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TOPATO通信生命保険の勧誘!その内容で大丈夫? 5354号

ATO通信

5354号

2021年11月30日

高木 康裕

生命保険の勧誘!その内容で大丈夫?

 多くの方はなんらかの生命保険に加入していることでしょう。税金対策としても活用されている生命保険、営業担当者から言われるがままに加入をしたことは無いでしょうか?最近は保険のプロでも無い、金融機関の担当者が勧めることが多くなったように感じます。彼らは説明不足の場合もあります。安易に加入して痛い目を見ないように。


1.節税に利用されてきた生命保険

 最もポピュラーな使い方は、相続税の非課税枠を利用するために生命保険を活用することではないでしょうか。ご存知の通り、相続税の計算では「500万円×法定相続人の数」だけ相続税が非課税になります。相続人が3名であれば1500万円が非課税になるということです。預金で所有していれば、そっくりそのまま相続税の対象になるところ、生命保険にすれば税金の対象外にできるわけです。もし加入していないのであれば、一時払の終身保険に加入しない手はないでしょう。ポイントは、相続はいつ発生するか分からないため終身保険にしておくということです。たまに養老保険はあるが終身保険は無いという方を見かけます。年齢が90歳前後までは加入ができる保険商品もあるため、もし無いのであれば見直しのチャンスです。


2.暦年課税贈与のための保険

 暦年課税贈与を効率的に利用するための保険があります。比較的新しい商品のためご存知でない方も多いようですが、仕組みは簡単です。生存給付金付保険といい、毎年決められた人に決まった金額を支払う内容の保険です。

 契約者・被保険者・・・甲
 生存給付金受取人・・・乙(甲の孫、10年間)
 死亡保険金受取人・・・丙(相続人)

 上記内容の保険に加入したとしましょう。甲は一時払保険料として1000万円を支払います。年に1回決められた時期に乙は生存給付金を受け取ります。給付金の支払いは10年間で、合計10回です。1回あたりの給付金は100万円程になる算段です。もし、途中で甲が亡くなった場合には、残額相当が死亡保険金として丙に支払われ、相続税の非課税枠を利用できます。もちろん死亡保険金の受取人を乙にしても結構です。
 この保険の最大の利用目的ですが、それはズバリ暦年贈与を自動化することにあります。贈与は、あげましょう、もらいましょう、という双方の合意によって成り立つのが原則です。したがって毎年その都度、贈与契約をしなくてはなりません。もし甲が認知症になってしまうと贈与をすることは出来なくなります。しかし、この生存給付金付保険を利用すれば、毎年の贈与契約は不必要です。甲が生存している限り暦年贈与が自動的に行われるのです。税務上は、生存給付金はみなし贈与として取り扱われているからです。


3.非課税枠はあくまで年間110万円!

 先ほどの例のように、生存給付金が100万円程度であれば贈与税の申告は必要ありません。暦年課税贈与では110万円の基礎控除があるからです。では、生存給付金がもっと大きい金額の場合はどうでしょう。当然ではありますが、贈与申告をして贈与税を支払う必要があります。ところが、申告をしていなかった方がいらしたのです。この方は銀行の担当者から勧誘されて保険に加入しました。担当者からは、この商品に入れば一時払保険料相当は実質非課税になるので放っておけば良いと説明を受けたそうです。なるほど、確かに生存給付金が110万円以下であればその通りです。しかし、この方の生存給付金はなんと年500万円程だったのです。想像ですが、おそらく銀行の営業担当者は、モデルケースとして110万円に設定した生存給付金の商品を勉強したものの、仕組みを理解していなかったのかも知れません。実質非課税というキーワードだけが頭に残っていたのでしょう。そして、多額の預金をしていたお客様に対して、一時払保険料を5000万円に設定して勧めたという訳です。


4.加入前にはご相談を

 このお客様、弊社は確定申告のみの業務で通帳をお預かりすることもなかったため、この事に気づいたのは加入してから2年程が経過した時点でした。そういえば保険に入ったという話を受けて発覚したのでした。当然、すぐに贈与税の期限後申告書を提出しましたが、ペナルティとして加算税や延滞税が課され、高い勉強代を支払う羽目に。税務や保険のプロでも無い銀行の担当者の一言が原因です。しかも、銀行ですので担当者はすぐに異動します。文句はなかったとしても、経緯や詳細を後から聞くことが難しいのが現実。ここで重要なことは、銀行経由で保険に加入したことではありません。保険加入前後のケアをしていなかったことが問題なのです。自分が加入している保険は全てご存知でしょうか。保険内容を整理して、現況を適宜見直すことが大事なのです。手前味噌ですが、ATOでは保険状況の整理も行います。検討の際には税務の事も気にして是非ともご相談を。

※執筆時点の法令に基づいております