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生命保険を確認しませんか

 生命保険は、万一の際にまとまった金額の保険金を受け取れることはもちろん、税金面では相続税の非課税枠を利用することで節税対策になり、相続税の納税資金の確保に役立ちます。
 そんな目的で加入した生命保険ですが、相続税の対象として必ずしも思いどおりになるとは限りません。この機会にあなたの契約した生命保険の内容をチェックしてみてはいかがでしょうか。

1.被保険者、保険料負担者、受取人の関係によって変わる税金の種類

 死亡保険金を受け取った場合は、①被保険者、②保険料の負担者、③保険金の受取人が誰かにより、相続税、贈与税、所得税のいずれかの対象になります。

(1) 相続税は、上記の表のように被保険者と保険料負担者が同一の場合です。
(2) 贈与税は、被保険者、保険料負担者、保険金の受取人がすべて異なる場合です。
(3) 所得税(一時所得又は雑所得)は、保険料負担者と保険金の受取人が同一の場合です。

2.相続税の死亡保険金の非課税

 被相続人が保険料を支払っていた死亡保険金は、相続税法上のみなし相続財産となり、受取人固有の財産として遺産分割の対象にはなりません。「相続人が受取人のとき」は法定相続人1人当たり500万円の非課税枠があります。たとえば、法定相続人が3人の場合は、1,500万円まで死亡保険金を無税で受け取れるということになります。
 注意していただきたいのは、相続人以外の人が受取人の場合は非課税の適用がないということです。さらに、相続税額の2割加算という制度があるので、割増の相続税を支払うことになってしまいます。

3.契約上の受取人を変更したときの税金

 税金のことを考えると、生命保険の受取人を名義変更する方が良い場合もあるでしょう。変更する場合は贈与税がかかってしまうのでしょうか?
 生命保険の契約者や受取人の名義変更をしただけでは贈与税を課税されません。贈与税が課税されるのは、被保険者の死亡や保険期間の満期により、保険料を負担していない人が生命保険金を受け取った場合等に限られます。

4.相続後でも受取人は変更できる?

 夫が独身時代に加入した生命保険、結婚後も親を受取人とし、受取人を妻子に変更するのを忘れたまま相続が発生したとします。親が「残された妻子が受け取るべき」として保険金をそのまま妻子に渡しました。この場合はどのようになるのでしょうか?
 相続税法の規定からみれば、死亡保険金が親に支払われた時点で親に相続税、さらに親から妻子に死亡保険金を渡した時点で贈与税という二重の税金がかかってしまいます。しかも、親は相続人ではないので相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使えません。
 しかし、実務上は、相続税の通達で、受取人の名義変更がされていなかったことに「やむを得ない事情があり、現実に保険金を取得した者がその保険金を取得することに相当な理由があるとき」は契約上の名義人ではなく実際に受け取った人を受取人として認めるとする取り扱いがあります。したがって、この救済策が認められれば、妻子が死亡保険金を相続により取得したものとみなして相続税の非課税枠をしっかり使うことができます。

5.まとめ

 上記4の相続税の救済策は、建前として「やむを得ない事情」があるとき限り適用されるものですから、受取人を便宜上指定したにすぎず、うっかり手続きを失念していたといえるようなとき以外でも認められるかどうかは微妙なところです。
 相続後に受取人を変更できるのは、契約上の受取人が同意しているなど、関係者の合意が必要です。親子仲が悪かったり、離婚した妻から現在の妻に名義変更し忘れていたときなどは相続後に受取人を変更するのが難しいケースといえます。
 そもそも生命保険金は、あらかじめ指定した「死亡保険金受取人」に必ず支払われますから、遺したい人に確実に遺すことができるものです。無用な親族間のトラブルを避けるためにも、生命保険加入後の環境の変化に合わせて定期的なチェックと必要な名義変更を忘れずに行う必要があるといえます。

2025年3月14日

令和7年度税制改正の概要

 令和6年12月20日に令和7年度の税制改正大綱が発表されました。今回は税制改正の主要項目のうち、特に注目すべき点をご説明します。

1.物価上昇局面における基礎控除等の改正

 給与収入103万円を超えると扶養控除等の対象とならず、所得税課税が発生するいわゆる「103万円の壁」について、「178万円を目指して引き上げる」旨の3党合意がなされました(自民・公明・国民民主)。しかし、税制改正大綱においては、以下に記載のとおり123万円への20万円(基礎控除10万円と給与所得控除の最低保証額の10万円)の引上げとされています。
(1) 基礎控除の引上げ
合計所得金額が2,350万円以下である個人の控除額が、次表のとおり10万円引き上げられます。しかし、合計所得金額が2,350万円を超える場合に変更はありません。

(2) 給与所得控除の最低保証額の引上げ
55万円の最低保証額が65万円に引き上げられます。ただし、給与収入190万円以上に変更はありません。

(3) 特定親族特別控除(仮称)の創設
 大学生年代の子のアルバイトにおける就業調整が行われていることに対処するため、特定親族特別控除(仮称)が創設されます。具体的には、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等(配偶者及び青色事業専従者等を除く。)で控除対象扶養親族に該当しない者を有する場合には、その居住者の総所得金額等からその親族等の合計所得金額に応じ、次表の控除額が控除されます。

(4) 基礎控除の引上げ等に伴う所要の措置
 次の措置が講じられます。
 ① 同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件
   58万円以下(現行:48万円以下)に引上げ
 ② ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額の要件
   58万円以下(現行:48万円以下)に引上げ
 ③ 勤労学生の合計所得金額要件
   85万円以下(現行:75万円以下)に引上げ
 ④ 家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費算入額の最低保証額
   65万円(現行:55万円)に引上げ

(5) 実施時期等
 上記改正は、いずれも令和7年分以降の所得税から適用され、源泉徴収関係については、令和8年1月1日以降に支払われるべきものから適用されます。なお、基礎控除の引上げを含む上記の改正については、今後の国会での議論を経ることにより変更される可能性があります。

2.子育て世代に対する生命保険料控除の拡充

 令和8年分の所得税において、23歳未満の扶養親族を有する場合の新生命保険料に係る一般生命保険料控除の控除限度額が6万円(現行:4万円)に引き上げられます。ただし、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除を含めた合計適用限度額は、現行の12万円のままとされます。

3.確定拠出年金制度等の見直し

 次に掲げる確定拠出年金法の改正が行われた後も、現行の税制上の措置(拠出時の小規模企業共済等掛金控除等、給付時の公的年金課税又は退職所得課税)が適用されます。
① 企業型確定拠出年金(DC)におけるマッチング拠出について、企業型年金加入者掛金の額は、事業主掛金の額を超えることができないとする要件の廃止
② 個人事業主等のiDeCoの拠出限度額(国民年金基金を含む。)の7,000円の引上げ

→拠出限度額は月額7.5万円
③ 会社員等の企業型確定拠出年金(DC)の拠出限度額の7,000円の引上げ

→拠出限度額は月額6.2万円(限度額に達するまでのiDeCoの加入限度額2万円の撤廃)
④ 年齢60歳以上70歳未満で現行のiDeCoに加入できない者のうち一定の要件を満たした者を新たにiDeCoの対象とする。

→拠出限度額は月額6.2万円

4.防衛力強化に係る財源確保

 防衛力強化の財源確保のための措置として、防衛特別法人税(仮称)が創設され、併せてたばこ税が見直されます。
(1) 防衛特別法人税(仮称)の創設
  令和8年4月以降開始する事業年度から、課税標準額となる法人税額(500万円控除後)に対し、税率4%が新たな付加税として課税されます。  
(2) たばこ税の課税方式及び税率
  加熱式たばこの課税方式が令和8年4月及び令和8年10月の2段階に分けて見直されます。また、たばこ税の税率は、令和9年4月、10年4月及び11年4月の3段階に分けて引き上げられます。

5.その他の主要な改正項目

2025年2月20日

高額所得に対する所得税負担の見直し~高額の不動産譲渡の際は注意しよう~

令和7年から新たに適用される所得税制に「極めて高い水準の所得に対する税負担の適正化措置」 があります。令和5年度の税制改正で創設され、今年の所得から適用されます。この制度の対象はどのような場合でしょうか。ずばり、株式や長期保有土地の譲渡益が非常に高額になる場合です。相続税の納税資金を捻出するため、これらの譲渡を行うとき、最終的な手取額のシミュレーションを行いますが、今後は、この制度を踏まえる必要があります。

1. 1億円の壁

給与所得や不動産所得のような総合課税の所得に対する所得税の税率は5%~45%とされており、所得が一定額を超えると、その超えた部分は高い税率で課税されます。一方、株式や長期保有土地の譲渡については、譲渡益の多寡にかかわらず一律15%の税率が適用されます。そのため、譲渡益が高額になると所得全体に占めるその譲渡益の割合が大きくなることもあって、次表のとおり、所得階級が1億円を超えると、所得税の負担割合(平均所得税額÷平均所得金額)が減少する結果となっています。“1億円の壁”と言われているのはこのことです。

2. 新たに導入される制度

新たに導入される制度の計算式は次のとおりです。①の金額が②の金額を上回る場合に限り、その差額分(①-②)の追加納付が必要になります。

①〔基準所得金額-3.3億円〕×22.5%
② 通常の所得税額(外国税額控除等の適用前)

①の算式は、3億3千万円を超える部分の所得は、最低22.5%の所得税負担が生じることを意味します。“基準所得金額”には、確定申告を行う所得に加え、特定口座のうち確定申告を省略(申告不要を選択)できる“源泉徴収選択口座”に係る所得などが含まれる点に注意が必要です。

3. 事例でみてみましょう

給与所得が500万円の会社員Aさんは、所得控除の合計額が200万円で、給与に係る所得税額は202,500円です(簡略化のため、復興特別所得税は考慮していない。以下同じ。)。この度、長期保有の土地を譲渡したところ、譲渡益は30億円でした。この場合の通常の所得税額(前記2.②の金額)は、次表⑧欄の450,202,500円になります。

次に、新たな制度による比較対象金額(前記2.①の金額)を求めますが、その金額は次表⑪欄の601,875,000円になります。この金額は、通常の所得税額(上記表⑧欄)を超えていますので、差額である151,672,500円(次表⑫欄)の追加納付が必要になります。そのため、土地の譲渡による手取額が、従前に比べ約1億5千万円も減少する結果になります。

4.追加納付が生じる譲渡益

前記3.の会社員Aさんの場合(総所得金額(給与所得)500万円、所得控除額200万円)、追加納付が発生する譲渡益はいくら位からになるのでしょうか。
 計算過程は省略しますが、追加納付税額は、土地の譲渡益20億円で約7,667万円、譲渡益10億円で約167万円となり、譲渡益が9億7,770万円以下であれば追加納付はありません。

5.超富裕層は“源泉徴収選択口座”に注意が必要

土地の譲渡益は確定申告が必要ですから、新制度の対象かどうかは申告書作成段階でチェックします。“基準所得金額”には、前記2.の“源泉徴収選択口座”に係る所得のほか、上場株式等に係る利子配当(源泉徴収の対象)も含まれます。源泉徴収選択口座の譲渡益や利子配当が非常に高額になる超富裕層の方は、この制度の対象かどうか確認が必要です。特定口座年間取引報告書、配当等の支払調書などの法定資料は、金融機関から税務署に提出されますので、税務署はその内容を確認して新制度適用の有無のチェックを行うと考えられます。

2025年1月15日

役員報酬を検討する上でのポイント~様々な観点から見た支給額の考え方~

 同族法人を経営されている方であれば、役員報酬をどの程度支給したら良いのか悩まれる方が多いと思います。役員報酬の支給は法人税の節税になる反面、個人の所得税等の負担が増えることに加え、相続税に影響することが考えられます。そこで、今回はそれぞれの税の観点から見た役員報酬の支給について触れていきます。

1.法人税の取り扱い

(1)法人税の節税
 法人税の計算上、役員報酬を支給すれば不相当に高額な金額でなければ全額経費となり、利益を圧縮することができます。法人税等の実効税率は、利益が400万円以下の場合は約21.37%、利益が400万円超800万円以下の場合は約23.17%、利益が800万円超の場合は約33.58%となります。従って、支給金額に対して各税率区分に応じた法人税等が節税できます。
(2)役員報酬の決定
 役員報酬を経費とするには、原則として、事業年度開始3ヶ月以内に開かれる定時株主総会のタイミングしか毎月の支給額を変更することができません。つまり、事業年度末の状況をみてから役員報酬を増やして法人の利益調整をすることはできないということです。従って、年度初めの段階であらかじめ年間の損益予測をした上で役員報酬を決めることが必要です。
 例外として、新たに役員に就任した場合のほか、職制上の地位の変更(平取締役から代表取締役に変更、非常勤役員から常勤役員に変更等)があった場合には、定時株主総会以外のタイミングでも役員報酬を変更することが可能です。
(3)その他の役員報酬の支給方法
 毎月支給する役員報酬以外にも事業年度開始3ヶ月以内に開かれる定時株主総会から1ヶ月以内に、支給する役員の氏名、支給額、支給日を記載した届出書(事前確定届出書)を税務署へ提出して、その通りに支給すれば役員報酬として経費にできます。この役員報酬は、届出書に記載した通りに支給しなければならないため、届出書と異なる金額を支給した場合や異なる日に支給した場合は経費にできません。
 この届出書は、業績が良くなる見込みがあれば、業績が良かった時だけ支給するボーナスの金額を記載して提出しておくことで上手に活用することができます。

2.個人の所得税と住民税の負担

 役員報酬の支給を受けた個人は、支給を受けた金額から給与所得控除額を控除した後の金額が給与所得となり、他の所得と合算して所得税と住民税が課税されます。なお、所得税は、最大45.945%までの累進税率ですから、所得金額が高い方ほど高い税負担が生じます。
 役員報酬の支給が本当の節税というためには、個人に適用される所得税等の最高税率を法人税等の実効税率よりも低い割合となるようにすることが必要です。
 法人の利益が年間800万円以下の場合には、所得が330万円未満、法人の利益が年間800万円超の場合には、所得が900万円未満の範囲になるようにすれば、法人税等の税率よりも低い税負担で役員報酬を支給することが可能です。
 なお、所得税等の税率は、下表の通りです。

3.相続税への影響

このように法人税等と個人の所得税等を比較考慮して定めた役員報酬を支給しても、税金の支払いや生活費等として消費する金額を越えて役員報酬を支給すると、支給を受けた個人の財産は増加していきます。
 相続税の観点からみれば、課税財産が毎年増えていくことになりますから、財産を引き継いでもらう次世代の方が支給を受ける場合は別として、相続税の納税を含めた役員報酬の検討が必要になります。
 なお、相続税は、最大55%までの累進税率ですので、所有財産の金額によっては将来の相続時に法人税と所得税で節税できた以上に多くの税負担が生ずることになりかねません。

4.最後に

役員報酬を支給する場合には、法人税等の節税だけでなく、個人の所得税等の負担や相続税への影響を考慮した上で、役員報酬支給の有無並びに支給額の検討をすることをお勧め致します。

2024年12月16日

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ATO通信

物納が使い易くなる?

 令和7年度の税制改正大綱では、相続税の物納制度に関する見直しが盛り込まれました。他の改正内容に比べればマイナー項目なのかあまり注目されていないようですが、これからは物納が使い易くなりそうです。

1. 物納をするには

 相続税は金銭で一括納付することが原則です。ただし、この納付が難しい場合には現預金による一部納付後の相続税について、延納や物納があるのはご承知の通りです。このうち延納については、以前にも何度か取り上げて述べてきましたが、その内容は最長20年間の元金均等の分割払い制度と思って頂ければ良いでしょう。そして、この延納によっても納付することが困難な場合に限って、物納が適用できることになっています。
つまり、物納を利用したいと思っていたとしても、延納を利用すれば相続税の全額を納付することが可能であると判断される場合には、そもそも物納申請すらできない取扱いになっているのです。

2. 収入があると物納は難しい

 延納によって全額納付が可能か、それとも延納でも難しいので物納を認めるかの判断基準はおおまかには次のようになります。
 まず、①物納を申請する方の今後の年間の収入見込みを計算します。そこから、②配偶者などの扶養者の人数に応じて定められている年間生活費、所得税や社会保険料の負担額、③事業に必要な経費を差し引いた金額を出します(①-②-③)。この金額を、国は1年間に税金に充てられる納付資力だと見なします。当然ですが、②に遊興費などは入りません。多少の金額調整は可能ですが、税金・社会保険料と必要経費を差し引いた後の稼ぎは全て納税のために使えるはずだという厳しい内容です。この金額に延納可能年数を掛けたものが、延納によって納付可能な金額となります。そして、相続税がこの延納可能額を超えるのであれば、その分に限りようやく物納ができるという流れです。
 一般的に物納を考える方は相続財産に占める不動産等の割合が高いため、延納可能年数は最長期間である20年になるでしょう。したがって、相続後の収入がある程度見込まれる場合は20年を掛けた金額が多額に上り、物納が認められないケースが多発します。これが、物納は難しいと言われる1つの要因です。

3. 延納可能年数の見直し

 このように物納が難しいのは、納付すべき相続税から先に延納可能額を差し引き、その残りについてだけ物納を認める計算方法になっているからです。しかし、よく考えてみましょう。延納は最長20年とされてはいるものの、その方が高齢であったとしたらどうでしょう。悲しいことですが、もしかしたら20年経過前に死亡してしまう可能性もあります。本人の死亡により延納できない期間があるのであれば、その分は計算年数を少なくしても良いはずです。そこで、令和7年の税制改正では延納可能年数に上限が設けられる予定です。
 具体的には、物納申請者の平均余命を延納可能年数の上限として、物納できるか否かの判断をすることになります。これからは、年齢によって物納可否が異なる結果になります。

4. 高齢だと物納しやすい?

 平均余命の年数は、厚生労働省が公表している完全生命表を用いると思われます。そこで、平均余命が20年を切るのは何歳なのか?調べてみました。

 男性は65歳を超えると、女性は71歳を超えると平均余命が20年を切るようです。是非とも物納を利用したい場合には、この年齢以上の相続人が物納予定財産を相続すれば、いままでよりも延納可能額が少なくなります。つまり、物納制度は使い易くなるのです。長寿の世の中、相続人が高齢なケースが増えています。物納をしたいのであれば、相続人の年齢までを考慮した遺産分割をする必要が生じるのでしょうか。

5. 物納は延納とセットで考える!

 物納は、延納とセットで考えなくてはならない制度だとお分かりになったと思います。相続税の納税については、延納・物納の助言もできる税理士にご相談を!

2025年2月28日

固定資産税は目を光らせている

 住宅用地については固定資産税と都市計画税が軽減されることは皆さまも良くご存知のことでしょう。固定資産税であれば課税標準が価格の1/6になるという住宅用地の特例のことです。実はこの特例の適用にあたって、最近急速に広がりをみせているレンタサイクル事業が影響を及ぼしてくるのです。

1. 住宅用地の特例をおさらい

 念のため、固定資産税と都市計画税の負担が軽減される「住宅用地の特例」の内容を復習しておきましょう。住宅用地は、小規模住宅用地と一般住宅用地の2つに分かれます。①小規模住宅用地は住宅1戸あたり200㎡までの土地をいい、固定資産税の課税標準は1/6になります。②一般住宅用地は住宅1戸当たり200㎡を超えて家屋の床面積の10倍までの土地をいい、固定資産税の課税標準は1/3になります。参考として軽減割合の詳細を下表に記載しました。なお、あくまでも住宅用家屋の敷地として利用している部分だけが対象です。

区分固定資産税の課税標準都市計画税の課税標準
小規模住宅用地住宅1戸につき200㎡まで価格×1/6価格×1/3
一般住宅用地家屋の床面積の10倍まで(小規模住宅用地以外)価格×1/3価格×2/3

※課税標準とは、税額を計算するための基になる金額です。

 ここでのポイントは、小規模住宅用地は住宅1戸あたり200㎡が設定されているということです。したがって、アパートなど1棟に複数戸数がある建物の場合は、(戸数×200㎡)までという計算になるため、通常は敷地の全てが小規模住宅用地に該当します。

2. レンタサイクルの敷地はダメ

 最近、都内を中心にレンタサイクルなどのサービスが急速に広がりを見せています。特に、水色の車体の電動キックボードを街中で良く見かけませんか?これは、LUUP(ループ)という電動キックボードと電動アシスト自転車のシェアリングサービスであり、とても有名なのではないでしょうか。試しにLUUPが配置されている東京都内のステーションをインターネット上の地図で見てみると、都内23区を中心に物凄いことになっています。至るところにあるという感じです。これらのレンタサイクルなどですが、一般的には建物と道路の間の空きスペースを利用して設置されているようです。このスペース、テナントビルの横であればそもそも非住宅用地なので影響はありません。ところが、アパート敷地横のちょっとした空間に設置されていたとしたらどうでしょう。実はこの場合、その部分はもはや住宅の敷地として利用されていないことから非住宅用地として取扱われてしまうのです。つまり、レンタサイクルなどのシェアリング事業部分の土地は住宅用地の特例対象地から外れ、固定資産税と都市計画税の負担が増加します。
 土地の面積としてはそこまで広くなく、ほんの数㎡~数十㎡であったとしてもこの影響はまったく寝耳に水だ!という方が多いのではないでしょうか。東京都主税局はこの調査に力を入れているようで、見つけ次第に是正する旨のお尋ね文書を郵送しています。したがって、固定資産税等の負担が増えることを見越して設置場所の賃料を設定しないと本来はダメなのです。なお、運営会社もこの問題は把握しているようですので、もしも非住宅用地になってしまうのであれば設置料の見直しができるか相談をすると良いでしょう。この他にも、カーシェアリング用地として自宅敷地の一部を貸付けしているような場合も同じ理屈で非住宅用地になります。
 固定資産税の担当者は、住宅地を中心に設置場所をインターネットで調べたうえで、現地を確認すれば一目瞭然ということです。

3. 私道は要注意

 道路の用に供されている一定の土地は、固定資産税と都市計画税が非課税になります。いわゆる私道に対する取扱いです。これについても注意が必要です。道路部分に利用上の制約がある場合には、非課税要件に合致しないとして非課税が取消され、課税される恐れがあります。自分が所有する土地だから良いだろうと、私道部分にはみ出た形状でレンタサイクルなどを設置してしまうと非課税が取消されてしまうのです。私道部分にプランターなどが置いてあったとしても、これらは多めに見てくれていたようですが、レンタサイクルなどの設置場所はダメです。土地の貸付けという収益事業を行っていることからして厳しい運用がなされます。

4. 償却資産税も注意

 事業の用に供している減価償却資産は償却資産税(固定資産税)の対象です。おそらく、今後は太陽光設備の申告が漏れていないかどうかのお尋ねが増えるのではないでしょうか。東京都などでは2025年4月から太陽光パネルの設置義務化がスタートします。原則、大手ハウスメーカーの新築住宅はこの縛りを受けることになります。つまり、新築の賃貸住宅であれば太陽光設備の申告が無いとおかしい訳です。固定資産税の課税漏れが無いかどうかは様々な角度からチェックされるのです。

2025年1月31日

死亡退職金の非課税枠を活用

 死亡退職金は原則として相続税の対象になります。ただし、この死亡退職金には生命保険金と同じように非課税枠が設定されているため「500万円×法定相続人の数」の金額までは課税対象から除かれます。せっかく非課税枠があるのですから、これを使わない手はありません。

1. 非課税枠を確認

相続人が受け取る死亡退職金は、死亡に係る生命保険金と同じように「みなし相続財産」として原則、相続税の対象になります。また、課税対象から除かれる非課税金額も生命保険金の非課税枠とまったく同じように定められています。生命保険金に非課税枠があることは知っていても、死亡退職金にも同額の非課税枠が設けられていることをご存知ない方もいるようです。この2つの制度をもれなく利用すれば、非課税枠は「500万円×法定相続人の数」×2と実質的に2倍になります。そこで、退職金の非課税枠を活用することを考えてみましょう。
 ちなみに、非課税枠が利用できるのは相続人に限られますので、相続放棄をした人は対象外です。

2. 何が退職金になる?

そもそも、相続税ではどのようなものが死亡退職金として取扱われるのでしょうか。代表的なものを次に挙げてみました。
 被相続人の死亡によって受け取った
 ● 退職手当金、功労金など(いわゆる死亡退職金)
 ● 確定給付企業年金からの年金又は一時金(いわゆる企業年金)
 ● 確定拠出年金からの一時金(いわゆる企業型DC又はイデコ)
 ● 特定退職金共済からの年金又は一時金
 ● 小規模企業共済からの一時金
 退職金制度のある企業に勤めていた状況で亡くなれば死亡退職金や企業年金の一時金などを受け取れます。しかし、退職後に亡くなった場合は、死亡時における退職金の受け取りは一般的には無いことでしょう。
 これに対して、個人事業主であれば掛金の支払いが必要ではありますが小規模企業共済に加入できます。この制度はイデコなどとは異なり、いつまでに共済金を受給しなければならないという取り決めはありません。相続時まで事業継続すれば相続人は共済一時金を受け取ることができ、死亡退職金扱いとなります。また、同族会社の役員は同様にこの制度に加入できますし、死亡時にはその同族会社から死亡退職金を受け取ることもできます。このように個人事業主や同族会社の役員であれば、死亡退職金を受け取る機会を作ることができます。是非、退職金の非課税枠を上手に活用しましょう。

3. 相続税の対象は3年以内に確定したもの

先ほど挙げたものが相続税では死亡退職金になるのですが、ひとつ注意点があります。それは、死亡後3年以内に支給が確定したものだけが相続税の対象になるということです。これが、冒頭で「原則として」と記載した理由です。3年経過後に支給が決まった死亡退職金は相続税の対象からは外れて、受け取った相続人の一時所得として所得税の対象になります。退職金の非課税枠を利用したいのであれば3年以内に支給を確定させるようにしましょう。
 なお、所得税の対象になっても一時所得は2分の1課税であるため、実質的な税負担率は最高でも27%程です。退職金の非課税枠を用いればその範囲内の税負担はゼロですが、超えた分は相続税が課税されます。
 そこで、相続税より低い税負担になりそうだからと、同族会社からの死亡退職金を3年経過後に決定したらどうなるか?資金繰りや経営上の問題などの理由があれば良さそうですが、時期を遅らせただけというのは理由にはならなそうです。基本的に死亡退職金を支給した法人側は損金として経費になるのですが、法人税では時期が遅れた理由が問われることでしょう。

4. 非課税枠が残っていたら

相続人が3名であれば退職金の非課税枠は1500万円です。同族会社の役員であったため小規模企業共済にも加入しており、死亡に伴う共済金を相続人が1000万円受け取っていたとします。この場合、非課税枠はまだ500万円残っています。それならば、同族会社から死亡退職金を500万円支給しましょう。会社に退職金規程が無かったとしても株主総会などで支給を決定すれば問題ありません。すでに相続税申告が終了していたとしても3年以内であれば支給決議をして支払うのはどうでしょう。

5. 弔慰金も活用する

死亡退職金とは別に弔慰金の取扱いも覚えておくと良いです。弔慰金は、通常は被相続人の最後の月額普通給与の6ヶ月分までが非課税扱いになります。退職金の非課税枠とは別なので、これも合わせて利用すれば非課税枠が実質増えるようなものです。例えば、同族会社の役員で月額50万円の給与であったのなら、300万円までの弔慰金を別途非課税扱いで支給できます。
 同族会社からの退職金や弔慰金の水準は実務的には生前の給与を参考にして金額が決定されます。退職金の非課税枠を意識しておくのがポイントです。

2024年12月27日

合理化という名の行政サービスの廃止

 合理化という名目で、税務でも様々な手続きの効率化が図られてきています。最初の大きな流れとしては、河野太郎氏が行政改革担当大臣のときに導入した脱ハンコ制度から始まったのではないでしょうか。今年、そして来年と、立て続けに合理化を旗印に削られてしまうサービスがあるのをご存知ですか。

1. 納付書は送付しない

 従前は様々な手続きで、不要と思えるようなハンコの押印が必要であったのは確かです。日本の今までの文化的背景や、実務慣行をあまり検討せずに早急に脱ハンコを導入したのには賛否両論ありそうですが、押印が無くなったことで便利になったのは事実です。このような合理化への流れの中、国税庁は社会全体の効率化と行政コスト抑制の観点という大義名分のもと、キャッシュレス納付の利用拡大に取り組んでいます。具体的には、キャッシュレス納付への移行を促進させるため、令和6年5月から次のような場合には納付書の送付を行わないことにしました。
 ※送付を行わない主なケース
 ● e‐Taxで申告書を提出している法人
 ● e‐Taxで予定納税額の通知を希望した個人
 ● 納付書を使用しないで納付している法人、個人
 ちなみに、e‐Taxで申告しておらず納付書による納付をしている方には従前どおり送られてきます。(振替納税の方は届きません。)

2. 納税を管理するのは誰?

 e‐Taxで申告をしていると納付書は届きません。電子申告している方なら分かるはず、問題無いでしょということです。しかしながら、納付書が送られてくることには、実際はもっと大事な側面があると思います。それは、物理的に納付書が手元に届くことで、税金の納付を忘れずに思い出す!という一種の歯止め的な意味合いがあったからです。特に、これからは法人税等の中間納付時に要注意です。中間納付では実務上は申告手続きを行わないことが多いため、納付書の存在をもって納税のことを思い出していたのではないでしょうか。納付書の送付という行政サービスが削られたので、今後はあくまでも自己管理が前提です。もしも納付が遅れれば、延滞税が生じることは言うまでもありません。
 しかし実のところ、これによる影響が最もあり負担が増加するのは税理士事務所だと思います。個人の方や、多くの中小企業は税理士事務所に申告業務を依頼しています。そうすると、クライアントの納付管理は自ずと税理士事務所が行うことになるのが目に見えます。税務署は合理化という名の下で、税理士事務所へ納税のお知らせ業務の負担を押し付けたのです。

3. 納付書以外の納付方法

 納付書を使用しない納付手続きとして、具体的には次のものが用意されています。
 ● 振替納税(申告所得税、個人の消費税)
 ● ダイレクト納付(e‐Taxによる口座振替)
 ● インターネットバンキングやATM等での納付(ペイジー)
 ● クレジットカード納付(1回あたり1000万円まで)
 ● コンビニ納付(30万円まで)
 ● スマホアプリ納付(30万円まで、PayPayなど)
 様々な納付手段を用意しているようですが、法人が実際に使えるのはダイレクト納付かインターネットバンキングのいずれかでしょう。なぜなら、振替納税は個人ののみの方法であり、その他の方法は限度額があるため使い勝手が悪いからです。なお、ポイントを上手に貯めて活用できる方はクレジットカード納付も1つの選択肢になり得ます。

4. 収受日付印が無くなる

 紙による申告書の提出を減らしたい意図からでしょう。デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進の一環として、来年の令和7年1月からは申告書や申請書などへの収受日付印の押なつが廃止されます。今までは紙の申告書の控えに税務署が収受日付印を押してくれたため、これが申告書を提出したことの事実として実務上は動いていた部分があります。この行政サービスも一切無くなります。e‐Taxを利用すれば申告内容とその事実がメール通知されますので、是非とも電子申告に移行して下さいという無言の圧力?に感じます。e‐Taxで申告をすれば、その後は納付書が送られてきません。税務署の手間が減るようにと上手に誘導がされています。

5. 国税から広める

 政府が推進するDXのもと、財務省の外局である国税庁は率先して業務の効率化の見直しを進めます。思い返せば、マイナンバーの利用もまずは国税が義務化しました。申告書や源泉徴収票、支払調書などにマイナンバーの記載を求めたことを覚えていると思います。納税という全国民に関係することであるからこそ、政府は国税庁を上手く利用しているのでしょう。

2024年11月29日

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今月の言葉

褌と腰巻

先ず、江戸時代の中頃くらいまで、布というものは今よりはるかに貴重品であったことを書きたい。現代に住む私たちのように、毎年ユニクロあたりで新品の服を買って着るなどという贅沢は許されず、庶民は概ね古着屋で買った二、三着の服で一年を過ごしたようだ。それでも江戸時代になってからは、絹や木綿の布を着物に使う習慣が普及したが、それ以前は着物に用いる布は主として麻であった。その麻の時代に人々はどのような下着を用いていたのか、ということに興味があって、いろいろ調べてみたのだが、どうも正確な知識を提供してくれるサイトが見つからない。以下は、この稿の筆者の想像も交えて、おそらくこうであっただろうという記事と受け取っていただきたい。
 絹や木綿が普及する江戸時代まで、日本では明確に下着と言えるものはなかった。男性について言えば、長めの麻の布を腰の周りにぐるぐる巻きにして、それ一枚でパンツとズボンの両方の役割を果たした。女性について言えば、都会では一種の腰巻布を用いる場合もあったが、田舎ではそもそも上衣と下衣の区別はなく、かつ陰部を隠す、あるいは陰部を守るような布の存在はなかったと考えてよいのではないか。男女いずれも「ノーパン」がスタンダードな習俗であったようだ。
 さて、木綿の普及と共に、男性では六尺褌、女性では腰巻布という明確に下着の概念を持ったものが用いられるようになった。このうち、六尺褌について言えば、普及の始まりが江戸時代初期、全国の小中学校で用いられなくなったのが東京オリンピック後の1960年代と、首尾が比較的はっきりしている。日本文化の中で、ちょうどこの時期と一致するものに「武士道」というものがあって、この稿の筆者の頭の中では、六尺褌はなんとなく武士道の象徴のような位置を占めている。もちろん六尺褌の用途は武士に限らず広いものがあって、現在でもお祭りの神輿担ぎの折などには、六尺をキリリと締めた若い衆の姿を見ることが出来るし、一部私立学校の海浜学校や海辺の漁師さんなど海にかかわる人が、安全(溺れたときに船の上から救助しやすい、あるいは鱶避け)のために六尺褌を着用することは今日でも行われている。一方、明治の終わり頃徴兵制の日本陸軍の支給品としてより簡易な越中褌(三尺ほどの晒し布の片辺に紐がついているだけの褌)が採用されたことから、六尺褌に有力なライバルが生まれることとなった。たしかに軍服というものは洋装であるから、袴の中で嵩張る六尺褌よりも、ズボンの下でハンドリングが簡便な越中褌の方がより便利であったのであろう。「緊褌一番」を尊ぶ武士道精神の象徴が六尺褌であったとすれば、越中褌は徴兵制下の国民軍の象徴であったということも出来るのではないか。
 次に、女性の腰巻について稿を遷したい。腰巻も、はじめは下着ではなく、夏季に上半身部分を省略し下半身部分のみを紐で腰に巻いた衣装であった。が、後に肌に直接触れる布である「湯文字」も、腰巻の類とされるようになった。1932年12月日本橋白木屋において歳末商戦のさなかに火災が発生し、従業員など14名が犠牲となった。その後の記者会見で白木屋幹部が、犠牲者が多く出たのは女性従業員が、下着として腰巻しか身につけておらず、上階から飛び降りるのを躊躇したためではないかとして、今後はズロース着用を推奨すると述べたことから、ズロース、パンティなど洋式の下着を和装の下に着けることが普及したらしい。が、犠牲者は飛び降りることを躊躇したのではなく、煙に追われて窓から飛び降り、犠牲となったのが真実のようである。白木屋が洋式下着普及のために、上記のような伝説を広めたとするうがった見方もある。

2025年2月28日

学校

 学校というものの歴史は古いが、学校教育制度というものが出来て全国津々浦々に学校が配置されるようになった(これを普通教育制度と言ったりもする)のは、概ね近代国民国家の成立と期を一にしている。たとえばヨーロッパ中世の封建制の下では、学校のオーナーは君主か教会なのであって庶民も含めてどこでも誰でもが学べる場所ではなかった。英国革命、フランス革命などを経て国民国家が形成されるに及んで、全国的且つ衆庶も対象とする、学校制度が整備されるようになったのである。初等中等の学校制度の下では、国民の識字率の向上が図られると共に、四則演算や地理、歴史、自然に関する知識など基礎的な学力が等しく国民に授けられた。我が国ではこれらの学力を「読み書き算盤」と言ったりする。こうした基礎的な学力は、先ず男子にあっては国民を徴兵し、兵士として一律に軍に動員し、あるいは平時の工場労働者として勤労にあたらせるための標準的な能力であったし、女子においても、男子が兵営に動員された後に、家庭ではなく社会の隅々で男子の代わりの役割を果たすために必要なものであった。つまり学校制度下で授けられる知識能力は、なべて国民一律同型の「標準的」なものである必要があった。個々人が多様な能力をそれぞれに伸ばしたのでは、上記のシナリオは成立しなかったことを明記しておきたい。
 しかし一方で、あらゆる階層の国民に等しく基礎学力を授けるという営みには、きわめて啓蒙的な意味もあった。それまで社会的な知識を持たない故に、不当な労働に縛り付けられていた男子や、家庭において男性である父や夫に縛られてきた女性に、社会と自分との関係を見る目を開かせたのも学校が与えてくれる基礎学力であったと言える。この時代の学校を描いた様々の小説を読むと、貧しい家庭の子弟に知識を授けて自覚を促す教師の話というのが多くみられるのは、こうした学校制度の啓蒙的な意味に起因している。(山本有三「路傍の石」など)
 さらに、学校は単なる知識を授与する場であるだけではなく、人格を涵養したり(アミーチス「クオレ・愛の学校」)、あるいは国民としての愛国心を訴求(ド-ディエ「最後の授業」)したりする場でもあった。我が国においては、学校は地域コミュニティーの重要な機関の一つであって、村の諸行事には、村長とならんで小学校長、郵便局長、警察署長が列座するのが通例であった。また、校歌、制帽、部活動などをつうじて、学校は、生徒の将来における兵営や工場のモデル(祖型)としての役割も果たしていたのである。
 さて、この稿の筆者は、こうした学校の、国民一律同型の「標準的」な知識授受の機能(今日で言えば、学習指導要領に基づいた標準的な学力の養成)が、インターネットやAIの普及による「知の爆発」(学ぶべき知識の総量が爆発的に拡散する)によって無意味なものとなり、現代においては、従来の学校教育とは別の形の知へのアプローチが求められていることを述べたい。現在求められているのは、学校で知識そのものを授受するのではなく、真偽定かならぬ様々な情報に満ちあふれているインターネット社会の中で、どのように正しい知識に行き着くことが出来るか、その方法を学ぶことである。もちろん、その方法を学ぶために、ある種の知識の授受をモデルとした知へのアプローチの実習や演習というものは必要であろう。が、学ぶべきは知への接近の方法であって、個々人は会得した方法に基づいてそれぞれの知の世界を形成するのが、現代における新しい学校のあり方ではないかと思うのである。

2024年12月27日

原爆許すまじ

この稿の筆者は、高校生時代の終わり頃「声なき声の会」という市民運動団体に参加していた。この団体の定例の会合は、信濃町駅の裏にある真生会館というキリスト教系の会館で開催されていたが、当時(今から半世紀以上昔)この会館では、ほかの労働組合や市民運動などの会合もよく行われていた。私たちが会合を開いていると、隣の部屋から、「がんばろう!」などの労働歌の声が聞こえてきたりすることもあった。そうした中で、筆者がとくに感銘を受けたのが、「原爆許すまじ」という歌であった。
「ふるさとの街やかれ、身よりの骨うめし焼土(やけつち)に、今は白い花咲く、ああ許すまじ原爆を、三度(みたび)許すまじ原爆を、われらの街に」i
という、どちらかというと暗鬱なメロディの歌であったが、当時は、まだ街に被爆者(ヒバクシャと片仮名で表記されていた)が多数現存されていて、原爆という悲惨な出来事を再び繰り返してはいけないという日本人の決意のようなものがよく伝わる歌であった。
 さて、今月は、たとえば、「核兵器廃絶」というとき、海外の人々と我々日本人とでは、少し感覚が違うのではないかということを書きたい。要約していえば、海外の人々にとって核兵器廃絶とは、大量破壊兵器としての核兵器を使えば、人類が滅亡するという判断が根拠になっているように思うのに対して、日本人のそれは、むしろ残虐兵器としての核兵器への強い忌避感が根拠になっているように感じるのである。
 以下、核兵器というものが人体にどのような影響を及ぼすものであるかを、簡単にスケッチしたい。
 放射線を大量に浴びると身体に重い障害があらわれる。被曝直後には全身の脱力と吐き気、嘔吐が見られ、その後いったん症状は軽快し、約3週から2ヶ月後に脱毛と口内炎が発症する。さらに白血球や赤血球、血小板など血液細胞を作れなくなったり(造血障害)、胃や腸などの消化管の粘膜が傷んだり、脳の機能が障害されてけいれんを起こしたりする。
 こうした急性障害の症状が落ち着いて5ヶ月以上たった後、がんをはじめとする晩発性障害が出現する。放射線は、また、身体を構成する細胞に損傷を与える。細胞の中では、遺伝子DNAからメッセンジャーRNAが転写されて、タンパク質が作られている。放射線の標的はDNAである。放射線はDNA二重らせんを切断する。これによって様々の遺伝子障害が惹起される。ii
 つまり、放射線の被曝による人体への影響は、核兵器の爆発直後から、(もしそれを生き延びたとしても)その後の人生の長い期間に及ぶものであり、場合によっては、子孫にさえも及ぶ可能性があるのだ。
 もちろん、核兵器の大量破壊兵器としての側面に目をつぶって良いということではない。世界には、人類を何回も滅ぼすことが可能なだけの核兵器が蓄積されていて、もしほんとうに核戦争が始まれば、数日を出ずして人類社会は跡形もなく消えてしまうかもしれない。だが、それにしても放射能、放射線の障害がもしなくて、核兵器がただの爆弾に過ぎなかったとするならば、核兵器が飛んできそうな都会を避けて、どこか田舎に穴こもりしていれば、万が一助かるかもしれない。だが、地球規模の核戦争がもたらすものは、地球規模の放射能、放射線障害なのであって、田舎に穴こもりしたくらいでは、避けることは出来ないのである。

i  作詞 木下航二 作曲 浅田石二
ii 広島大学放射線災害医療総合支援センター「放射線を浴びたときの身体障害」
https://www.hiroshima-u.ac.jp/gensai_iryo/aboutradiation/about/effects

2024年11月29日

後宮

 今月は先ずアラビアンナイトの話から始めることにしたい。西暦750年頃に成立した、イスラム教主(カリフ)国、アッバース朝は現在のイラクのバクダードを都にした。そのバグダードの王宮に、妻に裏切られて女性不信に陥った王(カリフ)がいて、ハーレム(後宮)の中から夜ごとの相手を選び、だが朝になると口封じのために一夜の相手を殺してしまうことを繰り返していた。それをやめさせるために、大臣の娘が自ら後宮に赴き、王の相手をする際に、面白い話を語って翌朝の命をつなぎ、夜ごとの物語が千夜に及んだ時ついに王は、娘を許して妻として迎えたというのが、千夜一夜物語(アラビアンナイト)の能書きである。

 イスラムに限らず、それ以前の古代オリエント、アッシリアやペルシアなどでも、一夫多妻制の文化を持つ国では、王朝にハーレムと宦官がつきものであったらしい。一夫多妻制の考え方は、権力や甲斐性があって、多数の女性を養う能力のあるものだけが多くの妻を持つことが出来るというものであって、おなじ中東由来のキリスト教やユダヤ教のように、階級や社会的立場に限らず、「神と約束した一夫一妻制」をとる宗教というのはむしろ少数派であったようだ。いずれにしても、ハーレムの存在は、一夫多妻制の文化の帰結であり、権力者が「血の純粋性」を維持するために多数の女性を後宮に隔離し、他の男性に接触させないための手段であったと言える。イスラム史上最も有名なハーレムは、テレビドラマ「オスマン帝国外伝~愛と欲望のハレム~」で知られる15~16世紀オスマン帝国のもので、コーカサス出身の美人奴隷を買い入れ、イスタンブールのトプカピ宮殿の奥に一時は千人に及ぶ後宮を形成したと言われている。この女性達を監督したのが、黒人奴隷出身の宦官であり、黒人の宦官長はやがて表の宰相に対する裏の最高権力者となっていったという。

 このような、後宮と宦官のセットは、儒教文化に基づく中国の王宮にも存在した。中国においても(儒教の始祖の孔子は春秋時代の人だが、それより前の)周の時代から、一夫多妻制と、後宮への女性隔離はあったようだから、必ずしもこれは儒教文化に基づくものだけとは言えず、広く東洋の一夫多妻制文化の帰結であると言える。いずれにしても、中国の各王朝においても、後宮と宦官はつきもので、また歴史的に見ても、後宮と宦官は権力抗争の主要な要素の一つであったと言える。

 ちなみに、儒教思想の下では、後宮と宦官という「裏」のシステムを経ないで、女性が「表」の権力を握ることは強く忌避された。中国史上その禁を犯して「表」の権力を握った女性は、唐の前半期に出現した則天武后(一時ではあるけれども「周」という国号を立てて女帝となった)だけであろう。

 則天武后はそれ故に自己の治政下では儒教に替えて仏教を重んじたが、その死後儒教思想が復活すると、武后の世はその斬新な治政にもかかわらず、否定的にしか評価されなかった。

 さて、我が国はと言えば、すくなくとも室町時代くらいまで、京都の宮廷に明確な女性隔離の思想はなかった。一夫多妻制ではあったのだが、たとえば源氏物語などを読むと、天皇が「血の純粋性」を維持するための努力を怠っていて、他の貴族が夜ひそかに后や妃の元に通ったりしている。

 江戸時代、徳川氏が国内安定のために儒教秩序を導入してから、武家文化の中では「大奥」という一種の疑似後宮が生まれたが、江戸の大奥が他の東洋の国々の後宮やハーレムと決定的に異なるのは、宦官を置かなかったことである。その代わりに大奥には、将軍の妻妾とは異なる役割の女性の「年寄」が存在し、この者がかなりの程度に政治的発言力も持つことになったのである。

2024年10月31日

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