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TOPATO通信広大地は生前贈与で! 5157号

ATO通信

5157号

2005年6月30日

阿藤 芳明

広大地は生前贈与で!

 すでにお伝えした『広大地』の評価についての改正をめぐり、実務界では議論が沸騰です。何しろ、広大地に該当すれば、評価額は激減。恐いのは、現状ならこの有利な評価方法の対象地であっても、将来の相続時にマンション適地とされ、適用対象外とされた場合です。それに対し、こんな方法で対処しようと言うのが本日のテーマです。


1.『広大地』評価の改正内容

まずは、広大地の評価について、ここで簡単におさらいをしておきましょう。広大地とは文字通り面積の大きい土地を言い、具体的には開発行為の対象となる面積以上で、道路や公園等の施設負担が必要な土地のこと。市街化区域は1,000㎡以上となっていますが、東京近郊では500㎡以上で開発行為の対象のため、広大地の該当面積も500㎡以上と考えていいでしょう。
 かつては広大地評価を実際に活用する場合、道路や公園の提供によるつぶれ地を計算し、いわゆる有効宅地の割合を考慮して評価をしていました。
 ただ、この計算の適否の判断が曖昧で、税務当局との争いのタネとなることがしばしば。そこで、次の算式ですべてを割り切る方針に改正です。

広大地評価額=路線価×面積×広大地補正率*
   * 0.6-0.05×広大地の面積/1,000㎡

 この算式で計算すると、1,000㎡で45%引き、5,000㎡では何と65%引きの評価になるのです。


2.問題は相続時の状況

 さて、一見有利な評価方法への変更ですが、実は大変な問題を含んでいるのです。マンション適地は広大地評価の対象外になっていることです。理由はつぶれ地が少ないため。しかも、この”マンション適地”の定義が曖昧で、現在は近隣にマンションが建っていなくても、将来的には適地になる場合は適用外との取り扱い。こんな予測は不可能です。また、広大地の評価を使えば相続税は心配ない、などと思っていたら実際の相続時にはマンション適地と言うことも。いずれにしても、広大地の評価が適用できるか否か、将来予測も含め実務的にはグレーな部分が多過ぎます。


3.現時点で贈与をすれば

 そこで、相続時など遠い将来は見据えずに、現時点での贈与を活用です。贈与税の評価は相続税と同じ扱い。つまり、現時点でマンション適地と判断されなければ、贈与の時にも前述の有利な評価が適用できるのです。人生なんてこの先どうなるかなど、一寸先は闇なのです。ま、それはともかくとして、今使える評価で確実に財産を移転させてしまいましょう。
 こういうと、それはいいけど贈与税の高額な負担が心配だ、とのご意見が聞こえてきそうです。そこで、相続時精算課税制度の活用です。2,500万円までは非課税で、それを超えても一律20%の税率という、あの制度を活用するのです。仮に広大地の評価の適用で1億円の評価の土地を考えましょう。1億円-2,500万円の7,500万円に対し20%の税率で1,500万円の贈与税。1億円の対象額で1,500万円、実質15%の贈与税なら安いもの。おまけにこれは単なる相続税の前払いに過ぎません。相続時には相続税と精算されるからなのです。
 相続時精算課税制度を使って贈与をすれば、将来の相続時、この土地が仮にマンション適地になってはいても、評価はあくまで贈与時の低い価額のままなのです。


4.これを売却すれば、売却代金はお子様に!

 さらに贈与されたこの土地を、売却した場合を考えてみましょう。贈与された以上はお子さんの土地、売却代金は言うまでもなくお子さんのものに!勿論、売れば譲渡税の対象です。しかし20%の税負担で生前に確実に現金の形で次代に財産の移転ができるのです。もしこの土地が現時点では十分に収益を生んでいない場合、要件さえ整っていれば事業用資産の買換え特例で、高収益物件への組み替えだって可能です。
 いずれにせよ、将来適用ができるかどうか不確実な広大地評価。現時点でマンション適地でないのなら、相続税を前払いしてこの評価の特例を利用し、生前に確実な財産の移転を実行しておくことも、一考の価値がありそうです。

※執筆時点の法令に基づいております