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え~っと通信 224号

サラリーマンと源泉徴収制度
~源泉徴収制度のメリット・デメリット、違法性が争われた事例~

    (2019年12月13日更新)   執筆者:秋保 幸市


 
   

1.はじめに

 ご承知のとおり、所得税については、いわゆる「申告納税制度」を基本としていますが、これと併せて、給与、利子、配当等(以下「給与等」と言います)の特定の所得の支払については、「源泉徴収制度」を採用しています。
 源泉徴収制度とは、給与等の支払者がその支払を行う際に所得税を徴収し、これを国に納付するというもので、諸外国でも採用されています。
 法的には、給与等の支払者に、所得税を源泉徴収する義務が課され、これを国に納付する義務(所得税法181~183条)を負います。この支払者を源泉徴収義務者(以下「義務者」と言います)と言います。この義務者は、納税義務は負いますが、自ら所得税を負担することはありません。
 義務者と給与等の受給者との関係は、義務者は国の代行者として所得税の源泉徴収を行い、給与等の受給者は義務者が行う源泉徴収を受忍しなければならないという関係になります。また、義務者の納税義務は、給与等の受給者に係る本来の所得税の納税義務とは別の納税義務になるので、国は、源泉徴収所得税に不足額がある場合、又は過誤納額がある場合、義務者に対し追徴し、又は還付しますが、給与等の受給者に対し行うことはありません。同様に、期限後納付により、不納付加算税(通則法67条)や延滞税(通則法60条)は、義務者に対してのみ課されます。以下、給与所得に限定して記載します。

2.源泉徴収制度のメリット・デメリット

(1)メリット
イ 
ロ 
国の徴収コストを節約し、所得税の徴収漏れも少なくできる。
大部分のサラリーマンは、年末調整で所得税が確定するので、確定申告が不要になる。

(2)デメリット
イ 
ロ 
サラリーマンの税金に対する関心を薄める要因になっている。
サラリーマンの所得捕捉率が100%であるのに対し、事業所得や農業所得は5~6割あるいは3~4割しか課税の対象とされていないという不公平感を生じさせている(いわゆるクロヨン、トーゴーサン)。

3.源泉所得税をめぐる主な判例

(1)昭和37年2月28日最高裁判決
 義務者が国に対し次のような訴えを起こしました。
 




義務者は、国の徴税事務に協力するために私有財産を侵され、これについて何の補償も受けていない(憲法29条「財産権」違反)。
源泉徴収制度は、サラリーマンと事業所得者とを差別し、また義務者と一般の国民とを差別している(憲法14条「法の下の平等」違反)。
源泉徴収制度は、義務者に強制労働を課すものであるから、憲法18条「奴隷的拘束及び苦役からの自由」に違反する。
  最高裁は、この主張に対し
・源泉徴収制度は、国の税収を確保し、徴税手続の簡便化、徴税費用と労力の節約に資することはもちろん、サラリーマンにとっても申告・納税の煩雑な事務から免れることができ、義務者も給与の支払の際に所得税を天引きし、翌月10日までに納付すれば良いのであるから、公共の福祉の要請に応えるものであると言わざるを得ないとして、義務者の主張を退けました。

(2)昭和60年3月27日最高裁判決
 サラリーマンが国に対し、次のような理由により、所得税は憲法14条「法の下の平等」に違反していると主張しました。
 

事業所得の必要経費について実額控除を認めているが、給与所得には認めていない。
給与所得の捕捉率が事業所得等の捕捉率より格段に高い。
 
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最高裁は、この主張に対し
・サラリーマンの数は膨大であり、必要経費の実額控除を認めると技術的、量的に対応が難しく、税務執上混乱を招くことが懸念される。このような弊害を防ぎ、租税の徴収を確実・的確かつ効率的に実現することは租税法の基本原則である。また、捕捉率の違いについては適正な税務行政により是正されるべきものとして、サラリーマンの主張を退けました。
 なお、現所得税法では、確定申告により給与所得に特定の支出(6種類のみ)を条件付き(勤務先の証明が必要)で必要経費の実額控除を認めていますが、費目が限定的で手続きが煩雑なため利用者は少ないようです。

4.むすび

 確かに源泉徴収制度は、租税の徴収の確実性、簡便性、効率性には大いに役立っていますが、サラリーマンの不公平感の元凶になっていることは間違いありません。
 それを払しょくするには、事業所得への厳しい税務調査に期待するか、給与所得に係る必要経費の実額控除の手続きを簡易にし、対象となる費目を増やすかですが、サラリーマンの私としては、飲み代、終電後のタクシー代等が必要経費として認められると嬉しいのですが。
 
 
     
 

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