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~小規模宅地等の特例の注意点~
251号

え〜っと通信

251号

2022年3月15日

金井 悠深恵

建替え中に相続が発生したら
~小規模宅地等の特例の注意点~

被相続人が居住していた家屋の敷地は、居住用宅地として一定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。仮に、被相続人の自宅の建替え中に相続が発生し、相続時には建築中の家屋の敷地で、居住の用に供されていなくても、居住用宅地として小規模宅地等の特例の適用を受けることができるか解説いたします。


1.小規模宅地等の特例の適用要件

 相続開始の直前において、被相続人の居住の用に供されていた宅地等を、下記の者が取得した場合に、小規模宅地等の特例の適用対象となります。

(A)配偶者
(B)同居親族(相続開始時に同居していた配偶者以外の親族で、申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで所有している者)
(C)いわゆる家なき子(要件がありますが省略します)

 この特例の適用により、その宅地等の相続税評価額が330平方メートルまでの部分につき8割引きとなります。
 なお、被相続人が、養護老人ホーム等の一定の施設に入所していたため、相続開始の直前においてその宅地等を居住の用に供していなかった場合は、その入所等の直前の状況により被相続人の居住用宅地に該当するか否かを判断します。


2.自宅の建替え中等に相続が発生した場合の取扱い

 小規模宅地等の特例の適用を受けるには、上記の通り、相続開始の直前において、被相続人が現に居住の用に供していた宅地等であることが要件となります。そのため、家屋が建築中の場合には、まだ居住の用に供していないため、その敷地は厳密には要件を満たさないこととなります。しかし、居住用の宅地等については、生活の基盤としてすべての人に共通して必要となる資産です。そのため、建築中の家屋の敷地であっても、既に居住の用に供している宅地等と同等の必要性があると認められます。小規模宅地等の特例の適用可否は、相続開始時点の状況で判定しますが、その一時点だけの状況をすべてとして判定するのは、生活の基盤を守るという制度の趣旨からすると、実情にそぐわない部分が出てきます。そこで、

 (a)建築中の家屋は、被相続人又はその親族が所有するものであること
 (b)建築中の家屋が、被相続人等の居住の用に供するものと認められること
 (c)相続税の申告期限までに、上記の家屋又はその敷地を取得した親族か、被相続人と生計を一にしていた親族が居住の用に供すること

上記3点を満たすことを要件に、小規模宅地等の特例対象とすることができることとされています。
 なお、(c)については、建築する家屋の規模が大きく、完成までに相当の期間を要したり、法令の規制等で工事が遅延する等、やむを得ない事情により申告期限までに居住の用に供することができない場合が考えられます。その場合でも、完成後、速やかに居住の用に供することが確実であると客観的に認められれば、その敷地は特例対象に該当するものと取り扱うことができることとされています。


3.建築期間中の住まいによる違い

 自宅の建築期間中の住まいとして、次の2つのケースで小規模宅地等の特例の適用可否を解説いたします。
(1) 仮住まいに居住する場合
 建替えのため仮住まいを賃借する場合は、上記2.の3要件を満たすことにより、建築中の家屋の敷地が小規模宅地等の特例の対象となります。また、被相続人が所有する別の建物(貸家等)に居住していた場合も、建物が完成するまでの一時的な目的で入居していたと認められるときは、建築中の家屋の敷地が特例の対象となります。
(2) 元の家屋に居住し続ける場合
 建替えではなく、新居を別の土地に建設中に相続が開始したときは、(1)と取扱いが異なります。このケースでは、被相続人が居住していた元の家屋の敷地が、被相続人の居住用宅地に該当します。そのため、建築中の新居の敷地については、小規模宅地等の特例を受けることができません。新居が完成し、同居していた子世帯が被相続人より先に引っ越して居住していたとしても同様です。この場合、元の家屋の敷地で小規模宅地等の特例を受けるためには、被相続人の配偶者か、配偶者がいない場合にはいわゆる家なき子がその敷地を相続するしか方法がありません。


4.タイミングに注意

 新居を建築中に相続が発生した場合は、その建築期間中に被相続人が居住する家屋によって小規模宅地等の適用可否が変わります。建替えのご予定がある場合は、上記を踏まえてプランニングをなさってはいかがでしょうか。

※執筆時点の法令に基づいております