平成23年3月11日、東日本大震災が起きました。今回の地震の被害は過去最大で、未だに復旧・復興のめどが立っていない状況です。現在、街頭や駅の色々なところで、募金のお願いの声を聞きます。募金の額は人それぞれだと思いますが、気になるのは税制の取扱い。今回は、義援金に焦点を当てた税務上の取扱いを紹介したいと思います。
Q1.個人が義援金等を寄付した場合の税金は?
個人が、義援金等を寄付した場合には、その義援金等がQ5にある「特定寄付金」に該当する場合であれば、寄付金控除の対象となります。寄付金控除とは所得税の場合、税額控除ではなく、あくまで所得控除の中の一種類です。下記の算式で計算された金額を所得控除額に加算し、課税所得金額を算出して税額計算が行われます。
<所得税> 特定寄付金の金額 - 2千円 = 寄付金控除額 *特定寄付金の上限は、寄付者の年間所得金額の40%が限度となります。 |
一方、住民税は、下記の算式で算出した金額を税額控除することができます。
<住民税> (一定の寄付金の金額-5千円)× 10% = 寄付金税額控除額 *一定の寄付金の上限は、寄付者の年間所得金額の30%が限度となります。 |
なお、寄付金の適用を受けるためには、①確定申告書に寄付金控除に関する事項を記載するとともに②寄付したことが確認できる書類を確定申告書に添付等する必要があります。
Q2.ふるさと納税はどうなる?
住民税の税額控除には、平成20年より始まった「ふるさと寄付金」がプラスであります。これは、「ふるさと」に貢献したい、「ふるさと」を応援したいという納税者の思いを活かすことができるよう拡充された住民税制です。都会で払う住民税の一部を故郷の県や市へ支払う=寄付することによって、「ふるさと納税」となるのです。被災地の県や市町村に直接寄付する場合や、日本赤十字社等へ「東日本大震災義援金」として寄付する場合にも、この「ふるさと納税」の対象になり控除を受けられます。
寄付金税額控除の具体的な算式は以下のとおりです。
<ふるさと寄付金> (都道府県・市区町村への寄付金-5千円)×(90%-A)= 寄付金税額控除額 A・・・0~40%の寄付者に適用される所得税の限界税率 *寄付金の税額控除限度額は、所得割額の10%が限度です。 |
Q3.寄付金の実質負担額は?
Q1.2から具体的に税金の減額となる額を計算すると、以下のようになります。
<年収700万円、夫婦子2人、所得税率10%、住民税率10%、住民税所得割額293,500円、10万円寄付の場合>
Ⅰ.所得税控除額(10万円-2千円)×10%= 9,800円 |
Ⅱ.住民税控除額 |
①基本控除額:(10万円-5千円)× 10% = 9,500円
②特別控除額:(10万円-5千円)×(90%-10%)= 76,000円
①+②=85,500円
Ⅲ.寄付に伴って減少した税額・・・Ⅰ+Ⅱ = 95,300円 |
Ⅳ.実質負担額・・・100,000円-95,300円 = 4,700円 |
上記の例から、10万円を寄付した場合、実質の負担金額は4,700円!となってしまいます。
Q4.相続財産を寄付した場合は?
相続財産を寄付した場合は、その相続財産は非課税となります。例えば、現金10万円を寄付した場合、相続税率50%の時は、相続税が5万円減額となり、実質の負担額は5万円となります。Q3の個人で寄付した場合と比べると、同じ10万円を寄付しても実質負担額は個人で寄付した場合の方が納付する税額は少なくなります。
Q5.特定寄付金とは?
特定寄付金に該当するものには、主なものとして、下記に掲げる義援金等があります。
① | 国又は地方公共団体に対して直接寄付した義援金等 |
② | 日本赤十字社の「東日本大震災義援金」口座へ直接寄付した義援金、新聞・放送等の報道機関に対して直接寄付した義援金等で、最終的に国又は地方公共団体に拠出されるもの |
③ | 社会福祉法人中央共同募金会の「各県の被災者の生活再建のための義援金」として直接寄付した義援金等 |
④ | 社会福祉法人中央共同募金会の「地震災害におけるボランティア・NPO活動支援のための募金」として直接寄付した義援金等 |
Q6.法人が義援金等を寄付した場合の税金は?
法人が義援金等を寄付した場合には、その義援金等がQ5に該当するものであれば、支出金額の全額が損金の額に算入されます。なお、寄付金の適用を受けるためには、①確定申告書の明細書に、寄付した義援金等に関する事項を記載し、②寄付したことが確認できる書類を保存する必要があります。
以上、今回は寄付金の取扱いについてご紹介しました。今後、震災特例法で指定された寄付金には更なる控除の拡大が見込まれており、動向に注視する点が出てきそうです。