前号でコロナ禍の国税に与える影響をお話ししました。しかし、ことは税務署が扱う国税ばかりではありません。税金には国税の他、地方税と言われる住民税や固定資産税等々もあり、実はこの地方税にも多大な影響を及ぼしています。とりわけ、土地・建物をお持ちの方にとって大きな負担は固定資産税でしょう。その固定資産税を中心に、今回は地方税にも目を向けてみましょう。
1.地方税の徴収の猶予制度の特例
まずは地方税全般のお話から。今回のコロナ禍で地方税について、納税をする方の申請により、都道府県や市町村ごとの判断でその徴収を1年間猶予できることになっています。もちろん、納税をする方の負担を考えての措置ですが、納税期限が1年間延びることになります。
若干の相違はあるものの、東京都を例にとってお話しすると、令和2年2月以降の収入に相当の減少があり、納税することが困難になった方がその対象です。しかも、無担保かつ延滞金なし、と言う特別な配慮までなされています。
具体的には次の全ての条件を満たすことが必要で、(1)新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1ケ月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少している場合(2)一時に納付し、又は納入を行うことが困難な場合、の2つです。例外はありますが、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する全ての都税がその対象です。
申請をしようとする場合には、徴収猶予申請書に、猶予を受けようとする金額が100万円未満であれば財産収支状況書を、100万円以上の場合は財産目録と収支の明細書を。更に売上帳や出納帳等で収入減等の事実を証する書類を添付すればよいことになっています。
2.固定資産税の軽減措置
固定資産税と言うと、土地や建物について課税されるもの、と思っている方が大半だろうと思います。しかし、実は償却資産と言って、土地や建物以外でも事業を営むために使用している、減価償却の対象となるものも含みます。
その固定資産税ですが、所得税や法人税と異なり、賃貸事業その他の事業の業績が悪化して赤字になっても課税されることになっています。所有しているだけで課税される性格のものだからです。そのため、土地・建物や設備を多く保有する事業では、その金額も大きなものになってしまいます。
そこで、今回のコロナ禍で事業収入が大幅に減少している中小企業者、小規模事業者の税負担を軽減するため、以下のような措置がとられています。但し、ここで注意すべきは、来年度つまり令和3年度の固定資産税、都市計画税が軽減されるものであって、今年度(令和2年度)の税負担の軽減措置ではありません。
【1】適用対象者
個人、法人を問わず、中小企業者がその対象です。そして、個人事業者の場合は、中小企業者等であることの証として、(1)常時使用する従業員数が1,000人以下である旨の誓約書(2)性風俗関連の特殊営業を行っていない旨の誓約書の提出が必要です。また、法人の場合には、(1)資本金が分かる登記簿謄本の写し等(2)大企業の子会社でない旨の誓約書(3)性風俗関連の特殊営業を行っていない旨の誓約書の提出が義務付けられています。
これらを踏まえた上で、令和2年2月~10月の任意に継続する3ケ月間の事業収入が
(1) 前年同期比30%以上50%未満減少の場合は1/2軽減
(2) 前年同期比50%以上減少の場合は全額免除 となっています。
【2】軽減対象
軽減対象となる固定資産税等としては、
(1) 設備等の償却資産及び事業用家屋に対する固定資産税
(2) 事業用家屋に対する都市計画税
ここで注意すべきは、仮に事業用であっても、土地は軽減の対象にはなっていない事でしょう。
【3】申請方法
令和3年1月31日までに、『認定経営革新等支援機関等』の確認を受けて固定資産税を納付する市町村に、必要書類と共に軽減を申請することになります。なお、市町村による申請受付開始は、令和3年1月が予定されています。
ここで、認定経営革新等支援機関とは、専門知識や実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定する公的な支援機関と言うことに。具体的には、商工会や商工会議所など中小企業支援者の他、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等々です。
このように記載すると、この認定支援機関はいかにも重々しい感じがあります。ただ、実務的には一定事項を記載した申請書を提出すれば、上記の資格者は書類審査だけでほぼ自動的に認定されるとか(いい加減?)。まさに、これを利用しない手はありません。