法人の場合、規模や財産状況とは関係なく、年に最低一度は決算手続きを行わなくてはなりません。決算前に来期の予想を立てることも大切なのですが、世の中、先の事は分かりません。嬉しい事ではありますが、急に売り上げが伸びた、予想外の雑収入があった、なんてことも珍しくはありません。それに伴って法人税が大幅にアップ?
そんな時はどうするか、一つの解決策がコレです。
1.個人は 12月、法人は任意!
個人でも法人でも事業を行っている以上、その事業の業績をどこかの時点で区切って集計し、明らかにしなければなりません。法人の場合は会社法と言う法律で規定されていますが、規定はともかく、個人も法人も実務的には税務署に申告するためと言い切っても、あながち間違いではないでしょう。さて、その時期ですが、法人は事業年度を何時から何時までと決めるのは、1年を超えなければその会社の任意です。かつては半年に一度決算を組む半年決算の会社もありましたが、決算ごとに手間も費用も掛かります。従って、現在は年に一度の決算がほとんどです。個人の場合は所得税の規定で12月に締めることに。こちらの場合は強制です。
2.決算期はどうやって決めるのか?
法人の場合、その会社を設立する時に”定款”と呼ばれる会社のいわば憲法にその時期を盛り込んでいることが多いようです。何月にするかは法人の任意であるため、何月でもいいのです。が、上場会社に3月決算が多いため、それに合わせる会社も多くみられます。また、子会社の場合には親会社の都合で決算期を親会社に合わせるよう要請されることも多いようです。
それはともかく、月によって実務的な有利不利は特段ありません。しかし、決算を組み申告作業をするのは税理士です。そこで、依頼する税理士事務所の業務の繁閑を考えて、税理士事務所がその会社の決算期を提案することが多いやに聞いています(?)。あくまでも一般論ですが、法人税の申告期限は決算期から2ケ月以内のため、確定申告直後の3月末が申告期限となる1月決算は避けたがる事務所が多いでしょう。同様の理由で年末調整等で忙しい12月が申告期限になる10月決算も嫌われることに。
3.決算前に今期の予測と来期の展望を!
会社の都合が特にない場合、前述の通り、税理士としてはその事務所の事務量を考えて繁忙期に当たらないよう提案はするでしょう。しかし、税理士にはもっと大切な役割があります。それは先ずは迫りくる今期の決算の予測です。このまま何もせず、指をくわえて決算期を迎えていいのかどうかの判断です。具体的には予想外の収入増があり、多大な税負担が生じる可能性がある場合です。それは一刻も早く、会社側に納税についての対策を説明しなければなりません。その場合、大切なことはただ単に納税額を減らすことが第一優先ではない事の説明です。例えば、会社の利益予測が100で、税負担が40だと見込まれたとしましょう。この40が会社にとって何が何でも回避すべき事態ではないと言う事です。確かに納税後は会社の現預金はその分減額してしまいます。しかし、会社が税金を払ってしまえば、その後は確実に現預金が蓄積できることに。個人としてではなく、法人として活動資金を堅実に増やしていこうと思うならば、意味のない節税をするより、払うべき税金を払えば必ず法人に現預金はプールされていくでしょう。
4.決算期変更に理由は必要か?
それでは仮に決算期を変更するとして、その手続きは大変な作業なのでしょうか。結論を先に言ってしまえば、未上場のいわゆる同族会社なら、単純な事務作業だけで済んでしまいます。冒頭に記したように、急に売り上げが伸びた、予想外の雑収入があった等々の事情が生じた場合、これを放置したら更なる利益が増大し税負担も急増します。これを避ける方策の一つとして、進行中の事業年度の途中で決算期を変更し、一度決算を組んで利益を確定してしまうのです。そして新たな事業年度に移行してしまうのです。決算期変更に特別な理由は不要です。その際、役員報酬を増額する等、収入増に対応する対策も忘れずに!
5.税務署は不審に思うか?
法人税の場合、短期間に何度も何度も決算期の変更を行えば、税務署も何かあるだろうと勘繰るかも知れません。しかし、決算期の変更はあくまでも経営判断の一つであるため、税務署がその経営判断についてまで口出しすることはありません。仮に利益操作であると判断されても、その挙証責任は税務署にありますし、そもそも利益をどの程度にするかは、それぞれの会社の判断です。税務上、放置すれば悪質な税逃れであるような場合を除き、決算期の変更は会社側の裁量に委ねられているのです。