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TOPATO通信相続税の延納ってどうなの? 5377号

ATO通信

5377号

2023年10月31日

執筆者:高木 康裕

相続税の延納ってどうなの?

 税金は金銭で一括納付しなければならないのが原則です。たとえ多額の相続税が生じたとしても同じことです。そうは言うものの、相続税は財産税であるがゆえに実際には金銭一括納付が難しいことも多々あります。そこで例外的に、分割払いする延納や、相続財産で納付する物納という制度が設けられています。特に延納は使い勝手が良い場合があるので、一括納付が難しい方は検討価値ありです。

1. 延納を検討してみよう

 相続税と贈与税について金銭で一括納付することが困難な場合には、延納制度が利用できます。実際には、税金が多額となる相続税で利用する場面が多いので、相続税のケースを前提にします。
 延納が認められると、相続税を最長20年間の分割払いで納められます。納め方は元金均等方式です。そのため、支払総額は抑えられますが返済初期のうちは返済額が大きく、段々と減少していきます。例えば総額1億円で20年間の延納であれば、毎年500万円の元金と利子税(利子税の割合を以下「金利」と言います)を支払う感じです。
 延納できる期間と金利は、相続で取得した不動産等(※)の割合によって変わり、以下のようになっています。
(※)不動産等とは、不動産、立木、不動産の上に存する権利、事業用減価償却資産、同族会社の株式・出資

不動産等の割合延納可能期間令和5年の金利
(利子税割合)
75%以上動産等に係る相続税10年0.6%
不動産等に係る相続税20年0.4%
75%未満
50%以上
動産等に係る相続税10年0.6%
不動産等に係る相続税15年0.4%
             (不動産等の割合が50%未満の場合は割愛)

2. 延納金利は思ったより低い

 延納はやめた方が良い、延納を考えるなら金融機関から借りて納税した方が良いと聞いたなど、延納自体を検討しない方がいるようですが、1の表を良く見てみましょう。以前は延納金利が高かったこともあり、確かに金融機関から借りた方が有利なケースがありました。でも、現在の金利は0.4%または0.6%です。実務上はそのほとんどが不動産等に係る相続税の延納ですので、実質0.4%です。
 適用される金利は年ごとに変わる変動金利ですが、思ったよりも低金利だと思いませんか。金融機関から同等の条件で借りるのは難しいのではないでしょうか。
 しかも、繰り上げ返済はいつでも可能ですし、返済手数料も掛かりません。

3. 担保設定費用も掛からない

 もう1つ大きなメリットがあります。それは担保設定費用が生じないということです。
 延納は国から相続税分の金銭を借りている状況と同じですから、担保提供が必要になります。銀行から借りる場合に担保がいるのと同じです。担保提供は、一般的には土地や建物などの不動産に対して抵当権設定をすることが多いでしょう。不動産に抵当権を設定するには、債権金額×0.4%の登録免許税を支払う必要がありますが、延納の場合には必要ありません。国が自ら職権で登記を行うからです。債権金額が1億円だとすると、40万円が浮くことになります。ちなみに、全ての納税が終了すれば、担保解除手続きは国が勝手に行ってくれます。

4. 金利が経費にならないのであれば

 相続税を納税するための借入金利は、必要経費にはなりません。延納の金利も同じです。収入を得るために生じたものではありませんので、不動産所得などがあったとしても経費計上はできません。そういう観点から考えれば、相続税のための借入れ・延納はできるだけ早く返済するのが得策です。
 例えば、個人で賃貸不動産を所有しているのであれば、この機会に法人化を行うのはいかがでしょう。法人が資金調達をして個人から賃貸不動産を購入します。その代金で個人は相続税を支払います。延納しているのであれば延納税額の繰り上げ返済をします。法人は資産購入のための借入金ですので、この借入利息は紛れもない法人経費になります。金利負担を法人へ移すことで経費化するというわけです。

5. 経験豊富な税理士に相談

 延納許可を受けるための一番のハードルは担保提供できる財産があるか否かだと思います。でもそれは、金融機関から借りる場合も同様です。
つまり、納税計画を立てるのであれば、延納・物納の選択可否を含めた的確・柔軟なアドバイスができるのかどうか。ここが税理士選びの分かれ目です。

※執筆時点の法令に基づいております