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え〜っと通信

10号

2001年10月1日

宮原  博

通 達(通達の変更内容の予測性を含めて)を読む!

平成13年8月10日付で、税務当局(国税庁課税部長)から、生命保険協会による『がん保険(終身保障タイプ)及び医療保険(終身保障タイプ)に関する税務上の取扱いについて』の意見照会に対し、回答がありました(個別通達)。

※ 通達の種類は多くありますが、通常、私共に関係するものは、各税法の『基本通達』です。
税務当局より、常々、疑問が投げ掛けられていた商品であり、その商品内容の性質及び経緯等は以下のとおりです。


〔保険商品内容等〕

商品はがん保険(終身保障タイプ)であり、その税務処理については、昭和50年10月6日付けの個別通達で、『支払保険料の損金経理可能額について、法人がその保険料をその払込みの都度、損金経理した場合には、その計算を認める』とされました。
このことより、一部の保険会社が、支払総保険料額を3年ないし5年以内に支払うという商品を発売しました。
その効果としては、保険期間と保険料の支払期間が過度に相違し、前払的部分が生じます。しかし、上記の通達により、損金経理が認められることから、①損金算入額が多くなり、②途中解約に伴う解約返戻金が多額となります。
その結果、この商品を利益調整の手段の一つとして、利用する法人が多く存在することとなりました。

今回の変更通達により、個別通達の裏読み的な解釈の発想による節税(税金の繰延)がん保険商品を含め、一定計算式により算出された額が資産計上(逆に言えば、全額損金算入とはならない部分がある)とされる、こととなりました。
この通達の解釈、執行趣旨は、もっともであると思いますが、何と、その取扱適用日を平成13年9月1日以降にその保険に係る保険料の支払期日が到来するものから取り扱うことが明言されています。 
単純に言えば、税務上、今まで損金経理していた額は否認の対象としないとされたのです。

この商品について、変更前の個別通達から判断しても、その支払全額を損金経理すること自体が、税務当局に否認されるであろうことから、契約には警鐘を鳴らす税理士が多数いたと思います。
その結果が、過去に遡らない寛大な処置の通達の変更となりました。これでは、平成10年度の改正により、法人税率等の引下げとなる事業年度以前に契約(駆け込みの契約)をした法人は、はるかに効果的な税の繰延(又は永久的節税)ができたこととなります。まさに、やったもの勝ちの感が拭えません。 
逆に言えば、契約を勧めなかった又は通達の変更内容を読めなかった税理士が悪いのか、これでは正義派の税理士には立つ瀬がありません。
一部の保険会社の圧力でもあったのか、と疑いなりたくもなります。

『適正』、『公平な』課税の執行を常々口にし、少額な期間損益のズレにも、修正申告を押しつけてきた税務執行庁はどこへ行ってしまったのでしょうか?

税務行政が若干変わり始めました。

1 情報公開
従前は、業界団体からの意見照会に対しては回答を行なっていましたが、これら回答は、一般には公開されず、税務当局内部のみにおいて、個別通達(関係者以外には公表されない)として取り扱われていました。
しかし、これからは、下記の『事前照会手続き』を含め、原則として、照会内容とその回答が国税庁のホームページに掲載、公表されるようになりました。

2 事前照会手続き
今回、紹介した通達は、業界団体からの意見照会に対してですが、業界団体以外の者からでも、一定の要件(範囲)に該当しますと、意見照会に対する回答を文書で得ることもできるようになりました。

※執筆時点の法令に基づいております