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COLUMN

TOPATO通信未利用土地には手厳しい税の世界 5386号

ATO通信

5386号

2024年7月31日

執筆者:高木 康裕

未利用土地には手厳しい税の世界

 相続税の納税資金用としてすぐに売却できるようにと、土地を更地のままで所有している方がいます。駐車場等で利用しているのであれば良いのですが、特に困っていないからと未利用のままにしている土地があるとすれば、税金では結構な損をしているはずです。

1.固定資産税は非住宅用地扱い

 住宅の敷地である土地は、固定資産税では住宅用地という扱いになります。住宅用地であれば、住宅1戸当たり200㎡までの土地はその課税標準が固定資産税は1/6・都市計画税は1/3になります。200㎡を超えたとしても家屋の床面積の10倍までは固定資産税は1/3・都市計画税は2/3の負担です。このように、住宅用地として利用されている土地は毎年の維持費である固定資産税・都市計画税の負担が軽減されるのはご承知のとおりです。

■住宅用地の取扱い

区分固定資産税の課税標準都市計画税の課税標準
小規模住宅用地住宅1戸につき200㎡まで価格×1/6価格×1/3
一般住宅用地家屋の床面積の10倍まで(小規模住宅用地以外)価格×1/3価格×2/3

 建物が建っていない未利用土地は非住宅用地と同じ扱いですから上記のような取扱いはありません。駐車場などと同じように固定資産税・都市計画税の負担が高くなります。また、今は空き家で未利用だが以前は住宅として使用していたので大丈夫と思っていたとしても、管理が不適切であるとして特定空家等に該当すると住宅用地としての軽減が使えなくなる取扱いがあるので注意しましょう。
 ちなみに、市街化区域にある農地はそれが生産緑地でなければ、固定資産税の負担感は実質的には一般住宅用地と一緒です。

2. 所得税の特例が使えない

 未利用土地を売却したときに適用できる所得税の特例は実質何も無いと考えてよいでしょう。確かに、収用等があった場合の5000万円の特別控除や、低未利用土地等を譲渡した場合の100万円の特別控除という特例はありますが、これはレアケースです。
 居住用財産であれば、3000万円の特別控除や税率の軽減制度、買換えの特例などが用意されています。また、事業用資産であれば、事業用資産の買換えの特例を検討することができます。駐車場などで利用しさえすれば事業用資産になりますから、維持費を賄うためにも未利用土地として放置しておくのは何らメリットがありません。

3. 相続税評価額が高い

 未利用土地は相続税評価額が高くなります。いつでも売却ができる自由度の高い土地であるとして、いわゆる自用地評価額になるからです。他人の権利が付いていないのだから仕方がないといえばそれまでですが、もしも駐車場用地として貸し付けていたらどうなるでしょう。コインパーキング業者に土地を貸し付けた場合、それは賃借権という権利が付いた土地になります。そのため相続税評価額は自用地評価額より低くなります。減額される割合は賃貸借期間によって異なるのですが自用地評価額の2.5%~10%減になります。

■駐車場など(堅固な構築物以外の場合)の減額割合

賃借権の残存期間減額割合
5年以下2.5%
5年超 10年以下5%
10年超 15年以下7.5%
15年超10%

 コインパーキング用地の賃貸借期間は一般的には3年前後の契約が多いでしょうから、この場合は自用地評価額の2.5%減になります。貸家の敷地などでなくても多少の減額ができるわけです。贈与税の計算でも同じ相続税評価額を利用しますから、生前贈与を考える際も同じことが言えます。

4. 小規模宅地等の特例適用がない

 相続税では影響が大きな特例があります。それは小規模宅地等の特例による土地の評価減です。自宅の敷地であれば330㎡まで80%減額ができますし、不動産貸付業用の土地であれば200㎡まで50%減額ができます。もちろん、適用できる面積には限度がありますが適用面積にまだ余裕があるのであれば、未利用土地かそれとも駐車場などで利用したのかで相続税の負担に大きな違いが生じるのです。

5. 活用してこその財産

 物理的に利用ができない、買い手が付かない、などの土地は致し方ありませんが、利用や売却ができる未利用土地であれば、有効活用や組換えを考えるのが税金的には有利です。
 納税資金用の土地なのだから面倒なことはせずに未利用のままで良いのだ、という考えが必ずしもベストな選択肢であるとは限りません。

※執筆時点の法令に基づいております