平成20年度の税制改正で導入されたふるさと納税制度。すでに10年以上が経過したこともあり、世の中に相当浸透されました。使わなきゃ損とでもいうように、インターネット上には効率的に返礼品を検索するためのふるさと納税支援サイトがあふれています。この返礼品、実は所得税の課税対象なのですが、ご存知ですか?
1.ふるさと納税を再確認
ふるさと納税とは、都道府県や市区町村へ寄附をしたときに税負担を軽減してくれる制度です。実際に軽減される金額は各人の所得金額に応じて計算され、一定の寄附金までであれば寄附金合計から2000円を差し引いた額が税金から控除されます。したがって一定の寄附金まで、いわゆる限度額までの寄附金であれば、実質的な自己負担は2000円ということになります。ちなみに、詳細な説明は割愛しますが、限度額は次の計算式で求めることが可能です。
限度額 = 住民税の所得割額 × 20% ÷( 90% - 所得税の限界税率 )+ 2000円
給与所得だけの方であれば、総務省は控除額計算シミュレーションまで用意してくれていますのでホームページを見てみると良いでしょう。
そして、ふるさと納税の一番の魅力?とも言われるのが、寄附に対する各自治体からのお礼の品、いわゆる返礼品です。食料品を筆頭に、雑貨、衣服、温泉宿泊券など、いまやその種類は数えきれない程あり、もはやカタログギフトよりも充実しているのではないでしょうか。
なお、ふるさと納税の控除を受けるためには確定申告が必要です。申告義務の無い方で寄附先が5団体以下の場合には、確定申告を必要としないワンストップ特例もありますが、医療費控除などを受けるために確定申告を行う場合には注意です。たとえワンストップ特例の申し込みをしていたとしても、確定申告をする場合には寄附の記載をしなくてはならないのでお忘れの無いように。
2.返礼品は一時所得扱い
返礼品を受け取った場合、それは地方公共団体という法人から利益を受けたものとなり、一時所得として所得税の課税対象になります。一時所得は、収入金額から50万円を差し引いた残額の2分の1が課税対象になるため、次のように計算します。
一時所得の課税対象 =( 返礼品の額 - 50万円 )× 1/2
つまり、他の一時所得がないのであれば50万円を超えない限りは課税されません。そのようなこともあり、多額の寄附をしているお客様には課税のことを伝えるものの、実際には確定申告で計上しないこともしばしばです。当然、税務調査があれば指摘がされることになるのですが、この返礼品の額、いったい何円分として計算すれば良いのでしょう。
本来は、いくら相当の返礼品なのかをひとつずつ調べたうえで積み上げる必要があるのですが、現実的にはいくらなんでも酷です。
そこで、実務的な落としどころですが、最近の返礼品は寄附金額の3割を目安に設定されていることを使うのが良いでしょう。したがって、200万円の寄附をしたのであれば60万円相当を受けたとして計算すれば文句を言われることは無いということです。
3.税務署はいくらから目を付けるのか
税務署はどのくらいのふるさと納税を行っている人に目を付けるのでしょうか。返礼品の合計額が50万円を超えると一時所得の問題が生じます。よって、50万円を返礼品割合3割で割り戻すと約166.6万円、つまり170万円を超える寄附をした方をピックアップしているようです。時々テレビなどで、返礼品でこんなに得をしたなどと自慢している有名人などがいますが、彼らはしっかりと申告していたのでしょうか?税務署に調べてくれと言っているようなものです。もし申告していなかったとすれば、すでに税務署からの接触があったことでしょう。
4.令和3年からは寄附金領収書でなくてもOK
確定申告を行う際には、地方公共団体からの寄附金領収書そのものを用意する必要があります。しかし、令和3年分の確定申告からはふるさと納税支援サイト事業者経由での寄附は、その事業者が発行する証明書でも良いことになります。寄附先が複数ある方はとても便利になりましたが、この証明書は国税庁が指定する事業者のみが発行できます。当然、ふるさと納税支援サイトは指定業者になっているのですが、裏を返せば税務署は寄附先に問い合わせするまでも無く、事業者から寄附金の内容を把握できるようになったということです。
サイト事業者から情報を吸い上げるシステムが完成したとみるべきなのでしょう。
5.これからどうなる?
さらに税務署としては、寄附金領収書などに返礼品がいくら相当であるかの金額記載をして欲しいと要望を出しているようです。そうすると、返礼品が何円相当なのかについても簡単に情報を得られるようになります。
令和3年は、返礼品に対するチェック強化元年なのかも知れません。