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COLUMN

TOPATO通信2世帯住宅の建物登記は気を付けよう! 5269号

ATO通信

5269号

2014年10月31日

阿藤 芳明

2世帯住宅の建物登記は気を付けよう!

 2世帯住宅をお考えの方、或いは既に2世帯住宅にお住いの方も多いと思います。平成26年1月1日以降の相続について適用されている事柄ですが、実は小規模宅地の評価減の特例が大幅に使い勝手が改善されているのです。
 しかし、ちょっとした注意が必要で、これを知っていると知らないのでは、まさに天国と地獄ほどの差が生じます。では、地獄行の方はどうするか。運命に甘んずるのも一法です。が、こんな事をなされば救いの道はあります、と言うのが本日のテーマです。


1.小規模宅地に係る大きな特例

 初めてお読み頂く方にも分かるよう、極々簡単に相続税の中で最も重要な特例の一つを確認しておきます。一般に小規模宅地に係る評価減額の特例と言われていて、(1)ご自宅や事業用の敷地、(2)アパート・賃貸マンション等の貸付用の土地に対する特例です。適用するには相続する人や保有状況等の条件はあるものの、(1)は80%引き、(2)は50%引きになるものです。
 今回のテーマは2世帯住宅なのでご自宅敷地に限っての話になります。現時点では240平方メートル、平成27年1月以降は330平方メートルの面積までがその対象。この面積以下なら80%引きのため、原則評価1億円が2,000万円にまでなる訳で、適用できるか否かは非常に大きな問題になる訳です。


2.2世帯住宅に係る従前の取り扱い

 ただ、2世帯住宅の場合は若干問題があります。と言うのは、この特例、ご自宅に適用する場合には、あくまでも被相続人のお住まいであることが前提です。2世帯住宅はその敷地総てが被相続人のものでも、被相続人のお住まいである部分の他、子世帯の住まいである部分もあるからです。
 細かな話は抜きにして、従来2世帯住宅については、一定の条件が整っていなければ、敷地全体についてこの特例を認めてはいませんでした。あくまでも被相続人のお住まいに対応する敷地だけがその対象だったのです。
 その条件とは、概して言えば親世帯と子世帯が、左右であれ上下であれ、壁や階段で仕切られていることなく、自由に行き来ができることなのです。従って外階段を使ったり、一旦外に出なければ行き来ができない場合、敷地の全体にこの特例の適用はできなかったのです。


3.改正されたが、登記に注意

 それが現在は、自由に行き来ができなくても認められるようになっています。但し、ここが問題なのですが、その建物の登記の仕方です。建物全部が被相続人になっていれば、もとより問題はありません。子もお金を出したため、子の持ち分を登記している場合です。総額5,000万円の建物の内、親が3,000万円、子が2,000万円の資金拠出をしたとしましょう。登記の持ち分は親が3/5、子が2/5となるでしょう。このような共有登記をしている場合は天国、つまり敷地全体が特例の対象となるのです。
 問題は1階部分は親、2階部分は子、と言うように具体的な場所を指定して登記をしている場合です。このような登記を区分登記と言います。分譲マンションと同じで、1棟の建物の内101号室は田中さん、202号室は山田さんと言う登記の仕方です。同じ親子の共有でも、このような区分登記をした場合は地獄、つまり親の建物の持ち分に対する敷地部分にしか、特例が認められないのです。敷地が330平方メートル以下で仮に原則評価が1億円の土地を例に考えてみましょう。1階2階が同じ面積で同額の資金出資をしていても、特例の対象面積は敷地の半分。つまり1億円の1/2の親部分が80%引きで1,000万円の評価額に。子の部分は原則通り1億円の1/2の5,000万円となるため、合計で6,000万円の評価で、1.の場合の2,000万円と大きな開きが出てしまいます。


4.地獄の場合の対処方法

  それでは地獄の場合はどうすればいいのでしょう。一言で言えば、区分登記を共有登記に直せばいいのです。と、口で言うのは至って簡単なのですが、実務は相当程度に複雑で困難を極めます。いきなり司法書士に頼んで登記を変更してくれと言っても、それができないのです。先ずは土地家屋調査士に依頼して、区分登記になっている建物を、親子間で”交換”し建物総ての部分を共有の状態にしなければなりません。それを踏まえて”交換登記”を司法書士が行う訳です。
 このような建物を交換しても、お金が入る訳でも無し、誰が得をした訳でもないので、何ら税務の対象にはならないような気がします。しかし、税務上は交換と言うのは相互に売却したこととなり、建物に係る譲渡所得の課税対象となり得るのです。更に、交換価額に差があれば、贈与税の対象にも。ここはまず、資産税の専門家である税理士に相談し、建物の価額、登記の状況を勘案した上で上記の作業をし、最終的には”交換”の申告までが必要なのです。相当に面倒ではありますが、これが相続税の大幅減額の唯一の秘策なのです。

※執筆時点の法令に基づいております