息子や娘が結婚し所帯を持った。若い夫婦の事、経済的に余裕があることはそれ程ないでしょう。となれば、親としては少しでも助けてやりたいのが人情です。が、むやみに援助するのも子供のためにはならない。それに、贈与税の心配も生じてしまいます。そこで、例えば生活費の中で大きな比重の住居費をある程度軽減できることを考えてみましょう。しかも、税負担が少ない方法で。
1.現金の支給は金額次第
手っ取り早いのは何と言っても現金を渡すことでしょう。ただ、単に現金を渡すと、非課税と規定されているもの以外、年間に110万円を超えれば贈与税の対象です。そうは言うものの、この金額を超えたところで、直ぐに税務署にバレるものではありません。税務署には内緒で贈与する・しない、はその方のモラルと納税意識の問題です。ただ、現実には、贈与の事実が税務署の知るところとなるのは、幾つかのケースに限られる、なんて断言したら言い過ぎでしょうか。
2.贈与の事実はこうしてバレる!
贈与の事実がバレるケースですが、先ずは相続税の申告時です。相続税の申告書が提出されると、税務署は被相続人や相続人、その他の関係者の預金の動きを過去数年分までさかのぼって金融機関に照会します。そこで多額の入出金があれば、その使途が問われ贈与の事実が発覚する可能性も?
また、不動産や高級車の売買も要注意です。不動産の売買は登記の動きが全て税務署に把握されているので明々白々。また、高級車の場合、数百万円程度の車ならまだしも、数千万円以上なら購入した事実が様々な情報筋からその金額と共に税務署の知るところに。デパートの外商での高額な貴金属の購入、オークションでの美術品の購入等も税務署の目が光っていることをお忘れなく。とは言っても、いくら高額でもご自身のお金で買う分には贈与については何も問題はありませんが…。
3.生活費か小遣いか?
話は冒頭に戻って生活費の補助。この手の援助をなさっている親御さんは山ほどいるでしょう。もちろん贈与税の非課税範囲(年間110万円)内なら問題はありませんが、少々超えても一度の金額が多額でなければ目くじらを立てる程ではないでしょう。ただ、”多額”かどうかの判断は人それぞれ。筆者の個人的な感覚では、2~3万円の小遣い銭程度が少額で、5万円、10万円は大金です。お客様の中には一度に10万円~20万円程度はお小遣い、とお考えの方もいらっしゃるようで、生活レベルの差を感じます。
4.合法的な家賃補助
それはそれとして、生活費の中で大きな比重を占めるのは住居費でしょう。家賃の支払いか住宅ローンの返済かは別として、子にとって大きな負担であることは間違いありません。それを親がある程度の金額を負担すると、前述のように贈与税の問題が生じます。では、それを避ける方法はないのでしょうか。
結論としては、例えば子の住まいを社宅にした上で、若干の家賃を徴収する方法が考えられます。
5.先ずは子を役員にして登記しよう!
どんなことかと言うと、その前提として会社、法人を設立することが第一段階です。そして、息子や娘をその会社の役員にするのです。ここが肝心なところなのですが、従業員ではなく”役員”にするところがミソ。何故かと言うと、従業員と言う立場は法律的には会社とは雇用関係、一方、役員の場合は委任関係です。この関係の違いが、給与として支払える金額や方法、勤務形態に決定的な影響を与えるからです。
税務の考え方として、従業員の給与は労働時間の対価、1時間あたり幾らの仕事なのかがその基準です。それに対し役員の場合は時給計算ではありません。経営責任に対する対価なのです。従って、事業規模や利益の多寡等がその基準。つまり、従業員の立場では世間相場からかけ離れた金額は望むべくもありませんが、役員ならば、拘束時間は無制限。金額もそれなりに高額も可能です。それこそ古い話ですがどこぞの自動車メーカーになれば、10億円だって夢ではありません。
6.役員ならば副業も可
子を役員にするのはご理解いただけたでしょう。役員にした上で、子の住居を役員社宅として会社所有にするか、賃貸住居を会社が借り上げるのです。会社所有なら減価償却を経て、賃貸住居なら支払い家賃として会社の経費にすることができる訳です。勿論、子から社宅家賃を徴収する必要はありますが、世間相場から比べたら格安家賃で税務上も問題なし。言うまでもなく、その会社に収入があることが前提ですが。
その会社が収入を得る手軽な方法は、親御さんが個人で所有する賃貸物件の一部を法人に売却する事でしょう。もしお子さんがサラリーマンでも、会社に事情をきちんと説明すれば、この手の会社の役員就任は大抵は認められること請け合いです。