お役立ち情報

COLUMN

TOPATO通信プロの隠し味 5135号

ATO通信

5135号

2003年8月29日

高木 康裕

プロの隠し味

 個人の不動産所得の計算くらいなら、何もお金を払って税理士に頼む必要など無い!何しろ自分でやれば費用はタダ。浮いたお金で温泉にでも行った方が精神的にも経済的にも健康的?
 ちょっと待って下さい。中には完璧な方がいらっしゃるのも事実です。しかし、我々から見ると御自分で申告する方は意外なところで損をしていることも多いもの。専門的なことは申しません。基本のキだけでも、ちょっとの工夫でこんなことが…


1.建物本体と付属設備を分ければこんなにお得!

 現在、新築建物に認められている減価償却の方法は定額法だけになっています。そのため、賃貸用のアパートやマンションを建築した場合、何の疑問も持たずにその全額を建物として定額法で減価償却していませんか?それ自体、誤った処理方法ではありません。でも、建築工事の内容を細かに分析し、建物本体と附属設備である電気設備、給排水設備、冷暖房器具等を別々に資産計上したらどうでしょう?
 まず第一に耐用年数が大幅に短くなります。建物は鉄筋系でマンションならば47年。それに対して附属設備はそれぞれ6年~15年、何と半分以下の年数で償却ができてしまうのです。更に、減価償却の方法も附属設備になれば定率法が可能です。これで早期の償却が可能となり、建築当初の節税効果が格段に優ること請け合いです!


2.専従者給与はとにかく103万円以下?

 奥様を専従者にし専従者給与をお支払いになる。結構な節税策です。給与を支払っても、なおかつ奥様の所得金額が38万円以下なら奥様自身も税金の課税対象にならずに済む。この所得金額38万円から逆算すれば、給与所得控除額が65万円あり、給与は収入金額にして年間103万円。これで決まり!
 と、これが素人の浅はかさ(失礼!)なのです。勿論、103万円がベストチョイスと言うケースもあるでしょう。しかし、問題は一体ご主人の適用税率が何%なのかと言うことなのです。
 説明の都合上、敢えてラフな計算例で考えてみましょう。例えば、ご主人の課税所得が3000万円で、所得税住民税合計の適用税率50%の場合です。奥様に500万円の専従者給与を支払うと、奥様にも所得税住民税が課税です。他の所得や控除項目がないとすれば、約50万円の負担を担うことに。
 ただ、奥様へお支払いになった給与500万円が経費となって税負担を軽減しています。従前の103万円よりご主人の所得は約400万円減少で、これも50%の適用税率で計算すると200万円ほどの節税です。つまり、奥様に課税のないことだけに重点を置き、奥様への給与を103万円に抑える。又は奥様にも税負担はあるものの、500万円の給与にして、差し引き(200-50)の150万円 を節税する。決して難しい算数ではないはずです。


3.簡易な貸借対照表で良いのです!

 不動産賃貸業、つまり不動産所得のある方で一定規模以上の場合、青色申告をされると大きな特典が用意されています。何の事かというと、申告時の青色決算書に貸借対照表を添付すれば、青色申告特別控除額として55万円が所得から控除できることになっているのです。55万円控除と言えば大きなものの、一般の方は貸借対照表と聞いただけで諦めてしまうのです。厳密にはと言うか、理論的にはこれを作成するには複式簿記が必要ですが、実務はいたって簡単です。期末時点の残高を確認し、表を埋めれば良いのです。法人と全く同じにはできる訳がありません。最初から帳簿があったわけではないのですから。一定以上の記載があれば十分で、これで55万円をゲットできることを一般の方はなかなかご存じないのです。


4.プロは全体を考えます!

 上記の例はホンの一例で、基本的な事項でもちょっとの工夫で大きな違いがでてくるものなのです。 更に言えば、当たり前ですがプロは所得税の申告書を作る際、他のことも考えます。消費税への影響、法人の活用法、挙げ句は将来の相続税負担等々、これらを総合的に考えて、はじめて答を出すのです。所得税の申告時に所得税だけを考えていたのでは、素人と言われても仕方ありません。
 突然ですが、ここで問題です。あなたは税理士に頼んで安心するのと、ご損に

※執筆時点の法令に基づいております