最近、高齢化や少子化の影響か遺言を作成される方が増えているそうです。遺言には、相続争いの防止や相続権の無い人にも財産を分配できるというメリットがあります。今回は、主に税務の観点から遺言作成上注意する点についてお話させていただきます。
1.遺留分にご注意を!
遺言を作成する場合、遺言者は誰にどの財産を引き継がせるかを自由に指定することができます。しかし、完全に自由かというとそうではありません。
例えば、全財産を国に寄付するという遺言があった場合、残された家族は、生活に困る可能性があります。そこで、法律により最低限度の相続財産を遺族に保証しています。これが、遺留分です。
しかし、遺留分は誰にでもあるわけではなく配偶者や子などにあります。遺留分が侵害された場合には、遺留分の減殺請求をすることにより最低限の取り分をもらうことができるのです。
2.税務上の特例について考慮した遺言を!
遺言作成上、注意することは遺留分だけではありません。遺言の仕方で、税務上の特例の適用を受けることができなくなったり、適用を受ける金額が少なくなったりするケースもあります。
例えば小規模宅地等の評価減の特例です。小規模宅地等の評価減は、適用を受けようとする宅地等を取得する人や取得後継続して利用するか否かなどによって減額割合や減額対象となる面積が変わってきます。事業用の場合、最大400㎡まで8割引ですが、200㎡まで5割引となってしまうケースもありますので注意が必要です。例えば、小規模宅地等の評価減適用前で400㎡、4億円の事業用の土地のケースでは、減額割合と適用面積によって8千万円(※1)と3億円(※2)の評価額になります。その結果、差が2億2千万円も生じてしまうのです。
(※1)特定事業用宅地等の場合
4億円-4億円×400㎡/400㎡×80%=8千万円
(※2)事業用宅地等の場合
4億円-4億円×200㎡/400㎡×50%=3億円
3.納税についても考慮した遺言を!
納税についても注意が必要です。相続税の納税は金銭一括納付が原則です。相続させる財産額しか考えずに金融資産を特定の人にのみ相続させるという偏った遺言を作成した場合どうなるのでしょうか。金融資産を取得しなかった人は金銭で納付することができなくなり、延納や物納を選択、あるいは取得した財産を売却しなければならなくなるケースがでてきます。
例えば、次のようなケースです。相続人は子Aと子Bの二人。財産は1億円の土地建物と1億円の現金で相続税額は2千万円とします。現金を子Aに、土地建物を子Bに、という遺言の場合、子Aは納付すべき相続税1千万円を相続した現金で納められますが、子Bは自分の金融資産が1千万円ないと納められません。金融資産がない場合子Bは、財産を売却して相続税を納めるか、分割払いで納めなければならなくなってしまいます。
この様な状況にならないためにも、事前に納税の可否についてのチェックも必要です。自分の財産を引き継がせるために遺留分を考慮したり、納税について考慮したりと、遺言作成には、結構、気を使います。法律的なことばかりでなく、遺言作成には税務の知識も必要なのです!!