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TOPATO通信要は分割の仕方です 5111号

ATO通信

5111号

2001年8月31日

高木 康裕

要は分割の仕方です

相続と言えば、条件反射的に『財産分けの紛争』が頭に浮かびます。しかし、分け方次第で節税になるケース。はたまた争いどころか譲り合いのケースまで、色々な分割方法のご紹介です。


1.分割もやり方一つです

先ずは図イをご覧下さい。50万円と70万円の二方の道路に接する土地が100坪です。これを、被相続人が使っていた、そのままの形で相続すれば、二方の路線価の影響で非常に評価の高い土地になってしまいます。 一方、図ロのように、AとB別々の相続人がそれぞれに分割して相続すればどうでしょう?Aは50万円の道路だけ、Bは70万円の道路だけに接する評価となり、評価額は軽減です。 本来、相続財産は被相続人が利用していた、その利用単位ごとの評価です。しかし、分割して取得した場合には、その取得した土地ごとの評価になるのです。


2.やり過ぎは不合理分割!

それではここで、もうひと工夫。図のハやニのように分割したらどうなるでしょう?
ハにおいては、Bは無道路地、評価は激減です。図ニだってBは道路に点の状態でしか、接してはいないのです。 結論から言えば、これは不合理分割と言い、AとB全体での評価が基準となってしまいます。分割後の画地が著しく不合理であれば、分割前に引き戻して考えなければならないのです。 具体的には①無道路地又は帯状地②著しく狭隘な宅地③現在のみならず、将来的にも有効な土地利用が困難な土地等々です。

3.遺言は多過ぎます。そんなにいりません!

さて、話は一変します。相続における分割のもめ事は、基本的にはもっと自分の取り分が欲しいというものです。人間誰しも自分の取り分は多いに越したことはありません。 遺言を残して亡くなった方がおられました。そこには、財産の大半を占める土地を妻と長男、若干の預金を嫁いだ長女へと記されていたのです。よくあるパターンですが、文句が出るとすれば、長女でしょう。ところが長男が、自分が長女に比して多過ぎる、こんな遺言承服できないと言いだしたのです。 結果、遺言は無かったことにし、分割協議によって長女の取得分を増やす事にしたのです。 筆者も長いこと税理士をやっていますが、初めての経験でした。


4.私は何もいりません!

世の中には欲のない人もいるものです。相続人は姉と妹。姉は嫁いで実家を出、妹が親の面倒を見ておりました。このケース、億単位の財産ですが遺言はなく、分割協議で決着です。普通はここで次のような展開が。姉『嫁いだとは言っても私は長女、半分の権利はあるはずよ。』、これに対し妹は『自分で好きに出ていって、誰が親の面倒見たって言うの、あなたにそんな事言う権利はないわ!』  が、筆者の期待を裏切って、姉は自分の住む土地さえ主張せず、妹も妹で住む所さえあれば土地なんて…


5.最近の相続における傾向と対策

ただ、上記はいずれも例外的なケース。こんな例ばかりなら、税理士なんて寝ていたってつとまりそうです。 概して言えるのは、子供がいない場合、現金は別にして土地は人気がないようです。バブル崩壊後の地価の値下がりのせいでしょうか?若い人には特にこの傾向が顕著です。親が土地の保有、活用で苦労しているのを見ているせいでしょう。土地はいらない、金残せ、でしょうか? 
筆者もお客様の苦労を沢山見てきたためでしょうか、土地は持たないことにしております。(世の中ではこの手を、持たざる者の負け惜しみとか?)

※執筆時点の法令に基づいております