お役立ち情報
COLUMN
原則として月に一度、
代表 高木康裕が自身で執筆しております。
お客様の立場に立って、
新たな税務の情報や事例をご紹介。
辛口で税務の現場のナマの姿をお伝えして参ります!
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5162号
ゴルフ練習場の借地権
相続税をにらんで、万全な対策をしているつもりのお客様がいました。でもお話をうかがっている内に???同族法人に借地権があるか無いかをめぐって誤解があったのです。この問題、実は結構複雑で税理士も間違いやすい項目のため、今回は確認の意味も含めて再検討してみましょう。
1.底地と借地権の評価上の関係まずは、相続税法における底地と借地権の評価上の関係について確認をしておきます。原則としては、底地と借地権を合計して100になると考えます。つまり借地権割合が70なら底地は30、60なら40と言う具合です。初めに借地権ありきですが、このお客様、地主さんの立場から、他人ではなく同族法人を利用して借地権部分を移転させ、ご自身の土地は評価の低い底地にしようと工夫をなさったのです。
2.借地権に係る権利金の認定課税個人の土地を利用して、法人でゴルフ練習場を経営なさっておられました。法人が個人の土地上に建物を建てる場合、都会なら法人は権利金の支払いが必要です。同族間の特殊関係を利用して支払いを免除されれば、ただで貰ったものとされ、権利金相当額の受贈益の課税(権利金の認定課税と言う。)をされてしまうのです。それを避ける方法はあるのですが、この会社、実は15億円もの多額の赤字を工夫をして創出しており、これを利用しました。つまり、権利金を支払わず、借地権を無償で個人から贈与して貰い、本来課税されるはずの金額を15億円の赤字の範囲で相殺したのです。
3.税法により異なる『借地権』の性格こうしてこの法人、決算書にも借地権が堂々と計上され、お客様も相当額の相続税対策ができたと満足しておられたのです。
さて、確かに法人の決算書には借地権が載ってはいるものの、これだけで本当に個人の土地は評価額の低い底地になるのでしょうか。実は、一口に借地権と言っても、税法によりその性格が異なるのです。相続税法での借地権は民法上の考え方と同じです。つまり、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権を言います。これに対し法人税ではもっと範囲が広く、単に地上権または土地の賃借権を言うため、かならずしも建物の所有を目的とする必要はないのです。
4.ゴルフ練習場の借地権ここで考えるべきはゴルフ練習場という場所の性格です。土地上にクラブハウスの建物は確かに存在します。しかし、土地の大半には建物が建っているわけではなく、人工芝で覆われ高いフェンスに囲まれているのです。もう一度確認します。法人税では建物の存否は問わず、単なる地上権または土地の賃借権のことを借地権と考えているのです。従って、ゴルフ練習場には法人税法上の借地権は存在します。しかし、だからと言って、相続税法で言う借地権があることにはならないのです。逆に相続税では建物の存在が前提となっています。確かにその土地上に部分的にクラブハウスはありますが、土地全体で考えた場合、芝生部分が主でクラブハウスは従の関係です。そのためクラブハウスの敷地部分を含め、相続税法上の借地権は存在しないことになってしまいます。つまり、土地の評価はご期待通りの底地にはならないのです。
5."目が点"になってしまったお客様の対応策上記をご説明したところ、初めは信じていただけませんでした。何しろン十年かけてやってきた相続税対策です。ゴルフ練習場の経営も苦しい中で、借地権のために今まで継続して頑張ってきたのです。この話を聞いて、一気に経営継続のお気持ちが萎えてしまったようです。
しかし、物事は考え方一つです。相続を待って評価で得をしようと思うから期待通りにならないのです。法人税法上の借地権は有るのですから、今の時点で練習場を廃業し、土地を売却したらどうでしょう。配分の仕方はあるにせよ、土地価額の大半を占める借地権部分は法人のもの。経営不振のおかげで累積赤字はそこそこあり、売却益との通算も可能です。余剰があれば、税負担の少ない退職金だって考えられます。個人は底地部分に20%の課税ですが、事業用資産の買替えで、マンションの1室でもお買いになり、賃貸なされば税負担は1/5に軽減です。
対応策は色々考えられますが、現時点で借地権の存在しないことが解ったことだけでも儲けものと考えましょう。
事はゴルフ練習場だけではありません。テニスコートやバッティングセンター、一定の自動車教習場等々、借地権はもう一度見直した方がよいかもしれません。2005年11月30日
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5161号
『相当の地代』の復活はあるのか?
「相当の地代」という言葉をご存じでしょうか?
かつて土地が右肩上がりで値上がりした時代に、法人に個人の土地の借地権部分を自然に移してしまう目的の節税策によく使われた高額の地代です。一世を風靡したこの対策もバブルが弾けてお蔵入りと思いきや、子がすでに土地を持っている場合や、二次相続対策にもこんな手法で生かせるのです。
1.かつての節税策とは…例えば個人の土地上に法人が建物を建てる場合、よほどの田舎でもない限り、税務上は権利金の支払いが前提とされています。したがって、同族関係者間等でその支払いを免除すれば、免除されたことに対し受贈益が課税され(権利金等の認定課税という)、過酷な税負担となってしまいます。それを避ける手法の一つとして「相当の地代」方式があります。路線価等で算出した土地の更地価格の6%相当額を年間の地代とすることにより、上記の認定課税を見合わせるとするものです。当初の高額な6%もの地代を固定することで、右肩上がりの地価が次第にその負担を軽減し、ついには法人に借地権が移行するという優れものだったのです。つまり、負担が重いのは建物を建築し借地権を設定した当初だけで、地価の値上がりにより初期設定の6%は無視できる程度になっていたのです。
2.誰が 6%の地代を払えるか?さて、地価が下落または横ばいの今の時代に6%もの地代を誰が支払うでしょう。6%ずつ支払えば、10数年で土地が買える計算です。例えば、父の相続後にその財産が母と子に移転していれば、近い将来の母親の二次相続に活用ができるのです。
子の土地に母親がアパートを建設し、その際の地代を相当の地代で支払うのです。建物の建築により、母親の相続時には建物の相続税法上の評価額が建築価格より低いという、いわゆる評価差額を利用した節税はありますが、そんなケチな事がテーマではありません。親子間で地代の支払いがなくても、税務上は法人の場合のように認定課税はありませんが、ここは敢えて母から子へ、高額な地代を支払うことにするのです。
3.同一生計の親子間での地代の取り扱い母と子が同一生計の場合、親子間で地代を支払っても、支払った母親は必要経費にならず、また受け取った子も収入にはならないのです。実は、子の課税対象となる収入にならないというところがこの話の核心です。必要もないのに母親は子に高額な相当の地代を支払いながら、それは子の収入にはなっていません。つまり、結局は贈与税の課税がないまま合法的にお金が母から子へ移転できるという仕組みになっているのです。
ただし、そもそも必要でもない高額な地代を支払えば、それが贈与税の対象なのではないかという心配があるかも知れません。確かにこの6%の相当の地代は法人の認定課税の可否をめぐっての議論です。一般相場より高いことは紛れもない事実で、無条件には容認されない可能性もあり得る話。実務的には6%を若干下回る程度にしておいた方が無難かも知れません。
4.税務上、生計が別かどうかが判断の鍵さて、うまい話には注意しなければならない点もありますので、確認をしておきます。その1、親子でも生計が別なら前述のような取り扱いはありません。つまり、母親の子への地代の支払いは経費となり、子は受け取った地代が収入として課税の対象になるということです。なお、税法上、生計が別か否かは、必ずしも物理的な同居かどうかということではありません。経済的にお財布が一緒なら、別居であっても税務的には生計は一。逆に、それぞれに収入がありお財布が別なら同居であっても生計が別ということもあり得ます。
5."事業的規模"でなければならないか?注意その2、母親がアパートを経営する場合、所得の種類としては不動産所得になります。実はこの不動産所得、ちょっと曲者でその賃貸業が事業的規模で行われているかどうかで扱いが異なるのです。この判定は、'5棟10室基準'がとりあえずの指針で、戸建てなら5棟、アパートなら10室以上が事業的と言う扱いです。しかし、これも家賃や貸付形態、契約条件等を総合的に勘案して判断する事になっており、一律の規定ではありません。
今回の手法は特に事業的規模か否かを問われることはありませんので、その意味では安心です。結局、生計一が必須の条件。
孝行息子の筆者も、母親との同居作戦でこの手法を活用したいところですが、残念ながら母はすでに他界。ただ、よーく考えてみたら、節税の元になる賃貸用の土地を持っていませんでした。2005年10月31日
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5160号
秘密証書遺言の活用法
若貴問題は相続放棄という、意外な結末で幕を閉じました。典型的な争族に発展し、だから遺言を用意しておきましょう、と筆者も準備をしておいたのですが…さて、遺言については、本誌でも何度か取り上げてきましたが、今回は、別の角度から、特に秘密証書遺言にスポットを当ててみました。
1.公正証書遺言は確かに安全ですが…ATOでも遺言書作成のお手伝いは数多く手がけてきました。その大半は公正証書遺言です。法的な安全性や後々のトラブル回避のためには、これに勝るものはないからです。ただ、公正証書遺言を作成したときのお客様のご不満で最大のもの、それは公証人の手数料。不動産については固定資産税の評価額を元に算出することになっています。評価証明を提出するため、ごまかすこともできません。それに、相続税の評価なら借地人のいる底地の場合、借地権割合を控除した額になるため更地に比べれば割安です。が、公証人の手数料は総て更地価額で計算されるため、地主さんにとって割高に。ちょっとした地主さんで40~50万円は覚悟した方がよさそうです。また、預金の額も多ければ多いほど、手数料にはね返ります。しかし、ここは一工夫。預金の具体的な金額を明示せず、銀行名や口座番号だけで財産を特定させればよいのです。さすがに残高証明までの提出は求められないので、聞かれたら、全部で100万円程度とでも答えておきましょう。
2.公正証書遺言は公証人が本人意志を確認先般も遺言書の作成をご依頼頂いたのですが、このお客様にはちょっと問題がありました。普段は意志の疎通も可能なのですが、ご高齢であることもあり、長時間の緊張が続きません。細かなことが面倒になってしまい、会話が続かないのです。公正証書遺言を作成する場合、公証人は事前に準備した遺言を遺言者の前で読み上げます。そして、最後にこれで間違いないかを遺言者に確認し、署名、実印の押印となっていくのです。財産が多い場合、遺言を読み上げるだけでも結構時間がかかります。この一連の作業をこなせるかどうか、そこが問題だったのです。その遺言が本人の意思であることは、公証人にとっては最大の確認のポイントです。家族であれば解ることが、他人である公証人に理解できない場合、公正証書にすることはできなくなってしまいます。
3.秘密証書遺言ならこんな時は秘密証書遺言でこの難局を乗り切るより方法がありません。秘密証書遺言とは、事前に作成した遺言書に署名、押印の上封印します。それを証人とともに公証人に提出し、自分の遺言であることを申し述べるのですが、内容については一切触れる必要はないのです。公証人はそれが遺言であることと日付を封筒に記載し、遺言者、証人及び公証人全員で署名、押印をすれば出来上がりです。
また、自筆証書遺言のように、総てを自筆で作成する必要もありません。自署の署名さえあれば、遺言の本文はワープロで作成してもよいのです。遺言書に押したものと同じ印で封印する事が必要ですが、決して難しい問題ではないでしょう。極めて簡単にできてしまうためか、公証人の手数料は僅か11,000円。費用は格段に節約ができます。
4.秘密証書遺言の問題点実は、簡単にできてしまうからこそ、問題がない訳ではないのです。公証人が確認したことは、封筒の中身が遺言者によれば、遺言であると言っても遺言であると言っていること及び日付だけです。遺言者の真実の意志かどうかは保証の限りではなく、後日、内容については問題になることが無いとは言い切れないのです。その意味では、単なる"確定日付"と似ていると考えてもいいでしょう。
また、その遺言書の保管も問題です。公正証書の場合には、原本は公証人役場に保管されています。たとえ控え2通が両方ともなくなっても心配はありません。一方、秘密証書に控えはないのです。信頼できる人間に保管を託し、実際に相続が起きた場合には、必ず遺言書があることを明示して貰いましょう。ただ、家庭裁判所で検認という手続きをして開封する作業が必要になってきます。
いずれにせよ、公正証書の方が望ましいことは確かです。ただ、公証人による確認作業が困難な今回のようなケースでは、何の遺言も作らないよりはるかに安心です。若貴兄弟のような確執が無い場合であっても、です。2005年9月30日
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5159号
相続税申告書の色々な提出方法
相続税の申告は、相続人全員がその内容を確認し、一つの申告書を連名で提出するのが一般的です。しかし、ことは"争族"の申告です。いつも皆で仲良く一つの申告書、とばかりはいかないのが実状のようで、ときには相続人の数だけ申告書が提出されることも…
1.分割協議が整わない場合ご存知のとおり、相続税の申告書の提出期限は、原則的には亡くなってから10ケ月。遺言がなければ、相続人全員による分割協議によって、財産の分け方を決めなければなりません。ただ、この期間に相続人の話し合いが着かなくても、申告期限は待ってはくれません。そんな場合には、法定相続割合でいわば仮の申告、納税をし、分割協議がまとまってからやり直しをすることになります。このケースでは、とにもかくにも体裁としては、一つの申告書で提出ができる場合が多いでしょう。
しかし、事態がもっと深刻で、話し合い自体ができない場合もあります。一部の相続人に財産を明示せず、敵対関係が露骨な場合です。こうなると、そもそも相続財産の全容も見えません。
こんな時は、それぞれの相続人が暫定数値でいい加減な申告をするより他に方法はありません。こんなやり方で税務署に対し、通用するかどうかは別問題です。と言うより、税務署の格好のえじき。調査に着手さえすれば、彼らの手柄である"増差"は約束されたも同然だからです。こちらから、どうか相続税の調査に来て下さいと言っているようなものなのです。
2.遺言書がある場合それに対し、遺言がある場合、基本的には簡単です。遺言にすべての財産の分け方が指示されていれば、分割協議は必要ないからです。その指示に従って財産を相続し、それに基づく申告書を作成すれば事は足りるのです。財産分けによる醜い争いを避ける唯一の方法が、遺言であると言われる所以(ゆえん)です。
ただし、遺言にもいくつか問題があります。具体的な分割方法が明示されていなかったり、一部の財産についてだけしか指示がない場合です。これではせっかく遺言があってもすべては解決できず、不十分な部分については分割協議を行わなければなりません。
なお、そもそもの遺言の効力や効果に疑義がある場合には、遺言その物をめぐっての争いになってしまいます。その場合には、、基本的には分割協議が整わない、未分割の状況と同様です。相続人ごとに、とりあえず仮の申告をし、後日調整をするより他に方法はありません。
3.遺留分の侵害がある場合の申告方法?問題が複雑なのは、その遺言書に遺留分の侵害がある場合です。遺留分とは遺言によっても侵されることのない、相続人として最低限の相続ができる権利のことをいいます。配偶者と子が相続人の場合、それぞれの本来の法定相続分の半分が保護されるべき遺留分。これが侵害されている場合には、不満であれば遺留分の減殺請求といって、取り戻しができるのです。
侵害があっても、遺言が直ちに無効になるわけではありません。それに異論がなければ遺言のとおり執行し、申告すればいいだけのこと。難しいのは遺留分の侵害があり、それに納得できない場合です。
こんなとき、遺留分を侵害された相続人は、どのような申告をすればよいのでしょう。交渉によって現状よりは相続分が増える可能性はあるにせよ、現時点では財産額が確定できないのです。いくら仮の申告とは言え、遺言がとりあえず有効なら、その後の交渉によっても、取り分は最大で遺留分まで。とても法定相続分など期待できません。従って、法定相続分での申告など意味のないものに。まして、申告をすればそれに実際の納税が伴うのです。間違っても遺言どおりの申告などしてはいけません。相手方に遺言の内容に同意しているかの如く思われてしまい、その後の交渉が不利になってしまうからです。
ただ、こんなケースでは相続財産についての情報は、主流派に独り占めにされていて、不十分なことが多いもの。苦し紛れに少額の申告をしてしまえば、加算税、延滞税等の余計な税負担も生じます。これが嫌ならとりあえず多めに納め、後日の調整を待つより他に方法がありません。とは言っても多めに納めるには資金が必要で、遺産の取り分が確定していない場合は資金繰りが困難です。何とも痛し痒しの状況で、相続人の立場としては、こんな遺言を残されないよう、生前から被相続人を大切にし、時にはお世辞の一つも言って良好な関係を築いておく以外、手立てはなさそうです。2005年8月31日
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5158号
固定資産税のハイテク化!
お正月早々にヘリコプターや小型機による空撮、とくれば勘の鋭い方には何のことかお解りでしょう。そう、固定資産税の空撮による調査です。固定資産税は1月1日の現況で課税のため、正月の空撮はいいとしても、遂にこんなハイテク化が…税理士も知らなかった驚愕の事実をお知らせします。
1.固定資産税の課税単位固定資産税は原則として、『筆』と呼ばれる登記簿上の地番ごとに評価額が決まります。相続税の評価がこの筆と無関係に、利用単位ごとに課税されるのと較べ、大きな相違です。そして、最大の特徴は、その土地が住宅用地かどうかです。
面積的な制限はありますが、住宅用地なら固定資産税は1/6にまで軽減されるのです。つまり、アパート敷地と駐車場とでは、同じ面積の場合、税負担が6倍も異なることになるのです。
ただし、アパートの専用駐車場なら駐車場部分も1/6。とにもかくにも、住宅用地か否かは固定資産税においては死活問題なのです。
2.地積更正や分筆をすると…固定資産税は登記簿上の面積をもとに課税されます。従って、実測をし正確な面積が算出された場合、面積が減少するなら儲けもの。登記面積を変更(地積更正という。)すれば、連動して固定資産税も減少です。逆に増えた場合は要注意。その理由は言わずもがな、お察しの通りです。
お客様にアパートと駐車場経営をなさっている方がいます。約300坪の大きな一筆の土地に、二つの駐車場に挟まれてアパートが1棟建っていました。登記簿上の面積より実際の面積が小さく、課税上不利であったため、その土地を実測し、利用形態ごとに分筆、地積更正もしたのです。登記面積が変更されたため、固定資産税も減額の対象となりました。そこまでは良しとして、三鷹市の固定資産税係からの通知にビックリ!次のような文面と写真が添付されていたのです。
《◯◯様所有の下記の筆について、地積更正及び分筆がありましたので、宅地部分と駐車場部分のそれぞれの課税地積を再計算させて頂きたいと思います。別紙の通り算出致しましたが、◯◯様の方で地積測量図等により宅地部分と駐車場部分の地積が分かるようでしたら、より正確なものに訂正させていただきますのでご連絡下さい。》
そして、下記の写真です。写真によるそれぞれの部分の面積が、小数点以下まで記載され、数㎡の誤差については登記面積による按分計算までなされていたのです。
3.知らない間に写真撮影、が世の動向考えてみれば、これくらいは当たり前なのかも知れません。今や高速道路の出入り口、繁華街のあちこちで知らない間に写真撮影は行われています。犯罪捜査にも活用されるほど、顔写真もバッチリなのです。これからは、すべての土地にシートを被せ、外出時にはマスクにサングラスが必須なのかも知れません。
2005年7月29日
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5157号
広大地は生前贈与で!
すでにお伝えした『広大地』の評価についての改正をめぐり、実務界では議論が沸騰です。何しろ、広大地に該当すれば、評価額は激減。恐いのは、現状ならこの有利な評価方法の対象地であっても、将来の相続時にマンション適地とされ、適用対象外とされた場合です。それに対し、こんな方法で対処しようと言うのが本日のテーマです。
1.『広大地』評価の改正内容まずは、広大地の評価について、ここで簡単におさらいをしておきましょう。広大地とは文字通り面積の大きい土地を言い、具体的には開発行為の対象となる面積以上で、道路や公園等の施設負担が必要な土地のこと。市街化区域は1,000㎡以上となっていますが、東京近郊では500㎡以上で開発行為の対象のため、広大地の該当面積も500㎡以上と考えていいでしょう。
かつては広大地評価を実際に活用する場合、道路や公園の提供によるつぶれ地を計算し、いわゆる有効宅地の割合を考慮して評価をしていました。
ただ、この計算の適否の判断が曖昧で、税務当局との争いのタネとなることがしばしば。そこで、次の算式ですべてを割り切る方針に改正です。
広大地評価額=路線価×面積×広大地補正率*
* 0.6-0.05×広大地の面積/1,000㎡
この算式で計算すると、1,000㎡で45%引き、5,000㎡では何と65%引きの評価になるのです。
2.問題は相続時の状況さて、一見有利な評価方法への変更ですが、実は大変な問題を含んでいるのです。マンション適地は広大地評価の対象外になっていることです。理由はつぶれ地が少ないため。しかも、この"マンション適地"の定義が曖昧で、現在は近隣にマンションが建っていなくても、将来的には適地になる場合は適用外との取り扱い。こんな予測は不可能です。また、広大地の評価を使えば相続税は心配ない、などと思っていたら実際の相続時にはマンション適地と言うことも。いずれにしても、広大地の評価が適用できるか否か、将来予測も含め実務的にはグレーな部分が多過ぎます。
3.現時点で贈与をすればそこで、相続時など遠い将来は見据えずに、現時点での贈与を活用です。贈与税の評価は相続税と同じ扱い。つまり、現時点でマンション適地と判断されなければ、贈与の時にも前述の有利な評価が適用できるのです。人生なんてこの先どうなるかなど、一寸先は闇なのです。ま、それはともかくとして、今使える評価で確実に財産を移転させてしまいましょう。
こういうと、それはいいけど贈与税の高額な負担が心配だ、とのご意見が聞こえてきそうです。そこで、相続時精算課税制度の活用です。2,500万円までは非課税で、それを超えても一律20%の税率という、あの制度を活用するのです。仮に広大地の評価の適用で1億円の評価の土地を考えましょう。1億円-2,500万円の7,500万円に対し20%の税率で1,500万円の贈与税。1億円の対象額で1,500万円、実質15%の贈与税なら安いもの。おまけにこれは単なる相続税の前払いに過ぎません。相続時には相続税と精算されるからなのです。
相続時精算課税制度を使って贈与をすれば、将来の相続時、この土地が仮にマンション適地になってはいても、評価はあくまで贈与時の低い価額のままなのです。
4.これを売却すれば、売却代金はお子様に!さらに贈与されたこの土地を、売却した場合を考えてみましょう。贈与された以上はお子さんの土地、売却代金は言うまでもなくお子さんのものに!勿論、売れば譲渡税の対象です。しかし20%の税負担で生前に確実に現金の形で次代に財産の移転ができるのです。もしこの土地が現時点では十分に収益を生んでいない場合、要件さえ整っていれば事業用資産の買換え特例で、高収益物件への組み替えだって可能です。
いずれにせよ、将来適用ができるかどうか不確実な広大地評価。現時点でマンション適地でないのなら、相続税を前払いしてこの評価の特例を利用し、生前に確実な財産の移転を実行しておくことも、一考の価値がありそうです。2005年6月30日
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5156号
譲渡税、もう一度見直しで税金還付!
相続や贈与で取得した財産を売却すると、相続税、贈与税とは別に今度は譲渡税が課税です。それは仕方がないとして、その時の譲渡税の計算方法が変更されました。もしかすると、今からでも税金が戻ってくる可能性が…
1.譲渡税の計算方法譲渡税の計算方法は基本的には以下の通りです。
売却収入-(取得費+譲渡経費)
これに税率を乗じて計算ですが、ここで問題なのは取得費です。取得費とは取得時の購入代金や手数料をいい、相続や贈与の時は取得費や取得時期を当初の方から引き継ぐことになります。
相続や贈与に当たっては、名義の変更を必要とする財産もあるでしょう。例えば、不動産やゴルフ会員権の場合は、登記費用、不動産取得税、名義書換手数料等といった類が必要です。従来、これらの費用は譲渡税の計算に際しては、全く考慮されていませんでした。
それが、今回上記のような付随費用を取得費に含めて計算するよう、取り扱いが改められました。しかも、過去に遡っての変更も可能なのです。理由は簡単、この取り扱いをめぐり、税務署が裁判で負けたからです。
2.どんな影響が考えられるのか?まずは、この3月の確定申告で相続、贈与によって取得した財産を売却した方、申告書を見直してみましょう。上記の改正が公表されたのは、実は確定申告が始まる直前でした。世間一般にはまだ、とても周知の事柄ではないことでしょう。前述のとおり、この取り扱いは過去に遡れるため、提出済みの過去の申告書も見直したいものです。ただ、税務署が申告済みの申告書について、訂正ができるのは法律上は5年が限度。従って、現時点で見直しが可能なのは、平成12年分以降の申告です。これ以上古いものについては、たとえ税務署が直してあげたいと思っても、法律上、税務署長にその権限がないのです。
3.税金還付の請求方法さて、平成16年分であれば提出直後の申告です。申告期限から1年以内、つまり、来年の3月15日までに「更正の請求」というやり直しの手続きが可能で、これによって税金が戻ってきます。
平成12年~15年分のものは原則的には取り戻しができないことになっています。しかし、「嘆願書」という超法規的なお願いの方法があるのです。勿論これは本来の法律上の権利ではありません。あくまで“お願い”ではあるので、認められないことも覚悟をしなければなりません。しかし、今回のこの件については、税務署も嘆願書を認める旨を明言しています。安心して嘆願書の提出をしてみましょう。
4.概算取得費には要注意!ただ、そうはいっても注意すべき点がいくつかあります。まず、当初の譲渡税の計算で、取得費が正確にわからなかった場合です。特に相続で取得した土地など、当初の取得ははるか昔のこと。正確な金額など分からなくても不思議ではありません。こんな場合、譲渡税の計算では概算取得費といって、売却価格の5%相当額を取得費として計算して良いことになっています。もし、この方法で申告をしていたら、5%に今回の名義書換費用等を上乗せすることはできません。5%相当額と名義書換費用等とを比較して、名義書換費用等が5%以下であれば、そのままにしておく方が有利です。逆に5%超ならば、この5%の概算取得費は捨てて新たな費用でやり直しです。
5.どこまでが取得費に認められるのか?さて、どこまでが取得費として認められる項目なのでしょう。直接の取得費ではなくても、取得のための付随費用もOKです。とはいうものの自ずとそれにも限界が。例えば相続財産の分割に際し兄弟間で争いがあり、多額の弁護士費用がかかっても、それまで付随費用というのは虫が良過ぎます。同じ分割をするためではあっても、相続財産である土地を測量し、分筆することなどは認められる範囲でしょう。
いずれにしても、過去の申告書を見直してみる必要はありそうです。税務訴訟ではなりふり構わず、強引な課税を主張する税務署ですが、敗訴が確定後は積極的に過年分も救済の姿勢を見せています。珍しく、負けた後の税務署の潔さに、男の美学を見た思いがします。2005年5月31日
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5155号
樹を見て、森も見て!
「樹を見て森を見ず」ということわざがあります。物事の一部分だけは詳しいのに、全体の把握が疎かであることの喩えです。税務についてもこれは至言ともいうべきもの。一つの税目に捕らわれず、あらゆる角度からの検討が必要なのです。
1.法人税を節税したのは税理士の手柄?ある会社が決算を迎えました。誰しも税金は少ない方がいいに決まっています。税理士は社長を喜ばせようとして、あの手この手で工夫をします。苦労の甲斐あって利益はゼロ。社長は喜び、税理士は胸を張りました。ここまでは良かった。
路線価が公表される時期となりました。この会社は高額な土地を所有しているため、路線価にも敏感でした。というのは、未上場の会社の株式については、後述のように評価方法によって、路線価が株価に大きな影響を与えることがあるからです。社長のお父様がオーナーとして大半の株式をお持ちで、将来の相続を睨んでのことだったのです。そのお父様もかなりの高齢、年齢的にはいつ相続という事態が生じてもおかしくはないため、毎年路線価公表の時期に、株価を見直すことになっていたのです。
2.未上場株式の評価方法ここで、未上場の株式の評価方法についてお話をしておきましょう。正直言って、かなり専門的になってしまうため、あえて極めて割り切った説明にします。原則的な評価方法には大きく①純資産価額方式②類似業種比準価額方式の2つがあります。①は財産の額から借金等の負債を控除した、差引き残額で評価する方法。②は評価しようとする会社の一株当たりの利益、配当、純資産(類似の3要素と言う)を同業の上場会社のそれらと比較して求めようとするものです。
①においては、昔から保有する土地が低い価額(当時の取得価額)で帳簿に計上されていても、株価計算に際しては、現在の高い価額(時価)が反映されてしまいます。②の方法ではそのような含み益が株価に反映することがないため、一般論としては①より②の方が評価額が低くなり、有利だとされているのです。
3.評価方法の落とし穴さて、話は決算で工夫をし胸を張った税理士に戻ります(当事務所ではありません。念のため!)。路線価が公表され、この税理士も株価計算をして驚いたことでしょう。頑張って2期連続で利益をゼロ、配当もゼロにした結果、従来は上記②の低い評価額で算出できていたものが、②の適用が無くなってしまったのです。業界用語で"2要素ゼロ"と言いますが、この場合には原則として、①の高い評価額で計算することが強制されるのです。部分的(25%)には②を適用する方法も認められてはいますが、基本はあくまで①の純資産価額方式になってしまうのです。
これが税務の実務の落とし穴。それに気づいた時の税理士の心中、同業者として察するにあまりあり。何と従来の5倍にもなってしまったのです。実はこの会社、超都心に土地があり、その土地で貸しビル業を営んでいる会社だったのです。税理士の報告を聞いて、社長はたいそうな剣幕だったそうです。毎年相続を心配して、株価評価をやっているのに、突然のこの報告ではさもありなん!
4.解決策はあるのか?この段階で当事務所にご相談にお出でになったのです。この税理士を責める事なんて、決してできません。もしかしたら同じ誤りをやっていたかも知れないからです。しかも、この税理士は工夫をし、社長を喜ばせるためにやったのです。
とにもかくにも、このままでは大変です。聞けば前期でビルの大修繕も終わり、今期は経費が少額の見込み。結果大幅な利益が見込まれるとか。とりあえず、決算期を今直ぐの今月末に変更し、利益が出る状態での決算を組むことをお勧めしました。これなら2要素ゼロにはならず、②の方法が再び適用できるからです。
5.常に樹を見て、森も見て!同じようなことは他にいくらもあるのです。例えば個人の土地に賃貸物件を建築する場合、個人名義か法人名義かもその一つ。個人名義なら土地の評価が"貸家建付地"という更地の7~8割の評価に下がり、建物評価も賃貸物件なら有利な評価で相続税対策になろうというもの。法人名義の場合、土地の評価を抑える方法はあるものの、建物は個人でないため直接の評価のメリットはありません。一見個人名義がよさそうです。しかし、これも相続がいつ起こるかにより、状況は一変します。
詳しくはお話できませんが、ケース・バイ・ケース。相続税ばかりでなく所得税、法人税、消費税等色々なことを考えなければ結論は出てこないのです。常に樹を見て森も見て、税務は本当に難しく、筆者など、なかなか胸が張れません。2005年4月28日
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5154号
敵を立て、味方も得する交渉術
~理解に苦しむ税務署の実績評価~商売はお客様のニーズに合った物、サービスでいかに応えられるか、で勝負が決まります。実は、全く同じ事が税務調査にも当てはまるのです。税務調査においては、調査官のニーズを探ることが重要、ということのご紹介です。
1.調査官の実績とは?調査官に絶対的なノルマは課されてはいません。ただ、件数の割り当てがあるため、基本的にはこれが最低限のノルマと言えるものかも知れません。既に何回かご説明したと思いますが、税務調査において、税務職員に要求されることは、基本的には"増差"です。増減差額のことで、調査により当初の申告よりどれくらい所得や財産の額を多く見つけたか、が彼らの実績になるのです。
ここで面白いのは、それが実際の納税額に結びつかなくても、非違(申告書上の誤り)を見つければ増差となり、手柄となることです。これが税務調査を考える際に非常に重要なポイントになるため、詳しくお話ししたいと思います。
2.課税部門と徴収部門調査を行うのは相続税や所得税・法人税部門の課税部門と呼ばれる部署。この部署が申告内容を吟味し、所得金額等を調査によって左右するのです。
例えば、ある会社に累積の繰越欠損金が3,000万円あったとします。この会社の調査で1,000万円の非違が見つかり、修正申告をします。会社としては確かに所得が1,000万円増加はしますが、欠損金がまだ2,000万円もあり、実際の納税額はありません。会社にとって、この修正は痛くも痒くもないのです。
一方、調査官は1,000万円の非違を見つけ、増差としての手柄を挙げました。実際の納税額はありませんが、課税部門には関係がない話、とにかく手柄は手柄なのです。では、税金の徴収部門ではどうでしょう。この部門は、実際に納付すべき税額が期日までに納まっていない場合、取り立てを行うのがその仕事、手柄です。この例の場合には、修正申告により納付すべき税額が生じないため、そもそも彼らの仕事は生じません。と言うことで、こんな修正をするだけで、八方円満におさまってしまうのです。
3.相続税でも似たようなことが…相続税の調査がありました。奥様名義ではあっても、実態は亡くなったご主人の預金(名義預金)と認定され、1億円の増差が出たとします。お客様としては財産の額が1億円増えますが、必ずしもこれに相当する税額を負担しなければならないとは限りません。配偶者の税額軽減と言って、配偶者には法定相続分(又は1億6千万円以下)までの取得財産であれば、税金がかからない特例があるためです。従って、この預金を奥様が相続し、特例の適用があれば、後述する重加算税の対象にならない限り、お客様にとっての実損はほとんどありません。もっとも、この場合でも財産の総額が増えるため、他の相続人への影響はあります。しかし、見た目の増差に比べ、実際の税負担ははるかに少ないため、お客様にとっては結構な話。また、調査官にとっても1億円のお手柄になる訳で、これまた結構な話なのです。実際の税収は少ないのに、これで良しとするとは、税務署の常識は一般人とは異なるのでしょうか。
4.増差だけではない手柄の項目そして、増差の他に重要なお手柄項目は、重加算税を課したかどうかです。重加算税とは平たく言えば、脱税の意志があった場合に課されるペナルティー。これを課するとは、単なる計算誤り等を見つけることより、高度な調査のテクニックが必要という建前になっているため、大変なお手柄なのです。
5.手柄を立てさせ、こちらも得するには!調査で色々な非違が見つかった場合、実務的には税務署と交渉の余地がある場合も多いもの。税務署とて、明らかな誤りは別として、特にグレーな部分については話し合いのテーブルに乗ってくれるのです。時間をかけたくないと言う理由と共に、後日、異議申立て等の面倒なことにならずに済むよう、修正申告という形で早く一件落着したいからです。
実は、ここの話し合いこそが税理士の腕の見せ所。調査官が調書をまとめ易くするため、相応の理由を作ってやり、しかも、お客様の税負担の軽減を図るのです。調査官が重加算税を強く望む場合には、ある程度の重加を覚悟し、その代わりに増差部分を大幅に減らす交渉を。また、配偶者の税額軽減で事が済むなら、重加算税を勘弁してもらうことにより、増差部分で妥協です。要は調査官のニーズを適格に掴み、お客様の負担を軽減させ、お守りすることが税理士の仕事なのです。まさに腹の探り合い、狐と狸です。といっても明らかな脱税は救いようがありません。調査がないことを願うのは、我々税理士もお客様と同じです。どうか、平和な一年でありますように!2005年3月31日
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5153号
今からでも元に戻せば大丈夫?
親子や兄弟の間で財産を無償でやりとりすれば、原則的には贈与税の課税対象です。しかし、贈与があったのかどうか、取り消しはいつまでならできるのか、申告はどうするべきか、については、税務職員も間違える悩ましい問題なのです。という訳で、贈与税の申告について考えてみました。
1.一般の方の誤解税務には全く疎い一般の方が、贈与税がかかるとは夢想だにしていなかったとします。例えば、親が建物を建築して、子の名義で登記をした場合です。子の名前で株券を買った場合でも結構です。これらの行為が、もし、課税されると知ったら、どんな行動をとるのでしょう。「だったら元に戻しますよ。」
そう、まさにこれが本日のテーマなのです。贈与税がかかると言う理由だけで、それを避けるべく、元に戻せるのでしょうか。結論から言えば、できる場合とできない場合があるのです。決してどんな場合でも、元に戻せばそれで済む話ではありません。
2.税務職員の誤解同じ質問を税務職員にしてみると、例えばこんな回答が返ってきます。「今12月ですからね、3月15日の贈与税の申告期限までに、登記や名義を直せばいいですよ。その場合には贈与税の課税はありません。」
それなら、この名義変更が2年前だったらどうなのでしょう?「今から名義を戻す?2年も前の話でしょ。既に確定した贈与ですから、今から変更はできません。贈与税を納めて下さい。」 つまり、贈与の事実を戻すのなら、贈与のあった年分の贈与税の申告期限前であることが必須の条件だ、それを過ぎたら戻せない、と信じて疑わないのです。 資産税の総ての税務職員とはいわないまでも、"100人に聞きました"をやったら、多分97~98人が上記の回答をすることは必至です。
3.何故、税務職員は間違えるのか実務としての税務は、税法という法律に則って行われることになっています。しかし、法律だけではすべての細かな事象に対処ができません。そこで、課税当局は、税務職員向けに通達という形で、こういう場合にはこうしろ、ああしろと、マニュアルを設けているのです。
上記の問題のケースについては、《名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて》という通達があります。この通達をよく理解していないことに、税務職員が誤りを犯す原因があるのです。
4.通達の概要ここでちょっと、この通達にお付き合い下さい。概要をお話しすると、二つに分かれています。一つは有効な贈与が行われた一般的な場合。もう一つはいわゆるちょっとした間違いで、その軽率さが色々な事情からも確認できる場合です。
前者は贈与が既に有効に行われているため、基本的には贈与税の対象です。しかし、そうはいっても贈与税の申告期限前であれば、元に戻すことを条件に、課税をしない旨を定めています。情状酌量の余地あり、といったところでしょうか。ただ、本来的に贈与は成立しているために、申告期限後は仮に合意解除をして元に戻しても、課税関係は覆らないのです。
これに対し、後者はとにかくちょっとした間違いです。人間なら無知も勘違いもあり得ます。そもそも、贈与なんて確たる意志がなかったのです。こんな場合には、最初の贈与税の申告や更正・決定という税務署の処分がなされる前であれば、元に戻すことを条件に、贈与税の課税をしないことにしています。税務署には珍しい温情なのです。
5.結局は税務職員の増差主義税務署のことを、よーく考えてみましょう。前号でも触れたように、納税者の誤りを見つけ、課税する事が彼らの実績になるのです。(失礼、適正な課税業務を執行なさって下さっているのです!) 彼らの実績にするためには、とにかく課税。贈与が有効に行われさえすれば、申告期限を過ぎたか否かで判断すればよいのです。本当は贈与が有効に行われたかどうか、ちょっとした間違いではなかったのか、なのにです。これを知らず、確認もせずにすぐに課税しようとするのが税務職員の悲しいサガ。
つまり、あくまでも贈与の確たる意志などなく、軽率に、迂闊に、遠謀深慮もなかった場合には、それがいつであっても、元に戻せば贈与税の課税はありません。決して、贈与税の申告期限を過ぎたら何でも課税ではないのです。
誰です、バレモトで名義の変更を考えているのは?贈与税の申告期限は3月15日です。今年も適正な申告を!2005年2月28日
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5152号
広大地の評価改正にどう対応
Vol.42の『えーっと通信』でもご紹介した広大地の評価方法の改正が、やはり今後、非常に大きな波紋を呼びそうです。実務上、混乱は必至で、その対応策を考えてみました。
1.ことの発端広大地とは読んで字のごとく面積の大きな土地のことです。市街地の土地の評価は、基本的には路線価に面積を乗じて計算します。しかし、一定面積以上の土地については開発許可が必要となり、現実には有効活用ができないつぶれ地が生じるため、単純にその面積を乗じて評価するわけにはいきません。従来はそのつぶれ地の面積を考慮して、計算してよいことになっていたのです。しかし、その計算方法については解釈が分かれ、実務上は当局と納税者の間でトラブルが頻発。それを解決すべく、当局は単純な数式による評価に変更したのです。これは一見、簡便で大きく評価額を減じる親切な評価方法に見えました。しかし、その適用対象地に問題があったのです。
2.問題の「マンション適地」広大地ではあっても、その土地、地域がマンションの適地であれば、新たな評価方法が適用できないのです。なぜなら、マンションの場合には、つぶれ地があまり生じないためです。問題はマンション適地かどうかの判断で、当局は不動産の専門家でないことを意識して、次のような市販の不動産専門書を引用し、参考にして下さいというのですが、以下のような極めて曖昧なもの。敢えて、そのままの形でご紹介します。
① 近隣地域又は周辺の類似地域に現にマンションが建てられているし、また現在も建築工事中のものが多数ある場合、つまりマンション敷地としての利用に地域が移行しつつある状態で、しかもその移行の程度が相当進んでいる場合 ② 現実のマンションの建築状況はどうであれ、用途地域・建ぺい率・容積率や当該地方公共団体の開発規制等が厳しくなく、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性から判断しても、換言すれば、社会的・経済的・行政的見地から判断して、まさにマンション適地と認められる場合 となっています。特にひどいのが②で、現実の状況はどうであれ、将来を予測してマンション適地になりそうなら駄目というのでは、もはや判断のしようがありません。これを、納税者の立場で、あなたが考えなさい、というのです。
3.適用できない場合の危険性従来はつぶれ地の割合を計算して土地の評価額を算出していました。従って、当局にその計算が否認される場合でも、つぶれ地の割合が異なるだけで済んだのです。しかし、新たな評価方法は、とにもかくにも広大地にさえ該当すれば、単純な割り切りの計算式で、最大で65%引きの評価です。
例えば広大地を考慮しない評価額1億円の土地が、広大地に該当すると最大3,500万円の評価まで減少の可能性があるのです。逆に、万が一にも当局の判断で、広大地に該当しないとなった場合、1億円を基準に若干の評価減しかできないことになってしまうのです。広大地に該当するのかしないのかは、まさに天国と地獄。職務がら、税理士がその判断をするとなれば、相続税の申告を請け負う税理士は、果たして何人いるのでしょうか。
お客様からの損害賠償を覚悟で高額な報酬を要求できるか、相続の実務に全く無知で、広大地評価の怖さを知らない税理士にしか、広大地を適用した申告はできないことになってしまいます。
4.現場の姿勢が歪んだ解釈を生む!そもそもは、前述のとおり評価をめぐるトラブルを回避するために、簡単な算式にしようとしたのです。その国税庁の意気は良し!しかし、現場の税務署は往々にしてこれを理解せず、調査で実績を上げるだけの増差主義(増減差額のことで、調査による課税価格の増大分)に走るのです。結果、何だかんだと理屈を付けて、本来の趣旨を忘れ、こちらの評価を否認して、税金を取り立てようと血眼に。その姿勢がこの評価方法の改正を歪んだ方向に導きかねないのです。
結論としては、広大地の評価については、つぶれ地を考慮した、鑑定評価に依るしか他に方法はないでしょう。マニュアルに従えば、否認された場合はほとんど減額の余地が期待できないのです。これに対し、鑑定ならばお話し合いの余地は残されます。 折角の国税庁の粋な計らいです。税務署も広大地に対しては、うるさいことを言わず、簡単に、単純に大幅な評価減を認めてもらいたいものです。2005年1月31日
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5151号
相続後の手続きは迅速に!
売買や相続により、不動産の所有者や権利関係に変更があった場合、登記をすることが多いでしょう。いうまでもなく、登記をする、しないはその方の任意です。しかし、任意とはいうものの、やっておいた方が後々便利なようで、例えばこんな事がありました。
1.相続後の手続きとは相続後の手続きとは、具体的には分割協議や遺言に従って、被相続人から相続人へ、名義を変更する手続きです。預貯金や株券等書き換えの費用が軽微なものから、ゴルフ会員権や不動産登記のように、それなりの負担を覚悟しなければならないものまで多種多様。名義変更手続きには、基本的には各相続人がその財産を相続する権利があることを証するものが必要です。通常は分割協議書や遺言書ですが、相続人全員の実印があれば、銀行や郵便局等のように、名義変更ができるものもあります。
2.実際の名義変更手続きは…前述のような、相続による名義変更の手続きは、本来は厳格に行われるべきものです。なぜなら、手続きが省略され、厳格さを欠けば、それは銀行の責任問題になってしまうからです。例えば銀行所定の手続き書類に相続人全員の署名、押印、印鑑証明がなく、一部不足があった場合です。こんな状態で特定の相続人に名義を変更してしまい、後日、それが発覚して他の相続人から文句が出ることも想定されます。当然銀行は責任を問われることになるでしょう。
が、現実問題として、こんなことがありました。筆者の母が亡くなったときのことです。財産と言える程のものは何もなく、兄弟間で遺産分割協議書を作成するまでもなかったのです。
死後、暫くして遺品を整理してみると、少額ではありますが、郵便局に簡易保険と定額貯金があったのです。当時、筆者の兄は海外にいたため、兄の承諾を取るのは手続き的に煩雑でした。事後承諾でいいだろう、と勝手に判断し郵便局に相談です。町の小さな郵便局ではありますが、本来の手続きの説明後、何と、悪魔のささやき『お兄さんの分は、どなたかが替わりに署名して頂ければ結構ですよ。』しかも、実印でなく認め印です。金額も決して多くはありませんでしたが、それでも100万円単位です。これでは、単なる早い者勝ち?
3.遺言書があれば安心か?相続人間での分割協議については問題になることが予想されたため、事前に遺言書を作成した事例では、こんなこともありました。
遺留分の侵害がないよう注意をして遺言書を作成し、準備は万端整っていたのです。いざ相続が開始され、遺言執行者である長男は、遺言内容を相続人に知らせました。法的には何も問題が無い遺言であったため、長男も名義変更の手続きを、すぐにはしていなかったのです。相続登記をすぐにしないのはよくあること、珍しいことではありません。ただ、本誌前号でもご紹介のとおり、長い間登記をしないでおくと、後日支障があることも事実ではあります。それに、登記をすれば登録免許税の負担も覚悟しなければなりません。
それはともかく、紳士的かつ公正に他の相続人に遺言の存在と内容を知らしめたのです。結果的にはこれがあだになりました。長男がある土地を遺言に従って自分の名義に登記する前に、他の相続人が法定相続分によって、自分の持ち分に対し、抵当権を設定していたのです。
どういう事かと言うと、登記所は遺言によって登記がされる前までは、当然のことですが遺言の存在を知りません。その段階は、登記所から見ると、いってみれば分割されていない状態、つまり、相続人の法定相続分による共有状態なのです。3人兄弟が相続人なら1/3ずつの共有です。ここで、その内の一人が自分の持ち分の1/3については、売却することも、抵当権を設定することも可能なのです。
なんでこんな事をするかといえば、いうまでもなく、長男に対する嫌がらせ、遺言執行に対する妨害です。結果的には事なきを得ましたが、この持ち分を売買してしまうと、法律的には非常に面倒な状態になってしまいます。そもそも、こんな状態での持ち分を買う人は、頬に傷のあるような方も多いのではないでしょうか。相続人も恨み辛みが高じて、何をするか分かりません。
遺言があるのなら、他の相続人のことなど考えず、間髪を入れずに即登記 !また、遺言がない場合は、さらに注意して財産探しと名義変更!とにもかくにも早い者勝ち。世智辛い世の中ではあります。2004年12月27日