提案しました。
鑑定の結果は約2億6,000万円です。この方の相続税の適用税率は50%でした。
路線価評価と鑑定評価の差額は約1億4,000万円ですので、その50%である  7,000万円の相続税を軽減することができたのです。鑑定費用を差し引いてもお釣りがきます。

ただし、この鑑定評価も絶対的なものではありません。鑑定士によって評価する金額が違うことも、ままあることです。
鑑定の金額で申告しさえすれば税務署はすべてを認めるわけではありません。それなりのリスクを覚悟の上、適切な鑑定を行うことが肝要です。

路線価と鑑定評価を上手に使い分ければ、相続税・贈与税の大いなる工夫も可能です。

※執筆時点の法令に基づいております