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TOPATO通信時価って、一体何ですか? 5107号

ATO通信

5107号

2001年4月27日

高木 康裕

時価って、一体何ですか?

同じ一人の人間にも、夫、父親、会社員と色々な側面があるもの。同じ事が土地や株式の時価についても言えるようです。


1.土地の時価の多面性

一口に土地の時価と言っても様々です。路線価、固定資産税評価額、公示価格に基準価格等、一つの土地にも色々な価格が付されています。その土地の見方や目的によって、それぞれ異なる価格が算出されることになるのです。様々な時価があるため、土地は一物四価とも、五価とも言われる所以です。


2.土地を売買するときの時価は?

例えば親子間で土地を売買するとしましょう。親子間での売買は、税務署の目も何かとうるさいもの。ただ、適正な価格での売買であれば、何の問題もありません。問題はこの時の価格で、個人間なら所得税法上の時価が問われます。 税務上の土地の時価で、最も馴染みの深いのは路線価でしょうか?しかし、路線価はあくまで相続税の時価であり、所得税の時価ではありません。相続時には処分等をする場合も多いもの。評価に余裕を持たせて、路線価は実際の売買価額よりも低い価額にしてあるのです。いや、してあるそうです。 話は戻って、所得税、つまり交換や売買の場合の時価。鑑定評価をとれば、適正な時価も算出されますが、簡便法としては公示価格です。 もっとも公示価格は総ての地点に付されてはいません。路線価が公示価格の概ね8割相当であることから、路線価を0.8で割返す方法が一般的でしょう。所得税では、実際の売買価格に近い価額が求められているのです。 公示価格は固定資産税評価額の基礎ともなっており、税務署も公示価格を売買時の時価と考えている節はあります。


3.非上場株式の評価

非上場株式についても同様です。この株式にも実は色々な時価があるのです。
例えば、相続税の株式の評価方法の一つに、純資産価額方式なる方法があります。これは、先ず初めに路線価等から計算した純財産を時価ベースで算出。次に帳簿上の純財産を計算です。この両者の相違は、前者が時価で後者が簿価。つまり、前者には土地や株式の含み益部分が反映されているのです。 相続評価では、時価ベースでの純資産価額から、この含み益部分の42%を控除して、低い金額で計算をして良いことになっています。


4.非上場株式売買時の時価

さて、問題は個人や法人が非上場の株式を売買するときの価額です。売買となれば、所得税、法人税の世界です。が、これらの税法には、非上場株式の価額を求める算式の法律上の規定はありません。時価で計算しろとしか言っていないのです。そこで相続税評価を準用するのが一般的な実務です。 ご注意いただきたいこと。法人税でも株式売買時の株価算定に当たり、前述の純資産価額方式を使うのはOKです。が、実務的には通達により42%控除は認められません。 つまり、含み益を反映した高い価額で売買しなければならないことになります。 相続時の評価とは、会社の解散を前提とした時の時価なのです。会社を解散するとなれば、清算した時の法人税等を計算しなければなりません。その時の法人税等の合計税率を42%とし、控除対象としているのです。
売買は解散を前提としないために、この控除は認められない理屈です。

時価と一口に言っても、このように様々です。土地にも株式にも色々な顔があるわけで、ケースによって使い分けです。
人間は、とかく肩書きで判断しがちです。本当は唯のオジサンであることも多いもの。筆者も仕事柄、おだてられ“先生”なんて呼ばれますが、事務所内で先生の呼称は禁止です。色々な顔もあるものの、基本的には事務所の所長、残念ながら普通のオジサンです。

※執筆時点の法令に基づいております