お役立ち情報
COLUMN
原則として月に一度、
代表 高木康裕が自身で執筆しております。
お客様の立場に立って、
新たな税務の情報や事例をご紹介。
辛口で税務の現場のナマの姿をお伝えして参ります!
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5166号
変わる”とりあえず物納”戦略
本年の税制改正で大きく変わる項目の一つに、物納制度があります。物納は申請から許可・却下までかなりの時間がかかるため、納税の時間稼ぎに利用することができました。当社では”とりあえず物納”と呼び、真意はともかくとして、物納の申請手続きだけはお勧めしてきました。今回の改正で、その戦略が大きく変わることに!
1.従来の物納制度の簡便性従来の物納は、とにかく時間がかかるものでした。申請から結果が出るまで相当早いもので1年程度。5~10年要するものも珍しくはなかったのです。それを大幅にスピードアップしようと言うのが今回の改正で、それは結構なことなのですが、一つ落とし穴が。
従来、物納申請に際して、その期限までに必要な書類は最低限のものとして、『物納申請書』だけでした。勿論、その後に様々な書類を整備する必要はあるのですが、とりあえずは物納申請書があれば、不足分は後日ゆっくり。だからとりあえず申請だけをしておいて、後で本当に物納を進めるかどうかを考えれば良かったのです。今後は例えば土地を物納する場合、申請時に実測に基づく境界確認書等が必要です。底地であれば借地人との借地境も確定しておく必要があるでしょう。これらの準備にはある程度の時間が必要で、直ぐにできるものではありません。ただ、事前の準備が原則ではありますが、例外的に最長1年の期間延長が可能です。但し、できなければ物納申請を取り下げたことにされてしまいます。
2.税務署の処理も迅速化納税をする側に事前の準備を要求する一方で、税務署も処理を迅速に進めなければなりません。先ずは、物納財産としてその適否の基準を明確化し、不適格なものについては直ちに却下。その見返りに、20日以内に一度に限って物納の再申請を認めるようです。そして一応は不適格とならなかった財産についても、3ケ月以内に許可・却下の結論を下すことに。例外規定もありますが、それでも最長9ケ月以内に回答をし、この回答がない場合は物納を許可したものとみなすとのこと。つまり、どんなに長くても9ケ月で物納申請の結論は出る訳で、当局も迅速化は本気でやるようです。
3.延納から物納への切り替えも可能!さて、従来は物納を却下されてしまうと、それまでの間は原則14.6%の延滞税の対象です。そのため、却下されそうな場合には、事前に物納を取り下げて延納に切り替え、2%前後の利子税になる準備をしていたのです。それが今後は却下された場合、それから20日以内なら延納の申請ができ、事前の準備は不用になりました。更に、当初は物納ではなく、延納としていた場合であっても、申告期限から10年以内なら物納に変更することも可能です。従来は当初に延納を選択した場合、物納への変更はできなかったのです。
また、物納を選択した場合、今までは許可までに何年かかっても金利の負担はなかったのですが、これからは当局の審査事務の期間を除き、延納同様の金利が必要になります。
4.これからの物納・延納戦略は?ここまで物納制度が変わってくると、当然ですが従来の”とりあえず物納”などとのんびりしたことは言っていられません。物納をするのであれば、最低限、測量や境界確認の準備は必須です。測量費用はバカになりませんが、貸地であれば不動産所得の経費にもなるため、とにかく場所を含め明確な事前の意思決定が必要です。
一方でそれらが準備できなかった場合、”とりあえず延納”の戦略が有効でしょう。従来は延納から物納への切り替えは不可能でした。それが今後は可能なのです。物納は事前準備が大変なため、それができなかった場合には、先ずは延納で時間を稼ぎ、ゆっくり物納の要件を満たす準備をしたところで物納への切り替えです。
延納は最長20年の分割払いというものの、元本均等払いです。元利均等とは異なり、返済の開始当初はその負担は非常に重いのです。ですから延納で1~2年は支払いができても、これを何年も続けることは困難で、物納への変更の理由として説得力のあることが多いのです。
上記の改正は本年4月1日以降の相続について適用される予定です。亡くなる日を決めるのはあなたではなく神様です。あなたにできること、それは今日からの事前準備だけなのです。2006年3月31日
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5165号
簡単に現金は戻さないのが税務署流
税務署に申告書を提出した後、その申告に何らかの誤りがあり、税金の納め過ぎが判明したとします。そんな場合、一定の手続きを経て税金は還付されますが、必ずしも現金で返ってくるとは限りません。
"目には目を"が税務署の鉄則だからです。
1.税金の取り戻し方税金の納め過ぎが解った場合、法律に基づく取り戻しの方法は『更正の請求』です。一般的なものは、その申告期限から1年以内とされています。それに対し超法規的なものとして、『嘆願書』という制度があります。これは読んで字のごとく、税務署に対してお願いをするわけで、駄目で元々、認められれば儲けものという代物です。
いずれにしても、申告期限から5年を過ぎてしまうと救いようがありません。税務署長の権限が法律的に及ばなくなってしまうからです。
2.典型的な"広大地"以前にも本誌で御紹介しましたが、典型的なものとして、相続税の広大地の評価があげられます。
面積の広大な土地については、道路や公園等の提供による潰れ地割合を計算し、実際に有効な宅地の面積に基づく評価をしようとするものです。これを活用して申告するのは、実務的には結構専門的な知識が必要で、適用していない場合も多いのです。
先般も相続税の申告の見直しを依頼され、他の税理士の方の作成した申告書を再チェックしたのです。あら探しのようで気持ちはよくないものの、お客様にとっては重大事。場合によっては億単位で税金が戻ってくるのです。案の定、広大地の評価を適用していませんでした。現在は通達の改正で簡便な算式になっていますが、平成16年以前の相続は面倒でした。前述の有効宅地を専門家による図面を作成して税務署を説得する必要があったのです。
3.還付は決まったが、物納を申請!とにもかくにも、面倒な図面を添付し評価の正当性を税務署に主張したのです。この手の業務はうまくいくこともいかないこともあるため、成功報酬方式で受注です。結論から言うと、私共の主張が通り、数千万円が戻ってくることに。と、ここまではよかったのですが、問題が一つあったのです。それは、このお客様が物納申請をしていたことなのです。税金の還付と物納申請とどんな関係があるのでしょう。例えば物納を200申請していたとします。この状況で150の税金の還付が認められても、150は現金では返ってこないのです。物納申請200の内、150が認められたことになり、物納による納税が残額50と言う計算なのです。
つまり、分割ができる土地を前提に考えれば、200坪の内150坪相当は現金ではなく土地で返ってくる理屈です。が、実はここまでは想定していませんでした。
4.成功報酬の支払い原資は?お客様にとって納税の負担が減るという意味では同じでも、私共にお支払い頂く成功報酬の原資がないのです。報酬を土地で頂くのもできればご遠慮させて頂きたいもの。そもそも、物納の方が売却より有利であったため、土地の物納申請をしていたのです。つまり、その土地を売却しても物納の収納額にはならないのです。それでも換金化は必要ですし、年の瀬にかけ、売却できるまで私共へのお支払いも頂けないのかと心配で心配で…。主張は認められたものの、「目出度さも中くらゐ也おらが春」の心境でした。
幸いにも最終結論が出る直前に物納が許可になり、上記の心配は杞憂に終わったのですが、正しく間一髪。冷や汗ものでした。
5.滞納がある場合も同じ理屈です必ずしも現金が戻らないのは上記のような場合だけではありません。滞納がある場合には、何かの理由で税金が減額されても、結局は滞納税額に充当されるため、実際の現金は戻ってこないのです。ある人が平成15年分の所得税に滞納があった場合、16年分に還付額があればそれに充当されるのは納得がいくところ。しかし、同じ本人に相続税の還付があっても、税目の違いは関係なし。やっぱり15年分の所得税に充当されてしまうのです。そう簡単に現金は戻してくれないのが税務署と覚えておきましょう。
2006年2月28日
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5164号
評価額アップ直前の贈与
~広大地評価で更なる引き下げも~今は価格が安くても、近い将来確実に値上がりが期待できる土地があったとします。その値上がり直前に親から子に贈与したら、低い価額で移転が出来て相続対策に。さらにそれを子が転売したら、儲けは総て子のものに!こんなおいしい話が果たして可能なのでしょうか。落とし穴と適用に当たっての工夫を探ってみました。
1.突然、価値が増大する局面での贈与本誌(第5136号)でもこのテーマを取り上げました。次のような一節を御紹介します。
『ある日降って湧いたように地上げ、隣地買収等の申し出が。何と相当に高額な買い取り価格を提示されたとします。今までは二束三文の土地、高く買って貰えるとは嬉しい限りです。ここで相続対策を兼ねて一計を案じます。売却前に子に贈与したらどうでしょう?今なら土地の評価額も知れたもの。贈与税も大した負担にならずに済み、それを子が売ればお金は子に。が、小心者の私、こんな疑問がフツフツと湧いてきます。高く売却できると分かっていながら直前に贈与。贈与税の価格は直前の低い価額ではなく、高額な買い取り価額と税務署は言うのではないか?第三者が買いたいと言った価額が、正しくその時点での時価になるのではないか?それが善良な市民、見上げた納税者と言うものです。』
2.道路の拡幅で評価が大幅アップ似たような話が道路の開通、拡幅なのです。今まで道路のなかった場所に道路が開通、あるいは拡幅によって状況が一変した場合です。土地の評価額は大幅にアップすることが見込まれるのです。
結論から先に申し上げれば、この激変の直前に贈与しても、あくまでその時点での相続税評価額で問題ないでしょう。たとえ売却すれば高価格が見込まれる場合でも、それは実際に売却して初めてその価格が実現するもの。贈与税の評価額は相続税と同様で、評価の安全性の観点から価格に余裕を見ています。従って、通常は実際の売買価格より低めの設定にはなっているのです。いずれにせよ、売買時の取引価額での贈与税の課税はありません。但し、当初から贈与前に買い取りが保証されていたり、贈与時に契約が進行中であったりすれば、それはやはり無理があるでしょう。買い取られる金額で贈与があったと言われても反論は出来ません。
3.広大地評価で更なる引き下げも…さて、相続や贈与の評価で有利になるものの代表格は、何と言っても広大地でしょう。前述の贈与に際し、広大地評価の適用があれば、それこそ贈与後1~2年して売却した場合との差額は相当なもの。但し、この評価の適用できる場所は限定されてしまいます。容積率が300%以上の場所では原則として適用がないからです。 東京の場合で言えば、場所にもよりますが、概ね環状8号線の内側では難しいのではないでしょうか。都心では地価が高いこともあり、土地の高度利用が推進されている場所が多いからです。
4.容積率も一つではない!ここまでお読み戴いて、『ナンダ、結局、基本的に都内では広大地を適用するのは難しいんだ。』と諦めてしまうのは、あまりにも早計です。
確かに都市計画法、建築基準法等という法律で、それぞれの場所に応じて建築できる建物の種類や規模は定められています。前述の容積率も図面を見れば地域ごとに原則的な容積率が色分けで明示されてもいます。
この容積率を指定容積率と言いますが、実際に建物を建てる場合には、この容積率の基準だけをクリアーすればいい訳ではありません。門外漢の筆者が詳述はできませんが、基準容積率と言われる容積率が建築基準法に規定されています。前面道路の幅員や建物の高さ制限、日影規制等々建築基準法における他の規定や条例等によっても様々な制約を受けることになるのです。
つまり、広大地評価の適用の有無に当たっては、表面的な容積率だけで判断せず、実際に建築図面に落とし込み、現実の容積率で判断する事が必要になるのです。指定容積率が300%以上だからと言って直ぐに諦める必要はありません。ただ、これらの作業や判断は税務上の問題ではあっても、税理士だけに任せるわけにはいきません。様々な分野のプロと連携できる事務所でなくては問題は解決しないのです。それではどこの事務所がいいのでしょう?筆者でさえ、謙虚さも恥じらいも持ち合わせています。そこまでは言わせないで下さい。2006年1月31日
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5163号
『税務署が時々行う再チェック』
~財産を買換えた場合の引継価額~税務署が従来はそれ程気にしていなかった事柄でも、何らかの理由から重点的に調べ直す事があります。納税者側の誤りが多く発見されるような場合です。所得税について、今年はそれの一つに事業用資産の買換え特例等を適用した場合の引継価額があります。要は減価償却費の計算の再チェック。意外に誤りが多いのです。
1.不動産を売却したら賃貸マンションを売却したら、言うまでもなく、譲渡税の対象です。利益が出れば、次の算式で売却益を計算することになるでしょう。
売却額-(取得費+譲渡経費)=譲渡益
問題は取得費、平たく言えば原価です。1,000万円で買った土地Aが1億円で売却できれば差引き9,000万円が利益。その1億円で土地Bを買った場合、普通は1億円がBの原価となるわけです。
2.事業用資産の買換え特例を適用すると…ところが事業用資産の買換えで特例を適用すると、話はちょっとややこしいことに。土地Bの原価は1億円にはならないのです。計算過程は省略しますが2,800万円にしかなりません。そのまま土地Bを持ち続けるなら問題は特にありませんが、再度Bを1億円で売却すると、今度は原価が2,800万円のため、7,200万円が課税の対象です。
3.建物の場合は問題が直ぐに顕在化上記は土地の例でしたが、これが建物の場合、売却をしなくても直ぐに税金の影響が生じてきます。何故なら、建物は土地と異なり毎年減価償却をするからです。土地Bではなく建物Bにした場合の減価償却の基になる金額は2,800万円、実際の建築価額が1億円でも、です。つまり、毎年の経費となる減価償却費が少ない分、利益が多く算出されることになってしまいます。
あるお客様から賃貸マンション売却についての申告のご依頼を受けました。税理士の立場では新規のお客様の場合、確認が必要です。上述の買換えの特例の適用を受けていれば、建物Bのような計算になるからです。ただ、通常は建物Bの減価償却費の計算を間違えて1億円で計算しても、税務署も気がつくことが多いのです。売却を扱う資産税部門から不動産所得等を扱う所得税部門に連絡が行くシステムになっているからです。
なお、マンションには減価償却をしない土地部分もあるため、税理士は特例適用の有無について、細心の注意が必要です。この辺の確認を疎かにすると、後日、税理士の損害賠償責任を問われることにも。土地の価格は決算書を見ても記載がされていないからです。
4.事実が不明のまま申告したら…お客様にお聞きしても資料が残っていなければ、昔の事は解らないことが多いもの。まして、税法上の特例の有無など、解るくらいなら税理士には頼みません。という訳で、建物価額の推定から特例の適用がないものとして申告をしました。
ところが、申告後に所得税の調査です。ここで我々が知らなかった驚愕の事実が明らかに。何と買換え特例の適用を受けておられたのです。つまり、減価償却の計算が10年近く間違ったまま放置されていた事が判明。前述の例で言えば、本来2,800万円で計算するものを1億円でやっていたため、長期に渡り相当額の得をしていた事に。売却しなければ税務署も気づかなかったのに、譲渡の申告が引き金になってしまったようです。
5.売却がなくても再チェック!そうかと思えばこんな例もありました。平成4年に事業用の土地を一部売却し、先程来の特例の適用を受けて、建物に買換えをなさったお客様です。所得税の申告を今年から当社でお手伝いさせて頂きました。別に売却をしたわけではないので、減価償却費の計算は前年を踏襲です。このお客様は買換え直後にも調査を受けており、特段の指摘は無かったとのこと。
さて、この度所得税の調査を受けることになりました。前年分以前のことは我々には解りませんが、調査が始まって開口一番、平成4年の買換え時の処理が間違っている可能性があると言うのです。何を今更と思いましたが、建築当時の資料を見せろと言われても、現時点では残っていません。それに、買換え直後に一度調査を受け、その処理についてもお墨付きのはずなのです。それを何故10年以上も経ってから調査なのかと思っていたら、どうやら税務署も従来その確認をあまりしてこなかったようで、ここへ来て一斉に再チェック、と言うのが事の真相のようです。
当方としてはその資料が無く、今の時点で立証できなくても責任はないはず。当時だったら立証できたのです。仮に税務署が職権で更正しても、勿論徹底抗戦のつもりです。当時の調査の不備を今更なんて…。税務署も思い出したように、時々こんな事をしてくれるので、やはり調査の時期は税務署から目が離せません。2005年12月26日
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5162号
ゴルフ練習場の借地権
相続税をにらんで、万全な対策をしているつもりのお客様がいました。でもお話をうかがっている内に???同族法人に借地権があるか無いかをめぐって誤解があったのです。この問題、実は結構複雑で税理士も間違いやすい項目のため、今回は確認の意味も含めて再検討してみましょう。
1.底地と借地権の評価上の関係まずは、相続税法における底地と借地権の評価上の関係について確認をしておきます。原則としては、底地と借地権を合計して100になると考えます。つまり借地権割合が70なら底地は30、60なら40と言う具合です。初めに借地権ありきですが、このお客様、地主さんの立場から、他人ではなく同族法人を利用して借地権部分を移転させ、ご自身の土地は評価の低い底地にしようと工夫をなさったのです。
2.借地権に係る権利金の認定課税個人の土地を利用して、法人でゴルフ練習場を経営なさっておられました。法人が個人の土地上に建物を建てる場合、都会なら法人は権利金の支払いが必要です。同族間の特殊関係を利用して支払いを免除されれば、ただで貰ったものとされ、権利金相当額の受贈益の課税(権利金の認定課税と言う。)をされてしまうのです。それを避ける方法はあるのですが、この会社、実は15億円もの多額の赤字を工夫をして創出しており、これを利用しました。つまり、権利金を支払わず、借地権を無償で個人から贈与して貰い、本来課税されるはずの金額を15億円の赤字の範囲で相殺したのです。
3.税法により異なる『借地権』の性格こうしてこの法人、決算書にも借地権が堂々と計上され、お客様も相当額の相続税対策ができたと満足しておられたのです。
さて、確かに法人の決算書には借地権が載ってはいるものの、これだけで本当に個人の土地は評価額の低い底地になるのでしょうか。実は、一口に借地権と言っても、税法によりその性格が異なるのです。相続税法での借地権は民法上の考え方と同じです。つまり、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権を言います。これに対し法人税ではもっと範囲が広く、単に地上権または土地の賃借権を言うため、かならずしも建物の所有を目的とする必要はないのです。
4.ゴルフ練習場の借地権ここで考えるべきはゴルフ練習場という場所の性格です。土地上にクラブハウスの建物は確かに存在します。しかし、土地の大半には建物が建っているわけではなく、人工芝で覆われ高いフェンスに囲まれているのです。もう一度確認します。法人税では建物の存否は問わず、単なる地上権または土地の賃借権のことを借地権と考えているのです。従って、ゴルフ練習場には法人税法上の借地権は存在します。しかし、だからと言って、相続税法で言う借地権があることにはならないのです。逆に相続税では建物の存在が前提となっています。確かにその土地上に部分的にクラブハウスはありますが、土地全体で考えた場合、芝生部分が主でクラブハウスは従の関係です。そのためクラブハウスの敷地部分を含め、相続税法上の借地権は存在しないことになってしまいます。つまり、土地の評価はご期待通りの底地にはならないのです。
5."目が点"になってしまったお客様の対応策上記をご説明したところ、初めは信じていただけませんでした。何しろン十年かけてやってきた相続税対策です。ゴルフ練習場の経営も苦しい中で、借地権のために今まで継続して頑張ってきたのです。この話を聞いて、一気に経営継続のお気持ちが萎えてしまったようです。
しかし、物事は考え方一つです。相続を待って評価で得をしようと思うから期待通りにならないのです。法人税法上の借地権は有るのですから、今の時点で練習場を廃業し、土地を売却したらどうでしょう。配分の仕方はあるにせよ、土地価額の大半を占める借地権部分は法人のもの。経営不振のおかげで累積赤字はそこそこあり、売却益との通算も可能です。余剰があれば、税負担の少ない退職金だって考えられます。個人は底地部分に20%の課税ですが、事業用資産の買替えで、マンションの1室でもお買いになり、賃貸なされば税負担は1/5に軽減です。
対応策は色々考えられますが、現時点で借地権の存在しないことが解ったことだけでも儲けものと考えましょう。
事はゴルフ練習場だけではありません。テニスコートやバッティングセンター、一定の自動車教習場等々、借地権はもう一度見直した方がよいかもしれません。2005年11月30日
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5161号
『相当の地代』の復活はあるのか?
「相当の地代」という言葉をご存じでしょうか?
かつて土地が右肩上がりで値上がりした時代に、法人に個人の土地の借地権部分を自然に移してしまう目的の節税策によく使われた高額の地代です。一世を風靡したこの対策もバブルが弾けてお蔵入りと思いきや、子がすでに土地を持っている場合や、二次相続対策にもこんな手法で生かせるのです。
1.かつての節税策とは…例えば個人の土地上に法人が建物を建てる場合、よほどの田舎でもない限り、税務上は権利金の支払いが前提とされています。したがって、同族関係者間等でその支払いを免除すれば、免除されたことに対し受贈益が課税され(権利金等の認定課税という)、過酷な税負担となってしまいます。それを避ける手法の一つとして「相当の地代」方式があります。路線価等で算出した土地の更地価格の6%相当額を年間の地代とすることにより、上記の認定課税を見合わせるとするものです。当初の高額な6%もの地代を固定することで、右肩上がりの地価が次第にその負担を軽減し、ついには法人に借地権が移行するという優れものだったのです。つまり、負担が重いのは建物を建築し借地権を設定した当初だけで、地価の値上がりにより初期設定の6%は無視できる程度になっていたのです。
2.誰が 6%の地代を払えるか?さて、地価が下落または横ばいの今の時代に6%もの地代を誰が支払うでしょう。6%ずつ支払えば、10数年で土地が買える計算です。例えば、父の相続後にその財産が母と子に移転していれば、近い将来の母親の二次相続に活用ができるのです。
子の土地に母親がアパートを建設し、その際の地代を相当の地代で支払うのです。建物の建築により、母親の相続時には建物の相続税法上の評価額が建築価格より低いという、いわゆる評価差額を利用した節税はありますが、そんなケチな事がテーマではありません。親子間で地代の支払いがなくても、税務上は法人の場合のように認定課税はありませんが、ここは敢えて母から子へ、高額な地代を支払うことにするのです。
3.同一生計の親子間での地代の取り扱い母と子が同一生計の場合、親子間で地代を支払っても、支払った母親は必要経費にならず、また受け取った子も収入にはならないのです。実は、子の課税対象となる収入にならないというところがこの話の核心です。必要もないのに母親は子に高額な相当の地代を支払いながら、それは子の収入にはなっていません。つまり、結局は贈与税の課税がないまま合法的にお金が母から子へ移転できるという仕組みになっているのです。
ただし、そもそも必要でもない高額な地代を支払えば、それが贈与税の対象なのではないかという心配があるかも知れません。確かにこの6%の相当の地代は法人の認定課税の可否をめぐっての議論です。一般相場より高いことは紛れもない事実で、無条件には容認されない可能性もあり得る話。実務的には6%を若干下回る程度にしておいた方が無難かも知れません。
4.税務上、生計が別かどうかが判断の鍵さて、うまい話には注意しなければならない点もありますので、確認をしておきます。その1、親子でも生計が別なら前述のような取り扱いはありません。つまり、母親の子への地代の支払いは経費となり、子は受け取った地代が収入として課税の対象になるということです。なお、税法上、生計が別か否かは、必ずしも物理的な同居かどうかということではありません。経済的にお財布が一緒なら、別居であっても税務的には生計は一。逆に、それぞれに収入がありお財布が別なら同居であっても生計が別ということもあり得ます。
5."事業的規模"でなければならないか?注意その2、母親がアパートを経営する場合、所得の種類としては不動産所得になります。実はこの不動産所得、ちょっと曲者でその賃貸業が事業的規模で行われているかどうかで扱いが異なるのです。この判定は、'5棟10室基準'がとりあえずの指針で、戸建てなら5棟、アパートなら10室以上が事業的と言う扱いです。しかし、これも家賃や貸付形態、契約条件等を総合的に勘案して判断する事になっており、一律の規定ではありません。
今回の手法は特に事業的規模か否かを問われることはありませんので、その意味では安心です。結局、生計一が必須の条件。
孝行息子の筆者も、母親との同居作戦でこの手法を活用したいところですが、残念ながら母はすでに他界。ただ、よーく考えてみたら、節税の元になる賃貸用の土地を持っていませんでした。2005年10月31日
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5160号
秘密証書遺言の活用法
若貴問題は相続放棄という、意外な結末で幕を閉じました。典型的な争族に発展し、だから遺言を用意しておきましょう、と筆者も準備をしておいたのですが…さて、遺言については、本誌でも何度か取り上げてきましたが、今回は、別の角度から、特に秘密証書遺言にスポットを当ててみました。
1.公正証書遺言は確かに安全ですが…ATOでも遺言書作成のお手伝いは数多く手がけてきました。その大半は公正証書遺言です。法的な安全性や後々のトラブル回避のためには、これに勝るものはないからです。ただ、公正証書遺言を作成したときのお客様のご不満で最大のもの、それは公証人の手数料。不動産については固定資産税の評価額を元に算出することになっています。評価証明を提出するため、ごまかすこともできません。それに、相続税の評価なら借地人のいる底地の場合、借地権割合を控除した額になるため更地に比べれば割安です。が、公証人の手数料は総て更地価額で計算されるため、地主さんにとって割高に。ちょっとした地主さんで40~50万円は覚悟した方がよさそうです。また、預金の額も多ければ多いほど、手数料にはね返ります。しかし、ここは一工夫。預金の具体的な金額を明示せず、銀行名や口座番号だけで財産を特定させればよいのです。さすがに残高証明までの提出は求められないので、聞かれたら、全部で100万円程度とでも答えておきましょう。
2.公正証書遺言は公証人が本人意志を確認先般も遺言書の作成をご依頼頂いたのですが、このお客様にはちょっと問題がありました。普段は意志の疎通も可能なのですが、ご高齢であることもあり、長時間の緊張が続きません。細かなことが面倒になってしまい、会話が続かないのです。公正証書遺言を作成する場合、公証人は事前に準備した遺言を遺言者の前で読み上げます。そして、最後にこれで間違いないかを遺言者に確認し、署名、実印の押印となっていくのです。財産が多い場合、遺言を読み上げるだけでも結構時間がかかります。この一連の作業をこなせるかどうか、そこが問題だったのです。その遺言が本人の意思であることは、公証人にとっては最大の確認のポイントです。家族であれば解ることが、他人である公証人に理解できない場合、公正証書にすることはできなくなってしまいます。
3.秘密証書遺言ならこんな時は秘密証書遺言でこの難局を乗り切るより方法がありません。秘密証書遺言とは、事前に作成した遺言書に署名、押印の上封印します。それを証人とともに公証人に提出し、自分の遺言であることを申し述べるのですが、内容については一切触れる必要はないのです。公証人はそれが遺言であることと日付を封筒に記載し、遺言者、証人及び公証人全員で署名、押印をすれば出来上がりです。
また、自筆証書遺言のように、総てを自筆で作成する必要もありません。自署の署名さえあれば、遺言の本文はワープロで作成してもよいのです。遺言書に押したものと同じ印で封印する事が必要ですが、決して難しい問題ではないでしょう。極めて簡単にできてしまうためか、公証人の手数料は僅か11,000円。費用は格段に節約ができます。
4.秘密証書遺言の問題点実は、簡単にできてしまうからこそ、問題がない訳ではないのです。公証人が確認したことは、封筒の中身が遺言者によれば、遺言であると言っても遺言であると言っていること及び日付だけです。遺言者の真実の意志かどうかは保証の限りではなく、後日、内容については問題になることが無いとは言い切れないのです。その意味では、単なる"確定日付"と似ていると考えてもいいでしょう。
また、その遺言書の保管も問題です。公正証書の場合には、原本は公証人役場に保管されています。たとえ控え2通が両方ともなくなっても心配はありません。一方、秘密証書に控えはないのです。信頼できる人間に保管を託し、実際に相続が起きた場合には、必ず遺言書があることを明示して貰いましょう。ただ、家庭裁判所で検認という手続きをして開封する作業が必要になってきます。
いずれにせよ、公正証書の方が望ましいことは確かです。ただ、公証人による確認作業が困難な今回のようなケースでは、何の遺言も作らないよりはるかに安心です。若貴兄弟のような確執が無い場合であっても、です。2005年9月30日
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5159号
相続税申告書の色々な提出方法
相続税の申告は、相続人全員がその内容を確認し、一つの申告書を連名で提出するのが一般的です。しかし、ことは"争族"の申告です。いつも皆で仲良く一つの申告書、とばかりはいかないのが実状のようで、ときには相続人の数だけ申告書が提出されることも…
1.分割協議が整わない場合ご存知のとおり、相続税の申告書の提出期限は、原則的には亡くなってから10ケ月。遺言がなければ、相続人全員による分割協議によって、財産の分け方を決めなければなりません。ただ、この期間に相続人の話し合いが着かなくても、申告期限は待ってはくれません。そんな場合には、法定相続割合でいわば仮の申告、納税をし、分割協議がまとまってからやり直しをすることになります。このケースでは、とにもかくにも体裁としては、一つの申告書で提出ができる場合が多いでしょう。
しかし、事態がもっと深刻で、話し合い自体ができない場合もあります。一部の相続人に財産を明示せず、敵対関係が露骨な場合です。こうなると、そもそも相続財産の全容も見えません。
こんな時は、それぞれの相続人が暫定数値でいい加減な申告をするより他に方法はありません。こんなやり方で税務署に対し、通用するかどうかは別問題です。と言うより、税務署の格好のえじき。調査に着手さえすれば、彼らの手柄である"増差"は約束されたも同然だからです。こちらから、どうか相続税の調査に来て下さいと言っているようなものなのです。
2.遺言書がある場合それに対し、遺言がある場合、基本的には簡単です。遺言にすべての財産の分け方が指示されていれば、分割協議は必要ないからです。その指示に従って財産を相続し、それに基づく申告書を作成すれば事は足りるのです。財産分けによる醜い争いを避ける唯一の方法が、遺言であると言われる所以(ゆえん)です。
ただし、遺言にもいくつか問題があります。具体的な分割方法が明示されていなかったり、一部の財産についてだけしか指示がない場合です。これではせっかく遺言があってもすべては解決できず、不十分な部分については分割協議を行わなければなりません。
なお、そもそもの遺言の効力や効果に疑義がある場合には、遺言その物をめぐっての争いになってしまいます。その場合には、、基本的には分割協議が整わない、未分割の状況と同様です。相続人ごとに、とりあえず仮の申告をし、後日調整をするより他に方法はありません。
3.遺留分の侵害がある場合の申告方法?問題が複雑なのは、その遺言書に遺留分の侵害がある場合です。遺留分とは遺言によっても侵されることのない、相続人として最低限の相続ができる権利のことをいいます。配偶者と子が相続人の場合、それぞれの本来の法定相続分の半分が保護されるべき遺留分。これが侵害されている場合には、不満であれば遺留分の減殺請求といって、取り戻しができるのです。
侵害があっても、遺言が直ちに無効になるわけではありません。それに異論がなければ遺言のとおり執行し、申告すればいいだけのこと。難しいのは遺留分の侵害があり、それに納得できない場合です。
こんなとき、遺留分を侵害された相続人は、どのような申告をすればよいのでしょう。交渉によって現状よりは相続分が増える可能性はあるにせよ、現時点では財産額が確定できないのです。いくら仮の申告とは言え、遺言がとりあえず有効なら、その後の交渉によっても、取り分は最大で遺留分まで。とても法定相続分など期待できません。従って、法定相続分での申告など意味のないものに。まして、申告をすればそれに実際の納税が伴うのです。間違っても遺言どおりの申告などしてはいけません。相手方に遺言の内容に同意しているかの如く思われてしまい、その後の交渉が不利になってしまうからです。
ただ、こんなケースでは相続財産についての情報は、主流派に独り占めにされていて、不十分なことが多いもの。苦し紛れに少額の申告をしてしまえば、加算税、延滞税等の余計な税負担も生じます。これが嫌ならとりあえず多めに納め、後日の調整を待つより他に方法がありません。とは言っても多めに納めるには資金が必要で、遺産の取り分が確定していない場合は資金繰りが困難です。何とも痛し痒しの状況で、相続人の立場としては、こんな遺言を残されないよう、生前から被相続人を大切にし、時にはお世辞の一つも言って良好な関係を築いておく以外、手立てはなさそうです。2005年8月31日
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5158号
固定資産税のハイテク化!
お正月早々にヘリコプターや小型機による空撮、とくれば勘の鋭い方には何のことかお解りでしょう。そう、固定資産税の空撮による調査です。固定資産税は1月1日の現況で課税のため、正月の空撮はいいとしても、遂にこんなハイテク化が…税理士も知らなかった驚愕の事実をお知らせします。
1.固定資産税の課税単位固定資産税は原則として、『筆』と呼ばれる登記簿上の地番ごとに評価額が決まります。相続税の評価がこの筆と無関係に、利用単位ごとに課税されるのと較べ、大きな相違です。そして、最大の特徴は、その土地が住宅用地かどうかです。
面積的な制限はありますが、住宅用地なら固定資産税は1/6にまで軽減されるのです。つまり、アパート敷地と駐車場とでは、同じ面積の場合、税負担が6倍も異なることになるのです。
ただし、アパートの専用駐車場なら駐車場部分も1/6。とにもかくにも、住宅用地か否かは固定資産税においては死活問題なのです。
2.地積更正や分筆をすると…固定資産税は登記簿上の面積をもとに課税されます。従って、実測をし正確な面積が算出された場合、面積が減少するなら儲けもの。登記面積を変更(地積更正という。)すれば、連動して固定資産税も減少です。逆に増えた場合は要注意。その理由は言わずもがな、お察しの通りです。
お客様にアパートと駐車場経営をなさっている方がいます。約300坪の大きな一筆の土地に、二つの駐車場に挟まれてアパートが1棟建っていました。登記簿上の面積より実際の面積が小さく、課税上不利であったため、その土地を実測し、利用形態ごとに分筆、地積更正もしたのです。登記面積が変更されたため、固定資産税も減額の対象となりました。そこまでは良しとして、三鷹市の固定資産税係からの通知にビックリ!次のような文面と写真が添付されていたのです。
《◯◯様所有の下記の筆について、地積更正及び分筆がありましたので、宅地部分と駐車場部分のそれぞれの課税地積を再計算させて頂きたいと思います。別紙の通り算出致しましたが、◯◯様の方で地積測量図等により宅地部分と駐車場部分の地積が分かるようでしたら、より正確なものに訂正させていただきますのでご連絡下さい。》
そして、下記の写真です。写真によるそれぞれの部分の面積が、小数点以下まで記載され、数㎡の誤差については登記面積による按分計算までなされていたのです。
3.知らない間に写真撮影、が世の動向考えてみれば、これくらいは当たり前なのかも知れません。今や高速道路の出入り口、繁華街のあちこちで知らない間に写真撮影は行われています。犯罪捜査にも活用されるほど、顔写真もバッチリなのです。これからは、すべての土地にシートを被せ、外出時にはマスクにサングラスが必須なのかも知れません。
2005年7月29日
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5157号
広大地は生前贈与で!
すでにお伝えした『広大地』の評価についての改正をめぐり、実務界では議論が沸騰です。何しろ、広大地に該当すれば、評価額は激減。恐いのは、現状ならこの有利な評価方法の対象地であっても、将来の相続時にマンション適地とされ、適用対象外とされた場合です。それに対し、こんな方法で対処しようと言うのが本日のテーマです。
1.『広大地』評価の改正内容まずは、広大地の評価について、ここで簡単におさらいをしておきましょう。広大地とは文字通り面積の大きい土地を言い、具体的には開発行為の対象となる面積以上で、道路や公園等の施設負担が必要な土地のこと。市街化区域は1,000㎡以上となっていますが、東京近郊では500㎡以上で開発行為の対象のため、広大地の該当面積も500㎡以上と考えていいでしょう。
かつては広大地評価を実際に活用する場合、道路や公園の提供によるつぶれ地を計算し、いわゆる有効宅地の割合を考慮して評価をしていました。
ただ、この計算の適否の判断が曖昧で、税務当局との争いのタネとなることがしばしば。そこで、次の算式ですべてを割り切る方針に改正です。
広大地評価額=路線価×面積×広大地補正率*
* 0.6-0.05×広大地の面積/1,000㎡
この算式で計算すると、1,000㎡で45%引き、5,000㎡では何と65%引きの評価になるのです。
2.問題は相続時の状況さて、一見有利な評価方法への変更ですが、実は大変な問題を含んでいるのです。マンション適地は広大地評価の対象外になっていることです。理由はつぶれ地が少ないため。しかも、この"マンション適地"の定義が曖昧で、現在は近隣にマンションが建っていなくても、将来的には適地になる場合は適用外との取り扱い。こんな予測は不可能です。また、広大地の評価を使えば相続税は心配ない、などと思っていたら実際の相続時にはマンション適地と言うことも。いずれにしても、広大地の評価が適用できるか否か、将来予測も含め実務的にはグレーな部分が多過ぎます。
3.現時点で贈与をすればそこで、相続時など遠い将来は見据えずに、現時点での贈与を活用です。贈与税の評価は相続税と同じ扱い。つまり、現時点でマンション適地と判断されなければ、贈与の時にも前述の有利な評価が適用できるのです。人生なんてこの先どうなるかなど、一寸先は闇なのです。ま、それはともかくとして、今使える評価で確実に財産を移転させてしまいましょう。
こういうと、それはいいけど贈与税の高額な負担が心配だ、とのご意見が聞こえてきそうです。そこで、相続時精算課税制度の活用です。2,500万円までは非課税で、それを超えても一律20%の税率という、あの制度を活用するのです。仮に広大地の評価の適用で1億円の評価の土地を考えましょう。1億円-2,500万円の7,500万円に対し20%の税率で1,500万円の贈与税。1億円の対象額で1,500万円、実質15%の贈与税なら安いもの。おまけにこれは単なる相続税の前払いに過ぎません。相続時には相続税と精算されるからなのです。
相続時精算課税制度を使って贈与をすれば、将来の相続時、この土地が仮にマンション適地になってはいても、評価はあくまで贈与時の低い価額のままなのです。
4.これを売却すれば、売却代金はお子様に!さらに贈与されたこの土地を、売却した場合を考えてみましょう。贈与された以上はお子さんの土地、売却代金は言うまでもなくお子さんのものに!勿論、売れば譲渡税の対象です。しかし20%の税負担で生前に確実に現金の形で次代に財産の移転ができるのです。もしこの土地が現時点では十分に収益を生んでいない場合、要件さえ整っていれば事業用資産の買換え特例で、高収益物件への組み替えだって可能です。
いずれにせよ、将来適用ができるかどうか不確実な広大地評価。現時点でマンション適地でないのなら、相続税を前払いしてこの評価の特例を利用し、生前に確実な財産の移転を実行しておくことも、一考の価値がありそうです。2005年6月30日
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5156号
譲渡税、もう一度見直しで税金還付!
相続や贈与で取得した財産を売却すると、相続税、贈与税とは別に今度は譲渡税が課税です。それは仕方がないとして、その時の譲渡税の計算方法が変更されました。もしかすると、今からでも税金が戻ってくる可能性が…
1.譲渡税の計算方法譲渡税の計算方法は基本的には以下の通りです。
売却収入-(取得費+譲渡経費)
これに税率を乗じて計算ですが、ここで問題なのは取得費です。取得費とは取得時の購入代金や手数料をいい、相続や贈与の時は取得費や取得時期を当初の方から引き継ぐことになります。
相続や贈与に当たっては、名義の変更を必要とする財産もあるでしょう。例えば、不動産やゴルフ会員権の場合は、登記費用、不動産取得税、名義書換手数料等といった類が必要です。従来、これらの費用は譲渡税の計算に際しては、全く考慮されていませんでした。
それが、今回上記のような付随費用を取得費に含めて計算するよう、取り扱いが改められました。しかも、過去に遡っての変更も可能なのです。理由は簡単、この取り扱いをめぐり、税務署が裁判で負けたからです。
2.どんな影響が考えられるのか?まずは、この3月の確定申告で相続、贈与によって取得した財産を売却した方、申告書を見直してみましょう。上記の改正が公表されたのは、実は確定申告が始まる直前でした。世間一般にはまだ、とても周知の事柄ではないことでしょう。前述のとおり、この取り扱いは過去に遡れるため、提出済みの過去の申告書も見直したいものです。ただ、税務署が申告済みの申告書について、訂正ができるのは法律上は5年が限度。従って、現時点で見直しが可能なのは、平成12年分以降の申告です。これ以上古いものについては、たとえ税務署が直してあげたいと思っても、法律上、税務署長にその権限がないのです。
3.税金還付の請求方法さて、平成16年分であれば提出直後の申告です。申告期限から1年以内、つまり、来年の3月15日までに「更正の請求」というやり直しの手続きが可能で、これによって税金が戻ってきます。
平成12年~15年分のものは原則的には取り戻しができないことになっています。しかし、「嘆願書」という超法規的なお願いの方法があるのです。勿論これは本来の法律上の権利ではありません。あくまで“お願い”ではあるので、認められないことも覚悟をしなければなりません。しかし、今回のこの件については、税務署も嘆願書を認める旨を明言しています。安心して嘆願書の提出をしてみましょう。
4.概算取得費には要注意!ただ、そうはいっても注意すべき点がいくつかあります。まず、当初の譲渡税の計算で、取得費が正確にわからなかった場合です。特に相続で取得した土地など、当初の取得ははるか昔のこと。正確な金額など分からなくても不思議ではありません。こんな場合、譲渡税の計算では概算取得費といって、売却価格の5%相当額を取得費として計算して良いことになっています。もし、この方法で申告をしていたら、5%に今回の名義書換費用等を上乗せすることはできません。5%相当額と名義書換費用等とを比較して、名義書換費用等が5%以下であれば、そのままにしておく方が有利です。逆に5%超ならば、この5%の概算取得費は捨てて新たな費用でやり直しです。
5.どこまでが取得費に認められるのか?さて、どこまでが取得費として認められる項目なのでしょう。直接の取得費ではなくても、取得のための付随費用もOKです。とはいうものの自ずとそれにも限界が。例えば相続財産の分割に際し兄弟間で争いがあり、多額の弁護士費用がかかっても、それまで付随費用というのは虫が良過ぎます。同じ分割をするためではあっても、相続財産である土地を測量し、分筆することなどは認められる範囲でしょう。
いずれにしても、過去の申告書を見直してみる必要はありそうです。税務訴訟ではなりふり構わず、強引な課税を主張する税務署ですが、敗訴が確定後は積極的に過年分も救済の姿勢を見せています。珍しく、負けた後の税務署の潔さに、男の美学を見た思いがします。2005年5月31日
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5155号
樹を見て、森も見て!
「樹を見て森を見ず」ということわざがあります。物事の一部分だけは詳しいのに、全体の把握が疎かであることの喩えです。税務についてもこれは至言ともいうべきもの。一つの税目に捕らわれず、あらゆる角度からの検討が必要なのです。
1.法人税を節税したのは税理士の手柄?ある会社が決算を迎えました。誰しも税金は少ない方がいいに決まっています。税理士は社長を喜ばせようとして、あの手この手で工夫をします。苦労の甲斐あって利益はゼロ。社長は喜び、税理士は胸を張りました。ここまでは良かった。
路線価が公表される時期となりました。この会社は高額な土地を所有しているため、路線価にも敏感でした。というのは、未上場の会社の株式については、後述のように評価方法によって、路線価が株価に大きな影響を与えることがあるからです。社長のお父様がオーナーとして大半の株式をお持ちで、将来の相続を睨んでのことだったのです。そのお父様もかなりの高齢、年齢的にはいつ相続という事態が生じてもおかしくはないため、毎年路線価公表の時期に、株価を見直すことになっていたのです。
2.未上場株式の評価方法ここで、未上場の株式の評価方法についてお話をしておきましょう。正直言って、かなり専門的になってしまうため、あえて極めて割り切った説明にします。原則的な評価方法には大きく①純資産価額方式②類似業種比準価額方式の2つがあります。①は財産の額から借金等の負債を控除した、差引き残額で評価する方法。②は評価しようとする会社の一株当たりの利益、配当、純資産(類似の3要素と言う)を同業の上場会社のそれらと比較して求めようとするものです。
①においては、昔から保有する土地が低い価額(当時の取得価額)で帳簿に計上されていても、株価計算に際しては、現在の高い価額(時価)が反映されてしまいます。②の方法ではそのような含み益が株価に反映することがないため、一般論としては①より②の方が評価額が低くなり、有利だとされているのです。
3.評価方法の落とし穴さて、話は決算で工夫をし胸を張った税理士に戻ります(当事務所ではありません。念のため!)。路線価が公表され、この税理士も株価計算をして驚いたことでしょう。頑張って2期連続で利益をゼロ、配当もゼロにした結果、従来は上記②の低い評価額で算出できていたものが、②の適用が無くなってしまったのです。業界用語で"2要素ゼロ"と言いますが、この場合には原則として、①の高い評価額で計算することが強制されるのです。部分的(25%)には②を適用する方法も認められてはいますが、基本はあくまで①の純資産価額方式になってしまうのです。
これが税務の実務の落とし穴。それに気づいた時の税理士の心中、同業者として察するにあまりあり。何と従来の5倍にもなってしまったのです。実はこの会社、超都心に土地があり、その土地で貸しビル業を営んでいる会社だったのです。税理士の報告を聞いて、社長はたいそうな剣幕だったそうです。毎年相続を心配して、株価評価をやっているのに、突然のこの報告ではさもありなん!
4.解決策はあるのか?この段階で当事務所にご相談にお出でになったのです。この税理士を責める事なんて、決してできません。もしかしたら同じ誤りをやっていたかも知れないからです。しかも、この税理士は工夫をし、社長を喜ばせるためにやったのです。
とにもかくにも、このままでは大変です。聞けば前期でビルの大修繕も終わり、今期は経費が少額の見込み。結果大幅な利益が見込まれるとか。とりあえず、決算期を今直ぐの今月末に変更し、利益が出る状態での決算を組むことをお勧めしました。これなら2要素ゼロにはならず、②の方法が再び適用できるからです。
5.常に樹を見て、森も見て!同じようなことは他にいくらもあるのです。例えば個人の土地に賃貸物件を建築する場合、個人名義か法人名義かもその一つ。個人名義なら土地の評価が"貸家建付地"という更地の7~8割の評価に下がり、建物評価も賃貸物件なら有利な評価で相続税対策になろうというもの。法人名義の場合、土地の評価を抑える方法はあるものの、建物は個人でないため直接の評価のメリットはありません。一見個人名義がよさそうです。しかし、これも相続がいつ起こるかにより、状況は一変します。
詳しくはお話できませんが、ケース・バイ・ケース。相続税ばかりでなく所得税、法人税、消費税等色々なことを考えなければ結論は出てこないのです。常に樹を見て森も見て、税務は本当に難しく、筆者など、なかなか胸が張れません。2005年4月28日