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TOP今月の言葉法律の知識 2019年07月

今月の言葉

2019年7月1日

法律の知識

かねて疑問に思っていることがある。中学校、高校で法律をどのくらい教えているか、ということである。たしかに憲法は多かれ少なかれ、教わる。内容はだいたい基本的人権や三権分立(世界の民主主義国家に共通する項目)と、象徴天皇制、戦争放棄、議院内閣制(我が国に特徴的な項目)くらいである。だが、憲法の諸項目は、日本という国家がどう組み立てられているかを知る上では、重要だが、正直に言えば実際の市民生活からは、やや感覚的に遠い。

 この稿の筆者が問題にしたいのは、市民生活に密着し、誰もが直接お世話になるような法律が、大人になるまでに教えられているかということである。成人年齢は2022年から18歳ということになるらしいが、市民生活に関係の深い法律を知らないまま成人になる者が増えるのを危惧するのである。

 たとえば、以下のような法律の定めは、学校で教えられているのだろうか。

 まず、民法。婚姻、出生、死亡の手続き、離婚に関する定め。何歳から自分の判断で結婚できるのか、夫婦間の権利義務、姓に関する法の定め、相続に関する原則、遺言、墓や祭祀に関する定め。

 次に、労働三法。大半の国民が成人になると誰かに雇用される社会であるわけだから、労働時間、休暇、残業、定年などに関する法律の基本的な定めは知っておく必要がある。正規雇用と非正規雇用のちがい、契約社員の権利等。世間のブラック企業は、従業員が法律をよく知らないのをよいことに、違法な雇用形態を違法と思わせないで押しつけたりするわけだから、こちらも「市民の常識」として、労働関係の諸法規を知っておかなければならない。

 さらに、年金関係の法令。年金のお世話になるのは、何十年も先かも知れないが、社会保険を負担するのは成人になってすぐだから、払う側の立場として年金の仕組みは知っておかなければならない。国民年金、厚生年金と共済年金の区別。年金は、何歳からどれだけ貰えるのか。そして健康保険や介護保険の仕組みなど。年金請求の手続き。そして、お金と言えば、税法も少しは知っておいた方が良い。所得税、住民税、消費税等の税率と徴税のやり方、不動産を所有していれば、固定資産税なども負担するわけだから、それぞれの仕組みがどうなっているのかを知っておく必要がある。

 最後に、道路交通法や刑法。これは、市民として「知らないうちに法を犯している」リスクを避けるための、最低限度の知識が必要である。刑法をよく読んでみると、「え?こんなことが犯罪なの?」という条項に遭遇することも多い。道路交通法に至っては、貴方も私も、毎日1回や2回は法律違反を犯しているかもしれないような、現実とかけ離れた法律である。自分では正しい行いをしているつもりでも、知らない法律に違反して、裁判所のお世話になることもあるだろうし、他人から訴訟を起こされることもあるだろうから、刑事、民事の訴訟法(裁判)の知識も少しは必要である。

 この稿の筆者の提案は、高校1年か2年頃に、週2時間「市民のための法律知識」というような授業を必修で行うべきではないか、というものである。