土地を借りたら地代を払う、これ、当たり前の話ではあります。問題はいくら払えば適正なのか、税務上どのような問題があるのか、簡単なようで結構複雑です。
1.親子なら、ただでもOK!
親の土地に子が家を建てました。さて地代は?よく頂くご質問ですが、ただで結構です。お支払いになるのは勝手ですが、地代を払わなくても贈与税の課税はありません。親の土地を子が無料で使用するなど、考えてみれば至って自然な話。税法もそこまでうるさいことは言わないのです。但し、贈与税の課税が無い代わり、子に借地権は生じません。つまり、相続税法上は親の土地は更地扱いの評価になってしまいます。
2.法人が絡むと途端に面倒です
法人が地主でも、逆に借地人でも、法人が関係者になると、事はいささか面倒です。税務上、法人は利益を追求するための組織、純経済人と位置づけられています。従って、本来支払うべき、又は受け取るべき地代を支払わなかったり、受け取らなかったりする場合には、課税関係が生じます。基本的に法人にボランティアは認められません。損をしてはならず、得をすれば課税です。ご自分の会社だからと言って、ただで土地を貸すわけにはいかないのです。
詳しいお話はしませんが、借地権に係る権利金の認定課税と言って、地代以上に面倒な事に発展してしまいます。法人が絡む場合はゆめゆめ注意をお忘れなく。
3.底地物納で国が地主になった場合
借地人のいる土地、つまり底地は財産の内でも使い勝手の悪いもの。相続時には物納財産の最右翼です。 物納財産を収納する国としても、底地は管理も簡便で収納し易いのですが、問題となるのは地代の金額です。実際の収納実務を担当する財務局には底地の収納に際し、基準となる地代の規定が設けられています。基準貸付料や近隣地代相場の70%が一応の目安とか。この基準貸付料は路線価に基づいて算出され、住宅地では1.3%、非住宅地では1.85%と言われています。
地代が安過ぎる場合、引き上げを要求されますが、それができないために物納却下の事態にも。この手のケース、結構多いのです。将来、底地を物納にとお考えの場合には、適正水準まで地代を引き上げておくことが必須条件。仏心でいつまでも安い地代は禁物です。
4.国が借地人になった場合の変貌!
さて、問題は立場が逆転し、物納で国が借地人になった場合です。彼らは信じられないことをおっしゃるのです。まず、国が借地人になるとはどう言う場合なのでしょうか?借地権は物納ができません。しかし、相続財産が総て借地権だけである場合、物納を認めないわけにはいかないのが実状。以前、“ATO通信”でもご紹介しましたが、このような場合には建物を物納し、借地権込みの価額で引き取って頂くのです。非常に希なケースですが、結論から言えば借地権もその意味では物納が可能です。 ただ、国側は相当これを嫌がりました。最大の理由は建物が古かったため、空室になると地代は払う、室料は取れない、で困ると言うものです。様々な理屈を付けて物納を拒否しようとしましたが、こちらも借地権しか財産が無いので必死です。一度は物納を認めると言っておきながら、最後にこんな切り札を出してきたのです。『地代が高過ぎるからもっと安くするよう地主に交渉して下さい』と。この条件が整えば物納を認めるというのです。一体、どこに地代の引き下げに応じる地主など存在するでしょうか?真実法外な地代を払っているのならともかく、これは国のイジメです。底地を収納する時、地代が安過ぎるから値上げをしろと言っておきながら、自分が地代を払う場合には、値下げしろとは、開いた口が塞がりませんでした。でも、これって実話なのです。最後はこれを撤回させましたが、大蔵省ってこんな事まで言うのが実態。あれからです。筆者が人間不信、いや、税務署不信になったのは。