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え〜っと通信

51号

2005年9月15日

田中 奈美

貸宅地物納のイ・ロ・ハ!?

 先祖代々の土地をたくさん所有されている方にとって、借地権者のいる貸宅地の活用は頭の痛いところではないでしょうか。借地人は戦前からの親子3代にわたる付き合いがあり、換金したくても底地買取の交渉もままならない。ましてや更新料もなかなか満足にもらえない。そんな不良資産も相続の物納に向けて条件を整備すると、優良な資産に生まれ変わるかもしれません。


1.物納とは

 相続税の納付も他の税金同様、金銭で一時に納付することが原則となります。しかし、相続や遺贈により取得した財産が不動産等で、売却しなければ納付する金銭ができない、などという場合には例外的にモノで納付する「物納制度」が認められています。相続税評価額で収納され、しかも譲渡税は非課税!貸宅地も立派な納税資産になります。


2.お隣さんとは仲良くがベスト

 貸宅地物納に向けての重要なポイントは、まず隣地との境界確認です。隣地の所有者と「境界確認書」を交わします。この確認書に添付する測量図は現状での実測に基づく図面です。「縄伸びが怖い」といって測量を伸ばし伸ばしにしていると、いざ物納しようと思っても、時間と手間がかかりスムーズに進まず、相続人が大変苦労します。縄伸びしていても確定測量だけしておき、地積更正は相続時まで引っ張ればいいのです。そうすれば固定資産税は現状のままです。親が存命中に実測を行いお隣さんから気持ちよくハンコを頂いておきましょう。ここでもうひとつ物納の際に問題になるのが、境界上の塀です。
 誰の所有物なのか、越境はしていないか、などの確認が必要になります。こちらについても「工作物に関する確認書」を物納時に提出しなければなりません。もし隣地の方が越境して塀を所有している場合は、境界線上から撤去又は移動することを確認するハンコが必要になります。また、これらの交渉でキーマンになるのが測量士です。物納申請に長けた測量士にお願いすると、物納申請をにらんだ書類を作成してくれるため作業が二度手間になりません。


3.借地人の相続が物納に関係?

 次に確認すべきことは、賃貸借契約書の中身です。戦前から貸されている土地については契約書すらない場合もあるのではないでしょうか。契約書があっても、借地人の名前がどうやら先代の名前のまま、契約面積もどうみても狭すぎる、なんてことも・・・。年月がたてば経つほど、問題もこじれてきます。物納申請時に借地人の権利を誰が相続したのか未確定の場合は、借地人の相続人全員の戸籍・住民票まで提出しなければなりません。この書類を用意するだけでも一苦労です。


4.地代の改定

 地代についても、測量後の貸付面積に改定する必要があります。今まで馴れ合いになっていた部分も測量を機に重い腰を上げて交渉に乗り出すときです。地代の適正価格は、居住用と事業用とでは国の算定基準が異なるため注意が必要となります。


5.契約内容が貸主に著しく不利な条項は削除すべき

 契約書を精査?すると「10年間は、地代の値上げを求めない」といった特約が盛り込まれている場合があります。この条項は、国の適正な管理・処分の支障になると判断され物納申請が却下されてしまいます。早急に削除しなければなりません。


6.意外と優良資産?

 以上のほかにも、物納申請時にはさまざまな書類を提出しなければなりません。しかし、貸宅地の整理に困っている土地所有者にとっては、相続はモノによる納付という換金化の絶好のチャンスにも早代わりします。
 相続財産のほとんどが不動産のあなた、それも貸宅地がメインの方にとって物納はとても重要な納税方法です。相続税がとても金銭では納付できない方にとって、物納は条件さえ整備しておけば貸宅地のような一見不良資産も納税資産としては優良になります。
 生前に貸宅地を物納に備えて整理しておけば、「相続人の気苦労が減る」という節税以上の大きな効果が見込まれるのではないでしょうか。

※執筆時点の法令に基づいております