ふるさと納税は、ご自身の選んだ地方公共団体に対して寄附を行った場合に、返礼品がもらえる上、控除上限額の範囲内で寄附すると寄附額のうち2,000円を超える部分について、所得税及び住民税からそれぞれ控除が受けられる制度です。
相続により財産を取得した人が、相続直後に国などに相続した財産を寄附した場合、一定の要件を満たせば、寄附した財産は相続税が非課税とされます。これは措置法70条の非課税という相続税の制度です。
ふるさと納税と措置法70条の非課税は、どちらも寄附した場合に受けられる制度という点では似ていますから、ふるさと納税をすると所得税・住民税だけでなく相続税も節税することができるのでしょうか。
1.措置法70条の非課税の要件
適用を受けるための主な要件は次のとおりです。
①寄附先は、国、地方公共団体、特定の公益法人等であること。
②相続または遺贈により取得した財産を寄附すること。
③相続税申告書に寄附金の受領書等を添付すること。
少しわかりにくいので、細かい部分を見ていきましょう。
2.要件① 寄附先は国等であること
寄附先は、厳密に指定されていて、以下のとおりです。
・国
・地方公共団体
・特定の公益法人等
ふるさと納税は、地方公共団体への寄附ですから、措置法70条の非課税の要件も無条件でクリアします。
3.要件② 相続等により取得した財産の寄附
相続等により取得した財産を、そのままの形で寄附しなければならない、という制限があります。
たとえば、相続した土地を売却してその代金をふるさと納税した場合は、相続した財産が土地、寄附した財産が売却代金と異なる財産に変わりますので、措置法70条の非課税は適用できません。
被相続人の預貯金は、口座が凍結されてしまい取引ができないため、解約して相続人の預貯金口座に移管するのが一般的です。預貯金の口座が変わってしまった、クレジット払いやQRコード決済等で寄附する、こんなときは要件を満たすのでしょうか。
相続等により取得した財産が預貯金の場合には、払い戻しを受けた金銭は「相続等により取得した財産」に該当するものとして取り扱うこととされています。被相続人の預貯金の払い戻しを受けた相続人の預貯金口座から寄附された金銭は「相続等により取得した財産」になります。ふるさと納税がクレジット払いやQRコード決済等で行われた場合でも、これらは支払い手段であり、被相続人の預貯金口座から移管した相続人の預貯金口座から引き落とされるのであれば、相続等により取得した財産の寄附と考えて差し支えありません。
4.要件③ 相続税申告書に寄附金の受領証等を添付
申告期限内にふるさと納税をし、相続税申告書に寄附金の受領証等を添付しなければなりません。相続人間で遺産分割が長引いてしまうと相続税申告書にその証明書を添付することが難しくなってしまうので、措置法70条の非課税は使えなくなってしまうかもしれません。
5.ふるさと納税で一石四鳥
ふるさと納税で措置法70条の非課税の適用を受けるには、被相続人の預貯金の払い戻しを受け、その払戻金で相続税の申告期限までにふるさと納税をし、相続税申告書に寄附金の受領書等を添付すればよいのです。
結論として、ふるさと納税は、所得税・住民税の控除と措置法70条の非課税の適用を受け節税することが可能です。寄附先から返礼品がもらえることも加えれば、一石四鳥の制度ということができます。
6.ご注意していただきたいこと
ご注意していただきたいことがあります。
1つ目は、措置法70条の非課税は寄附した財産の相続税が非課税とされる制度ですから、相続税がかかる人でなければ相続税の節税になりません。
2つ目は、所得税等の寄附金控除は控除限度額があるということです。控除限度額を超えると、その分は所得税等の節税になりません。控除限度額は、寄附する方の年間所得や家族構成によって変わりますので、事前に確認しておくことが重要です。
3つ目は、ふるさと納税の金額が高額になり、返礼品の額が50万円を超えると一時所得が発生してしまいます。
多額の寄附をされる方は、その分の財産が減りますから、今後の生活等のこともよく考えていただくようお願いします。
7.まとめ
毎年ふるさと納税をして確定申告で寄附金控除を受けている方は、もしも預貯金をご相続することがありましたら、相続した預貯金をふるさと納税することで、所得税・住民税がお得になるだけでなく、相続税が非課税になる場合があるということを思い出してください。そして、被相続人の方が残された財産を有意義に使っていただきたいと思います。