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相続対策はお早めに!
相続対策には、すぐに効果が出る対策と効果が出るまでに時間がかかる対策があります。すぐに効果が出る対策としては、例えば、生命保険への加入、相続人以外(孫など)への生前贈与、個人の不動産購入等があります。効果が出るまでに時間のかかる対策は、しっかり時間をかけて行うことで円滑・円満な相続につながるばかりでなく大きな節税効果が見込めます。今回は、効果が現れるまで時間がかかる相続対策に焦点を当てていきます。
1.小規模企業共済を使った死亡退職金非課税枠の活用
相続税では、相続人が受け取る死亡退職金は500万円×法定相続人の数まで非課税枠があります。そこで、不動産賃貸業を営むAさんは退職金の非課税枠を利用して相続税の納税資金を残そうと考えました。小規模企業共済に加入し、支払う掛金を所得控除して毎年の所得税負担を減らし、一方で亡くなったときに相続人が積立金額を「死亡退職金」として受け取ることにしました。
しかし、小規模企業共済は一括払いの生命保険への加入とは異なり、年間の積立金額に制限があります。1年あたりの積立金額は最大84万円のため、単純に考えると相続人が1人の場合でも非課税枠の500万円を積み立てるには単純計算で6年かかってしまいます。
2.生前贈与(暦年贈与)の活用
生前贈与すれば、基本的に贈与した財産は相続税の計算から切り離しをされます。そこで、Aさんは相続税の負担軽減をしようと、相続税の税率よりも贈与税の税率が低くなるように毎年2人の子に年間510万円ずつ贈与していくことにしました。
しかし、令和6年1月1日以降の贈与は、贈与財産を相続税に持戻計算する生前贈与加算の期間が7年に延長されており、相続人への贈与財産は7年経過するまで相続税の計算から切り離すことができません。
3.賃貸不動産の購入(小規模宅地等の特例適用)
(1)不動産を購入すると、その相続税評価額は、土地部分が路線価評価額、建物部分が固定資産税評価額を基に計算するため、一般的に購入金額より低くなります。その上で要件を満たせば、貸付事業用宅地等として一定の面積まで土地価額を5割引きできる小規模宅地等の特例が適用できます。資金に余裕のあるAさんは、近年の不動産市場の値上りや物件の利回りを考慮し、マンションを購入して賃貸を始めることにしました。その賃貸マンションの相続税評価額を計算してみると、購入金額の半分程度ですから、相続税の負担軽減対策ができました。
しかし、貸付事業用宅地の小規模宅地等は、被相続人が相続開始前から3年以上継続して事業的規模(貸間やアパートなら概ね10室、貸家なら概ね5棟以上)で貸付事業を行っていた場合を除き、相続開始前3年以内に新たに貸し付けられた建物の敷地では適用できません。貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例を適用するには3年以上貸付ける必要があります。
(2)3年以内に相続が開始する可能性を考え、マンション購入資金をAさんが経営する同族会社に出資し、同族会社でマンションを取得することにしました。
しかし、同族会社の100%株主であるAさんの株式の相続税評価額の計算では、課税時期(相続・贈与)前3年以内に取得した土地・建物を相続税評価額ではなく、「通常の取引価額(時価)」で評価しなければなりません。つまり、購入金額そのもので評価しなければならないため、会社の株価が下がるのは、マンション購入から3年後となってしまいます。
4.法人設立
原則として、個人で財産を所有するよりも、法人の株式を通じて財産を所有する方が相続税評価額は低くなります。そこで、不動産賃貸業を営むAさんは、所得税率が高く所得税の負担が大きいため所得税の負担軽減をしようと法人を設立し、その法人に賃貸物件を売却することにしました。なお、売却に当たっては、税務上の問題が生じないよう相続税評価額よりも高い「通常の取引価額(時価)」で取引を行うこととしました。Aさんの所得税は、法人に移転した分低く抑えることができました。
しかし、法人の株価は、開業後3年未満の会社の場合、特定の評価会社として、純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)だけで株価を計算することになります。会社の株価が下がるのは、設立して3年経過後となってしまいます。
5.まとめ
これまでの内容をまとめると次のようになります。

このように相続税では、相続直前に安易な節税ができないよう規制されているものがあります。また、生前贈与や法人化などは、より長い期間行うほど効果が大きくなりますので早めに実施するほうが良いといえます。反面、相続対策は後戻りができないものが多いため、税務や法務に関する専門家としっかりと相談して計画を立てることが大切です。
2025年4月15日
生命保険を確認しませんか
生命保険は、万一の際にまとまった金額の保険金を受け取れることはもちろん、税金面では相続税の非課税枠を利用することで節税対策になり、相続税の納税資金の確保に役立ちます。
そんな目的で加入した生命保険ですが、相続税の対象として必ずしも思いどおりになるとは限りません。この機会にあなたの契約した生命保険の内容をチェックしてみてはいかがでしょうか。
1.被保険者、保険料負担者、受取人の関係によって変わる税金の種類
死亡保険金を受け取った場合は、①被保険者、②保険料の負担者、③保険金の受取人が誰かにより、相続税、贈与税、所得税のいずれかの対象になります。

(1) 相続税は、上記の表のように被保険者と保険料負担者が同一の場合です。
(2) 贈与税は、被保険者、保険料負担者、保険金の受取人がすべて異なる場合です。
(3) 所得税(一時所得又は雑所得)は、保険料負担者と保険金の受取人が同一の場合です。
2.相続税の死亡保険金の非課税
被相続人が保険料を支払っていた死亡保険金は、相続税法上のみなし相続財産となり、受取人固有の財産として遺産分割の対象にはなりません。「相続人が受取人のとき」は法定相続人1人当たり500万円の非課税枠があります。たとえば、法定相続人が3人の場合は、1,500万円まで死亡保険金を無税で受け取れるということになります。
注意していただきたいのは、相続人以外の人が受取人の場合は非課税の適用がないということです。さらに、相続税額の2割加算という制度があるので、割増の相続税を支払うことになってしまいます。
3.契約上の受取人を変更したときの税金
税金のことを考えると、生命保険の受取人を名義変更する方が良い場合もあるでしょう。変更する場合は贈与税がかかってしまうのでしょうか?
生命保険の契約者や受取人の名義変更をしただけでは贈与税を課税されません。贈与税が課税されるのは、被保険者の死亡や保険期間の満期により、保険料を負担していない人が生命保険金を受け取った場合等に限られます。
4.相続後でも受取人は変更できる?
夫が独身時代に加入した生命保険、結婚後も親を受取人とし、受取人を妻子に変更するのを忘れたまま相続が発生したとします。親が「残された妻子が受け取るべき」として保険金をそのまま妻子に渡しました。この場合はどのようになるのでしょうか?
相続税法の規定からみれば、死亡保険金が親に支払われた時点で親に相続税、さらに親から妻子に死亡保険金を渡した時点で贈与税という二重の税金がかかってしまいます。しかも、親は相続人ではないので相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使えません。
しかし、実務上は、相続税の通達で、受取人の名義変更がされていなかったことに「やむを得ない事情があり、現実に保険金を取得した者がその保険金を取得することに相当な理由があるとき」は契約上の名義人ではなく実際に受け取った人を受取人として認めるとする取り扱いがあります。したがって、この救済策が認められれば、妻子が死亡保険金を相続により取得したものとみなして相続税の非課税枠をしっかり使うことができます。
5.まとめ
上記4の相続税の救済策は、建前として「やむを得ない事情」があるとき限り適用されるものですから、受取人を便宜上指定したにすぎず、うっかり手続きを失念していたといえるようなとき以外でも認められるかどうかは微妙なところです。
相続後に受取人を変更できるのは、契約上の受取人が同意しているなど、関係者の合意が必要です。親子仲が悪かったり、離婚した妻から現在の妻に名義変更し忘れていたときなどは相続後に受取人を変更するのが難しいケースといえます。
そもそも生命保険金は、あらかじめ指定した「死亡保険金受取人」に必ず支払われますから、遺したい人に確実に遺すことができるものです。無用な親族間のトラブルを避けるためにも、生命保険加入後の環境の変化に合わせて定期的なチェックと必要な名義変更を忘れずに行う必要があるといえます。
2025年3月14日
令和7年度税制改正の概要
令和6年12月20日に令和7年度の税制改正大綱が発表されました。今回は税制改正の主要項目のうち、特に注目すべき点をご説明します。
1.物価上昇局面における基礎控除等の改正
給与収入103万円を超えると扶養控除等の対象とならず、所得税課税が発生するいわゆる「103万円の壁」について、「178万円を目指して引き上げる」旨の3党合意がなされました(自民・公明・国民民主)。しかし、税制改正大綱においては、以下に記載のとおり123万円への20万円(基礎控除10万円と給与所得控除の最低保証額の10万円)の引上げとされています。
(1) 基礎控除の引上げ
合計所得金額が2,350万円以下である個人の控除額が、次表のとおり10万円引き上げられます。しかし、合計所得金額が2,350万円を超える場合に変更はありません。

(2) 給与所得控除の最低保証額の引上げ
55万円の最低保証額が65万円に引き上げられます。ただし、給与収入190万円以上に変更はありません。
(3) 特定親族特別控除(仮称)の創設
大学生年代の子のアルバイトにおける就業調整が行われていることに対処するため、特定親族特別控除(仮称)が創設されます。具体的には、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等(配偶者及び青色事業専従者等を除く。)で控除対象扶養親族に該当しない者を有する場合には、その居住者の総所得金額等からその親族等の合計所得金額に応じ、次表の控除額が控除されます。

(4) 基礎控除の引上げ等に伴う所要の措置
次の措置が講じられます。
① 同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件
58万円以下(現行:48万円以下)に引上げ
② ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額の要件
58万円以下(現行:48万円以下)に引上げ
③ 勤労学生の合計所得金額要件
85万円以下(現行:75万円以下)に引上げ
④ 家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費算入額の最低保証額
65万円(現行:55万円)に引上げ
(5) 実施時期等
上記改正は、いずれも令和7年分以降の所得税から適用され、源泉徴収関係については、令和8年1月1日以降に支払われるべきものから適用されます。なお、基礎控除の引上げを含む上記の改正については、今後の国会での議論を経ることにより変更される可能性があります。
2.子育て世代に対する生命保険料控除の拡充
令和8年分の所得税において、23歳未満の扶養親族を有する場合の新生命保険料に係る一般生命保険料控除の控除限度額が6万円(現行:4万円)に引き上げられます。ただし、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除を含めた合計適用限度額は、現行の12万円のままとされます。
3.確定拠出年金制度等の見直し
次に掲げる確定拠出年金法の改正が行われた後も、現行の税制上の措置(拠出時の小規模企業共済等掛金控除等、給付時の公的年金課税又は退職所得課税)が適用されます。
① 企業型確定拠出年金(DC)におけるマッチング拠出について、企業型年金加入者掛金の額は、事業主掛金の額を超えることができないとする要件の廃止
② 個人事業主等のiDeCoの拠出限度額(国民年金基金を含む。)の7,000円の引上げ
→拠出限度額は月額7.5万円
③ 会社員等の企業型確定拠出年金(DC)の拠出限度額の7,000円の引上げ
→拠出限度額は月額6.2万円(限度額に達するまでのiDeCoの加入限度額2万円の撤廃)
④ 年齢60歳以上70歳未満で現行のiDeCoに加入できない者のうち一定の要件を満たした者を新たにiDeCoの対象とする。
→拠出限度額は月額6.2万円
4.防衛力強化に係る財源確保
防衛力強化の財源確保のための措置として、防衛特別法人税(仮称)が創設され、併せてたばこ税が見直されます。
(1) 防衛特別法人税(仮称)の創設
令和8年4月以降開始する事業年度から、課税標準額となる法人税額(500万円控除後)に対し、税率4%が新たな付加税として課税されます。
(2) たばこ税の課税方式及び税率
加熱式たばこの課税方式が令和8年4月及び令和8年10月の2段階に分けて見直されます。また、たばこ税の税率は、令和9年4月、10年4月及び11年4月の3段階に分けて引き上げられます。
5.その他の主要な改正項目

2025年2月20日
高額所得に対する所得税負担の見直し~高額の不動産譲渡の際は注意しよう~
令和7年から新たに適用される所得税制に「極めて高い水準の所得に対する税負担の適正化措置」 があります。令和5年度の税制改正で創設され、今年の所得から適用されます。この制度の対象はどのような場合でしょうか。ずばり、株式や長期保有土地の譲渡益が非常に高額になる場合です。相続税の納税資金を捻出するため、これらの譲渡を行うとき、最終的な手取額のシミュレーションを行いますが、今後は、この制度を踏まえる必要があります。
1. 1億円の壁
給与所得や不動産所得のような総合課税の所得に対する所得税の税率は5%~45%とされており、所得が一定額を超えると、その超えた部分は高い税率で課税されます。一方、株式や長期保有土地の譲渡については、譲渡益の多寡にかかわらず一律15%の税率が適用されます。そのため、譲渡益が高額になると所得全体に占めるその譲渡益の割合が大きくなることもあって、次表のとおり、所得階級が1億円を超えると、所得税の負担割合(平均所得税額÷平均所得金額)が減少する結果となっています。“1億円の壁”と言われているのはこのことです。

2. 新たに導入される制度
新たに導入される制度の計算式は次のとおりです。①の金額が②の金額を上回る場合に限り、その差額分(①-②)の追加納付が必要になります。
①〔基準所得金額-3.3億円〕×22.5%
② 通常の所得税額(外国税額控除等の適用前)
①の算式は、3億3千万円を超える部分の所得は、最低22.5%の所得税負担が生じることを意味します。“基準所得金額”には、確定申告を行う所得に加え、特定口座のうち確定申告を省略(申告不要を選択)できる“源泉徴収選択口座”に係る所得などが含まれる点に注意が必要です。
3. 事例でみてみましょう
給与所得が500万円の会社員Aさんは、所得控除の合計額が200万円で、給与に係る所得税額は202,500円です(簡略化のため、復興特別所得税は考慮していない。以下同じ。)。この度、長期保有の土地を譲渡したところ、譲渡益は30億円でした。この場合の通常の所得税額(前記2.②の金額)は、次表⑧欄の450,202,500円になります。

次に、新たな制度による比較対象金額(前記2.①の金額)を求めますが、その金額は次表⑪欄の601,875,000円になります。この金額は、通常の所得税額(上記表⑧欄)を超えていますので、差額である151,672,500円(次表⑫欄)の追加納付が必要になります。そのため、土地の譲渡による手取額が、従前に比べ約1億5千万円も減少する結果になります。

4.追加納付が生じる譲渡益
前記3.の会社員Aさんの場合(総所得金額(給与所得)500万円、所得控除額200万円)、追加納付が発生する譲渡益はいくら位からになるのでしょうか。
計算過程は省略しますが、追加納付税額は、土地の譲渡益20億円で約7,667万円、譲渡益10億円で約167万円となり、譲渡益が9億7,770万円以下であれば追加納付はありません。
5.超富裕層は“源泉徴収選択口座”に注意が必要
土地の譲渡益は確定申告が必要ですから、新制度の対象かどうかは申告書作成段階でチェックします。“基準所得金額”には、前記2.の“源泉徴収選択口座”に係る所得のほか、上場株式等に係る利子配当(源泉徴収の対象)も含まれます。源泉徴収選択口座の譲渡益や利子配当が非常に高額になる超富裕層の方は、この制度の対象かどうか確認が必要です。特定口座年間取引報告書、配当等の支払調書などの法定資料は、金融機関から税務署に提出されますので、税務署はその内容を確認して新制度適用の有無のチェックを行うと考えられます。
2025年1月15日
ATO通信
物納を利用して借地人になる?
前回のエーティーオー通信では物納の話をしましたが、物納に関しては面白い利用の仕方もあります。物納許可を受けるとその財産は国の所有になりますが、物納後は国からその財産を借受ける手続きも可能です。このようにすれば物納後も引き続き利用ができるというわけです。
1.何を物納する?
延納によっても相続税を納付することが困難であるとして物納申請ができる要件を満たしました。そうすると、次は物納する財産は何にするかを考えなくてはなりません。相続税に充当される金額、これを「収納価額」といいますが、この金額は物納財産の時価ではなく、相続税評価額で行うというルールがあります。したがって、相続税評価額よりも高く売却できる可能性があるならば、物納などせずに売却をした方が有利であり、手残りは多くなります。このようなことから、実務的には高く売却することが難しい貸地(いわゆる底地)を物納対象にすることが比較的多いのです。
2.底地を物納する
貸地があればよいですが、無い場合やそれだけでは足りない場合はどうするのか?もし相続財産に貸地以外の土地があるならば、自ら底地を作って物納するのはいかがでしょう。例えば、相続財産として賃貸アパートの土地建物があるとします。このときに、賃貸アパートの土地の底地部分だけを物納に充てるのです。物納後は建物と借地権を所有することになるため、相続人は国へ地代を支払って土地を借受けることになります。すなわち、土地を所有しないで賃貸アパート経営をする借地人の立場になるわけです。こうすれば、地代の支払いは必要になりますが、物納後も賃貸アパート経営を継続して収入を得ることができます。なお、当然ですが物納対象はあくまで底地部分ですから収納価額は「相続税評価額×(1-借地権割合)」です。
ちなみに、自宅の土地建物の底地部分だけを物納対象にすることもできますが、この場合には一定の要件をクリアする必要があります。
3.無償返還の底地
被相続人は賃貸アパートの敷地である土地だけを所有しており、賃貸アパートは同族法人が所有しているケースも多いと思います。このようなときは、土地の無償返還に関する届出書を提出して同族法人は地代を支払っていることでしょう。この場合の土地の相続税評価額は、土地の自用地評価額の80%で評価されているはずです。そこで、この土地を物納すればこの80%相当が収納価額として相続税に充てられ、かつ同族法人は借地人として土地を借り続けられると思うかもしれません。しかし、この場合にはそうはなりません。物納することはできますが、国と同族法人の間で土地の無償返還に関する届出制度を継続することはできないため、この場合には底地の物納として取扱われることになります。つまり、先ほどと同じように収納価額は「相続税評価額×(1-借地権割合)」です。土地のうち底地部分だけが物納されることから、物納後は次のような権利関係になります。

4.物納で借地人になる
このように、土地のうち底地部分だけを物納した場合には、相続人は新たに借地人となるのです。今までは土地そのものを所有していたことから違和感を抱く方もいそうですが、国へ地代を支払いさえすれば土地利用ができることに変わりはありません。日本では借地人の権利が非常に強いので、思ったよりも問題が無いと感じるかもしれません。また、何と言っても地主である土地所有者は国です。これは考えようによっては優良地主です。なぜなら、底地である土地を勝手に第三者に売却するようなことは行わないからです。貸地はその契約の性質等から、原則として競売などは行わず、売り払うのであれば土地を利用している借地権者に対して行うことになっているからです。知らないうちに地主が変わるようなことはありません。
5.買い戻しもできる
底地物納をして借地人として利用をしてきたが、相続からだいぶ年月も経過して資力も回復したというのであれば、国から土地を買い戻すこともできます。ケースバイケースですが、物納もうまく活用すれば使い道が色々あるのです。
2025年3月31日
物納が使い易くなる?
令和7年度の税制改正大綱では、相続税の物納制度に関する見直しが盛り込まれました。他の改正内容に比べればマイナー項目なのかあまり注目されていないようですが、これからは物納が使い易くなりそうです。
1. 物納をするには
相続税は金銭で一括納付することが原則です。ただし、この納付が難しい場合には現預金による一部納付後の相続税について、延納や物納があるのはご承知の通りです。このうち延納については、以前にも何度か取り上げて述べてきましたが、その内容は最長20年間の元金均等の分割払い制度と思って頂ければ良いでしょう。そして、この延納によっても納付することが困難な場合に限って、物納が適用できることになっています。
つまり、物納を利用したいと思っていたとしても、延納を利用すれば相続税の全額を納付することが可能であると判断される場合には、そもそも物納申請すらできない取扱いになっているのです。

2. 収入があると物納は難しい
延納によって全額納付が可能か、それとも延納でも難しいので物納を認めるかの判断基準はおおまかには次のようになります。
まず、①物納を申請する方の今後の年間の収入見込みを計算します。そこから、②配偶者などの扶養者の人数に応じて定められている年間生活費、所得税や社会保険料の負担額、③事業に必要な経費を差し引いた金額を出します(①-②-③)。この金額を、国は1年間に税金に充てられる納付資力だと見なします。当然ですが、②に遊興費などは入りません。多少の金額調整は可能ですが、税金・社会保険料と必要経費を差し引いた後の稼ぎは全て納税のために使えるはずだという厳しい内容です。この金額に延納可能年数を掛けたものが、延納によって納付可能な金額となります。そして、相続税がこの延納可能額を超えるのであれば、その分に限りようやく物納ができるという流れです。
一般的に物納を考える方は相続財産に占める不動産等の割合が高いため、延納可能年数は最長期間である20年になるでしょう。したがって、相続後の収入がある程度見込まれる場合は20年を掛けた金額が多額に上り、物納が認められないケースが多発します。これが、物納は難しいと言われる1つの要因です。
3. 延納可能年数の見直し
このように物納が難しいのは、納付すべき相続税から先に延納可能額を差し引き、その残りについてだけ物納を認める計算方法になっているからです。しかし、よく考えてみましょう。延納は最長20年とされてはいるものの、その方が高齢であったとしたらどうでしょう。悲しいことですが、もしかしたら20年経過前に死亡してしまう可能性もあります。本人の死亡により延納できない期間があるのであれば、その分は計算年数を少なくしても良いはずです。そこで、令和7年の税制改正では延納可能年数に上限が設けられる予定です。
具体的には、物納申請者の平均余命を延納可能年数の上限として、物納できるか否かの判断をすることになります。これからは、年齢によって物納可否が異なる結果になります。
4. 高齢だと物納しやすい?
平均余命の年数は、厚生労働省が公表している完全生命表を用いると思われます。そこで、平均余命が20年を切るのは何歳なのか?調べてみました。

男性は65歳を超えると、女性は71歳を超えると平均余命が20年を切るようです。是非とも物納を利用したい場合には、この年齢以上の相続人が物納予定財産を相続すれば、いままでよりも延納可能額が少なくなります。つまり、物納制度は使い易くなるのです。長寿の世の中、相続人が高齢なケースが増えています。物納をしたいのであれば、相続人の年齢までを考慮した遺産分割をする必要が生じるのでしょうか。
5. 物納は延納とセットで考える!
物納は、延納とセットで考えなくてはならない制度だとお分かりになったと思います。相続税の納税については、延納・物納の助言もできる税理士にご相談を!
2025年2月28日
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