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COLUMN

TOPATO通信“死因贈与は贈与税の対象か?” 5325号

ATO通信

5325号

2019年6月28日

阿藤 芳明

“死因贈与は贈与税の対象か?”

 相続人以外の方に財産を残したいと思うこともあるでしょう。遺言と言う手段でそれを実現させることは可能です。生前に予め遺言の内容を知らせていれば、貰う側の方も心の準備ができるかも知れません。
 しかし、仮にそんな約束があったとしても、相続人でなかったら、その遺言書を見せて貰える保証はどこにもありません。場合によっては遺言書はなかったことにされ、相続人全員による”分割協議”により財産分けが終わってしまうこともあり得るのです。実はそれを回避する方法が…。


1.死因贈与とは

 『私が死んだら、○○の財産は××に贈与する!』これを死因贈与と言います。相続人以外の方にも、こんな財産の渡し方が契約を取り交わすことで可能になります。契約ですからもちろん双方合意の上、それを書面にして公正証書にしておけば、更に法的にも安定性を増すでしょう。これにより、冒頭のような懸念は完全に払拭することができるのです。
 では初めに、死因贈与とは法律的にどんな贈与を言うのでしょうか。一言で言えば死亡を原因とする贈与、と言うことになるでしょう。つまり、死んだら、その事を原因として○○の財産が贈与されると言うものです。多くの場合、死んだら財産を渡すと言うのは、亡くなる方の意思に基づいて行われるもので、”遺贈”と言われる単独の行為です。遺言書によってその意思表示がなされます。それに対し、死因贈与は贈与者(財産をあげる人)と受贈者(財産を貰う人)双方、両当事者によって行われる契約行為。だからこそ、確実に実行されることが期待できるのです。


2.死因贈与は 贈与にも拘らず相続税?

 死因贈与と言うからには贈与税の対象なのでしょうか。一見そう思いがちですが、実は相続税が課税されるのです。後述するように、実は税務署だって勘違い(?)をすることがあるくらいです。それはさておき、死因贈与はどんな物がその対象になるのでしょうか。結論から言えば、どんな物でもOKです。土地や建物、マンション等の不動産から書画、骨董、宝石類、その種類は問いませんが、その物が特定できることが条件です。言うまでもなく、現預金だってもちろんその対象となり得ます。そして、貰った方には相続税が課税されるのですが、それが様々な問題の種にもなるのです。


3.登記簿上の移転原因は?

 この中でご注意頂きたいのが不動産で、名義が変わればそれは税務署の知るところに。税務署は登記所(法務局)と大の仲良し。不動産の名義が変わると、たちどころに税務署にもその情報が。
 ある時、こんな事がありました。不動産について死因贈与契約があり、その契約に基づいて財産を受け取るべき人が登記をしたのです。その結果、直ぐに税務署の知るところになりました。こんな時、税務署は何をどのように確認するのでしょう。実は移転原因が死因贈与なので、単に”贈与”となっていたのです。”死因贈与”とは登記簿には記載されないのです。すると税務署は、まずは贈与税の申告がなされているか否かを確認します。申告書が提出されていれば、今度はその価額が税法上の適正な価額となっているかを確認します。が、もし申告書の提出がなければ、直ちに税務署得意の”贈与についてのお尋ね”を発送し、対象となった物、申告書の提出の有無、提出日、価額、提出先の税務署等が質問されることになる訳です。


4.場合によってはヤブヘビも?

 さて、税務では死因贈与は遺贈と同じ扱いです。つまり、もし課税されるとすれば、贈与税ではなく相続税なのです。となれば、この受贈者も金額次第で相続税を納める必要が生じてきます。ただ、相続人でもない人が他人の家の相続税のことなんか、知る由もない事なのです。
 こんな時、上記のお尋ねを受けた方は、税務署に対し何と回答したらいいのでしょう?本人との死因贈与契約書を税務署に提示し、贈与された認識はありませんと答えるべきなのでしょうか。本来の回答はそうあるべきでしょう。しかし、そうなると税務署の対応は、死因贈与であれば相続税の対象であるので、今度は相続税の申告書の有無が問題に。
 もしその本人のご家族が相続税の申告書を提出していれば、死因贈与を受けた人の財産を含めて申告のやり直しでしょう。財産が加算されれば、全体の相続税が増加します。従って、死因贈与を受けた人の他、本来の相続人の相続税額の負担も増加します。それは仕方がないとして、相続税が無申告であればどうでしょう?税務署は死因贈与の回答を得て、相続税課税の有無の判断でしょうか?そこのお父さん!安易に飲み屋で死んだらA子に○○円やるぞ、なんて約束をすると後日ご家族が大変な思いをすることになるかも…。

※執筆時点の法令に基づいております