法人をうまく活用して今後は事業活動していこうと思うのであれば、まずは受け皿となる法人を設立しなければなりません。このとき、会社形態は何が良いのか?と考えることになります。現実的には、株式会社か合同会社のいずれかになりますが、どのように考えるのが良いのでしょうか。
1.大きな違い
株式会社はご存知のとおり、資本(所有)と経営が分離されています。株主と役員は別々で考えることができるため、会社の所有者たる株主が役員になる必要はありません。つまり、株主に影響されることなく役員構成を設計できます。これに対し、合同会社はまったくの逆です。合同会社は、人と人との繋がりを重視する持分会社という位置付けのため、資本と経営の分離ができません。そのため、会社の出資者(社員と言います)が業務を執行します。社員や業務執行と言うと分かりづらいでしょうから、株主=役員の会社と考えて頂ければ結構です。重要なことは、役員に就任したいのであれば出資者にならなければいけないということです。
この資本と経営の分離ができるか否か。これこそが大きな違いであり、とても重要なポイントです。なぜなら、同族経営の資産管理会社の場合には、株主と役員をセットで考えたくないことも多いからです。役員にして報酬を支払いたいが株主ではない、逆に株主ではあるが役員にはならない、このような設計が合同会社ではできません。
2.合同会社メリットのまやかし?
小規模な会社では合同会社が良く薦められます。運営・費用面として次のメリットが挙げられるからでしょう。ただし、本当のところはどうなのでしょうか。机上ではなく、実務的な側面からしっかりと検証しましょう。
(1) 設立費用が安い
株式会社より約15万円弱安く抑えられます。
(2) 役員の任期がない
役員重任登記がないので、株式会社に比べて10年に一度数万円が浮きます。
(3) 決算公告をしなくても良い
小規模な株式会社は行っていないことが多いのでメリットになりません。
(4) 経営の自由度が高い
小規模な同族会社の場合、実務上は取り立ててメリットにはなりません。
合同会社のメリットは、上記(1)と(2)の費用面が主な内容です。小規模な同族会社を前提とすれば(3)と(4)は実務的にはメリットになりません。そうすると、費用が多少安くなるという以外には株式会社より優れている点はあまり無いのです。それよりも、上記1の資本と経営の分離ができないことのデメリット?が大きいかもしれないのです。
3.合同会社の本来のメリット
合同会社を選択する本来のメリットは次のことにあります。それは増資時の登録免許税を抑えられるということです。
◆株式会社が増資する場合
増資額の最低1/2を資本金に計上する必要があります。その際、増加資本金×0.7%の登録免許
税が課されます。
◆合同会社が増資する場合
増資額のうち資本金に計上すべき金額のルールがありません。そのため、増資時に資本金自体
を増やさないことも可能です。この場合には登録免許税が生じません。
4.具体的な活用方法
増資時に資本金を計上しなくても良いということが合同会社を選択するメリットです。
相続税の節税などのために、法人へ不動産や貸付金などを出資するようなことがあります。例えば、資本金1000万円の会社に2億円を出資するとしましょう。株式会社の場合は資本金が最低でも1億円増加するので登録免許税は70万円になります。このとき、法人税等の節税を考えると期末資本金は1億円以下にしなければならないので、増資と一緒に減資も行う必要があります。減資の手続きを行うと数十万円の費用が更に生じます。
つまり、新設法人ではあるが数年後に増資の予定を考えているような場合は、合同会社を選択すると良いのかもしれません。反対にそのような予定が無いのであれば、役員構成を柔軟に設定・変更できる株式会社の方が運営上は良いのではないでしょうか。
5.最後は株式会社にしよう
同族経営の資産管理会社であれば、いずれは資本と経営の分離をしたくなるはずです。相続税対策的にもその方が有利に働くことが多いです。したがって、数億円以上の多額の増資計画があるため合同会社を選択したのであれば、増資後その役目が終わった際には株式会社に組織変更すると良いでしょう。なお、組織変更の費用は数十万円ほど掛かります。株式会社を設立して増減資を行う費用と比べてどちらがお得か次第でしょう。株式会社へ変更すれば、役員は株主に縛られません。家族状況等に応じた役員構成が可能ですので、株式会社ならではのメリットを上手に活用しましょう!