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え〜っと通信

41号

2004年9月1日

弘田 貴郎

少ない資金で不動産経営~不動産投資信託(REIT)で銀座の地主?

 不動産投資信託。最近よく聞く名前ですが、「どうせ投資信託でしょ。株はわからないから。」などといって食わず嫌いをしていませんか。じつは皆様の長年の経験が活かせる新しい形の不動産経営かもしれません。


1. REITって何?

 不動産投資信託とは、その名の通り、不動産を主な運用対象とする投資信託です。日本版リートなどとも呼ばれます。不特定多数の投資家から資金を集めて不動産を購入し、そこから生じる賃料や売却益を投資家に分配する商品です。要は、みんなでお金を出し合って不動産を購入し、そこからの収入をみんなで分配する、というイメージです。


2.REITの特徴

◎高い配当利回り
 配当の源泉は不動産から生まれる賃貸料収入です。仕組上、利益の90%以上を配当する決まりとなっているため、比較的高い配当利回りが期待できます。
◎換金が容易
 REITの中には、株式同様、証券取引所に上場されているものもあります。上場されているものであれば、市場で簡単に売却することができるため、不動産とは異なり、すぐに現金化することが可能です。
◎少ない資金で投資が可能
 通常の不動産投資であれば多額の資金が必要ですが、REITの中には、数十万円の単位で購入できるものがあるため、比較的手の届く範囲で投資が可能です。


3.税務上の取扱い

 不動産に投資をしているとはいえ、有価証券です。したがって、利益の配当があった場合には配当所得となります。しかも、上場REITであれば10%の源泉徴収(平成20年3月まで)のみで課税は終了です。勿論確定申告も選択可能ですが、次の①、②以外の方は、確定申告をしない方が有利となります。いずれにせよ、配当控除の対象とはなりません。
①他の所得に損失があるため、配当所得を確定申告に含めると源泉所得税が還付される場合
②他の所得と合算して配当所得を確定申告すると定率減税額が増加し、結果、申告税額が減少する場合
 なお、出資元本を譲渡した場合には、譲渡益に対して10%の課税です(平成19年12月まで)。仮に譲渡損が生じたとしても他の株式の譲渡益があれば損失を相殺できますし、相殺しきれない損失が生じた場合には3年間の繰越控除が可能です。


4.結局のところ・・・

 現物の不動産を所有していれば、そこからの収入は不動産所得です。もし損失が生じれば他の所得と相殺可能です。ただし、所得が多ければ最高50%の課税です。ただしこのREITであれば、そこからの収入は配当所得です。どんなに配当が多くても上場REITであれば10%の課税で済みます。
 売却の場合はどうでしょう。土地の売却であれば20%の課税です。ただし上場REITへの出資であれば10%の課税です。しかも今年の税制改正で土地の譲渡損失の損益通算は不可能となりました。損益通算が不可という点では条件は同じです。
 投資信託は元本割れがあるんじゃないか?そんな声が聞こえてきそうですが、元本(買値)保証がないのは不動産も同じです。
 そこで一計。不動産を見る目に自信があり、値下がりが続く土地をお持ちの方であれば、思い切って不動産を処分して上場REITに投資されては如何でしょうか。不良不動産を整理し、なおかつ、好立地の不動産から生じる収益が享受できます。不動産の譲渡時に20%の課税はありますが、不動産の価値が毎年5%ずつ減少しているのであれば4年目で20%の減少です。あの時売っておけば・・・なんてこともありえます。資産の組替え方法の一つとして、十分有用な選択肢ではないでしょうか。少ない資金で銀座の地主気分。夢ではないのかもしれません。

※執筆時点の法令に基づいております