本年分の確定申告作業も終了しました。申告に当たり、税理士にとっては当たり前でも、一般の方々があまりご存じない事をトピックス的にまとめてみました。来年以降の申告に生かし、ちょっと得が出来そうな項目もあるかも知れません。ご参考になれば幸いです。
1.賃貸収入の期間と経費に出来る期間は同じか?
家賃収入がある場合を考えてみましょう。常識的に考えれば、収入に対応する支出だけが必要経費になるはずです。だとすれば、収入のある期間と経費に出来る期間は一致しなければなりません。
しかし、例えば平成19年に今までの自宅を賃貸に転用し、自宅は別の場所に設けたとしましょう。賃貸するために500万円の経費を掛けました。直ぐに賃貸活動を開始したものの、なかなか借家人が決まりません。そうこうする内に年が明け、確定申告時期になってしまいました。経費倒れで収入もないので申告をせず、20年になってやっと借家人が決まったとします。前述の500万円は20年分の経費に出来るのでしょうか。
結論を先に言えば、19年分の収入を0で計上し、この経費も入れたところで赤字の申告をするべきなのです。収入は0ではありますが、それは結果論で、賃貸事業は19年に開始しているからなのです。現金での収入がなくても、募集活動を開始し、実際に賃貸できる状況であれば、19年から申告開始です。もし他の所得がなければ、初年度の赤字を青色申告でない場合は繰り越しができず、その損失は切捨てになってしまいます。青色の申請は絶対に絶対に必須です。
2.減価償却の考え方
上記の1に関連して、税務職員でも時々変なことを言う人がいるものです。先般も法人税の調査で、収入の計上月数が減価償却をして費用化している月数より少ないのはおかしいとの指摘。そこで、筆者はトクトクと“フリーレント”の説明を致しました。フリーレントとは、テナントを誘致するため、例えば本来4月入居にも拘わらず、家賃の徴収は6月からとし、2ケ月分は家賃をサービスするものです。特に買い手市場の場合には、広く世間に知れ渡った方法で、募集活動どころか実際の賃貸までが行われているのです。こんなケースでは収入と経費の月数が一致するはずもなく、不一致が逆に当然なのです。税務調査ではとんでもない勉強不足の調査官もいるのです。そんな税務職員に負けないことも税理士の重要な仕事です。
3.こんな場合は扶養親族!
話は一転して扶養控除に移ります。税務上扶養親族に該当すると、一般的な場合でお一人当たり38万円。障害をお持ちであれば最高98万円までもの控除が受けられます。非常に有利な制度ですが、条件は所得金額が38万円以下という金額の制限のみ。いい年のオジサンでもオバサンでも適用があるのです。しかも、年度毎の判断です。先般もこんな事がありました。70才を超えたお母様、いつもの年は相応の家賃収入がお有りのため、扶養にはなっていませんでした。が、20年分は古い建物の取り壊しで除却損が生じ、関連費用も多額になったのです。結果、不動産所得は赤字で年金を考慮しても所得金額は38万円以下。この年だけは同居の息子さんの扶養親族として58万円の控除が受けられたのです。年分毎の判定なので、うっかりすると税理士でも忘れがちな項目。毎年の注意が必要です。
4.医療費控除は誰から引くかで税額は変わる
次はご存じ医療費控除の話題です。ご夫婦共に所得があり、例えばご主人が1,000万円、奥様が600万円だったとしましょう。この状況で奥様に300万円の医療費の支出があったとします。医療費控除はどの様に適用すればよいのでしょう。
税額を最少にするという意味での正解は、先ずは、ご主人から210万円、奥様から90万円を適用する方法です。医療費控除は本人又は生計を一にする配偶者等の親族の医療費の支払いについての控除です。夫婦双方に所得がある場合、どちらからいくら控除しても特段のルールはありません。先ずは所得の多い方から適用し、200万円の限度額まで使い切ったら、残額を他から控除すればよいのです。この所得では医療費控除には10万円の足切りがあるため、ご主人に210万円で限度額まで適用するのがベストなのです。
5.小規模企業共済等掛け金
簡単に言えば、毎月の貯金額が所得金額から控除できる結構な制度です。国の制度なので倒産はまずなし、死亡時にも退職時にも受給できますが、退職金課税も選べるため、税務上も極めて有利な扱いになっています。これに加入できる出来る方は自営業者か法人の役員。不動産所得については、事業的規模と言ってある程度大規模の方だけですが、小規模でも法人にすれば加入が出来ます。
筆者も勿論加入していますが、月額で最高7万円が限度、年額84万円のため税率が50%の方は42万円の節税が可能。未加入の方はお早目に!