どの生命保険会社にどれだけの契約をしているのかどうか、きちんと把握をしていますか?せっかく保険に加入していたとしても忘れてしまっては元も子もありません。特に相続が開始すると、被相続人がどのような保険に加入していたかどうか、その内容が分からないことも多いのではないでしょうか。受け取れるはずの保険金、もらい忘れがないかどうか確認する方法が実は最近できたのです!
1.生命保険契約の照会制度
家族の死亡の際、生命保険の手がかりがないため契約状況を把握できず、困ってしまったことはないでしょうか?このような場合、いままでは預金からの保険料の引落し記録や保険会社からの契約内容のお知らせなどを調べて、各生命保険会社に個別に問い合わせを行うしかありませんでした。しかし、全ての保険会社に問い合わせをすることは現実的にはできませんので、網羅できたかどうか不安です。そのようなこともあり、令和3年7月以降からは、「生命保険契約照会制度」というものが新たにできました。この制度を利用すれば、どの会社と生命保険契約を締結しているのか、その有無を一括照会できるようになったのです。
いままでは「もう分からないのでいい!」と、あきらめていた古い保険契約、もしかしたら発見できるかも知れませんよ。
2.調査対象に注意
この生命保険契約照会制度ですが、仕組みとしては生命保険協会が窓口となって各生命保険会社に調査依頼を行うことで契約の有無を検索します。したがって、あくまで調査対象は協会に加盟をしている生命保険会社です。そうはいっても、日本で営業する生命保険会社の全社(全42社)が加盟をしていますのでご安心ください。通常はもれるようなことはないでしょう。郵便局で加入する保険でさえ、いまや株式会社かんぽ生命保険という生命保険会社が扱う商品ですので、当然対象に含まれています。ただし、次のものは調査対象外のため、いままでどおり個別に調べるしかないので注意です。
(1)農業協同組合などの共済契約
(2)支払いが開始した年金保険契約
(3)保険金等を据置きとした保険契約
(4)財形保険契約・財形年金保険契約
3.具体的にはどうなる?
調査結果は、生命保険契約の有無です。保険契約者又は被保険者となっている生命保険契約があるかどうか、それがどの生命保険会社なのかを調べるものです。したがって、契約の具体的な種類までは分かりません。契約があることが分かったら、各生命保険会社に問い合わせをするようにしましょう。
ちなみに、照会制度は次の3つの事由が生じたときにだけ利用できます。実務的に考えれば、相続開始のときの(1)死亡時に利用することが多いでしょう。
(1)死亡
(2)認知判断能力の低下
(3)災害時の死亡又は行方不明
4.相続時には利用すべきか
さて、相続が開始したときですが、この制度は利用すべきなのでしょうか?
相続税試算をあらかじめ行っており状況把握ができている、保険契約リストを作成済みである、などであれば利用する必要は無いと思うかもしれません。ただ、その内容が全てを網羅しているかどうかは分かりません。生命保険金は請求をしなければ受け取ることができないのですから、万全を期すならせっかくの制度を活用しない手はないでしょう。
弊社が相続税申告のお手伝いをさせていただくときには、照会制度のお声がけをしますので、その際には是非とも一度利用をしてみてください。
ちなみに、照会制度の利用には料金が掛かりますが手数料はたったの3000円(税込)です。3万円と言われるとさすがに躊躇するでしょうが、この金額であれば悩むような金額では無いのでは。
5.税務署も利用するのか?
照会対象者が死亡している場合、生命保険契約の照会を行うことができる人は原則法定相続人ですが、その代理人でもできます。また、遺言により遺言執行者が定められているのであれば、その遺言執行者も行えます。
遺言執行者に税理士が就任している場合で、照会制度を利用しなかったばかりに生命保険金を把握しきれず、後々相続税の申告漏れが生じてしまったときはどうなるのでしょう?専門家責任に問われてしまいそうで少し怖くなります。
いままでは確定申告内容や預金の入出金状況などから把握していた生命保険契約ですが、税務署も職権によりこの制度を利用するかもしれません。被相続人の分はもちろん、相続人の保険情報も調べ上げ、課税漏れがないかどうかお上は全てお見通しかも?!