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知っていると得をする?「みなし相続財産」を解説

相続税の申告では、生命保険金や退職金など、遺産分割の対象にならない財産が思わぬ税負担を生むことがあります。このような財産を「みなし相続財産」といいますが、みなし相続財産を上手に利用すれば税負担の軽減や柔軟な財産の承継に活用することができます。今回は、信託や退職金を例に、要点や注意すべきポイントをご紹介します。

1.「みなし相続財産」とは?

 生命保険金や死亡退職金は、遺産分割の対象にならないのに、なぜ相続税の対象になるのでしょうか、という質問を受けることがあります。法律的には、被相続人が所有していた相続財産ではないものの、相続により受け取る権利が発生するため、相続財産と同視すべきものをみなし相続財産として相続税の対象とされています。生命保険金や死亡退職金、定期金、信託の受益権等が代表的なものです。
 みなし相続財産には3つの特徴があります。①財産を受け取る人が指定されているものが多いため、誰が受け取るかで争いになりにくいこと。②相続放棄をしていても受け取ることができること。③遺産分割の対象にならないため、原則、遺留分の計算に含まれないこと。この3点を押さえると、この後の話が分かりやすくなると思います。

2.信託を活用した遺産分割対策

 将来の財産管理や相続に不安を感じる方への解決策として、信託契約を活用する事例が増えています。判断能力が低下しても不動産の管理に支障がないようにしたい、スムーズに資産を承継したいといったニーズに対し、柔軟な解決策を提供できるのが信託契約です。ここでは、相続手続き上の信託契約の取り扱いをご紹介します。
(1)信託受益権とは
 信託受益権は、「信託財産から得られる利益を受け取る権利」をいいます。信託とは、「財産の所有者」(委託者)が事務負担軽減等の目的を定めて、「信頼できる人」(受託者)に財産を託し、運用益を「指定された人」(受益者)が受け取る仕組みです。受託者と受益者は任意に指定可能です。
(2)信託(家族信託)を活用した遺産分割対策
 例えば推定被相続人が不動産について、信託契約を締結し、相続発生時の受益者を後継者に指定後、相続が生じた場合を考えます。信託契約により、信託財産の管理・運用は生前から受託者が行い、相続発生後は信託契約により後継者へ受益権が移転します。このように信託財産については遺産分割協議の手続きがなくなり、承継が円滑に進む点が大きな利点となります。ちなみに相続税では、信託契約を締結しても節税にはなりません。

3.退職金活用の具体例

 次に先月のえ~っと通信で紹介した退職金を活用した相続税・法人税の節税を考えていきたいと思います。被相続人が株式を100%所有する会社の役員であった場合を前提に具体例を考えます。(会社の規模は小会社、保険差益は生じないケースとします)
 ・法定相続人:3人
 ・死亡退職金:1,500万円
 1. 非課税限度額:500万円×3人=1,500万円
 2. 課税対象額:0円
 3. 会社の株価への影響:会社は退職金1,500万円を債務として計上(純資産▲1,500万)。小会社は株価計算上、純資産について、50%を株価に反映するため、株式全体の評価は750万円分減額されます。
 4. 相続税の減額効果:相続税の税率を40%とすると、株価▲750万円×40%=▲300万円
となり、300万円の相続税が減額されます。
 補足.法人税の減税効果:支給した退職金は当然、会社の経費として認められます。実効税率を約35%と仮定すると、退職金を支給したことにより、1,500万円×35%=525万円の法人税負担の軽減が見込めます。
 結論:1,500万円を税負担なく遺族に渡すことができ、更に株式分の相続税を300万円分、会社の法人税を約525万円分の負担を軽減できます。会社の資金繰り等に問題がなければ、相続税対策として有効な手段となります。また、退職金については生命保険金等と違い、相続発生後に受取人を決めることもできるため、その時の状況に応じて柔軟に対応することができます。

4.思わぬ税負担を避けるための注意点

(1)受取人次第で税額が2割加算
 みなし相続財産は遺産分割協議に関係なく財産を受け取る人が決まっているものが多いため、法定相続人以外の方へも遺言書なしで財産を渡すことが可能です。しかし、法定相続人以外がみなし相続財産を取得する場合、法定相続人が受け取る場合より、相続税が2割加算されます。
(2)相続放棄と非課税枠の落とし穴
 相続放棄した人が受け取る保険金・退職金は、生命保険金や死亡退職金の非課税枠は使えません。生命保険金や死亡退職金でお金をもらえれば十分と思って相続放棄してしまうと、想定外の税金がかかりますのでご注意ください。
(3)遺留分の火種
 みなし相続財産は原則的には遺産分割の対象や遺留分の計算から外れます。ただし、外れるからといってほとんどの財産を売却して保険金として特定の相続人が受け取る場合には、その保険金も遺留分の計算の対象になります。

5.まとめ

 みなし相続財産を上手く活用すれば相続税対策や柔軟な事業承継の一助となります。ただ、そのルールは複雑で、一歩間違えれば税務上のリスクもありますので、最適な対策を講じるためにも、計画的なご準備をお勧めします。

2025年11月14日

同族会社の役員と退職金

 退職金は、税制上優遇されているというお話は聞いたことがあるかもしれません。今回は、退職金の税務上の取扱いや受け取る際の注意点などをご紹介致します。

1.所得税の取扱い

(1)生前退職金
 退職金は、長年の勤労に対する報償的給与として一時に支払われるものであることなどから、退職所得控除が設けられ、2分の1課税や他の所得と分離して課税されるなど、所得税の負担が軽くなるよう配慮されています。仮に勤続年数が40年であれば、退職所得控除額2,200万円までは所得税及び住民税がかかりません。
① 所得金額の計算方法
退職所得金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2
※役員等勤続年数が5年以下の方が支払いを受ける退職金は2分の1課税の適用がありません。
② 退職所得控除額

(2)退職所得として取り扱うことができるもの
 原則として、退職所得として課税される退職金は、退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職に起因して一時に支払われることとなった給与をいいます。
例外的に、次のもの等は退職所得となります。
① 分掌変更等により受け取る退職金
 引き続き勤務する場合であっても、役員の分掌変更等により、例えば、代表取締役から代表権のない非常勤役員となり、報酬が50%以上減少したことなど、職務内容や地位が激変した者に対して、分掌変更前における役員であった勤務期間に対する退職金です。退職金の支払いにより、会社の利益と資産が減少するため、一般的に株価は下がります。株式の贈与の際に退職金を支払うと贈与税(相続税)の節税効果も期待できます。
② 小規模企業共済
 小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主が加入できる積立による退職金制度です。掛金は全額を所得控除でき、節税効果があるため、加入している方も多いと思います。退任や65歳以上の解約により受け取った一時金は退職所得の扱いです。
③ iDeCo
 iDeCoは、自分で決めた掛金を毎月積み立てながら、その掛金を自分で運用していく年金制度です。基本的に60歳になるまでは積み立てた年金資産を引き出せません。このように自身の年金の上乗せのための積み立てというイメージが強いかもしれませんが、一括で受け取った一時金は退職手当等とみなされます。
 なお、掛金上限を増額する改正が予定されています。掛金は全額を所得控除でき、また、運用益は非課税ですので、加入時・受け取り時に3つの節税効果が期待できます。

2.退職手当等を受け取る際の注意点

 一定の期間内に複数の退職手当等(退職手当等とみなされる一時金を含みます。)の支払いを受けた場合において、その年に支払いを受ける退職手当等の勤続期間の一部が前に受けた退職手当等の勤続期間と重複している場合には、退職所得控除額が重ねてとれないよう調整が行われる場合があります。
 iDeCoの一時金と小規模企業共済の受取りでは、iDeCoを先に受け取り、5年を経過してから小規模企業共済を受け取る場合は調整がありません。令和8年1月1日以後にiDeCoの一時金を受け取る場合から、この5年ルールが10年ルールになります。ところが、小規模企業共済を先に受け取り、その後iDeCoを受け取る場合は20年ルールが適用されます。受け取り方の工夫で税金が違うことがありますので、ご注意ください。

3.相続税の取扱い(死亡退職金)

被相続人の死亡によって、死亡後3年以内に支払いが確定した退職金を、相続人などが受け取った場合には、その退職金は相続税の課税対象となり、所得税の課税対象にはなりません。また、相続人が受け取った退職金のうち相続税の課税対象となる金額は、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)を越える部分です。仮に相続人が3人であれば、1,500万円までは相続税がかかりません。

4.まとめ

退職金は、基本的に税務上の優遇が大きいといえます。
 また、小規模企業共済やiDeCoは、掛金を所得控除でき節税効果がありますので、上手に利用して税負担を減少することができます。一方、所得税法上は有利な退職金も、相続直前に受け取ると相続財産となります。同族会社の役員の退職金は、受け取るタイミングがカギといえそうです。

2025年10月15日

相続税の調査の際の話にはご注意を!!

 7月から12月は、相続税の調査の最盛期です。相続税の調査では、お亡くなりになった方の生前の生活状況やお金の管理方法などを聴かれます。回答する内容によっては予想外の問題が生じることがありますので、ご注意ください。今回は、事例を交えてご説明したいと思います。

1.相続税調査の流れ

 一般的な相続税の調査は、税務署から事前連絡があり、日程調整をした上で行われます。通常の調査は、税務職員が自宅に2名でやって来て1日で終了します。はじめにお亡くなりになった方の生活状況や趣味、財産の管理方法など質問を受けます。その後、相続財産の保管場所の確認と預金通帳や登記簿など申告の基礎資料の確認が行われて終了となります。もちろん、税理士は調査に立ち合います。
 調査結果は、概ね1~2カ月程度で説明があります。

2.事例:小規模宅地等の特例が適用できない?

 長男は、母(享年92歳)の相続で自宅の敷地を相続しました。自宅は、二世帯住宅であり、一世帯分を増築した際に区分所有建物としましたが、建物内部で行き来ができ、1つの建物に2つの部屋があるという状況です。
 長男は、調査官から母の自宅における生活状況を聴かれ、食事を共にしていたが、それ以外の時間は基本的に自分の部屋で過ごしていたなどと回答をしました。
 数か月後、調査官から、小規模宅地等の特例は適用できないという説明がありました。

3.税務署の見解は?

 税務署の見解は、以下の理由から、母が居住の用に供していた部分に長男は居住していないため、母の部屋に対応する宅地は特定居住用宅地等に該当しないから、小規模宅地等の特例は適用できないというものでした。
(1)自宅は、2つの部屋がそれぞれ専有部分として登記されている区分所有建物であり、それぞれ独立して生活を営むのに十分な設備と構造を有していること。
(2)長男は、調査時、母が長男家族と食事を共にしていたが、それ以外の時間は基本的に自分の部屋で過ごしていたと回答したこと。
(3)母と長男は、食事、水道光熱費等の生活費をそれぞれ負担していたことに加え、上記(2)のとおり、それぞれ独立して生活していたことから、生計を一にしていたとは認められないこと。

4.その後の対応と結末

 長男に税務署の見解を伝えたところ、実は母が亡くなる10年程前から認知症を患っており、とても一人で生活できる状態ではなかった。調査官には、世間話として生活等を聞かれているのだろうと思い、母の認知症の話はしたくなかったため言葉足らずの回答になってしまったとのことでした。
 そこで、当方は、長男に協力してもらい、認知症の診断書、要介護認定履歴などの証明資料を揃えた上で、調査官に対し、長男夫婦は母の生活の見守りや介助が日常生活の一部となっており、母と長男は二世帯住宅を合せて1つの家として利用していたことを書面で説明しました。
 結果として、税務署から「更正決定等すべきと認められない旨の通知書」を受領することができ、修正申告する必要はありませんでした。

5.こんな質問もあります

 小規模宅地等の話は、特殊な話でしたが、名義預金や名義株などの名義財産がないかという調査は少なくありません。名義預金とは、たとえば相続人名義の預金ですが、その預金のお金を出したのが被相続人であり、かつ被相続人が預金の管理をしていたものです。つまり、親が子の名義で貯めていた預金など、実質的な所有者が名義人ではなく、被相続人というものです。
 名義預金の調査では、基本的に過去に被相続人から贈与を受けたお金や財産があるか質問を受けます。実際には贈与を受けたのに、受けていないと回答してしまうと、調査官から「毎年110万円ずつ入金されている相続人名義の預金は、贈与を受けたものではないから、名義預金ではないか」と疑われてしまうことになります。さらに、調査官の目には、名義預金の存在を知っていたのに、あえて税理士に伝えずに申告から除外したのならばと、重加算税が視野に入ってきます。

6.最後に

 調査官に一度話をした内容であっても訂正することはできますが、訂正を認めてもらうことは簡単ではありません。相続税では、古い話を聞かれるため、記憶にないこともあると思います。曖昧な記憶であれば、曖昧な記憶ですがというように前置きをするなど無理に回答しなくても問題がありません。分かる範囲のことを回答すればよいのです。
 また、調査官の指摘に対して、十分な反論ができないとそのまま修正申告となる可能性が高いです。予想外の問題が生じることのないように相続税の申告・調査対応は、信頼できる税理士に依頼することをお勧めします。

2025年9月16日

土地評価のポイント~現地調査で評価が下がる!?~

相続税の申告書を作成する場合に、弊社で最も注意して行うポイントの一つとして土地評価があります。路線価が高い都心部では土地評価の仕方によっては、相続税に大きな影響を与えます。今回は、現地調査をきちんと行うことにより確認している土地評価の減価ポイントをご紹介します。

1.相続税における土地評価の原則

土地評価は、基本的に路線価方式で算定しますが、一部地域では倍率方式で算定します。路線価方式の場合は、下記のように評価額を求めます。
 ○土地の相続税評価額
  1㎡当たりの路線価×補正率×面積(㎡)
 補正率は、土地の形状や奥行・間口の広さなどに応じて減額率が決まります。例えば、「細長くいびつな土地であれば正方形の土地より10%減額しよう。」というようなものです。実際の土地は綺麗な正方形の土地ばかりではありません。使いにくく価値が下がる場合には、減額補正が可能になります。この減額補正ですが、机上で見ているだけではすべてがわかりません。弊社では、路線価地域の場合必ず現地調査を行い、減額要素がないか確認を行います。

2.セットバック

減額要素で意外と多いのが、セットバックです。セットバックとは、一般的に敷地や建物を道路や隣地などの境界線から後退させることをいいます。2項道路の中心線から2m後退した線が道路の境界線とされています。セットバックの対象となる敷地部分の評価が自用地評価額の70%引きとなります。具体的に計算すると次のとおりです。

自用地評価額:
 30万円(1㎡路線価)×300㎡=9,000万円
セットバック地積:
 0.5m×30m=15㎡
減額する金額:
 9,000万円×15㎡/300㎡×0.7=315万円

2項道路に該当するかどうかは、区役所等の建築指導課で確認できます。セットバックの地積は、道路台帳や隣地の建築計画概要図を参考にすると具体的に算出が可能になります。現状は、セットバックの必要はないが、将来建物を建替える場合は、敷地を後退する=有効敷地面積が減少することとなり、土地の評価も下がります。同じ2項道路上に複数の貸地をお持ちの地主の場合、セットバックの評価減はかなりまとまった金額となります。

3.庭内神し

次にご紹介する減額要素としては庭内神しがあります。
 庭内神しとは、屋敷内にある神社や祠など、ご神体を祀って日常的に礼拝の対象としているものを指します。以前は、この庭内神しのみが非課税財産の対象でした。しかし、平成24年の改正により庭内神しとその敷地等が密接不可分の関係である場合には、敷地等も一体のものとして非課税財産となりました。しかし、必ずしも非課税として認められるわけではなく、以下条件があります。①敷地への定着性②建立の経緯・目的③日常礼拝の対象か否かの3つです。地主の方のご自宅にはほとんどの場合、大小様々な庭内神しがあります。現地調査して敷地部分を計測し、図面を添付して非課税財産として申告しています。広いご自宅の場合、立派な庭内神しがあるとそれなりに減額要素となります。

4.高圧線

最後にご紹介するのは、高圧線下にある土地の減額方法です。高圧電線が上空を通過している土地は、通常土地の謄本を確認すると「地役権」が設定されています。この地役権が設定されている土地は、安全確保のため、線下の建物には一定の建築制限が加えられます。この建築制限部分が減額要素となります。この減額割合は、建築制限の内容によって、次の割合を乗じた金額によって評価することができます。
 ①家屋の建築が全くできない場合・・・・・・・50%とその土地に適用される借地権割合とのいずれか高い割合
 ②家屋の構造、用途等に制限を受ける場合・・・30%
 現地調査時でポイントとなるのは、上空に高圧線が通っているにもかかわらず線下補償契約のみで地役権の設定がされていない土地がある場合です。住宅地図を見て、周りに鉄塔がある場合は要注意です。電力会社との間で締結した制約や契約書等を確認し、制限面積や減額割合を評価する必要があります。

5.現地調査はとても重要!

以上のようにいくつか土地評価の減額ポイントを説明してきました。他にも高低差が著しい土地や傾斜地など検討が必要な要素はまだまだあります。税理士業務というとオフィスで涼しく作業をしているのでは?と思われがちです。しかし、灼熱の中でも現地調査を行い、額に汗かいて測量したり、写真を撮ったり、何か減額要素はないかと目を凝らしております。

2025年8月15日

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ATO通信

基礎控除引上げは見せかけの減税?

 令和7年分の所得税からは、合計所得2,350万円以下の方は基礎控除額が引き上げられることになりました。基礎控除が増えるので確かに減税となりますが、対象は主に低所得者層に対するものです。それよりも、過去の税制改正を振り返ると所得控除などの縮小により実は増税がされ続けてきた経緯があります。

1. 基礎控除などの改正

 基礎控除の改正については、自民党と野党による駆け引きもあったので記憶に新しいところです。最終的には、基礎控除と給与所得控除の最低保証額が見直され、いわゆる103万円の壁は令和7年分から160万円に引き上げられました。この改正内容を見てみると、あくまでも低所得者層に対する手当てという側面が強いことが良く分かります。ある程度の稼ぎがある方については減税をさせたくないということなのでしょう。そこで、基礎控除がどのように変わったのかを確認してみましょう。

 今回の基礎控除の改正では、物価上昇を勘案して低中所得者層の税負担の軽減を図りました。そこで、低所得者層である合計所得が132万円以下の方(給与年収ベースで約200万円以下)については、恒久的に基礎控除を47万円増加して95万円に引上げました。ところが、いわゆる中所得者層については、2年間だけは15万~40万円増加しますが、令和9年分以後は10万円だけの増加であり、減税効果は限られます。また、合計所得が2,350万円を超えるような高所得者層の方は、そもそも改正がされておらず従前のままです。
 上記とともに行われた給与所得控除の改正では、その対象は給与収入が190万円以下の方だけで、その額も最大で10万円に過ぎません。
 このように、減税の影響は微々たるものに過ぎず、高所得者層はそもそも対象外とされているのです。

2. 住民税の基礎控除は改正なし

 今回の税制改正の目的は、物価上昇を勘案した結果として基礎控除の金額を見直すことです。しかし、政治的に地方自治体との調整がうまくできなかったからでしょうか、住民税の基礎控除については改正がされませんでした。つまり、低所得者層についても地方税では税の手当てをしなかったのです。

3. 過去の税制改正を振り返れば

 過去の税制改正を振り返ってみると、びっくりするくらい所得控除が縮小しているのが分かります。知らぬ間にジワジワと税負担が増加してきており、まさにステルス増税です。最近10年間の所得税に関する主な改正内容を挙げてみましょう。
・平成27年分~ 所得税の最高税率が40%⇒45%
・平成28年分~ 給与所得控除の上限230万円
・平成29年分~ 給与所得控除の上限220万円
・平成30年分~ 配偶者控除に制限を設ける
        (合計所得1,000万円超は適用除外)
・令和2年分~  給与所得控除の上限195万円
        基礎控除に制限を設ける
        (合計所得2,500万円超は0円)
 平成27年の所得税の最高税率の引上げを皮切りに、ほぼ毎年のように少しずつ増税されているのが分かるかと思います。特に給与所得控除の上限額は度々見直しがされており、給与所得者が狙われているようです。サラリーマンからはあまり文句が出ないだろうと踏んでいるのでしょうか。

4. 個人には厳しい世界

 最近の所得税の改正内容をみると、税法的なロジックがあまりないように思います。理由を付けて取り易いところから取る(増税する)というような感じです。特に高所得者層に対しては厳しいです。所得が高い方については、所得税の負担が減るような税制改正はまずないでしょう。そうすると、今までもこれからも、法人を上手に活用できるかどうかが税負担の軽減を図れるのか否かの分かれ目です。

2025年11月28日

贈与の取得時期はいつ?

 財産の贈与を受けた場合で、その贈与財産の価額が基礎控除額を超えるのであれば、取得した年の翌年に贈与税の申告が必要になります。したがって、財産の取得時期はいつなのか?ということがとても大切です。この取得時期、一見当たり前で簡単のように思われますが、変則的な取扱いもあるのです。

1. 贈与契約とは?

 まずは民法のルールから確認しましょう。
 贈与は、当事者の一方が財産を無償で与える意思を表示して、これについて相手方が受託をすることで成立します。つまり、あげましょう、もらいましょう、という契約によって成立するのが贈与です。
 そして、この贈与契約は、必ずしも書面で行う必要はなく、口頭で行うことでも良いことになっています。
 ただし、口頭による場合、つまり口約束の場合には書面ではっきりさせた約束事ではないこともあり、当事者はいつでも履行をしていない部分についてその贈与契約を撤回することができることになっています。

2. 書面と口頭では取扱いが違う 

 このような民法の取扱いを前提として、税務では原則的な贈与の取得時期を次のような取扱いとしました。
 書面による贈与・・・贈与契約の効力が生じた時
 口頭による贈与・・・贈与の履行の時

 口頭による贈与は、贈与の履行をするまではいつでも撤回することができます。したがって、本当に贈与が行われるのか否かが良く分からず、その実現性は不安定でいい加減な契約であるとも言えるでしょう。したがって、実際に履行をした時を取得時期としたのです。
 反対に、書面による贈与は贈与契約の効力が生じた時、一般的には贈与の合意ができた時を取得時期としました。
 そのため、所有権移転の効力が発生する時を書面に定めておけば、その時が贈与税の課税時期になります。
 そうすると、贈与契約書の内容によって課税時期が決まることを利用して、悪巧みを考える人がいそうですが、そうは問屋が卸しません。

3. 書面の場合の例外 

 税務署における贈与税の除斥期間、いわゆる課税することができる期間は、贈与税の申告期限から6年間です。なお、偽りその他不正の行為がある場合にはこれが7年間になります。
 そこで、贈与契約書を作成しておけば贈与税の申告をしなかったとしても、最長7年間が経過することで贈与税の課税を免れることができるのでは?と悪いことを考える人が出てきそうです。
 例えば、親から子への土地の贈与契約書を作成します。ただし、贈与による所有権移転登記は行わずに、贈与税の申告はしないというような具合です。
 この場合、登記簿に変動がないため、第三者が贈与の事実を知ることはできません。税務署も贈与を知ることができません。
 そのため、このような場合には書面による贈与であったとしても、財産の取得時期については例外的な取扱いがされます。
 具体的には、所有権の登記や登録の目的となる財産について、何らかの支障や理由がないにも関わらず、移転手続きをしていないような場合には、実際に登記や登録があった時に贈与があったものとして取扱われることになります。このように、贈与契約書の作成をしたとしても、長期間登記や登録をしない合理的な理由が無い場合には、原則的な取扱いは適用されません。たとえ公正証書によって贈与契約書を作成したとしても同じです。
 書面による贈与契約が存在していれば、契約の効力発生時が必ず財産の取得時期になるというわけではないのです。

4. 農地には注意

 農地を贈与するときも例外的な取扱いをします。農地については農地法の関係で、贈与をするのであれば農業委員会の許可又は届出が必要になっています。包括的な地位を承継する相続では許可等は必要ありませんが、贈与は違います。そのため、許可があった日又は届出の効力が生じた日を贈与の取得時期として取扱うことになっています。贈与契約書を作成した日ではありません。
 したがって、年末間際に農地の贈与をするときは注意しましょう。許可があった日又は届出の効力が生じた日によっては、贈与年が1年ずれてしまう可能性があります。ただし、年末までに許可等の申請書類を提出しているのであれば、翌年の3月15日までに許可等を受けられれば年内の贈与として取扱うことができます。

5. 税贈与の事実はしっかりと 

 贈与が行われたかどうかは、その客観的事実があるかどうかが重要です。贈与があったのであれば、その事実に基づき贈与財産の支配管理は受贈者へ移っているはずです。その点をしっかりとしておきましょう。
 贈与契約は仮装行為や予約契約なのでは?と疑われるようなものであると、その贈与はそもそも無かったことにされてしまうでしょう。

2025年11月11日

税務調査もAIの時代

 デジタルDXの流れもあり、最近の世の中をみているとAIの活用はもはや一般的になりつつあります。AIといえば、20年以上前のスピルバーグ監督の映画AI(Artificial Intelligence)をふと思い出して懐かしんでしまいました。AIロボットが外を歩き回るような日はまだ先なのでしょうが、最近は税務調査にもAIが活用されていることはご存知ですか。

1. 相続税調査へのAI利用が始まる

 法人税の調査では、すでに数年前からAIが導入されています。申告内容のデータに基づいて、AIが申告漏れの可能性が高い納税者を選定するなどしており、その活用がされているのです。
 この流れがいよいよ相続税にもやってきました。
 令和7年7月からは、相続税の税務調査についてもAIが本格的に導入されることになりました。AIの活用方法ですがこれは法人税と同じく、まずは税務調査を行う先の選定です。
 国税庁が独自開発したAIを活用してデータ分析を行い、その結果をもとに税務調査を行うべき先を効率的に選定します。

2. AIは何をする? 

 AIはどのように相続税の調査選定を行うのか。もう少し具体的な内容をみてみましょう。
 国税庁のAIシステムは、令和5年以降に発生した全国の全ての相続税申告書データを分析します。
 分析にあたっては、申告漏れなどが生じる可能性が高いかどうかを判断してスコア付け(数値化)します。そして、このスコアが高い場合には、申告漏れリスクが高い案件であるとAIが判断したものになります。
 現場の各税務署では、この結果をもとに実際に税務調査を行うかどうかの選定の参考にするというわけです。
 税務調査の必要がある事案を効率的に選定するためにAIを活用する、ということが導入背景ですので、スコアが高ければほぼ間違いなく税務調査が行われることになりそうです。反対にスコアが低ければ、調査の確率は低くなると思われます。いずれにしても、税務署全体の調査選定レベルは向上するでしょう。
 AIは、過去の調査事績を踏まえたうえで、確定申告書や財産債務調書などの情報も参考にしながらスコアを付けるようです。AIであれば学習をするはずなので、スコア付けのルールや内容は段々と改善されていくことでしょう。

3. 預貯金等はオンライン照会

 AIによる調査選定以外にも業務の効率化は進んでいます。相続税の調査ではお金の流れを確認するために、預貯金等の動きを把握する必要があります。そのため、税務署は金融機関に対して口座情報の照会を行うことになるのですが、いまやその多くがオンラインで行われています。数年前までは書面で照会を行っていたため結果を得るまでには時間がかかっていましたが、オンライン照会であれば数日で情報が取得でき、かつ簡単にできるようになりました。
 そして、オンライン照会を行うのはなにも銀行だけではありません。生命保険会社や証券会社についても順次対応を広げており、今後はクレジットカード会社や電子マネー業者にも拡充させることを考えているようです。
 マイナンバーが導入される際にも言われていましたが、税務署がお金の流れや決済情報をオンラインで簡単に把握できる時代になりつつあるのです。

4. 今後はAIが情報分析か

 いまのところは税務調査先の選定にAIを利用していますが、将来的にはこれに限らずもっと多様な業務に活用されていくと思われます。オンライン照会で得た金融機関の情報も分析されることでしょう。
 年数を経過すればするほどAIの学習量は増えますので、年々精度は向上するはずです。AIであれば人間よりも多くの情報分析を行えますから、今までよりも申告内容が細かくチェックされそうです。
 そうすると、対峙するこちら側も上手にAIを活用することが重要になってくるのでしょう。

5. 税務調査への対応力

 相続税は、法人税などの申告とは異なります。
 相続税の税務調査では、当然ですが被相続人はこの世にはいません。そのため、生前のこと、相続財産のことなどを本人に直接質問することができません。そこで、本人ではなく相続人などに状況を聞くことになります。このように、相続税の税務調査では相続人や税理士が応対するわけであり、ここが他の税務調査とは大きく異なるところです。
 AIも当然重要ですが、税務調査は現実世界で相対して行われます。だからこそ、様々な経験に基づいた専門家のノウハウ、勘どころはこれからも大切であり、そこが税理士の腕の見せ所です。

2025年9月30日

続・物納が使い易くなる?

 令和7年度の税制改正では、相続税の物納制度に関して見直し予定があると、2025年2月号でお伝えをしたところです。この見直しに関して、国税庁からその詳細な内容が発表されました。そこには、税制改正大綱からは見えない内容が結構盛り込まれていたのです。

1. 改正された内容

 大綱では、「物納許可限度額の計算の基礎となる延納年数は納期限等における申請者の平均余命の年数を上限とする等の見直しを行う」と記載されていました。
 最後に等という表記があるのが曲者で、このほどその詳細が明らかになったのですが、物納許可限度額の具体的な内容は次の3点になります。
 ① 将来の収入金額の減少が確実であると見込まれる場合の計算方法の明確化
 ② 物納計算時の延納可能年数を、相続財産の種類や平均余命年数を考慮して計算
 ③ 延納期間終了後における生活費及び事業経費を加算
 そもそも物納許可限度額は、現金による納付可能額、および延納による納付可能額を差し引いて計算しますので、その計算方法を見直したというわけです。ただ、これだけでは難しいですので、内容をひとつずつ確認することにしましょう。

2. ①年間の収入見込みの計算

 延納を分かり易くいうと、国から税金相当の借入れをして分割払いをすることです。物納は、延納による分割払いをしても返済することが難しい場合に限って、相続財産そのもので代物弁済するようなものです。そのため、分割払いの良し悪しを見極めるために、まずは収入見込みを計算することから始まります。
 ちなみに、この収入見込みは前年度の実績をもとに計算しますが、相続によって変動が見込まれるのであれば、それを加味する必要があります。例えば、相続財産から地代収入が発生するような場合には、その分を収入見込みに加算するという感じです。
 この取扱いは従前から変わっていないのですが、相続による変動の加味をうっかり忘れているようなケースが多いのでは?と感じます。これを忘れていると、国税局の担当者から必ず指摘が入りますので要注意ポイントです。
 今回の改正点は、延納期間中に収入金額の減少が確実であると見込まれる場合には、その減少内容を加味できることが明確化されました。確実とあるので、ある程度の客観性のある見込みが必要になるでしょう。
 記載要領には、「収入金額の減少することを証する書類を提出してください」との記載があり、例示として定年退職等により収入が減少することが挙げられています。
 このように、将来の収入減少が見込まれるようなときは、いままでよりも物納が使い易くなるわけです。

3. ②物納計算時の延納可能年数

 延納によって納付可能な金額を計算する際の年数は、延納可能最長年数と平均余命年数のいずれか短い年数を用います。平均余命年数は、2025年2月号のエーティーオー通信のとおり完全生命表による年数を利用します。
 新たな取扱いは、延納可能最長年数について相続財産の種類に応じた調整をすることになりました。不動産等は最長20年の延納、動産等は最長10年の延納と、期間が異なるためこれを財産割合で加重平均した期間を利用する感じです。
 いままでは、不動産等の割合が75%以上あると延納年数は一律20年とされていたのですが、今後は動産等の年数も加味した20年以下の年数と、平均余命年数のいずれか短い年数になります。実情にあわせて、年数の見直しを図ったというわけです。

4. ③3か月分の生活費等を加算

 今回の改正では、ちょっとしたおまけがありました。それが、延納期間終了後における生活費及び事業経費の加算です。いままでは、延納を判断するにあたり、当面の生活費として3か月分、当面の事業経費として1か月分の控除が可能でした。これが、今後は事業経費も同じく3か月分となりました。
 そして物納ですが、延納後の生活費等に関する配慮はいままでありませんでしたが、新たに延納期間終了後における当面の生活費及び事業経費を見てくれるようになりました。延納と同じく、生活費等の3か月分を物納許可限度額に加算できるようになったのです。
 たった3か月分だけの配慮ですから、そこまで多額にはならないでしょうが、面倒を見てくれる金額を多少増加してくれたのです。

5. 国税局とのやり取り

 今回の改正は、令和7年4月1日以後の相続開始分からが対象です。細かな改正点ではありますが、延納や物納を考えている方にとっては、いままでよりは使い易くなったと言えるでしょう。
 実際に延納や物納を申請すると、申請資料の計算が正しいのかどうか、細かなチェックが入りますがその多くが国税局扱いです。申告後も許可を受けるまでは、その対応に気を遣う必要があるのです。

2025年8月29日

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今月の言葉

言語を学ぶ

 久しぶりに会った高校・中学の後輩が言う。「私は実はあなたのことを尊敬していたんですよ。」「あなたのクラス担任だったT先生から聞いた話ですが・・」「君たちの先輩には、凄い男がいる。英語の教科書なんて、一ページに単語二、三語わかれば、大体何が書いてあるかはわかるそうだ。」
 ふむ、たしかに中学生の頃、そんなことを豪語していたような気もする。そしてそれはまんざら嘘ではない。たとえば筆者は、さほど英語に堪能な訳ではないが、英字新聞を斜め読みすれば、大体何が書いてあるかはわかるのである。何故かというと、ウクライナ情勢であれ、パレスチナ情勢であれ、どこかの国の選挙戦の情勢であれ、普段ニュースなどを見ていればおよその知識はすでに先に持っている。そこで英字新聞を読んで、昨日の出来事を示唆する二、三の単語が目に飛び込んでくれば、想像力を働かせて、昨日こんなことが起きたに違いないという、「凡その当たりをつける」ことができるのである。この「凡その当たりをつける」暗号解読みたいな言語習得法は、自分の全く知らない言語、たとえばイタリア語であっても、スペイン語であっても原理的には適用可能である。
 ちなみに筆者は、自分の学んだことのない言語を使う国に降りたって、十日もすれば、なんとか独りで飲食店に入って、料理を注文することができる。ただしこれにはリスクもあって、昔ドイツ語を知らないのに、ドイツの鉄道に乗って一人旅をしていたときに、とある駅で自信満々で「ビールとミートパイ」を注文したつもりだったところ、相手が変な顔をするので、「どうしたのだろう」と不安に思っていたら「ビールと木苺のパイ」が出てきてしまったということがある。これなどは「木苺」という単語を知らないのに、勝手に自分の想像で「このパイはミートパイにちがいない」と思い込んでしまったために起きた事故である。
 筆者が何故、どのように、かかる邪道に近い言語の学び方を覚えたかというと、それは筆者が、小学校1年生のときに、まったく英語を知らないのに、突然アメリカの公立小学校に入れられてしまったからである。小学校低学年というのは、言語を学ぶには微妙な年頃である。それよりもちいさい小児であれば、そもそも自分がどのように言語を習得したかの自覚がない内に言語は自然に身につくのである。一方小学校高学年から上であれば、母語以外の言語は、概ね学校で先生について学ぶもので、単語以外に言語を構成する方法(文法)や語尾の変化なども同時に学ぶ。外国の学校に入って、もし語学力が乏しいと判定されると、一年とか二年学級を落とされるか、自分の母語以外の言語を学ぶために特別クラスに入れられたりする。だが、小学校低学年では、「文法もへったくれもなく、いきなりその言語を使う」のが教育である。筆者は天才でも何でもないが、アメリカの学校に入ったその日のうちに、隣の少年が「今日家に遊びに来いよ」と招いているくらいはわかったし、二、三ヶ月後にはあまり不自由なく、他の子供たちと遊びの時に会話することができるようになった。
 授業の内容は、だいたい日本の小学校より幼稚であったから、それこそ「想像力を働かせる」方式で乗り切った。付け加えれば、発信の際に知らない単語を知っている単語に置き換える方法もある。これは「虎」という単語を知らないときは「黄色い、黒い縞の、強そうな、大きい猫みたいな動物」とか言うものである。筆者は、小学校で学んだ英語を帰国後一度完全に忘れた。が、邪道の方は忘れなかった。高校の上級生になるまでは、この邪道を用いて、英文法を知らずに(SubjectのSが主語を表す略語であることも知らなかった)なんとか英語の授業をやりすごすことができた。

2025年11月28日

東京六大学野球(続)

  先月では、東京六大学野球とこの稿の筆者との出会い、そして比較的ローカル試合である慶應-法政戦の風景などを書いたので、今月は東京六大学野球の中でももっとも華やかで、お祭りの要素の強い慶早戦(筆者は慶應義塾出身なのであえて早慶戦とは言わない)の風景について述べることにしよう。
 慶早戦は、必ず東京六大学野球の最終節に、(一日中に第一試合と第二試合が行われるのではなく)、かならず慶応対早稲田一試合だけの日程で行われる。そのほかにも、慶早戦特有の決め事があって、通常は先攻の大学が三塁側、翌日は先攻が入れ替わって、ベンチも一塁側と三塁側を入れ替えるのだが、慶早戦に限っては先攻、後攻に限らず慶応が三塁側、早稲田が一塁側と決まっている。これには歴史的な経緯があって、1933年10月22日当時三塁側応援席にいた早稲田側から食いかけのリンゴを投げられた慶應水原三塁手が、そのリンゴを早稲田側に投げ返したことから一大乱闘事件が起きたことにちなんで、両校手打ちの際に、爾後応援席は慶應三塁側、早稲田一塁側と取り決めたのだとのこと。(これを「水原リンゴ事件」という)
 さて、最近はどうか知らないが、この稿の筆者の学生時代には、慶早戦と言えば学生応援席に入場して応援歌を歌いたい学生たちが徹夜で並んで待っていたりしたものだ。そしていよいよ球場に入ると13時頃の試合開始までずいぶん長い時間を待つことになる。はじめの間は応援歌の練習や、マーチングバンドが応援歌ではないしゃれたポピュラーミュージックを演奏したりして時間を過ごすのだが、正午になるといよいよ慶早戦特有の儀式が始まる。まず内外野の両校応援団が全員起立して、「早慶讃歌花の早慶戦」を合唱する。その後先攻校のファンファーレが鳴ると応援席最上段に巨大な塾旗、または校旗が揚がる。そして慶應であれば「慶応讃歌」早稲田であれば「早稲田の栄光」の荘重な演奏とともに、旗は静々と応援席最前列まで行進するのである。途中「本日の旗手を務めますのは、○○高等学校出身○学部○年○○○○でございます」などの紹介があり、歓声とともに色とりどりのテープが旗に向かって飛ぶ。その後やっと塾歌、校歌の斉唱と両校エールの交換(なにせ慶應の塾歌なんぞは三番まで歌うと十五分はかかる)があって、ようやく野球試合開始となるのである。試合中も「若き血」や「紺碧の空」ばかりではなく、各回の攻撃開始時に歌う応援歌が大体決まっていた。特に7回には、また全員起立しての合唱とエールの交換がある。(六大学野球でこの7回のエールのときに校歌を歌わないのは、そもそも校歌がない東大の「ただ一つ」、塾歌が長すぎる慶應の「若き血」だけである)さて、試合が終わるとほぼ試合開始時の要領の通りまたエールの交換があり、さらに両校とも慶早戦に勝ったときに歌う特別の歌(慶應は「丘の上」、早稲田は「光る青雲」の四番?)を歌ったりする。
 すっかり野球の話ではなく、応援の話になってしまったが、これが伝統ある慶早戦のかわらぬ様式である。

2025年10月31日

東京六大学野球

9月になると、神宮球場は東京六大学野球秋季リーグ戦の真っ盛り。もっとも昨今では、野球人気はもっぱら米国大リーグ(MLB)の日本人選手の活躍に移ってしまい、その次が日本のプロ野球と甲子園の高校野球。六大学野球と都市対抗の社会人野球なんぞはすっかり地味な存在になってしまった。が、選手の技量はプロ野球の予備軍と言ってもよいし、以下に述べる独特の応援様式などを見ると、やはり東京六大学野球にはよき伝統の美しさもあると思うので、今日はそのことを中心に述べたい。

 東京六大学野球連盟が結成され、リーグ戦が慶應、早稲田、明治、法政、立教、東京帝国の六校で行われるようになったのは大正14年(1925年)。翌大正15年(1926年)には、六大学野球を開催する「ために」明治神宮野球場が完成した、と、連盟の発行しているガイドブックにはある。当時はまだプロ野球もなく、六大学野球は大相撲に次ぐ国民の人気スポーツであり、まだ普及したばかりのラジオによる実況中継とも相まって、今日では考えられない程の大衆の注目を集める存在であった。

 さて、この稿の筆者が初めて六大学野球に触れたのは、今から約半世紀前。1971年慶應義塾に入学した直後の春季リーグ戦、法政大学対慶應義塾大学の試合であった。日吉にキャンパスから当日の午後の試合を先輩に連れられて見に行った記憶があるから、たぶん5月の月曜日の試合(土、日が一勝一敗になると月曜日に勝ち点をめぐって第三試合が行われる)であったろうと思う。 法政横山晴久投手に対するに慶應義塾の四番打者は松下勝美の対決。連盟の公表している記録を調べてみるとこの春季リーグ戦は、法政が優勝した(その後の71年秋季から三季連続で慶應が優勝)とあるから、多分この試合も法政が勝ったのであろう。ともあれ、初夏のさわやかな風が吹く神宮球場、試合が終了したのは暮れなずむ頃、一塁側慶應義塾の応援席から、三塁側法政の応援席を眺めれば、傾く夕日を受けて輝く紺オレンジ紺三色縦縞の法政大学の大きな校旗がさっと上がるとともに、校歌の演奏が始まる。筆者は当時慶應、早稲田、明治の校歌くらいしか知らなかったが、初めて聴く法政の校歌は荘重でいかにも校風をよくあらわしており、三塁側内野学生応援席をほぼ埋めた学生たちの合唱が夕べの球場に響くのであった。ついで法政から慶應に向けたエールの後、今度はわれら慶應の塾旗が上がり、長い歌詞の塾歌の一番が合唱され、「フレー、フレー法政」のエール。そして、校旗と塾旗がお互いに礼をするように一度相手に向けて静かに倒されて、また上がる。これら儀式の間およそ15分。なにより、慶應の塾生となったことを実感する瞬間であった。筆者は、その伝統の様式美にうたれ、その後「神宮通い」をするようになったのである。慶早戦に至っては、実に在学中六年間全試合(たぶん30試合くらい)を完全にフォローしている。

2025年9月30日

公開鍵暗号

 先月は、暗号の共通鍵をどうしたら安全に更新できるかという課題を書いた。
 AさんとBさんが定期的にリアルの世界で面会する機会があるならば、その都度封筒に入れて紙に印刷された共通鍵の数列を渡せばすむのだろうが、暗号文を交換する者同士が距離の離れたところに存在する場合、インターネットや無線通信などでも安全に共通鍵の更新を行えるようにしなければならない。そこで発明されたのが公開鍵暗号という別のジャンルに属する暗号方式である。公開鍵暗号とは、ひと言で言えば、「暗号文を封筒に入れて中身を推定できないようにして、インターネットや無線通信で離れたところに送る」暗号方式である。
 たとえば、新しい共通鍵をBさんと共有したいAさんがいたとする。Aさんはまず自分が持っている新しい共通鍵をさらに公開鍵暗号(たとえばRSAとかECCとかいう)という特殊なアルゴリズム(数式)に乗じて、別の数列に変換する。その別の数列はインターネットや無線通信上で第三者にみられても、元の数列(共通鍵)に復号できない特殊な数列である。ところがBさんがこの特殊な数列を受け取るとなぜか自分だけは(まるで封筒を開くように)復号することができて、元の共通鍵を取り出すことができるのである。もちろん公開鍵暗号はただの封筒ではない。Aさんが共通鍵を公開鍵暗号に変換するときには自分のパスワードを入力する。Bさんが公開鍵暗号を復号するときには自分のパスワードを入力する。だが優れものなのは、AさんのパスワードをBさんは知らない。BさんのパスワードをAさんは知らない。つまり公開鍵暗号方式とは「封筒の開け方は自分しか知らない」のにAさんとBさんとの間で暗号通信のやりとりができる方式だということなのである。
 世間で公開鍵暗号がどのように使われているかというと、多くの場合は共通鍵の更新と共有のために使われている。が、用途はそればかりではなく、公開鍵暗号そのものを用いて暗号文のやりとりをすることもできる。但し、公開鍵暗号は共通鍵を用いた暗号よりも複雑なアルゴリズムを用いるので、計算量も多く、コンピュータにかかる負荷が大きい。このことがIoTの世界で組込機器を使用する場合には、大きな問題となる。先に述べた基本は共通鍵暗号を用いながら、共通鍵の更新に公開鍵暗号を用いるという、共通鍵と公開鍵の併用方式が多く用いられているのは、じつはこのIoTと組込機器の分野なのである。
 本稿の最後に、共通鍵、公開鍵の暗号方式として具体的にはどのようなものがあるかについて、少しだけ紹介しよう。共通鍵暗号では、DES(Data Encryption Standard)が1976年11月に米国政府規格として標準化され、改良されながら長く使われてきた。しかし、さすがに長い時間を経て学会などでこの暗号を破る実績が多く出てきたので、米国政府は新たな公募を行い、2001年からAES(Advanced Encryption Standard)が規格化され、実市場においても次第にDESと交代するようになっている。現在では、AESの共通鍵256ビットを用いた方式であれば当分の間はほぼ安全に運用できるとされている。公開鍵暗号では、民間のRSA社が開発したRSA方式と、米国政府が規格化したECC(楕円曲線暗号)方式が実市場で併用されている。

2025年8月29日

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