平成18年度税制改正により、交際費の損金不算入について一人当たり「5,000円以下」の飲食費が一律損金算入となる規定が創設されました。税務上でいう交際費は、今までは基準が曖昧で、私ども実務担当者も迷うことが多かったのです。しかし、今回の規定の創設により、一つのはっきりとした基準が金額として設けられたことは喜ばしいことです。ただ、施行が開始された今でも、規定の適用を受けるための要件の詳細はあまり知られていません。また、適用対象などについて誤解している方もいらっしゃるかもしれません。そこで、今回は、「新」交際費Q&Aと題して、平成18年4月以降の交際費の新しいルールをご説明したいと思います。
1. 適用開始時期
Q1 | 平成18年4月から適用開始とのことですが、6月から事業年度が開始する会社の4月の交際費は、新しい基準で処理できますか?それとも6月以降の適用ですか? |
A1 | 「平成18年4月以後開始する事業年度から適用」ですので、6月以降の適用となります。今年の4月の交際費については適用はありません。 |
2.適用対象飲食費の範囲
Q2 | これまでは、一人当たり5,000円を超える飲食費であっても、内容が会議費等にあたるものであれば、損金算入してきましたが、これからは交際費課税の対象となってしまうのでしょうか? |
A2 | いいえ。この規定は、一人当たり5,000円以下の飲食費であれば、その内容を問わず、交際費課税の対象から除外するという趣旨ですので、一人当たり5,000円を超える飲食費については今回の改正にかかわらず、従前と同様に個別にその内容を確認して、場合によっては損金算入が認められます。たとえば、これまでに損金算入することについて個別に税務署から確認を受けたような内容のものにまで交際費課税されることはありません(表1参照)。つまり、会議費か交際費かのグレーゾーンにあったもののうち、5,000円以下の飲食については損金算入できることが明確になりました。 |
Q3 | 飲食費の内容を確認すると明らかな交際費なのですが、一人当たり5,000円以下であれば損金算入できますか? |
A3 | はい。一人当たり5,000円以下の飲食費であれば内容は問われません(表1参照)。ただし、役員間や従業員又はこれらの親族に対する接待等のための飲食費(社内飲食費)はこの「5,000円以下の飲食費」の対象にはなりませんので注意が必要です。 表1飲食その他これに類する行為のために要する費用 (社内飲食費は除く)5,000円以下5,000円超一律損金算入個別に内容を判断 |
Q4 | 得意先へ手土産を持っていくような場合、手土産代は「飲食その他これに類する行為のために要する費用」 に含まれますか。 |
A4 | 含まれません。条文にある「飲食その他これに類する行為」とは、仕出弁当やケータリングサービスを想定していると考えられます。ただし、飲食行為に付随する手土産であれば、飲食費に含まれます。例えば、寿司屋で食事した後に手土産がつくようなケースです。こういうケースでは、飲食費「5,000円以下」の判定に手土産代を含めなければなりません。たとえ請求書において「飲食代」と「御土産代」のように分けて記載されていても飲食代のみで5,000円以下かどうかを判定することはできません。 |
3.適用対象金額の計算方法
Q5 | 一人当たりの飲食費が5,500円だったのですが、5,000円は損金算入、500円は交際費課税の対象とすることができますか。 |
A5 | できません。5,000円を超えれば、内容をみて個別に判断することになります。内容が交際費であれば、5,500円 全額が交際費課税の対象です。(表1参照) |
Q6 | 5,000円の判定は消費税込み額ですか?消費税抜き額ですか? |
A6 | 会社の経理が税抜処理の場合は、消費税抜きの金額で5,000円以下かどうかを判定することになります。 |
Q7 | 二次会の費用は5,000円以下の判定の際に加算する必要はありますか? |
A7 | ありません。例えば、一次会が中華料理店で一人当たり4,000円、二次会がスナックで一人当たり4,500円だったような場合、それぞれに要した飲食費は別々の飲食費と捉え、両方について損金算入が認められます。 |
4.適用要件
Q8 | 適用のために必要な手続きを教えてください。 |
A8 | 飲食その他これに類する行為(飲食等)のために要する費用について、次に掲げる事項を記載した書類を保存していることが必要とされます。イ.その飲食等のあった年月日ロ.その飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係ハ.その飲食等に参加した者の数ニ.その費用の金額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地ホ.その他参考となるべき事項 |
Q9 | 飲食した得意先の全員の氏名を記載しておく必要はありますか? |
A9 | 上記A8のロ.の通り「氏名又は名称」とされていますので、どちらかの記載があれば足りることになります。 しかし、事後の税務調査のことを考えると両方の記載をしておくことが無難であるといえます。ただし、懇親 パーティーのように参加人数が多い場合には、取引先会社の名称や部署等を記載しておけば足りるものと考えられます。 |
施行後間もない規定ですので、戸惑うことも多いと思います。飲食費はどの会社でも関係のある身近な経費ですから、判断に迷ったときには、私ども専門家にぜひご相談下さい。