外貨建て取引による為替差益に関する税務
~外貨預金とFXを中心として~
昨年は円安が進んだ一年でした。年初の1ドル115円が10月には150円を超えた日も。円安が進むのならドルを買っておけばよかった、と思うのも後の祭りです。今回は、外貨建て取引による為替差益に纏わる税務のお話です。
1.為替差益は‟雑所得”で総合課税
財産の持ち方ですけど、今後の日本や世界の情勢は不透明のため、リスク分散が必要と思い、預金の約30%をドル預金とし、株式の約70%を米国株にしています。
昨年は円安が進みましたね。お持ちのドル預金ですが、円転しましたか?
一部ですけど、30,000ドルを1ドル140円で。購入時は、確か1ドル100円くらいだと記憶しています。
そうすると為替差益は約120万円ですね。
(140円-100円)×30,000ドル=1,200,000円
税金はどうなりますか?
為替差益は雑所得で総合課税。給与所得や不動産所得と合算して課税されます。安夫さんの最高税率は、所得税と住民税で合わせて約50%。半分が税金ですね。
儲けた割に手取りは少ないですね。残念。一方、株ですが、米国の株式も売却しました。一般口座で保有していたので、譲渡税の申告も必要になりますよね。
2.株式の譲渡における為替差益の取扱いは?
FRB(連邦準備理事会)による利上げの影響で、昨年の米国株式市場は下落基調でしたよね?
実は、新型コロナの影響で株価が急落した2020年に買っておきました。米国T社を1株40ドル、100株で4,000ドルでした。当時は1ドル105円でした。
オーナーが著名な米国T社。急成長しましたね。
一時は1株300ドルを超えました。でも下落してきたので、昨年の10月に240ドルで売却しました。売却時は、円安になっており1ドル145円でした。
1株40ドルが240ドルに値上がりして、さらに円安も加わったので、かなり儲かりましたね。
株価上昇による売却益と円安による為替差益。売却益部分は税率約20%の申告分離課税、為替差益部分は総合課税で、私の場合は税率約50%だから……。
税務ではそのような計算はしませんね。購入や売却の都度、円換算をします。1株240ドルで100株を売却し、売却時レート145円で円換算するので、譲渡収入は348万円ですね。
240ドル×100株×145円=3,480,000円(①)
1株40ドルで100株を購入し、その購入時レート105円で円換算するので、譲渡原価は42万円ですね。
40ドル×100株×105円=420,000円(②)
証券会社への手数料は省略するとして、売却益は306万円(①-②)になります。適用される税率は約20%で、譲渡税は62万円程度ですね。
実質的に為替差益と考えられる部分についても税率20%の課税で済んでしまうのですね。
そうですね。1ドル当たり145円から購入時の105円を引いて40円の差益。4,000ドルでは16万円になり、この部分は実質的には為替差益と言えますね。
(145円-105円)×4,000ドル=160,000円
本来の為替差益であれば総合課税の雑所得。でも、外国株投資では、為替差益部分も含めて売却益扱いになり、20%の税率で済む点はメリットですね。
3.為替差益も税率20%の申告分離課税にできる!!
為替相場や株価は変動します。儲かることもあれば損をすることもあります。損失となった場合に、利益との通算や損失の翌年への繰越しができるか否かも重要になります。
為替差益が雑所得ということは、円高が進み、為替差損となってしまった場合はどうなりますか?
公的年金など他の雑所得の範囲内で通算できます。しかし、通算しきれない損失は切捨てです。
上場株式の売却損は、翌年以降に繰り越せるようですけど、外国株式の売却損でも繰り越せますか?
外国市場で取引されている外国株に限り、一定の金融機関を通じて取引をすれば繰り越せます。
雑所得内で通算しきれない為替差損は切捨てになり、翌年に繰り越せない点がデメリットですね。
国内の指定業者でのFX(外国為替証拠金取引)を活用すれば、株式の譲渡と同様に税率約20%の申告分離課税で、損失は3年間の繰越しが可能です。
レバレッジをかける取引(少ない元手で大きな取引が可能)ですよね。儲かればいいですが、損をするとひどい目に遭いますよね。
詳細は省略しますが、レバレッジを「1倍」にしておけば、通常の為替差損益と同じですね。
4.おわりに
外貨預金の利息は税率約20%の源泉分離課税(申告不可)、為替差益は総合課税で、損失の繰越しはできません。一方、レバレッジ1倍のFXについては、利息(スワップポイント)も為替差益も税率約20%の申告分離課税で、損失は3年間繰り越せます。所得状況に限らず約20%の固定税率で、かつ、損失も繰り越せる点は、FX取引のメリットになります。総合課税で適用される税率が高い方は、一考の価値があるかもしれません。