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TOPえ〜っと通信相続・贈与により取得した資産を売却した場合の譲渡所得の取得費について 52号

え〜っと通信

52号

2005年10月17日

弘田 貴郎

相続・贈与により取得した資産を売却した場合の譲渡所得の取得費について

相続等に係る登記費用の取扱いがかわりました。
 土地・建物を相続、贈与したときにつきものの出費で登記費用というものがあります。今までは税務上何の経費にもならなかったものですが、ものによっては経費にできるようになりました、というお話です。
 相続にかかる登記費用は、今までは譲渡所得の計算上、取得費には算入できないこととして取り扱われてきました。しかしながら、平成17年2月1日の最高裁の判決により、贈与・相続の際に支払われる不動産登記費用・名義書換手数料などについても取得費に含めて以下のように計算するよう取扱いが変更されました。

(1)貸アパートの建物など、業務用である減価償却資産の場合
 譲渡所得の計算上、不動産登記費用を全額取得費として控除します。なお、必要経費、減価償却費の計算には影響を与えません。
(注)この規定は、平成17年6月24日付の所得税基本通達の一部改正により、平成17年1月1日以後に取得した資産については必要経費とされることとなりました。
(2)自宅の建物など、非業務用である減価償却資産の場合
 譲渡所得の計算上、不動産登記費用から下記の算式により計算した減価の額の累計額を控除した残額を取得費として控除します。したがって、全額の控除はできません。
不動産登記費用×0.9×登記対象となった資産の
1.5倍の耐用年数×経過年数
(3)貸アパート・自宅の敷地など、非減価償却資産の場合
 譲渡所得の計算上、不動産登記費用を全額取得費として控除します。

 したがって、譲渡資産が業務用か非業務用か、減価償却資産か否か、によって控除することのできる不動産登記費用が異なりますので注意が必要です。また、譲渡所得の計算上、概算取得費(譲渡金額の5%を取得費とする方法です)により譲渡所得を計算している場合には、不動産登記費用をその概算取得費に加算することはできませんし、譲渡資産とそれ以外の資産を同時に登記した場合には、譲渡資産に係るものとして不動産登記費用を按分して算出する必要があります。
  この取扱いの変更は、更正等の除斥期間(5年)の制限により、申告期限から5年を経過している年分の所得税については法令上、還付を受けることができません。したがって、

(1)平成 17年分の売却については確定申告
(2)平成16年分の売却については更正の請求(平成18年3月15日まで)
(3)平成12年から平成15年の売却については更正の嘆願書の提出(平成12年分の所得税については平成18年3月15日まで) により、対応する必要があります。

  また、相続・贈与により取得したゴルフ会員権について名義書換料を支払った場合にも、不動産と同様に、その名義書換料を取得費に加算して譲渡所得の計算を行うことができます。ゴルフ会員権の譲渡により損失が発生した場合、他の総合課税となる所得(不動産所得、給与所得などが該当します)とその損失を相殺させることができます。それでもなお損失がある場合には、退職所得・山林所得と相殺させることができます。しかし、不動産の譲渡所得とは相殺させることはできません。例えば、バブル期に2,000万円で購入したゴルフ会員権で今の相場が100万円のものがあるとしましょう。ご子息が所得税の負担が重い方であれば、次のような工夫をすることにより所得税の負担を軽くすることができます。その工夫とは、一旦ご子息にそのゴルフ会員権を贈与したあとで売却するのです。これにより、ご子息はゴルフ会員権の譲渡損と他の所得を相殺させることができるのです。
  以前から廃止されるされると噂されてきたゴルフ会員権の譲渡損の取扱い。平成18年以降は本当に認められないこととなりそうです。名義書換料の取扱いも変更され、譲渡損を出すメリットはさらに大きくなりました。売却するかどうか悩んでいた皆さん、今回がいい機会&最後のチャンスかもしれません。

※執筆時点の法令に基づいております