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COLUMN

TOPATO通信最新物納事情 5126号

ATO通信

5126号

2002年11月29日

高木 康裕

最新物納事情

相続税の納税方法として、物納は今も昔もその重要性に変わりはありません。が、こんな物納もあり?と言う珍しい事例のご紹介、題して最新物納事情、です。


1.駐車場を物納すると…

 お客様の中には、収益性は多少悪くても、将来の納税用のために駐車場を経営しておられる方も多いもの。駐車場なら物納するも良し、売却だっていつでもできる、こう考えての選択です。勿論、これはこれで正しい考え方、準備の仕方です。
 さて、実際に駐車場を物納すると、どういう手続きになるのでしょう?通常は現地の確認調査で、契約車両を2~3ケ月以内に解約する指示が出されます。また、隣地境界、道路査定等々細かな指示も同時です。いずれにせよ、契約の解除で収入はストップです。


2.地域の特性、駐車場不足

 今回の駐車場物納は、ちょっと様子が違っていました。実はこの物納で一番困るのは地域住民。何故なら駐車場が極端に不足している地域だったのです。通常、物納が許可され収納されれば、国はその土地を売却します。一方、その土地の購入者、普通は建物を建築した上での有効活用を考えるでしょう。駐車場経営などしないと考えて間違いありません。となれば、物納イコール駐車場が無くなることを意味するのです。物納申請のお客様、自らこの窮状を当局に訴えました。何とか駐車場を残せるよう、かなり大きな声で当局と交渉をしたのです。世の中、駄目もとで何でもやってみるものなのでしょう。何と、物納許可にあたり、次のような条件提示が…


3.有り難き、物納許可条件

 土地は収納し国有地とするが、一定の条件で従前の土地所有者に賃貸する。その上で、駐車場経営を継続してよいと言うものなのです。その条件とは路線価による更地評価の1.85%の年間地代、金額にしておよそ月20万円の支払いです。ただ、従来の駐車場収入は総数30台弱で月25万円のため、この利ざやでは旨みはありません。そこで、駐車場顧客とも再契約の条件提示をし、4割アップ月35万円の引き上げに成功。これで1億円以上の納税が物納で完結し、しかも、駐車場収入まで確保です。
 それにしても、お役所と言うところ、本当に商売には無縁の所のようです。私なら、管理は業者に任せるとして、国営駐車場を経営します。上記の例で、本来35万円の駐車場収入が見込めるにも関わらず、20万円の地代で良しとするのですから。
 もっとも土地の収納価格については、更地評価ではあるものの、[短期賃借権]が付着するため2.5%は控除するとのこと。結構、細かなところはしっかりしています。 


4.長期間放置の物納案件はウヤムヤで収納

 こんな物納申請もありました。隣接する2つの土地がその候補です。1つはアパート敷地の底地部分、もう1つは駐車場です。当局から指摘された事項は総て整理し、後はアパート敷地をどこまでで線引きするかの指示待ち状況。そして、許可を待つこと、何と7年が経過です。前任の担当者が忘れていたのでしょうか?真相は定かではないものの、今年になって担当者が変わり、突然お詫びの電話が。年内に処理をするので、もう一度図面をと言われ、上記線引きの指示を再度求めたのです。その結果、建ぺい率と容積率さえ充足していれば、とりあえず認めるとのお達し。当初は消防法で建物から相当程度離れていなければ、許可するしないでうるさいことを言っていたのにです。
 因みにこの7年間、当然ではありますが物納申請前と同様、アパート収入はお客様に。ま、7年でなく、100年でも急ぎはしなかったのですが…尤も物納が却下であれば、その期間の延納金利を負担することにはなります。それでも家賃収入は入るわけで、やっぱりのんびりやって頂いた方が有り難い。お役所と言う所、何ともおうよう鷹揚と言うか、ふところ懐が広いというか、文字通り親方日の丸です。普通のビジネス感覚で仕事をする筆者には理解ができません。

※執筆時点の法令に基づいております