相続税はプラスの財産(現預金・土地など)からマイナスの財産(借入金など)を控除して残った財産に対して課税されます。一般的にマイナスの財産の方が多ければ相続税はかからないと認識されています。
確かにこの考え方は間違いとはいえませんが遺産分割の仕方によっては、マイナスの財産の方がプラスの財産より多いのに相続税が課税されてしまう事もあるので注意が必要です。
以下のようなケースがありました。
1 借金の方が多かった被相続人
AさんとBさんの父親がなくなられた場合です。母親は既に亡くなっています。
父親の所有の資産は預貯金2億円と貸ビル(相続税評価額8億円、時価10億円)でした。
負債は借入金が12億円です。
2 遺産分割の仕方によっては税金が
遺産分割協議に際し、Aさん、Bさんが話し合った結果、2つの案がでました。
税理士に相談したところ、その結果に2人は驚愕したのです。
①財産・債務とも均等に相続する案
相続税の課税価格の合計額の計算
Aさん Bさん
財産 5億 財産 5億
債務 6億 債務 6億
課税価格 △1億円→0 課税価格 △1億円→0
課税価格の合計額が0であるため、相続税はかかりません。
② Aさんが貸ビルと借入金をBさんが預貯金を相続する案
相続税の課税価格の合計額の計算
Aさん Bさん
財産 8億 財産 2億
債務 12億 債務 0億
課税価格 △4億円→0 課税価格 2億円
合計 0+2億円=2億円
注意すべきは、このケースではAさんのマイナス分とBさんのプラス分を相殺して、△4億
円 +2億円=△2億円→0とはならないことです。
つまり、『△4億円→0』が相続税の計算方法のミソなのです。
結果として課税価格の合計額が2億円となり、
何と、Bさんに約2,800万円の税金がかかってしまうのです。
3 債務は分割をしないで申告という方法も・・・
あまり大きな声ではいえませんが実務的には、とっておきの手があります。
それは、債務を分割しないのです。
債務が分割されていない場合、相続税の計算上は法定相続分に従いAさん・Bさんそれぞ
れが債務を2分の1づつ 相続したものとします。
相続税の課税価格の合計額の計算
Aさん Bさん
財産 8億 財産 2億
債務 6億 債務 6億
課税価格 2億円 課税価格 △4億円
合計 2億円+△4億円=△2億円となります。
上記2②のケースとは違い、債務が未分割の場合は、相続税法の規定(基本通達13-3)
によりAさんのプラスとBさんのマイナスを相殺できるのです。
その結果、相続税はかかりません。
申告期限が過ぎても債務の分割が行われない場合どうなるのでしょう?
税務署は早く債務を分割するようになどと、債務の分割について介入してくることはありません。
納税者の自主性にまかせているのです。
特にこのケースのように、債務の方がプラスの財産より大きな場合、税務署は当初から相続税の課税対象としては見込んでいない事も多いのです。
相続があった場合、プラスの財産の分け方ばかりに意識がいきがちですが、債務の分け方にも注意が必要です。
遺産分割の方法によっては、思わぬ税金が・・・・・