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土地評価のポイント~現地調査で評価が下がる!?~

相続税の申告書を作成する場合に、弊社で最も注意して行うポイントの一つとして土地評価があります。路線価が高い都心部では土地評価の仕方によっては、相続税に大きな影響を与えます。今回は、現地調査をきちんと行うことにより確認している土地評価の減価ポイントをご紹介します。

1.相続税における土地評価の原則

土地評価は、基本的に路線価方式で算定しますが、一部地域では倍率方式で算定します。路線価方式の場合は、下記のように評価額を求めます。
 ○土地の相続税評価額
  1㎡当たりの路線価×補正率×面積(㎡)
 補正率は、土地の形状や奥行・間口の広さなどに応じて減額率が決まります。例えば、「細長くいびつな土地であれば正方形の土地より10%減額しよう。」というようなものです。実際の土地は綺麗な正方形の土地ばかりではありません。使いにくく価値が下がる場合には、減額補正が可能になります。この減額補正ですが、机上で見ているだけではすべてがわかりません。弊社では、路線価地域の場合必ず現地調査を行い、減額要素がないか確認を行います。

2.セットバック

減額要素で意外と多いのが、セットバックです。セットバックとは、一般的に敷地や建物を道路や隣地などの境界線から後退させることをいいます。2項道路の中心線から2m後退した線が道路の境界線とされています。セットバックの対象となる敷地部分の評価が自用地評価額の70%引きとなります。具体的に計算すると次のとおりです。

自用地評価額:
 30万円(1㎡路線価)×300㎡=9,000万円
セットバック地積:
 0.5m×30m=15㎡
減額する金額:
 9,000万円×15㎡/300㎡×0.7=315万円

2項道路に該当するかどうかは、区役所等の建築指導課で確認できます。セットバックの地積は、道路台帳や隣地の建築計画概要図を参考にすると具体的に算出が可能になります。現状は、セットバックの必要はないが、将来建物を建替える場合は、敷地を後退する=有効敷地面積が減少することとなり、土地の評価も下がります。同じ2項道路上に複数の貸地をお持ちの地主の場合、セットバックの評価減はかなりまとまった金額となります。

3.庭内神し

次にご紹介する減額要素としては庭内神しがあります。
 庭内神しとは、屋敷内にある神社や祠など、ご神体を祀って日常的に礼拝の対象としているものを指します。以前は、この庭内神しのみが非課税財産の対象でした。しかし、平成24年の改正により庭内神しとその敷地等が密接不可分の関係である場合には、敷地等も一体のものとして非課税財産となりました。しかし、必ずしも非課税として認められるわけではなく、以下条件があります。①敷地への定着性②建立の経緯・目的③日常礼拝の対象か否かの3つです。地主の方のご自宅にはほとんどの場合、大小様々な庭内神しがあります。現地調査して敷地部分を計測し、図面を添付して非課税財産として申告しています。広いご自宅の場合、立派な庭内神しがあるとそれなりに減額要素となります。

4.高圧線

最後にご紹介するのは、高圧線下にある土地の減額方法です。高圧電線が上空を通過している土地は、通常土地の謄本を確認すると「地役権」が設定されています。この地役権が設定されている土地は、安全確保のため、線下の建物には一定の建築制限が加えられます。この建築制限部分が減額要素となります。この減額割合は、建築制限の内容によって、次の割合を乗じた金額によって評価することができます。
 ①家屋の建築が全くできない場合・・・・・・・50%とその土地に適用される借地権割合とのいずれか高い割合
 ②家屋の構造、用途等に制限を受ける場合・・・30%
 現地調査時でポイントとなるのは、上空に高圧線が通っているにもかかわらず線下補償契約のみで地役権の設定がされていない土地がある場合です。住宅地図を見て、周りに鉄塔がある場合は要注意です。電力会社との間で締結した制約や契約書等を確認し、制限面積や減額割合を評価する必要があります。

5.現地調査はとても重要!

以上のようにいくつか土地評価の減額ポイントを説明してきました。他にも高低差が著しい土地や傾斜地など検討が必要な要素はまだまだあります。税理士業務というとオフィスで涼しく作業をしているのでは?と思われがちです。しかし、灼熱の中でも現地調査を行い、額に汗かいて測量したり、写真を撮ったり、何か減額要素はないかと目を凝らしております。

2025年8月15日

老人ホームへの入居と資産税

 健康上の理由などから老人ホームに入居される方が多くなってきました。老人ホームといっても、より快適な暮らしを求めてご夫婦で一緒に入居するなど、様々な利用方法があるようです。老人ホームへの入居と相続税・贈与税・譲渡所得の留意点をご説明します。

1.老人ホームへの入居(相続税・贈与税)

 老人ホームに入居する場合、月々の利用料のほかに入居一時金を支払う場合があります。入居一時金は、金額は施設によって違いますが、通常、専用居室の家賃やサービス費用等の前払分として支払うものなので、入居者が亡くなると一部が返還金として戻ってくることがあります。
(1) 親族がお金を管理するとき
 税務上、入居一時金や施設利用料は、入居者自身が負担すべきものと考えるのが基本です。入居者のお金を管理する親族の方が自分のお金で入居費用等を支払った場合は、入居者にお金を貸したということができますから、きちんと管理すれば相続税で債務控除できます。そのような意味で、管理者は、将来の相続税や相続人間の遺産分割でトラブルにならないよう領収書等を保管し、記録を残しておくことをお薦めします。現実には、入居者に対する貸付金は、貸した人が相続でその債務を相続すれば、消滅してしまうためお金は動きません。
(2) 親族が費用負担するとき
 入居者自身は預金がほとんどなく、入居一時金等を支払うことができない場合があるでしょう。このようなときに入居しない、入居契約の当事者でもない配偶者や子など親族が入居一時金等を支払うと、入居者に対する贈与となります。しかし、入居一時金等は、基本的に贈与税の非課税財産に該当するので、贈与税も相続税(生前贈与加算)もかかりません。つまり、親族が負担する入居一時金等は、老人ホームでの「日常(介護)生活を行うために通常必要な費用」なので贈与税がかかりません。ただし、入居一時金であっても、1億円超の高額で、フィットネスルームやプールなどの共用施設を無料で利用できるような豪華絢爛な施設の場合は、「日常生活を行うために通常必要な費用」に該当しないとされた事例がありますので、注意が必要です。
(3) 返還金の受取り
 入居一時金を支払うと、退去時に返還金が戻ってくることがあります。亡くなった方が支払った入居一時金に係る返還金は相続税の課税財産になりますので、注意が必要です。なお、事前に返還金の受取人を指定しておくのが通例です。老人ホームの都合で便宜的に受取人を指定したにすぎないような場合、返還金は相続人間の遺産分割の対象財産となるため、指定受取人が貰えるとは限りません。

2.小規模宅地の特例(相続税)

 住まいは、老人ホームに入居すると、自宅から老人ホームに移ります。相続直前の住まいは老人ホームとなるため、小規模宅地の特例は適用できないのではという疑問が生じます。これは、介護のために入居したなど一定の要件の下、老人ホーム入居直前の状況から、自宅を住まいとして判定することもできます。小規模宅地の特例は、自宅敷地330㎡までの評価額を80%引きできる相続税のお得な特例です。重要な特例ですから施設入居前から適用できるか検討しておくことをお薦めします。

3.居住用財産の譲渡の特例(譲渡所得)

(1) 本人居住用財産の譲渡の特例
 老人ホームに入居すると、自宅の管理ができない、施設利用料を捻出するためなど、自宅の売却を考えることもあるでしょう。入居者が所有する自宅を売却したときは、住まいとして使わなくなってから3年を経過する年の年末までに売却すると譲渡税がお得です。一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円まで控除することができます。さらに、自宅と敷地の所有期間が売った年の1月1日で10年を越えている場合には、3,000万円控除と併せて軽減税率の特例の適用を受けることができます。ただし、自宅を売却してしまうと、相続税ではその土地に小規模宅地の特例が受けられなくなりますので、注意が必要です。
(2) 相続空き家の特例
 相続後の自宅の売却であれば、小規模宅地の特例を適用できる場合があります。被相続人がひとり住まいだった場合は、その住まいを相続した相続人が、相続後に空き家となっている家屋又は敷地の譲渡にあたり一定の要件を満たした場合、譲渡所得から最高3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)まで控除することができます。この特例は、被相続人が相続開始直前に老人ホーム等に入居していた場合でも一定の要件の下、適用を受けることができます。ただし、相続税の一部を譲渡経費とする「取得費加算の特例」との併用はできません。

4.まとめ

 介護が必要となった場合や住まいの売却には、税金の様々な優遇制度が用意されていますので、うまく使って税負担を抑えたいところです。しかし、特例適用が可能か、どちらがお得かの判定は個々の事情で変わってくるので、難しい部分があります。相続や自宅の売却は一生に何度もあることではありませんから、慎重に検討する必要があると思います。お悩みの方はご相談ください。

2025年7月16日

税制非適格ストックオプションの課税関係について考える

 今回は、実際にお客様からご相談を受けた体験を基に、無償により取得した税制非適格ストックオプションに関する課税関係について考えていきたいと思います。

1.ストックオプションとは

 ストックオプションは、会社が自社または子会社の役員、従業員等に対して付与するもので、自社の株式を一定の期間内にあらかじめ定められた権利行使価格で購入する事ができる権利です。企業が優秀な人材を確保して高い士気を維持するための手段として、重要視されています。
 ストックオプションを行使して自社株式を取得した役員や従業員等は、会社の業績が良くなって株価が高騰したときに、あらかじめ定められた割安な権利行使価額で自社株を取得し、その株式を売却することにより、多額の利益を得ることができます。
 通常は、株式を売却すると、譲渡益に対して所得税等がかかりますが、ストックオプションを行使して取得した株式の取得価額と課税関係はどうなるのでしょうか。
 今回は、無償により取得した税制非適格ストックオプションの課税関係について、事例を用いて考えていきます。

2.事例

①権利付与:20X1年
会社から200円で購入する権利を無償により取得しました。この時の株価は100円でした。
②権利行使:20X2年
株価が700円に上がったため権利を行使し、株式を200円で取得しました。
③株式売却:20X3年
株価が1,000円に上がったので、株式を売却しました。

3.権利行使し株式を取得したときに給与等として課税

20X2年に、時価700円の株式を権利行使価額の200円で取得したことで、経済的利益を受けました。
課税される金額は以下の通りです。

 安く買うことができた500円は、役員や従業員等の場合は給与等として総合課税で課税されることになるため、最大で約55%の所得税等がかかります。
 この時点では、キャッシュではなく株式として持っている状態ですが、税金を払う必要があります。給与所得は総合課税ですから、所得が高額な方はより高い税率になります。

4.株式売却時には譲渡所得として課税

20X3年に、株価が1,000円に上がりましたので、株式を売却しました。
株式等に係る譲渡所得として課税される金額は以下の通りです。

 株式等に係る譲渡所得は、分離課税になりますので、譲渡所得300円に対して一律約20%の所得税等がかかります。

5.通常の株式売却との相違点

 ストックオプションは、上記3にて、権利行使し株式を取得したときの経済的利益に対して総合課税で課税されます。通常の株式を売却した際と比較すると、相違点は下記表のとおりです。

種類総合課税
税率:最大約55%
分離課税
税率:約20%
課税される
金額の合計
ストックオプション500円300円800円
通常の株式0円800円800円

 課税される金額の合計は、どちらも800円ですが、ストックオプションは500円が総合課税になりますから、最大で500円×35%(総合課税55%-分離課税20%)で175円税負担が大きくなります。

6.海外の会社の場合に源泉徴収されていないときは確定申告が必要です。

 日本の会社のストックオプションを行使して取得した自社株式は、株式という現物給与なので、源泉徴収税額は、役員、従業員等が会社にその税額をいったん支払い、会社がその税額を納付します。株式からの配当や、株式を売却した際の譲渡益についても、源泉徴収ありの特定口座で管理していれば、源泉徴収により納税は完結します。
 しかし、日本に居住されている方で、外国の親会社等からストックオプションを取得した場合には、注意が必要です。権利行使し株式を取得したときの給与等は、「国内源泉の国外払い」なので源泉徴収は不要になりますから、源泉徴収されません。したがって、ご自身で確定申告をする必要がありますので忘れずに確定申告をしましょう。

2025年6月16日

不動産所得の事業的規模~10万円控除と65万円控除の違い~

 不動産所得の申告に当たり、青色申告の承認を受けていれば、一定の要件を満たすことで青色申告特別控除を適用することができます。この特別控除は、他の要件を満たしていても、事業(事業的規模)であれば最高65万円、業務(事業的規模以外)であれば、10万円と区分されます。この事業的規模と事業的規模以外の区分を解説いたします。

1.不動産所得の事業的規模

 不動産所得は、不動産等の貸付けによる所得です。不動産等の貸付けが事業として行われているかどうかは、原則として、社会通念上「事業」と称するに至る程度の規模か否かで判断するとされています。これでは具体的なイメージを掴み辛いので、形式的な判断指標として、所得税基本通達でいわゆる「5棟10室基準」を定め、以下のいずれかを満たす場合は基本的に事業的規模(事業)として不動産の貸付けが行われているものとして取り扱われています。
 (1)独立した家屋の貸付けであれば、おおむね5棟以上であること
 (2)貸間やアパート等、貸与することができる独立した室数がおおむね10室以上であること
 この基準では、貸間やアパート2室を1棟に換算することとなりますので、例えばアパート6室、戸建て2棟は独立家屋5棟相当となり、事業的規模に該当します。
 所得税基本通達に定められてはいませんが、
 ① 駐車場5台を部屋1室とする
 ② 貸地5カ所を部屋1室とする
 という換算もできるようですので、組合せて5棟10室基準を満たせば、事業的規模になると考えられます。
 共有の場合は、棟数や部屋数に持分を乗じる必要はありません。6棟を2名で共有している場合、3棟相当とはならず、2名とも5棟以上として事業的規模で貸付けを行っていると判断します。

2.5棟10室基準を満たさない場合

 上記の形式基準を満たさないものの、賃料収入が比較的多額で、かつ、不動産管理に事務量を要するような場合は、個別の内容から判断することとなります。所得税基本通達では、個別判定の判断指標として、賃貸収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみて、5棟10室基準に準ずると認められる事情があれば、事業的規模(事業)として不動産の貸付けが行われているものとして取り扱われます。
 この判断には、事業の性質として掲げられる
 ① 営利性、有償性
 ② 反復・継続性
 ③ 自己の危険と計算における事業遂行性
 ④ 精神的・肉体的労力の程度
 ⑤ 人的・物的設備の有無等
を要素として、それらを総合して事業該当性が判断されています。過去の裁決では、収入が多くても事業的規模と認められなかった事例や、不動産貸付に係る維持管理等の程度が相当低いとして、事業的規模と認められなかった事例があります。これらのことから、貸主が自ら役務提供を行う度合を重視して判断されていることが窺えます。

3.事業的規模と事業的規模以外の税務上の違い

 不動産貸付けが事業的規模と事業的規模以外では、青色申告特別控除以外にも税務上の取扱いに違いが生じます。例として、
 ① 賃貸物件の取壊しや除却、滅失があったときに資産損失(除却損)として経費に算入できる金額
   事業的規模…全額経費算入
   それ以外…不動産所得の金額を限度として経費算入
   (=資産損失による赤字を計上できない)
 ② 青色事業専従者給与又は事業専従者控除
   事業的規模…適用有り
   それ以外…適用なし
等があります。事業的規模以外の場合は、特に①賃貸物件の取壊しの際に注意が必要です。仮に、1月に賃貸を終了して取壊しを行うと、賃料収入が1か月分しかないため、取壊しによる資産損失が通算しきれず、その通算しきれない損失を切り捨てることになってしまいますので、より多くの収入と通算することができる年末の取壊しのほうがお得です。
 なお、資産損失は、賃貸物件の取壊しを開始したタイミングで経費に算入することができます。これに対し、取壊し費用は工事が完了したタイミングで経費に算入します。年内で賃貸を終了し、取壊しを行う場合、取壊し工事が年をまたいでしまうと、その工事費部分は年内の経費に計上できなくなります。

4.違いに注意

 不動産貸付けの規模により、青色申告特別控除以外の税務上の取扱いの違いにも気を配る必要があります。取壊し、建替え等のご予定があるときは、ご相談ください。

2025年5月15日

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ATO通信

新制度スマート変更登記ってなに?

 すでに令和6年4月1日から相続登記の義務化が始まっています。これまで相続登記を行うかどうかは任意でしたが、それが義務化され罰則も設けられました。そして、これに引き続き令和8年4月1日からは、住所等変更登記の義務化がスタートします

1. スマート変更登記とは

 令和8年4月1日からは、不動産の所有者は「住所や氏名・名称」の変更が生じた場合には2年以内にその変更登記を行わなければなりません。相続登記と同じく義務化ですので当然に罰則が設けられており、正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料の適用対象になります。義務化の対象は住所や氏名等の変更ですので、個人であれば次のような場合です。
 ① 引っ越しなどで住所が変わった場合
 ② 結婚などで氏名が変わった場合
 氏名の変更も含まれますので、結婚や養子縁組時などには注意が必要です。不動産を多数所有している方などであれば、登記の申請自体が煩わしいと思うことでしょう。もしも司法書士へ登記依頼をすれば手数料も生じます。
 そこで、新たに「スマート変更登記」という制度がスタートしました。この制度を利用すると、法務局が職権で住所や氏名等の変更登記を行ってくれます。つまり、自分で登記申請を行わなくても良いという訳です。
 スマート変更登記を利用したい方は、氏名、氏名のフリガナ、住所、生年月日、メールアドレス(これを検索用情報といいます)をあらかじめ法務局に申出します。

2. メアドの登録が大事! 

 個人のスマート変更登記の仕組みはこうです。①法務局は検索用情報をもとに定期的に住基ネットに照会をかけます。②住所、氏名の変更があればその情報の提供を受けます。③変更があった方については変更登記をしてよいかどうかの確認メールを送信します。④変更登記をして良いと回答があった方だけ、職権による変更登記を行います。
 ここでのポイントは、④で了解が得られた場合のみが対象ということです。住所を公示することに支障があるDV被害者等や、住基ネットの趣旨等にも配慮する必要があるとして事前に意思確認を行うルールになっているからです。したがって、検索用情報として登録したメールアドレスが間違っていたり、本人がメール確認を忘れたりすると職権による変更登記は行われません。
 つまり、スマート変更登記はメールアドレスの登録とメールの確認が何よりも大事なのです。検索用情報の申出をしたから自分は大丈夫!と思っていたとしても、結局は義務違反になってしまう可能性もあります。

3. 法人版もある 

 法人版のスマート変更登記もあります。これは、あらかじめ法務局に会社法人等番号の申出をすれば利用できます。法人の住所や名称は、そもそも法務局で管理されていますので、商業登記簿の変更登記があればそれを基に情報を連携します。個人の方と違ってDV等への配慮もいりませんので、メールで事前確認する必要はありません。不動産をすでに所有している法人であれば、会社法人等番号の申出さえしておけば、勝手に変更登記を行ってもらえます。

4. 不動産所有者のリスト化 

 住所等変更登記が義務化される背景は、所有者不明土地の問題を解消しようという流れの一環です。これは、すでに始まっている相続登記の義務化と同じ理由です。不動産の登記簿から所有者の判明ができて、正しい所在先に連絡することを可能とする、そのための整備事項というわけです。そして、相続登記をするためには、登記が必要な不動産を容易に把握できなければなりません。
 そこで令和8年2月からは、所有権の登記名義人となっている不動産について、人ごとの一覧的なリストを交付請求できる「所有不動産記録証明制度」が始まります。なんと、全国の不動産から特定の者が所有権の登記名義人となっているものを法務局が検索、抽出して、そのリストを交付してくれるようになるのです。

5. 被相続人所有の不動産を検索!

 詳細はこれからですが所有不動産記録証明制度では、①自分が所有権の登記名義人となっている不動産の交付請求、②被相続人が所有権の登記名義人となっている不動産についての相続人等からの交付請求、ができる予定です。この制度を上手に活用すれば、相続不動産の把握漏れは無くなることでしょう。
 すでに、新たに個人が所有権の登記名義人となる場合は、原則として検索用情報を申し出ることが必要になっています。スマート変更登記の申出制度と合わせて運用することで、氏名(フリガナ)、住所、生年月日の把握ができるようになります。法務局としては、同姓同名への対応もバッチリといったところです。この制度が始まれば、当然ですが税務署だって相続税の税務調査に活用してくることでしょう。

2025年7月31日

金の売却、支払調書と確定申告

 ここ最近、金価格の相場上昇が著しいです。つい数年前までは1グラム当たり数千円であった記憶があり、相場観としても1万円未満だったと思います。それが、いまや1万5千円を超えるまでになりました。相場はまだ上昇しそうな気配もありますが、金の売却で利益が生じたのであれば確定申告を忘れずに行いましょう。

1. 金売却時の支払調書

 最近の金価格は上昇しており、相場がとても高くなっています。そのような背景もあり、相続によって金を取得した方など、金を保有している方の中には今のうちに売却をしようと考えている方もいると思います。
 金の売却金額が200万円を超える場合、買取業者には支払調書を提出する義務が課せられており、税務署に売却した情報が通知される仕組みになっています。そこで、この支払調書の内容をもう少し確認してみましょう。
 売却金額が200万円超という判定は、1回あたりの金額です。したがって、1回の売却金額が200万円以下の場合には支払調書は提出されません。例えば、150万円の売却取引が2回の場合には対象外です。
 提出の対象範囲は金地金等であり、「金地金、白金地金(プラチナ地金)、金貨、白金貨(プラチナコイン)」の売却です。したがって、銀地金、貴金属製品やジュエリーなどは支払調書の提出対象外というわけです。

2. 支払調書の対象外であっても

 税務署への支払調書の提出対象外であるからといって取引の内容が残らないだろうと考えるのは間違いです。
 金などの取引内容をチェックしたいのは何も税務署だけではありません。宝石・貴金属等取扱業者は、犯罪収益移転防止法により、いわゆるマネーロンダリングやテロ資金供与等の防止対策として本人確認を行う必要があります。また、金地金等の売買を行っている業者は通常は古物営業法に基づく古物商や、質屋営業法に基づく質屋の登録業者のはずです。これらの業者は台帳を設けて取引内容を記録する義務がありますので、少額の売却であったとしても取引相手の氏名・住所などが記録されます。つまり、取引情報自体は買取業者側でしっかりと管理されており、税務署はその内容を確認することができるのです。

3. 譲渡所得が50万円超なら確定申告

 金地金等の売却による利益は、所得税では総合課税の譲渡所得という区分に該当します。利益が生じた場合には、原則として確定申告を行って税金を納めなくてはなりません。この譲渡所得の計算は、金地金等の所有期間に応じて次のように計算します。

① 所有期間が5年以内の場合
  売却金額 -(取得費+譲渡費用)- 最大50万円 = 課税される譲渡所得
② 所有期間が5年超の場合
( 売却金額 -(取得費+譲渡費用)- 最大50万円 )×1/2 = 課税される譲渡所得

上記計算式のなかの「-最大50万円」は特別控除額といい、①と②あわせて差し引ける合計の年間額です。つまり、年間50万円超の利益が生じた場合には、課税所得が算出されるというわけです。逆に利益が50万円以下ならば確定申告をしなくても弊害はありません。また、所有期間が5年超の場合は課税対象額が1/2になっています。税負担面からいえば、5年超所有してから売却したほうがかなり有利といえます。

4. 金製品でも30万円超なら申告対象

 金製品や貴金属などを売却した場合にはどうなるのでしょう。金相場が高騰していることから、これら金製品等の売却金額も相当高くなっているはずです。金地金等の売却ではないために支払調書の対象外、そのため確定申告は必要ないという噂を聞くことがありますが、それは正しくは間違いです。
 生活用動産であったとしても、貴金属や宝石、書画、骨董などで1個または1組の価額が30万円を超えるものは譲渡所得の課税対象になっています。ただし、上記3の計算式で見たように50万円の特別控除枠がありますので、利益が50万円までであれば申告しなくても問題ありません。金地金の利益が40万円で貴金属の利益が20万円の場合には、利益が合計60万円となります。他の所得状況によっては、確定申告で税金を納める必要があるというのがルールです。

5. 取得費の確認が大事

 税務署に支払調書が提出されるのか、それとも提出されないのか、自動的に情報収集される範囲は決まっています。ただし、提出対象外だからといって確定申告が必要でないとは限りません。金地金等や金製品等の売却では、どうしても売却金額そのものに目が行きがちです。
 しかし、税金を考える上では利益である譲渡所得が生じるか否かがポイントなのです。相続で取得した金地金等であれば、いつ頃いくらで取得したものか、取得費は分かりますか?何も分からなければ売却金額の5%を取得費とするしかありませんが、ある程度の推測でも良いので調査をしたでしょうか。金地金等であれば刻印などで製造年を調べることができるため、取得費を推測する方法のひとつになります。売却時の取得費はいくらなのか、これを事前に把握しておくことが大事です。

2025年6月30日

届出書は税務署との協定

 新たに事業を開始したのであれば開業届出書、会社を設立したのであれば法人設立届出書を税務署に提出します。届出書の一例を挙げましたが、税務では各局面において様々な届出書が定められており、この届出によって実務が動いています。たかが届出書と思いがちですが、その効力は非常に強力なものです。

1.届出書はまるで協定書

 届出書、申請書、申出書など税務署へ提出する書類の種類と呼称は多種多様ですが、これらの書類の提出によって税務上の取扱いが定まるものが多くあります。名称が届出書等となっていることから簡易的な書類に思いがちですが、必ずしもそうとは言えません。これらの書類の中には、実際には協定書と同じようなものとして取扱われているものが多く含まれています。
 協定の意味を辞書で引きますと、「紛争・競争などを避けるため、協議して取り決めること。文書による合意」などと書かれています。届出書等は、あくまで届出事項を記載して税務署へ提出をするものであり、双方で協議をして締結した文書ではありませんが、重要性から言えばまさに協定書そのものと言っても過言では無いものもあるのです。そこで、今回は土地の貸し借り、いわゆる借地関係の届出書等はどんな運用がなされているかを確認してみましょう。

2.無償返還に関する届出書

 「土地の無償返還に関する届出書」というものはご存知でしょうか。建物の所有を目的とする土地の賃貸借を行う場合、一般的な取引慣行としては権利金の授受が行われます。なぜなら、賃借人に借地権という強固な権利が生じるからです。税務ではこの取引慣行に沿った課税ルールを定めているため、もしも権利金の授受がないまま借地権が設定された場合には、借地権に相当する経済的価値が賃借人に贈与されたとして課税関係を考えます。しかし、同族間での土地の賃貸借ではわざわざ権利金の授受を行わないことの方が多いでしょう。そこで、この課税問題を回避する方法の1つとして、「土地の無償返還に関する届出書」というものが用意されたのです。(この届出書は取引当事者に法人が含まれている場合にのみ利用できます。)
 詳細は割愛しますが、この届出書を提出すれば、税務上では借地権に相当する経済的価値は賃借人に移転していないものとして取扱ってくれます。これにより、権利金の授受が行われなくても課税上の問題は生じないという訳です。

3.借地借家法上はあくまで借地権有り 

 土地の無償返還に関する届出書を提出した場合、賃借人は借地権という権利を有していないことになるのでしょうか。借地借家法では、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権のことを借地権と定めています。したがって、建物の所有目的で土地の賃貸借を行えば、賃借人には借地権という権利が当然に生じます。賃借人は借地権を有していることに間違いありません。
 そうすると、借地借家法(民法)と税法とでズレが生じることになりますが、これについては次のように考えると整理ができると思います。
 「借地借家法上では賃借人は借地権を有しているが、税務上ではその経済的価値は移転しておらず、その価額はゼロとして取り扱うというルールを置いた。」
 このように、この届出書の税務署への提出の効果はまさに協定そのものです。課税関係については超法規的に届出書のルールを優先するという強力なものなのです。

4.借地権者の地位に変更がない旨の申出書

 貸地を所有していた方がいたとします。ここで、借地人から借地権付建物を買い取って欲しいという打診を受けたため、土地所有者の子が借地権を購入しました。購入後は、土地所有者は親、借地人は子という親子の関係になります。一般的には地代の授受は行われなくなるはずです。そうするとどうなるのでしょうか?借地権は土地の賃貸借が前提ですので地代の支払いが無くなれば消滅し、税務上は使用貸借に移行したと考えます。そのため、お金を支払って購入した子の借地権の権利は無くなり、その価値は無償で移転したとして、親に贈与税が課税されることになります。これもまた酷なことです。そこで、この問題を回避するために「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」というものが用意されています。
 この申出書を提出すると、地代の支払いがなくなったとしても子は従前どおり借地権を有しているものとして取扱ってくれます。つまり、税務上では子は借地権者のままです。土地の賃貸借契約は継続しているが地代を免除しているに過ぎないという理屈を付けることで税務上は解決させました。申出書の提出は、子を借地権者のままで取扱って欲しいという、協定の申し入れなのです。

5.建物を取壊しても継続

 4の場合で、もしも子が建物を取壊して駐車場運営を始めた場合はどうなるでしょうか?借地権は建物の所有を目的とする場合にだけ生じるため、地代の免除だけでは理屈付けができません。どうすべきか悩みどころですが、これも今までの取扱いを思い返せば結論は簡単です。
 そうです!税務署との間では協定内容を優先する!これにつきます。届出書や申請書、申出書の提出があればその協定内容に従うのがルールです。したがって、この場合でも子は借地権者のままです。

2025年5月30日

白色申告のメリットはもはや無い

 収入規模が大きくないという理由で白色申告をしている方がまだ多くいるようです。不動産収入は相続で引き継いだマンション1部屋だけであり、帳簿作成は面倒なので白色申告にしているという方もいると思われます。理由が帳簿作成上の手間ということならばそれは勘違いです。白色申告であっても帳簿作成が必要なことをご存知ですか。

1. 白色でも帳簿が必要

 白色申告者で事業所得等の合計額が300万円以下の一定の人は、確かに以前は帳簿の記帳義務及び記録保存義務がありませんでした。零細な事業者にまで記帳義務を課すことの必要性や事務負担とのバランスを考慮して例外を定めていたのです。この取扱いがあったからなのか、白色申告であれば帳簿を作る必要は無いのでそのメリットを享受する!と考えている方が多いような気がします。
 しかし、平成26年1月1日からは、事業規模に関係がなく帳簿の作成義務があります。つまり、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行っている方は、その全員が帳簿を作成しなければならないのです。白色申告者だから作らなくても良い、とはなっていません。
 ちなみに、帳簿というと正規の簿記のルールに従って記帳して貸借対照表と損益計算書を作成しなくてはいけないのでは?と思いがちですが、そこまでは要求されていません。現金出納帳や固定資産台帳などの簡易な帳簿でも良いことになっています。

2. 帳簿が無いと罰則強化!

 ただ、そんなことを言われても青色申告は気持ち的にハードルが高いから白色申告にしよう。そして、帳簿作成は割愛してしまおうか?と考える方がいるかもしれません。そこで国税当局はこういう方に対しては厳しい罰則を設けました。事業者が売上げに関する帳簿を保存していないことや売上げの記載が不十分であったことが税務調査で把握され、帳簿に記載すべき事項について申告漏れが生じた場合には、過少申告加算税等を10%加重するというペナルティを置いたのです。この罰則規定は令和6年1月1日以後に申告期限が到来するものからスタートしています。すでに令和5年分の確定申告から始まっているのです。

3. 青色申告を選択すべき?

 不動産所得に関して言えば、その規模に応じて事業と業務という区分けがされます。私は事業的規模ではないから良いのではと勘違いしがちですが、帳簿作成の義務は業務的規模の方であっても一緒です。
 そうすると、白色申告にしておくメリットはもはや無くなったと言っても過言ではないでしょう。どんな方であっても簡単な売上集計表や経費集計表は作成されているでしょうから、青色申告を選択することによる実質的な追加負担はあまり生じないはずです。

4. 青色申告でメリット享受

 青色申告を選択すれば、最低でも10万円の青色申告特別控除が受けられます。必要経費が単純に10万円アップするのですから使わない手はありません。この他にも、赤字が生じた場合には3年間の繰り越しが出来ることや、赤字を前年の所得に繰り戻して所得税の還付を受けることも可能です。白色申告で一番の大きな問題は赤字が繰り越せないことです。例えば、賃貸建物に大規模修繕工事が発生して多額の費用が計上されることもあるでしょう。このようなときは、大きな赤字になる可能性がとても高いですが、白色申告では赤字の繰り越しはできないことになっています。

5. 雑所得でも書類保存が必要

 不動産所得や事業所得などではなく雑所得となる業務を行っている場合で、前々年の収入金額が300万円を超える方は一定の書類を保存する必要があります。また、前々年の収入金額が1000万円を超えるような場合には、収支内訳書を確定申告書に添付しなければなりません。なお、ここでの判断基準は収入です。所得(利益)ではありませんので注意しましょう。このように、何らかの業務収入があるのであれば、帳簿の作成義務まではありませんが一定の書類を保存しなくてはなりません。
 また、雑所得の話題といえば、事業所得との区分についての取扱いです。雑所得の場合は赤字になったとしても給与所得などの他の所得とその赤字を通算することはできません。そこで、本来は雑所得とすべきものを事業所得で申告して赤字を通算、所得税の還付を受けているケースが結構見受けられました。そのため、事業所得かそれとも雑所得のいずれで申告すべきなのか、について国税当局の指針が令和4年に示されたのです。
 この取扱いを見ると、雑所得であっても帳簿作成は行っておくべきと思います。この取扱いの明確化ですが、今年の10月で公表されてからちょうど3年が経過します。事業所得で申告しているが経常的に赤字体質、いつもその赤字を損益通算しているような方は、申告内容によってはそろそろ目を付けられるかも知れません。赤字の理由を説明できるようにしておきましょう。

2025年4月30日

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今月の言葉

共通鍵暗号

 これから二回にわたって、この稿の筆者の専門分野である暗号の話を書きたい。
 世の中には、暗号は大きく分けて二種類、共通鍵暗号というのと公開鍵暗号というのがあって、前者は簡単でシンプル、後者は複雑。どちらが安全かと言えば後者の方、ということが比較的知られている。が、それらがどう違うかと言うことは一般にはあまり理解されていない。そこで今月と来月は、両者の違いについて、すこし解説したい。
 まず、今日の社会では、暗号化される前の通信文はほとんどコンピュータとかワープロなどの機械で書かれており、平文をソフトウェアで数列に転換したものが元のデータであるという前提から出発したい。(もちろん手書きの平文や画で描かれた通信文というのもないことはないが、これらも今日では、一度pdfなどの機械ソフトでスキャンして数列データに置き換えられて交信されている)さて平文を数列に置き換えたものを素データと呼ぶことにしよう。素データに一定の別の数列(暗号鍵と呼ぶ)を一定の暗号式(アルゴリズム)で乗じたものが暗号文である。この場合、AさんとBさんの間で暗号文が交換されるとすると、AさんとBさんの間では三つのことが了解されていなければならない。
 一つ目は、素データを人間が読める平文に還元するためのソフトウェア(ワードとかテキストとか)がなんであるかという了解。二つ目は、上記の一定の暗号式
(アルゴリズム)がなんであるか(暗号アルゴリズムの名前。AESとかDESとか・・)という了解。そして三つ目は、その暗号文を復号するための暗号鍵がなんであるかという了解。
 AさんとBさんの間でこの三つの了解があって初めて、Aさんは平文を暗号化してBさんに送り、Bさんは受け取った暗号文を平文に還元して読むことができるのである。
 さて、上記の了解のうち一つ目は世間で一般に使われているソフトウェアであることが多いし、二つ目も、世間で認められている安全な暗号アルゴリズムの種類がそう多くあるわけではないので、実質的に外部の人に知られていない秘密の情報というのは、三つ目の暗号鍵ということになる。このAさんとBさんが共通で持っている秘密の暗号鍵のことを「共通鍵」と呼んでいる。暗号鍵の数列は長ければ長いほど外部から推定しにくい(共通鍵を知らないCさんが、AさんとBさんの間で交換されている暗号文の中身を知ろうとすれば、力業でコンピュータに数列をつくらせて次々と試してみなければならない)。が、あまり長いと実用的ではないので、現在では、128ビットとか256ビットくらいのランダムな数の列が共通鍵として用いられている。
 もっとも、AさんとBさんの間であまり長い間、同じ暗号の共通鍵を使っていると、不慮のことから外部に共通鍵を知られてしまう危険が増すことになる。上記のCさんが偶然力業で共通鍵を推定してしまうかもしれないし、AさんとBさんのどちらかのコンピュータが悪意ある他者に(ハッキングされて)見られてしまうかもしれない。なので、AさんとBさんの間では、時々共通鍵をちがうものに改める(更新する)ほうがより安全なのである。
 それでは、AさんとBさんの間でどうすれば共通鍵を更新することができるのだろうか。
 次号では、離れていても共通鍵を更新する別の暗号方式を紹介しよう。

2025年7月31日

アスパラガス

 私事であるが、その昔この稿の筆者の自宅の庭に、ポショポショした平たい、見た目クリスマスツリーのような格好をした草が生えていた。母親が、「これはアスパラガスなの」というのだが、食卓に上る幹の太い緑色の野菜とこの草とがどうにもつながらなかった。それでも戦後まだ間もないころで、アスパラガスは高価ななかなか家庭で食べるのが難しい野菜だったから、筆者はこの草がいつかあのアスパラガスに成長するのではないかと期待していたのだが、残念ながら草はいつの間にか芝生の間にまぎれてしまい、庭のアスパラガスを家庭で食する夢はかなわなかった。この稿の筆者がはじめて親許を離れて、自炊体制に入った日につくった料理というのが、アスパラガスとベーコンの炒め物、スクランブルエッグとトースト、コーヒーというもので、心のどこかでアスパラガスへの執着が残っていたのかもしれない。
 アスパラガスは学名Asparagus officinalis、和名はオランダキジカクシ(和蘭雉隠)。原産地はヨーロッパの地中海沿岸のどこか。ローマ時代の紀元前2000年ごろには栽培されていた記録があるとのこと。その後ヨーロッパ各地で栽培が広がった。北米には1620年の移民とともにもたらされ、東部地区やカリフォルニアで栽培されるようになり、一大産地となった。i 日本には江戸時代中頃にオランダ船によってもたらされたが、当初は観賞用で、食用として利用、栽培されるようになったのは、明治期、北海道開拓使が導入してからのこととされる。
 さて、ご承知のようにアスパラガスには、緑色のものと白いのと二種類がある。同じアスパラガスなのだが、前者は自然に太陽の光を浴びて育ったもの。後者はわざと生育中に土をかけて直射日光が当たらないようにしたものである。現在でもそうかもしれないが、ホワイトアスパラガスを水煮して缶詰にしたものは、自然に生育して野菜として店頭に並べられているものに比較して、かなり高価なもので、子供のころはなんとなくカニ缶などと並んで贅沢品という印象が強かった。
 欧州とくにドイツ、オーストリア辺りではこのホワイトアスパラガスをSpargel(シュパーゲル)と呼び、日本の筍同様春の味覚として珍重する。この稿の筆者は5月連休にウィーンに滞在したことがあるが、郊外のホイリゲ(新酒という意味だが、それを供する居酒屋もホイリゲと呼ばれる)の野外のテーブルでさわやかな春の風に吹かれながら、ホワイトアスパラガスのサラダにオランデーズソース(卵の黄味とバターでつくったマヨネーズのようなソース)をかけたものを肴に、冷えた白ワインを飲んだのは、筆者生涯の思い出の一つである。
 一方、緑のアスパラガスについては、ベーコンやソーセージなどの豚肉類と相性が良い。
 同じウィーンには、ウインナー・シュニッツェルという紙のように薄いカツレツ料理があり、これなどもアスパラガスを添えていただくと、なかなか乙にいただける。(このカツレツには、濃い味のソースはかけずに、塩とレモンだけをかけていただくのがよろしい)
 緑アスパラガスは、茹でる、炒めるももちろん良いが、この稿の筆者は、油を一切使わずにトースターか炭火で少し炙った緑アスパラガスに、削り節と醤油をパラパラとかけていただくのがおいしいと思っている。生ビールのつまみとしても最適なので、読者の方にもぜひお試しいただきたい。
 アスパラガスの産地は、北海道、長野、福島などが知られている。国内では北海道が第1位の収穫量で、全国の16%を占めている。本稿が出る頃には道産品が最盛期を迎える。


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2025年6月30日

OSO18

 人間どもが、俺にOSO18という記号みたいな名前をつけて呼ぶようになったのは、2019年7月のこと。人間界ではこういう名付け方をコードネームとか言うらしいが、せめて「於曽重八」とかそれらしい名前にして欲しかったものだ。命名の由来は、俺が人間界で個体の熊として認識されるようになった場所が、北海道の標茶町オソツベツという所だったことと、俺の足跡が雑な測り方で18cmあったことによる。

 さて、その年の7月16日、俺にしては不覚なことに、一頭の乳牛を牧場の近くの沢に引きずって行き、腹を割きかけたところを、牧場主の息子に見られてしまった。まさに「藪から棒」の出会いで、俺の方もかなり慌てていたのだが、見られてしまったものは仕方がない。そこでカモフラージュというわけでもないが、その夏8月にかけて、28頭の牛を襲った。なかには、襲うだけで食べずに怪我を与えて赦してしまうこともあった。ほんとうは牛を食べたいわけではなく、俺にしてみれば人間界に対するゲリラ戦というか、人間界に「神出鬼没の熊」というイメージを与えて威嚇したかったのだ。

 その俺の試みは半ば成功し、半ば失敗した。たしかに俺は「神出鬼没の熊」というイメージをつくることに成功し、OSO18は人間界から畏怖を持って見られるようになった。が、一方で人間界に俺様専門の討伐隊が編成され、各所の牧場近くに俺を捕獲するための罠が仕掛けられるようにもなり、いわば俺と人間界との関係は、「全面戦争」にエスカレートしてしまったのだ。俺の18cm前後の足跡と、俺が鉄条網などに残してきた体毛をDNA鑑定することを通じて、人間どもは俺の攻撃実績と他の熊の移動とを的確に区別し、俺の跡を追跡するようになった。他の熊の場合、よほど腹が空いたりしなければ人間界の牧場を襲うことはしないし、野生動物であれ、家畜であれ動物蛋白はそもそも熊の主食ではない。山に笹の実やドングリが豊富にあれば、わざわざ危険を冒して人間界に下りてくることはない。

 だが俺の場合はちょっと違う。後に俺の死後のことになるが、人間どもが俺の遺伝子分析を行って調べたところ、俺は若い頃からこの方、動物蛋白ばかりを食べてきたことが分かってしまった。俺はいわば熊界のマイノリティ。偏食者、いや偏食熊であったのだ。俺がなぜそうなったか、は、自分にも、人間にもよくわからない。が、若い頃に偶然食べた鹿か何かの野生動物の肉に「味をしめて」動物偏食の道に入ったということなのだろう。ほかにも俺と一般のヒグマとは行動の様式が違っている。ほかのヒグマは、一度仕留めた獲物を土の中に隠して取りに戻ってくるのに対し、俺は、そうした行動を見せず、獲物に執着しなかった。そのために、人間界では俺のことを「食べるためではなく、快楽のために動物を襲う変質者」なのではないかという噂すら出たほどだ。が、実際の所は、俺が人間に対して、異様なほど研ぎすまされた鋭敏な感覚をもっていて、襲撃の途中でも、すこしでも何か人間の気配を感じると、あっさりと襲撃をあきらめて撤退していたのだということ他ならない。

 俺の襲撃実績は、標茶町とその南の厚岸町にまたがり、2019年から2022年で31件、牛65頭にのぼった。が、2023年7月30日、釧路町オタクパウシで老いて食欲をなくし、胃の中も空っぽで牧草地にただ腰を下ろしていた俺は、まったく無抵抗で、討伐隊ではなく近くの牧場のハンターに撃たれて死んだ。しばらくは俺がOSO18であったということすら分からなかった。なので、俺の死骸は、人間の解体業者に渡され、肉の一部はジビエとして都会で食べられてしまった。

2025年5月30日

アメリカの大義(続)

アメリカ合衆国は子供たちに、どのように民主主義を刷り込んでいるかという話である。

 この稿の筆者が生まれた日に、合衆国では大統領選挙があり、共和党のドワイト・アイゼンハワーが民主党のアドレイ・スチーブンソンを破り、大統領に当選した。アイゼンハワーはそれから2期8年務めた。次に共和党リチャード・ニクソン副大統領対民主党のジョン・F・ケネディマサチューセツ州選出上院議員が戦った1960年の大統領選挙の際、筆者は合衆国インディアナ州の公立小学校の2年生であった。

 アメリカの公立小学校の教室では、児童たちによる大統領選挙の模擬投票がある。担任の先生が、共和・民主の正副大統領選挙候補者の応援演説をする児童を教室の中から募って本格的な討論をさせるのだが、当時この学校の家庭では共和党支持が多く、ニクソンとヘンリー・ロッジJR.共和党副大統領候補の応援者は容易に決まった。民主党もテキサス出身の児童がリンドン・ジョンソン副大統領候補の応援に立つことになり、だれも手を挙げなかったのはケネディひとり。すると担任はなぜか日本から来た筆者にケネディの応援演説を指名したのである。数日の余裕を与えられて筆者は、同じ大学構内の住宅に住む日本人の博士課程のお兄さんの所に、応援演説の知恵を借りに行った。その内容は「ニクソンは次に金門・馬祖両島が攻撃を受けたら、米国は直ちに国共内戦に軍事介入すると言っているが、ケネディはより慎重だ。自分の国日本は台湾の隣にあり、第三次世界大戦につながる衝突は避けてほしいのでケネディを応援したい」といったものだったように記憶している。現代の台湾情勢を思うにつけても、忘れがたい思い出である。

 ちなみに教室の模擬選挙では共和党が圧勝したが、大人たちの大統領選挙では民主党の辛勝だったのは周知のとおりである。さて、上記の経験を通じて筆者が言いたいのは、日本の教室では公職選挙の模擬投票を実名で、しかも各党の主張を生で戦わせることなどまずない。それは日本の教員も教育委員会も、大人たちの政治に忖度してしまうからなのだろうが、民主主義の本場の国では、そんな忖度などしないということなのだ。

 さて、話は少し変わるが、この1960年は南北戦争開戦百年にあたり、教室や家庭ではその話で盛り上がった記憶もある。こちらのほうもインディアナ州が北軍側であったこともあり、学校は南部への忖度なしで「北軍が正しい」と教えていたような気がする。実際には教室には黒人の児童一人と東洋人の筆者が一人いるだけであとはみな白人の児童ばかり。しかも黒人の児童は子供たちの間ではいじめにあったりはしなかったが、保護者たちの間ではやや差別的扱いを受けていた(たとえば彼の誕生会の送迎にあたり、親の迎えの車は黒人居住区の中には入らない)記憶もある。だが、教室内ではともかく「リンカーンは黒人奴隷を解放した偉い大統領」ということになっていた。筆者はといえば、当時南北戦争への認識は「戦争ごっこ」の域を出ず、家庭内のトレイや北軍の兵隊人形、砲車の玩具などを動員して、ミシシッピ川に浮かんだ北軍側のモニター砲艦を模擬して遊んでいた記憶があるくらいである。しかし、「ゲティスバーグの演説」というのはなんとなく耳に残っていて、帰国後いずれかの頃に「人民の人民による人民のための政治」というのが民主主義の本質であると教えられ「そうかあれがそうだったのか」と、気が付いた次第である。

2025年4月30日

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